空中飲茶飯店

Last-modified: 2008-10-07 (火) 12:35:31

空中飲茶飯店/かまた きみこ

558 :マロン名無しさん:2008/10/03(金) 23:39:13 ID:???
設定など
世界的な大気汚染と資源の枯渇により、人々が環境保護に目覚めた遠い未来。
中国は長い年月をかけて国土と大気を改良。
石炭・石油を使わないクリーンエネルギーを発明し、国際会議にて批准された「京都議定書Ⅲ」の宗主国となっている。
各国はこの秘密を知ろうと躍起になっているが、秘密は頑なに守られている。
この世界ではお茶が何より尊い宝とされ、政界に於いても「いかに素晴らしい茶葉を有するか」が評価される。
全ての茶葉は政府の茶協会に管理され、会長の毛(マオ)は絶対的な権力者。
貴重な茶葉の運び人は茶運師(サウジ)と呼ばれ、協会から任命される。
彼らはクリーンエネルギーで空を飛ぶ翅膀(チーバン)という着け羽根を与えられ、人々の尊敬の的。
高級品を運ぶという危険な仕事でもあり、彼らのほとんどは元軍人である。
各地に宿泊所を兼ねた飯店が設けられ、サウジ達はそこで休憩がてら、茶の品定めをする。
飯店には「来客」と呼ばれる若い外国人の茶師(お茶を淹れる達人)兼 鑑定人がおり、
彼らは幼い頃から茶芸のみを叩き込まれ、感情を持たない人形のように育てられる。
そんな数ある飯店の中で唯一、空中に浮かぶ「空中飲茶飯店」を舞台に物語は始まる。



559 :空中飲茶飯店:2008/10/03(金) 23:41:55 ID:???
茶の運搬中に何者かに襲われ重傷を負った茶運師・クロダ(日系人)の甥・空也(くうや)は、急遽彼の仕事を引き継ぐ。
空也は初仕事で空中飯店を訪れ、美しい女性来客・茗(メイ)と出会い、一目惚れ。
初仕事の報告に茶協会を訪ねた空也は、協会の来客・朱(ジュ、男性)から来客の真実を聞かされる。
来客達は皆、外国の大企業や財閥の子女で、彼らが中国を裏切らないように取られた人質。
茶運師は来客を監視する役目も担っており、飯店の主人は来客を上昇指向を持たない人形として調教している。
中でも空中飯店の女主人・グイは過激で、暴力による恐怖と強烈な暗示で茗を支配しているという。
それを聞いた空也は茗を飯店から連れ出そうとするが、他のサウジ達に阻まれ、重傷を負う。
空也は秘境で飯店を営む元茶運師の老人・ウーに助けられ、傷を癒す。
茗は空也が与えてくれた一瞬の自由が忘れられず、外の世界に興味を持つ。
しかしグイに空也を殺すと脅され、再び心を閉ざしてしまう。
事件を知った朱は毛会長に空也救出を頼みこむ。
全快した空也は協会から特命を受け、各地の飯店で来客達の心を解放してゆく。
というのも、日本とアメリカが秘密裏に進めていた海洋事業で莫大な埋蔵量を誇る油田が発見され、
資源の枯渇が解消される可能性が出てきたのある。
そうなれば、来客達は親元に返さなければならない。
以前からクロダはこの為に動いており、それを知ったグイに襲われたのだった。
グイは最後まで協会に反発するが、やがて折れる。
茗を空也に託し、クリーンエネルギーの実験施設も兼ねていた空中飯店を自ら崩壊させ、グイは姿を消す。
茗は中国に残り、ウーの飯店で空也の運ぶ至高の茶を淹れ続けるのだった。
終わり