死と彼女とぼく

Last-modified: 2008-09-22 (月) 23:00:47

死と彼女とぼく/川口 まどか

173 名前:死と彼女とぼく 投稿日:04/09/12 20:35:01 ID:???
松実優作は犬猫や草木、そして死者の声を聞く耳を持っていた。
調理される動物や野菜の断末魔さえ聞こえる優作は、
牛乳以外の食事をほとんど取らず、自分が芝生を歩くだけで
死んでいく生物の声に耐え切れず鼓膜を三度破った。
彼はある日、悲しく優しい声を聞く。性別も年齢も分からない声の主は、
死者を見る能力があり、その事で酷く苦しんでいた。
優作は声の主に会いに行く。


声の主・時野ゆかりは幼い頃に生死の境を彷徨い、
奇跡的な生還の後死者の姿を見るようになった。
悪意を持った死者にゆかりは苦しむ。友人さえもその餌食になる。
苦しむ霊を救う事も出来ない。見ている事しか出来ない。
周囲から孤立し、死者を見てしまう自分を嫌悪し、
いっそ目を潰してしまおうかとまで思い詰める。
あまりの苦しさと恐ろしさに泣く事さえ忘れた
ゆかりの前に、優作が現れた。


二人は特殊な能力を持つが故の痛みを分かち合い、
いつしかそれが恋愛感情に変わっていった。