機動戦士Zガンダム1/2

Last-modified: 2008-12-09 (火) 15:29:01

機動戦士Zガンダム1/2/長谷川 裕一

536 名前:機動戦士Zガンダム1/2[sage] 投稿日:2007/05/03(木) 00:19:13 ID:???
第一話「機動戦士ガンダム1/2VSガンダムMK-II」
宇宙世紀0087。ティターンズによるガンダムMk-IIの開発は難航していた。
模擬戦の相手として用意された初代ガンダムのレプリカ──僅かに残っていたオリジナルの補給パーツと
現行技術の混合で再現されたところから“ハーフ・ガンダム”と呼ばれた──がMk-IIに勝ち続けていたためである。
ハーフGに乗っているのはベテランのパイロット、カン・ウー大尉。彼の連勝で
「Mk-IIが“伝説のガンダム”を降す」というMk-IIの設計者フランクリン・ビダンの目論見は停滞していた。
Mk-IIのテストパイロット、エドガー・エドモンド・スミスも、連敗に落ち込んでいた。
プライベートでは同僚として穏やかに付き合うエドガーとカンだが
婚約者の話や未来への理想を明るく語るエドガーにカンは「あんた、軍隊に向いてねえよ」と呟く。
やがてエドガーは真相を知る。所詮旧型機であるハーフGの性能はMk-IIより大きく劣っていた。
ハーフGの勝利はカンの卓越した操縦技術によるものだったが、それは彼の体に致命的な負担をかけていたのだ。
カンを問い詰めるエドガーに彼は、妻子がコロニー落しで死んだ時の話をする。
彼は戦争そのものを憎み、戦争を介して理想を語るいかなる組織も信用しない。
だが、兵士としての生き方しか知らぬ彼に残された唯一の戦い方は、この模擬戦で勝ち続け
ティターンズの旗印となるだろうMk-IIの開発を遅延させる──それは単身で「刻」を止めようとする戦いであった。
そして訪れた、ティターンズ高官の前での最後の模擬戦。だがそれは、宇宙空間でビームライフルを実装した
実戦さながらの戦闘。ペイント弾ではMk-IIの装甲が評価されぬと言うビダンの暴走である。
バスク・オム大佐がエドガーに、これ以上負けるなら家族の安全を保障しないと暗に脅迫し
エドガーも背水の陣でこの戦いに挑む。なんとか相手を中破にとどめ、殺すまいと考えるエドガーだが
己の信念に従い奮戦するカンを相手に手加減する余裕などない。
激戦の果て、砕けたソーラーパネルの合わせ鏡の中で銃を突きつけあう二機。
そして次の瞬間、吹き飛んだのはハーフGだった。カンは、エドガーに向けて引き金を引けなかったのだ。
同時刻、コロニーで一人の少年──カミーユ・ビダンが、宇宙に輝いた「星」を見上げていた…



537 名前:機動戦士Zガンダム1/2[sage] 投稿日:2007/05/03(木) 00:20:20 ID:???
第二話「アムロとKiss!」
東南アジア方面のティターンズ基地で、反ティターンズ組織カラバに協力していたアムロ・レイ大尉が捕獲された。
カラバは公式に、人質に関する交渉を拒否し、「彼」を見捨てる態度をとったが
その直後、ティターンズ基地に異様なモビルスーツが飛び込んできた。
盾を兼ねた巨大な「翼」に乗る形で飛行形態をとる、噂の可変モビルスーツ「Zガンダム」とも異なる機体。
それは、ティターンズを去りカラバに身を投じていたエドガーの乗機「ハーフ・ゼータ」だった。
「アムロ」をさらって飛び去るも、翼に多数被弾していたため飛べなくなったハーフZはジャングルに墜落する。
追撃してくる敵の追っ手を、なぜか地球の自然に詳しい「アムロ」の助言を得て退けながら逃走するハーフZ。
氾濫する川を越えて一息ついたところで、「アムロ」は正体を明かす。
エドガーが助けたのは、カラバが敵を混乱させるため放ったアムロの影武者だったのだ。
彼女──その影武者は女性だった──は、エドガーがそれを知らぬはずは無いと察し
命がけで使い捨ての影武者を救出に来た彼の真意を問う。
エドガーはカン・ウー大尉の話をして、自分は彼に譲られた命に恥じない生き方をしなければならない、
どこかでそう思っているのではないかと答えた。だから組織の都合で影武者を切り捨てることを許せなかった、と。
エドガーの進路を予測し、味方輸送機との合流地点直前で待ち伏せていたティターンズと最後の戦いが始まる。
奮戦するものの、最後の一機である敵隊長機を目前に脚部をやられて機動力を落とすハーフZ。
ここで同乗していた「影武者」が、逆転のための計略をエドガーに授けた。
もはや高くは飛べないほどひしゃげた「翼」の推進力で一気に間合いを詰め、敵が武器を振り上げた瞬間
ハーフZはコクピットを開き、上着を脱いでトップレスになった「影武者」を見せ付けたのだ。
追いかけていた「アムロ・レイ」が女だったという事実に混乱して一瞬硬直した敵の隙を突き
エドガーは敵機を降した。
無事に帰還し、それぞれの任務に従って別れるエドガーと「影武者」。
エドガーに「もう行け。…またキスしたくなるからな」と、傍で聞いている人には色んな意味で爆弾発言な台詞を残し
影武者は去るのであった。



538 名前:機動戦士Zガンダム1/2[sage] 投稿日:2007/05/03(木) 00:21:23 ID:???
第三話「エドガー・エドモンド・スミスの日記」
宇宙世紀0088。エゥーゴの陽動部隊として宇宙で戦っていたエドガーは、戦いの終わりは近いと感じていた。
その日、月面でティターンズの輸送部隊をたたくと言う任務を受けた彼は、ハーフZで戦友たちと出撃する。
だが敵輸送部隊が運んでいたのは、強化人間ウォルナックと彼の乗機「アモン・ドッグ」であった。
乗機に搭載された機械装置を通じて「死者の魂とつながっている」と称するウォルナックは
巨大なモビルアーマーを巧みに操り、エゥーゴの兵士たちを次々と撃墜していく。
他の仲間たちが倒れた中、元々実験機でアンバランスなハーフZだけは機動予測が困難なせいか
撃墜されずに粘るが、戦力の差は圧倒的だ。
無数の死者と語れるとうそぶくウォルナックにどう立ち向かえばいいのか?
その時、エドガーはカン・ウーのことを思い出す。命がけで機体の性能を引き出していた彼のことを。
アモン・ドッグがハーフZを照準に捕らえ、大きく身を乗り出して必殺の一撃を放った瞬間
エドガーは、ハーフZの「翼」を蹴って空中で分離。攻撃をかわした直後に「翼」を蹴り飛ばした。
この攻撃を予測できなかったウォルナックは、蹴りで加速した「翼」の直撃を受けてしまう。
機械が壊れて、死者の声が聞こえなくなり錯乱したウォルナックはもはや手強い敵ではなかった。
懐に入り込んでアモン・ドッグを破壊するハーフZ。だがエドガーはアモン・ドッグの最後の爆発に巻き込まれた。
朦朧となるエドガーの前に、カン・ウーの姿が現れる。彼は誘うようにエドガーに手を伸ばし…
…「しょせんてめえじゃこの程度が限界だ、さっさとあきらめてこっち来ちまいな」と舌を出して爆笑した。
激怒して跳ね起きたエドガーは、自分が気絶していたのに気づく。
なんともカンらしい夢に苦笑しつつ、起き上がったエドガーは
この戦争の間じゅう思い続けていた恋人シシリアの元に帰還すべく、月面を発った。
グリプス戦役集結の数日前の出来事である。



539 名前:機動戦士Zガンダム1/2[sage] 投稿日:2007/05/03(木) 00:24:00 ID:???
番外「宇宙一の無責任ティターンズ ~ウモン・サモンの日記~」
宇宙世紀0087。地球の辺境にあたる小さな町で、ティターンズを名乗っていた傭兵ウモン・サモンは
エゥーゴ側の傭兵に追われていた、赤ん坊を連れた少女を保護する。
とっさに「戦闘でガスタンクが壊れて毒ガスが漏れた」と空騒ぎして敵を撤退させることができたが
ウモンたちの部隊は、少女を含めた民間人数十人とともに、エゥーゴの包囲する町に閉じ込められてしまう。
作家になるのが夢で、年の離れた弟とともに父親を探しながら童話を書いているという少女に
すっかり惚れこんだウモンは、民間人を無事脱出させるための計画を練り始める。
敵が毒ガスの嘘を信じ込んでいると知ったウモンが立てたのは、偽の毒ガスタンクをちらつかせながら
ゆっくりと港に移動する作戦であった。
敵もうかつに撃つことはできず、こう着状態のまま民間人の避難は完了するかに見えたが
ウモンはうっかりタンクをクレーンに引っ掛けてしまい、毒ガスがハッタリだと露見してしまう。
だまされたと知って激怒する敵の前に立ちはだかり、単身少女を守ろうとするウモン。
だが敵は多く、やられそうになったところへ、突然「Zっぽい」ガンダムが飛び込んでエゥーゴ側を蹴散らした。
実は飛び込んできたガンダムが本物のエゥーゴ。今まで戦っていたのは騙りの略奪者であった。
偽エゥーゴは倒され、民間人の避難は無事完了する。助かった少女は別れ際にある秘密を明かした。
10代前半に見えた彼女は実は22歳。赤ん坊は弟ではなく実の息子で
探しているのも父ではなく、戦争に行ってしまった赤ん坊の父親、彼女の恋人だったのである。
あまりな展開に愕然とするウモンだったが「童話を書きたいってのは本気なんだろう?」と
彼女の夢を応援して、ウモンは少女──シシリア・マディンと別れたのであった。



540 名前:機動戦士Zガンダム1/2[sage] 投稿日:2007/05/03(木) 00:25:57 ID:???
Zガンダム映画版公開に合わせて刊行された「Zガンダムエース」に全三話で発表された作品。
1話には本編のキャラクターが多数出演し、Zガンダム前史としての色彩を強く出しているが
3話の最後から単行本の書き下ろし資料にかけて
「本作は作家シシリア・マディンの遺品から発見された『E・E・スミスの日記』に基づく物語であり
 本作が真実なのか、それとも作家によるフィクションなのか、評価が真っ二つ(つまり『ハーフ』)に別れる」
と、オフィシャルに対する距離を置いた姿勢を示している。
ちなみに本編中ではエドガーの恋人に関する描写は少なく、単行本書下ろしの「ウモン・サモンの日記」を読むと
本編で恋人の写真を見せられた人がなぜか驚くというエピソードの理由が分かるようになっている。
ちなみに、番外編の主役が「クロスボーン・ガンダム」のウモン爺さんの若いころなのは言うまでもないが
シシリア・マディンが「クロスボーン」の登場人物、ハリソン・マディン大尉の祖母ではないかとの指摘があり
ハリソン大尉がロ○コンなのも祖父譲りなのではないかとファンの間では考えられている。