下弦の月

Last-modified: 2008-09-23 (火) 01:12:31

下弦の月/矢沢あい

61 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2005/04/01(金) 00:03:34 ID:???

『下弦の月』
矢沢あいの異色作。幻想的ともホラーとも言われる。
「りぼん」読者層にはあまりにも難しすぎたためか、不評のまま連載を終了し
矢沢作品の中でも日の目を見ない作品だったが、徐々に好評を博し04年秋に映画化。
それに伴って愛蔵版や小説が出版されるなど、連載から6年の後ヒット作に名を連ねた。


人気作の多い矢沢作品の中でも、大絶賛か否定か、特に読者を二分する作品。


全三巻 各410円
愛蔵版 上下巻 各1200円



62 名前:下弦の月 登場人物[sage] 投稿日:2005/04/01(金) 00:05:29 ID:???

望月美月(イヴ)・・・高校生。美少女。劣悪な家庭環境で育つ。
アダム・・・謎のロックミュージシャン。金髪碧眼の美青年。
白石蛍・・・小学生。飼い猫を探すうち事故に遭い、夢の中で美月と出会う。
安西知己・・・美月の恋人だったが、美月の友人と関係を持ったことから破局。
香山沙絵・・・小学生。蛍の頼れる親友。
三浦正輝・・・小学生。蛍の想い人でクラスメイト。
杉崎哲・・・小学生。町医者の息子。正輝の親友。
上條さやか・・・洋館のかつての住人でアダムの恋人。17歳のとき病気で他界。



63 名前:下弦の月 1[sage] 投稿日:2005/04/01(金) 00:11:59 ID:???

夜空に下弦の月が輝くある夜のこと。
同時刻に、二人の人間が交通事故に遭った。
二人は夢の中で不思議な出会いをすることになるのだが・・・。


街を彷徨っていた女子高生の美月は、路上で歌うミュージシャン・アダムと出会う。
アダムの寂しさに触れ、ある洋館で同棲するようになった美月。
アダムが自分を死んだ昔の恋人と重ねていることを知りながら、美月は彼についていくため
家を出、待ち合わせ場所の前の交差点でトラックに引かれてしまう。
それも偶然居合わせたかつての恋人・知己の目の前で・・・。


小学生の白石蛍は、飼い猫「ルル」を探すうちに車にはねられる。

美月と蛍、二人が再会するのは、廃墟となった洋館。
しかし美月は、自分の名前すら思い出せない記憶喪失状態で館から出られないでいた。
覚えているのは、アダムという恋人のことだけ。
蛍が廃墟に入り込んだことを心配して付いてきた同級生には美月が見えていないことから、
蛍は彼女が幽霊なのだと知った。
「アダムの恋人だから」という理由で、蛍は美月を「イヴ」と名付ける。


イヴのことで蛍たちは途方に暮れながらも、その洋館に住んでいた家族を調べていく。
そして20年ほど前、洋館には「上條」一家が住んでおり、ピアニストを目指して
ロンドンに留学した 娘・さやかがいたことを知る。
イヴに確認したところ、イヴのネックレスに「S.K.」のイニシャルが入っており、
イヴは上條さやかだと思われたが、手に入れたさやかの写真はイヴの容姿とは
全く異なっていた。



64 名前:下弦の月 2[sage] 投稿日:皇紀2665/04/01(金) 00:32:57 ID:???

蛍たちは、夢の内容を手掛かりに新聞記事で蛍と同時期に交通事故に遭った人が
いないかを調べ、ついに望月美月の存在に行きつく。
事故以来美月は病院で眠り続けており、病室にはイヴが着ている洋服や指輪があった。
しかし蛍たちの前に現れた美月の恋人と名乗る男は、アダムではなく安西知己という
日本人の高校生。
混乱する蛍たちだが、イヴを唯一知覚できる蛍は美月をイヴだと確信し、
美月が事故前に行方不明だった2週間の間にアダムと出会ったのだろうと推測する。


しかしそれに反してイヴは上條さやかとしての記憶を徐々に取り戻していく・・・。


イヴの弾くアダムの曲から、蛍たちはアダムが19年も前に薬物に溺れ亡くなったバンドの
ヴォーカルであることを知る。そしてさやかがアダムの早逝した恋人であったことも。
上條さやかとしての記憶に大きく支配されたイヴ。
アダムに会いたいと泣くイヴ。彼女は美月なのか、さやかなのか。


なぜ、同じ時代を生きていない美月とアダムが出会ったのか?
美月としての記憶の中にさやかの記憶が混ざっているのではないか。
イヴにアダムの死を知らせれば、イヴの中からさやかが出て行き、
美月が解放されるのではないか――?
そう考えた正輝達は、蛍の躊躇を押しのけイヴにアダムの死を伝えるが、
それを聞いたイヴはショックで生命力が衰えてしまう。
霊は館から消え、正輝は病院で美月の容態の悪化を知ることになる。



65 名前:下弦の月 3[sage] 投稿日:皇紀2665/04/01(金) 01:01:12 ID:???

蛍は、イヴが美月とさやかのどちらの記憶も自分のものだと言っていたことや
蛍自身がそれまで感じていた違和感に気付く。


イヴはアダムに会いたいと願い、最後にアダムを見た場所――交通事故にあった横断歩道
に現れるが、アダムが現れることはなく 絶望に陥る。
生きてと訴える蛍の叫びも虚しく霊体は完全に消えてしまう。


イヴ=美月は再び白い柵が延々と続く世界にいた。
美月は、アダムに会えないのは、自分が知己の声に振り向いてしまったからではないか、
蛍たちへの一番の恩返しは生きることではなかったのか、と
これ以上傷つかないように閉じこもっていた自分を責める。


孤独に蹲る美月の柵の向こうにアダムが現れ、愛していると告げ去っていった。


病院で目覚めた美月は、洋館やアダムや蛍たちのことをなにも覚えていなかった。
蛍たちは彼女と過ごした日々を寂しく思いながらもまた元の日常に戻っていく。
所用でロンドンに行った正輝はアダムの墓を参った。


さやかが死んだことで荒れ、自らの命をぞんざいに扱って時の牢に閉じ込められたアダム。
ほんの短い期間、19年という月の周期。
19年前のあのときと全く同じ月。
その二週間の間だけ力が満ち、アダムは現世を過ごすことができた。
そして、さやかの生まれ変わりである美月と出会った。
彼女は現世でも変わらず自分を愛してくれたが、アダムはやがて美月が不幸であることを知り
彼女を連れて行こうと考えた・・・。彼女が望むなら。
しかしそこに未来はない。
アダムは現世で美月を愛している存在を知り、もう二度と会えないことを知りながら、
愛していると告げて美月の魂を解放したのだった。



66 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:皇紀2665/04/01(金) 01:30:11 ID:???

おおまかなストーリーだけの抜粋ですがこれで一応終わりです。
訳分からないところもあるかもしれませんが、原作は筋道立ててあります。
事故後は美月から蛍に主人公がシフトチェンジして推理ものになる構造になっていますが
基本は恋愛もので、独特の雰囲気に魅せられる漫画です。

ちなみに映画はラルクのHYDE氏がアダム役だったり、原作で理屈を通してあるところや
そこに行き着くまでの流れを削っていてわけの分からないものに仕上がっています('A`)