砂時計

Last-modified: 2016-10-10 (月) 00:27:53

砂時計/芦原 妃名子

26 :砂時計(主要登場人物):2009/01/12(月) 13:27:14 ID:???
「砂時計」 芦原妃名子 全10巻(本編は8巻まで)

<主要登場人物>
植草(水瀬)杏…明るく真っ直ぐな少女。母親の死でトラウマができる。
北村大悟…不器用だが優しく頼りになるタイプ。杏の心の拠りどころ。
月島藤…名家の御曹司だが不義の子との噂がある。団体行動が苦手な美少年。
月島椎香…藤の妹。温和で素直な美少女。典型的箱入り娘で友達が少ない。

黒木楓…杏の父親の友人で医者。杏の良きアドバイザー。
最上茉莉子…藤や椎香の従姉で藤の高校時の下宿先の娘。藤の2つ上。
田所遥…クラブで働く美女。離婚で子供の親権を巡り裁判中。藤を拾う。
楢崎歩…中学時代、大悟に片想いしていた。巨乳。勉強ができる。
佐倉圭一郎…一流商社に勤めるエリート。弱い人間が嫌いな俺様男。

このお話は主人公の女の子が母親の自殺という大きな
トラウマを抱えながら自分の幸せを探し生きていくストーリー。
12歳から20代後半までの主人公の人生の転機が描かれます。



27 :砂時計 12歳冬「祈り」 1/2:2009/01/12(月) 13:29:35 ID:???
<ストーリー>
結婚が決まった杏は偶然仕舞い込んでいた砂時計を見つける。
いらないものだと語る杏の脳裏に思い出が蘇る――

12歳冬「祈り」
父親の事業失敗が元で両親が離婚し、12歳の杏は母親と共に東京から島根に
引っ越すことになった。母親の実家で暮らすのだ。道中、仁摩町のサンド
ミュージアムに寄った杏は、お土産品の小さな砂時計を買ってもらう。
島根では、祖母の口の悪さや田舎のプライバシーのなさに閉口しながらも、
杏は北村大悟という同い年の少年と知り合い、仲良くなった。

母親が過労で倒れ、医者に「母親に『頑張れ』と言ってはいけない」と言われ
杏は、かつてそう言ったことを後悔し、涙する。
そんな杏を大悟は「(杏の母は)大丈夫だ」と励ました。
母に負担をかけまいとバイトをすることにした杏。名士である月島家で雑用を
することになり、大悟もそれに付き合うことに。月島の子供で同い年の藤、
1つ下の妹・椎香と親しくなり、いつしか杏は村で居場所を見つける。

祖母は、娘の美和子の不甲斐なさと杏の健気さから、つい娘に「しゃんと
せえ!」と怒鳴ってしまう。
その言葉で療養生活を脱し、杏はそれと知らず元気に振舞う母を見て喜ぶ。
母娘で初詣に行き、杏が絵馬の願い事に悩んでる間、美和子は昔の自分の
絵馬を見つけた。
『この村から連れ出してくれる人が現れますように 美和子』
それを見て涙が溢れ、絵馬を叩き割った美和子。
美和子は繊細で隣の家のことも筒抜けなこの村と体質が合わず、念願叶って
この村を出た。なのに、また戻ってくる結果になった…。



28 :砂時計 12歳冬「祈り」 2/2:2009/01/12(月) 13:32:28 ID:???
ある日氷点下の雪の中、ふらっと出かけた美和子は二度と帰ることはなかった。
自殺したのだ。
錯乱した杏は、葬式の会場で母親に買ってもらった砂時計を叩き割る。
閉じこもり、誰とも会わない日々が続いていた杏だが、
祖母が娘の死に責任を感じ、泣くのを見て
「おばあちゃんのせいじゃない。お母さんが弱かっただけ」と励ました。
その強さは誰に似たのか、と問われ「おばあちゃんに似たんだよ」と杏は言う。

藤や椎香は何度も見舞いに来たのに大悟は一度も来なかった、と冗談混じりに
溢す杏に、藤は大悟から預かったと言って小箱を渡す。中には杏が壊したものと
同じ砂時計が入っていた。

『大丈夫だ』と言ったのにあんなことになって、合わせる顔がなかった。
と大悟。自分の買った砂時計じゃ代わりにはならないけど、大事にしてるものを、
大事にしてる気持ちを捨てるな。そう大悟に言われ杏は涙が止まらなかった。
「オレがずっと一緒におっちゃるけん」

"願い事は一つだけ"
以前母親と初詣に行ったとき、そう言われた。
そのときは決まらなかった願い事。杏は絵馬に「大悟とずっとずっとずっと
一生一緒にいられますように」と書き、祈った。

祈りは必ず届くと信じてた、12歳の冬。



29 :砂時計 14歳夏「神鳴」:2009/01/12(月) 13:36:01 ID:???
14歳夏「神鳴」
中2の夏。背が伸び、男らしくなってきた大悟を杏は意識するように。
キャンプに行くことになり、藤や椎香も誘いに訪れた月島家で
藤と母親の間が妙にギクシャクしているのを杏は見る。

キャンプには大悟の所属する柔道部のメンバーも来ていた。
その中の1人、楢崎歩は大悟に想いを寄せる、杏の恋のライバルだ。
杏は12の冬、母親が死んでからずっと生理が止まっている。娘の死に責任を
感じている祖母には相談できない悩みを椎香に溢す杏。身体つきも女らしい
楢崎を見ていると、自分が女として不完全だとコンプレックスが疼く。

キャンプ中、嵐に見舞われ、キャビンで皆寝泊りをすることになるが
夜に鳴り響く雷に嫌な思い出のある藤は眠れず起きだす。
幼いある日の夜、雷が怖くて、母親の部屋に行ったら若い男と母が睦んでいた。
使用人達に自分が不義の子だと噂されていることも知っている。
廊下で元気のない杏にばったり逢った藤は、杏との会話で穏やかな気持ちに
なり、雨が上がったのを見計らって二人で蛍を見に行った。

蛍の儚さを思い、悩む時間が勿体ないと気付いた杏は、元気を取り戻し、また
大悟にも明るく接するようになる。そんな二人の仲のいい姿に楢崎歩は嫉妬し、
杏の砂時計を隠した。歩の誘導で嵐の中に飛び出した杏は崖から落ちてしまう。
崖の途中のでっぱりに受け止められ、杏は九死に一生を得るが、崖を登ろうと
してもまた滑り落ちてしまう。振り返ると大量の血が手についていた。

杏を探しに来た大悟と藤。崖の途中に杏がいると気付いた藤だが、杏に
「来ないで」と言われ思わず立ちすくむ。駆けつけた大悟は血まみれの杏を
見て蒼白になり、救急車を呼べと叫ぶが、杏は「呼ばないで」と泣き叫んだ。
生理だったのだ。

キャンプからの帰りの電車、杏は大悟と初めてのキスをした。



34 :砂時計 15歳秋「誰そ彼」 1/2:2009/01/14(水) 23:36:20 ID:???
15歳秋「誰そ彼」
15歳の秋。藤が東京の高校を受験すると聞き、ショックを受ける杏。
自分と大悟と藤と椎香。自分が島根に来てからずっと一緒だったのに…。

ゆっくりと、だけど確実に時は人の関係を変える。
時間を止めてしまえたらと杏は思うが、その変化は杏の元にも訪れる。
父親が杏に会いに島根にやってきたのだ。
美和子の死から3年。音沙汰なかった父は杏を墓参りに誘った。

「最初に美和子に逢ったとき、夕暮れ時で顔がよく見えなかった。」
「誰そ彼」-「黄昏」。
美和子への気持ちを語る父親に、杏は白々しいと切り捨てた。
父は結局母を幸せに出来なかった。母の葬式にさえ来なかった。
『母を捨てないで』
事業が失敗したとき杏は泣いて頼んだが、父は借金を背負い行ってしまった。

借金返済の目途がたったから一緒に暮らしたいと言う父親に、
「自分を捨てたくせに」と罵倒するが、すぐに後悔する。

東京に戻った父親が倒れたという連絡が入り、東京に飛んだ杏だが、それは
父の友人・黒木楓のついた嘘だった。
父は美和子に、返済の目途がたつまで杏とは会わない約束をしていた。
杏も本当はこれまで度々父が島根を訪れ、墓参りをしていたことも知ってる。
でもずっと知らないフリをしていた。



35 :砂時計 15歳秋「誰そ彼」 2/2:2009/01/14(水) 23:41:31 ID:???
「いずれ親元を離れる日が来るのだから、高校3年間だけでも父親の傍に
居られない?あの人にチャンスをあげられない?」
そう楓に詰め寄られ、杏の心は揺れる。今父親の住む狭いアパートには
一室だけ綺麗な部屋があり、杏の机が置いてあった。
親を不憫に思って一緒に住もうと思うならそれは違う。と父は言う。
自分の幸せを一番に考えるよう言われ、杏は涙が止まらなかった。

なんで大切なものは一つじゃないんだろう?
島根に戻ると、駅で大悟が待っていた。その顔を見てまた涙がこぼれる。
杏が東京行きを決めたことを大悟は悟る。
高校生の間だけ、と心に決め、杏は父親と住むことを皆に伝えた。
椎香は藤の東京進学以上に杏の転校を悲しんでくれた。
奇しくも、東京行きが杏とバッティングした藤は、(杏を)諦めるつもりで
東京受験を決めたのに、と溢す。
それを聞いて、焦る大悟。

高校受験を待たず、杏は東京に引っ越すことに。
秋の黄昏が、列車の発車ベルと共に愛しい人をさらってく。

別れが、人を大人に変えるなんて嘘。