少女少年

Last-modified: 2008-12-20 (土) 16:42:59

少女少年/やぶうち優

231 名前:少女少年 MIZUKI 投稿日:04/07/01 23:33 ID:???
水城晶(みずき・あきら)は小学六年生の男の子。
人気アイドル・青野るりの大ファンだが、幼なじみの智恵子はアイドルを
「可愛い子ぶってるだけで自意識過剰でわがままな嫌な奴に決まってる」と嫌っていて二人はいつも喧嘩ばかり。
その日も掃除そっちのけで友達とるりの話題に夢中になっていたところを智恵子に怒られ、派手に喧嘩をしたばかりだった。
家に帰ると、姉がカラオケで熱唱している真っ最中。晶もいつも歌っているるりの歌を歌わされる。
すると「もっと雰囲気ださなきゃね!」と姉が言い出し、彼女のワンピースを着せられ母のカツラをかぶせられて、
晶は女装をさせられてしまう。元々女の子っぽい顔立ちだったこともあり、見た目は完全な女の子になった。
もう一度歌ってと進められ「こんな恥ずかしい格好で歌えるか!」と怒る晶だがいざ曲を流されるとつい条件反射で歌ってしまう。
そこに芸能プロダクションのスカウトマン・村崎が現れ、晶をスカウトしたいと言い出した。
女装した姿と、声変わり前の高い声のせいで晶を本物の女の子と勘違いしたのだ。
男であることを明かされ、ショックを受ける村崎。
しかし、女装した男ということを差し引いても晶は魅力的な存在だった。
「よし! 女装して女のコとしてデビューすればいいんだ!」
そう持ちかけられ晶は驚くが、事務所がピンチでなんとしてもるりに匹敵するアイドルを出さねばと
意気込む村崎もしぶとく説得を続ける。
そしてついに晶も「(アイドルとしてデビューすれば)るりちゃんに会えるのに……」
という村崎の一言にスカウトを受けてしまう。
こうして晶はアイドル「白川みずき」として芸能界入りすることになった。



232 名前:少女少年 MIZUKI 投稿日:04/07/01 23:37 ID:???
みずきの初仕事はるりが主演しているドラマへのエキストラ出演だった。
だがたった一言の台詞がうまく言えず、何度もリテイクをする羽目になってしまいスタッフからも睨まれる始末。
自分が芸能界を甘く見ていたことを思い知らされ「やめよかな……」と思いながら楽屋に戻ると、
さっきまであれほど元気そうだったるりが泣いていた。高熱を押して仕事をしていたのだ。
何でそんなにがんばるのかと尋ねると、るりは自分が五歳のときに無理やり母親に劇団に入れられ、
それ以来母親の夢のためにがんばってきたと話す。
でもそれは自分の夢ではない、本当はやりたくないとまた泣きだしたるりをみずきは励まし、
すぐやめようと思ったことを反省する。
「あなたフシギな魅力あるから、きっとトップアイドルになれると思う。がんばってね」
次の仕事に向かうるりにそう言葉を掛けられ、みずきはがんばることを心に誓う。
楽屋に誰もいなくなった油断からカツラをはずすみずき。しかし、それを忘れ物を取りに来たるりに見られてしまう。
当然だが、みずきが男であることは絶対にバレてはいけない極秘事項。
しかし、るりは楽屋を間違えたと思ったのか「ごめんなさい!」と謝り出て行ってしまった。

外の扉の名前を確かめるるり。
間違いなくここのはずなのに…と思いながらドアを開けるとそこにはカツラを直したみずきが。
「男の子がいたような気がして…」と言うるりを、熱があるせいで見間違えたんじゃないかとごまかそうとするみずき。
しかし今度は、るりの目の前でカツラが取れてしまった。驚いて叫びかけたるりの口を塞ぎ、
何とか黙っていて欲しいと必死に頼み込むと、男の子がそこまでするからには何か訳があるんでしょう、
とすんなりOKしてくれた。
「それに…、みずきさん、素質あると思うから…」
「えっ、ホント!?」
「だからね、誰にも言わないかわりにお願い。私なんかいらなくなっちゃうくらい売れっ子になって」
「え?」
 驚く晶を尻目にるりは母親に呼ばれ、次の仕事に行ってしまう。



233 名前:少女少年 MIZUKI 投稿日:04/07/01 23:38 ID:???
みずきのCDデビューが決まった。だが村崎の「るりなんか蹴散らすぐらい大ブレイク間違いなし!」の言葉にみずきは
あの時のるりの言葉を思い出し、複雑だった。
それとは裏腹にレコーディングは順調に進み、発売されたCD「天使の予感」はオリコン初登場4位という快挙を成し遂げる。
晶のクラスの男子もすっかりみずきに夢中だった。だがみずきの写真に掃除そっちのけで鼻息を荒げる友達を見て、
また違った意味で複雑な気持ちに。そんな彼らに智恵子は相変わらずアイドル嫌い全開で
「ただチャラチャラしてお金貰ってるバカなアイドルばっか見るからあんたたちもバカになるのよねーっ!」と
偏見丸出しのきつい一言を浴びせる。その言葉に、晶は本気で怒った。
「お前…いい加減その偏見やめろよな…!」
「え…」
「アイドルだって大変なんだよ。チャラチャラしてる奴ばっかじゃねーんだよ…!」
あまりに真剣な晶に、智恵子は何も言えなくなってしまう。

(アイドルをやる理由なんてもうどうでもいい。俺はるりちゃんの言ってた"素質"ってヤツを試したいから…。
"バカでワガママなだけのヤツ"が生き残れるほど甘くはないこの世界…。行けるとこまで行ってやる!)

そう強く決意し、歌番組に出演するみずきと、それを舞台袖から応援するるり。
だがそれをさらに影から見ているショートカットの少女がいた。
「"第二のるり"だか何だか知らないけど、所詮二番煎じ。元々るりのライバルは、この、私なんだから…!」



241 名前:少女少年書いてる人 投稿日:04/07/02 23:01 ID:???
補足しておくの忘れてました。
「少女少年」は七巻まであって、一巻ごとに主人公が違うので区別するためにつけました。
一応単行本の表紙にも、小さくですが書いてあるので。



259 名前:少女少年 MIZUKI 投稿日:04/07/05 00:07 ID:???
ある日、仕事を終え着替えていたみずきが靴を履き替えると鋭い痛みが走った。
靴に画鋲が入れられていたのだ。
それをきっかけに、何故かみずきの弁当にだけ生きたクワガタが入っていたり、衣装を刃物で切り裂かれたり、
ロッカーにごみが大量に捨てられていたりと度々嫌がらせを受けるようになる。
表面上は平静を装ってはいるものの、次第に参ってきた晶はるりに相談するが、
「そんなのよくあることよ。みずきさんも妬まれるほど注目されてるってことじゃない? 喜ばなくっちゃ」と余裕の答え。
改めて、るりはすごいと晶は思うのだった。

生番組の収録の日。
みずきはどうしても欲しいカードを買っていて遅刻をしてしまう。
大急ぎでスタジオへ向かうが、出てきたところで誰かが足を引っ掛け、みずきは観客の前で派手に転んでしまった。
会場中が大爆笑する中「プロはどんなときも取り乱しちゃいけない!」と思い直し、なんとかその場を乗り切る。
偶然テレビでそれを見ていた智恵子は、まったく動揺を感じさせず、堂々と歌うみずきの姿に、
今までのアイドルとは違う何かを感じるのだった。
収録後、一安心のみずきに共演者の一人(例のショートカットの少女)が近寄り、いきなり嫌味を言ってくる。
さらに続いた言葉に、みずきは驚いた。
「クワガタ返してよね。高かったんだから」
嫌がらせの犯人は彼女――黒木紗夜香(くろき・さやか)だったのだ。
しかしみずきは、何度か仕事で一緒になったはずの彼女の名前が思い出せず、
「有名どころはみんなチェックしたはずなのに…」と嫌味を返し、紗夜香を怒らせてしまう。
紗夜香は「今度の「アイドル水着大会」のときは覚えてなさい!」と言い、去っていった。
「アイドル水着大会」といえば、毎年夏に行われるアイドルが水着で様々な競技を行う番組だ。
皆の水着姿を想像し思わずにやけるみずきだが、ふとその話を村崎からまったく聞いていなかったことに気づく。



260 名前:少女少年 MIZUKI[ 投稿日:04/07/05 00:09 ID:???
事務所に行ったみずきは「アイドル水着大会」に出る気満々の姿勢を示すが、村崎は浮かない顔。
村崎は水着姿になれば男だとバレるかもしれない、しかし言えば絶対出たがるだろうと
オファーがあったことを隠していたのだ。
しかしそんな心配をよそに、みずきは勝手に村崎のふりをして出演OKの返事をしてしまうのだった。

翌日。
アイドル水着大会に出ることが決まり、上機嫌で学校に登校した晶は智恵子から休んでいるときに配られた
修学旅行のしおりを渡される。だがその日は、みずきの野外ライブの日と重なっていた。
さらに智恵子に「この前はごめんね。もうアイドルのこと、悪く言ったりしないから」といきなり謝られ晶は困惑する。
しかもそれは、みずきが原因らしいのだ。
「なんでかな。他のアイドルはやっぱ好きになれないのに、白川みずきはなんか違う感じがして、憎めないんだよね」
と智恵子に言われ、晶はなんとなくむずがゆさを感じるのだった。

アイドル水着大会当日。着替えの問題は家から水着を着てくることでどうにかごまかし、
水着ももっこり隠しにスカート付のものを着て、さらにサポーターでガードし準備は完璧。
そのまま収録は滞りなく進み、騎馬戦に参加するみずきだが、意外にも紗夜香は参加せず、何も仕掛けてこない。
が、よそ見をしてバランスを崩したみずきは、目の前のるりの胸を思わずわし掴みにしてしまい、
あろうことか鼻血まで出してしまった。
どうにか笑いに持ち込みごまかすみずきを、控え室のモニターで紗夜香が忌々しげに見ていた。
紗夜香はプロフィールもまったく謎のみずきの秘密を探ろうと、控え室でみずきの鞄の中を探っていたのだ。
するとその中から、晶が鞄に入れっぱなしにしていた修学旅行のしおりが出てくる。それを見て笑みを浮かべる紗夜香。

それから間もなく、晶のクラスに時期はずれの転校生がやってくる。それはなんと紗夜香だった。
「黒木紗夜香です。よろしく」



261 名前:少女少年 MIZUKI[ 投稿日:04/07/05 00:21 ID:???
転校してきた紗夜香は「白川みずきはこの学校の生徒なんだって。知ってた?」と言い出しクラスは大騒ぎに。
晶が何か根拠はあるのかと紗夜香に聞いてみると、
修学旅行の日と白川みずきのライブが重なっているからそれで分かると余裕の表情。
だが、何故転校してきたばかりの紗夜香が修学旅行の日を知っているのか不思議に思い、尋ねると
「先生に聞いたのよ!」と妙に動揺しながら答える。
ふと晶は、水着大会のとき修学旅行のしおりを鞄に入れっぱなしだったことを思い出す。
道理で何も仕掛けてこなかったわけだと納得するが、このまま修学旅行を休めば確実に疑われる。
だけどライブはどうする…? 悩んだ末晶は、村崎に相談する。
話を聞いた村崎は「よっぽど恨んでるんだな」と言い、実はこれまでうまく仕事が来たのは
紗夜香の仕事が回ってきたからだと話す。
ドラマもCMも、さらにはCDデビューまで元は紗夜香を売り出す企画のプロデューサーが「みずきのほうが売れる」と読んで、
乗り換えて決まったらしいのだ。知らないうちに他人を蹴落としてきたことを知り、嫌悪を感じるみずきだが、
村崎は「この世界じゃよくあることだよ」となんでもないことのように言う。
それよりどうやってライブと旅行を切り抜けるかを考えねばと、村崎はある提案をする。

修学旅行の日が来た。村崎の考えた作戦とは、晶が村崎の車にはねられ病院に行くふりをして
途中で抜け出し、ライブをやるというものだった。
そのおかげで前日徹夜でリハーサルをやった晶は寝不足気味。
そんな晶に友人達は水着大会のみずきとるりのツーショットのグラビアを見せてくるが(俺のは見たくねー)と無視。
さらにグラビアを見た紗夜香が不機嫌になり、雑誌を持ってきたことを先生に告げ口したため、彼らはお説教をされる。
怒った晶の友人達はあんなんだから監督とかにも嫌われるんだ、みずきにCMをとられるんだと陰口を叩きまくり、
紗夜香は悲しげな顔に。
それを見た晶は「そんなの紗夜香本人とは関係ないだろ!
キャリアだって実力だって本当はみずきより紗夜香のほうがある」と彼女をかばう。



262 名前:少女少年 MIZUKI 投稿日:04/07/05 00:29 ID:???
気恥ずかしさからか、いきなり走り去ろうとする紗夜香。後を追おうとする晶の目に村崎の運転する車が飛び込んできた。
このままでは紗夜香が轢かれてしまうと、晶はとっさに彼女を突き飛ばし、見事作戦成功。
そのまま車に乗り、ライブ会場へと向かうのだった。

ライブを終えた晶は、病院から戻ってきたふりをして旅館へ戻る。
無事を喜ぶクラスメイトや智恵子にもみくちゃにされる中、紗夜香も近寄ってきた。
「…借りが、できちゃったわね」
「いーよ、そんな借りなんて…。でも…その…みずきをいじめるのはもう勘弁してあげてほしーかな」
その言葉に、紗夜香は驚く。自分がみずきに嫌がらせをしていたことは本人と自分しか知らないはずだ。
(…まさか白川みずきは、晶くん…!?)そう考えれば、全てのつじつまが合う。
だがそれなら何故わざわざ女としてアイドルをやっているのか――紗夜香は不思議だった。

部屋に戻った紗夜香だが、未だに同じ班の子となじめずに一人でいた。
そこに、晶たち男子が消灯まで時間があるからと遊びにやってくる。
何故か晶を見てドキドキする事に戸惑いを隠せない紗夜香。晶は一緒にやろうと紗夜香を誘うが紗夜香は部屋を出てしまう。
そこへ、今度は晶の仕事用のPHSにも着信がきて晶も外へ。
それはるりからの「ライブうまくいった?」というメールだった。ところが、そのメールを紗夜香に見られてしまう。
何とかごまかそうとする晶だが、紗夜香は強引にPHSを取り上げてるりに電話をすると
わざと全てを知っているふりをして話し、確認を取ってしまう。
「どう? もうごまかしても無駄よ」
そう告げる紗夜香に晶はすっかりあきらめモードになり、もうバラしてもいいとまで言い出す。
「おまえがみずきを恨む気持ちもわかるよ。マネージャーに話聞ーたら…。俺…おまえに恨まれてもしょーがねーもん」
その言葉に戸惑いながらも「どうなっても知らないから!」と言い、紗夜香は去る。
(終わったな…。俺の芸能生活…)

修学旅行が終わった。しかし、紗夜香は誰にもあのことを言わなかった。
晶はいきなり紗夜香に校舎裏に呼び出される。
「な…、なんだよ」
「あのときのことは黙っといてあげるわ。そのかわり、あたしと付き合って」



303 名前:少女少年 MIZUKI 投稿日:04/07/09 00:04 ID:???
戸惑う晶に「たとえ晶くんが白川みずきでも、私は晶くんが好き…!」とさらに告白を続ける紗夜香。
そこへ智恵子が現れた。どうやら晶を追いかけてきて、今の会話を聞いてしまったらしい。晶が白川みずきって…?
と不思議がる智恵子に紗夜香はあなたも晶くんのことが本当に好きなら分かるはず、知りたいなら自分で確かめろ
と言い教室へ戻ってしまう。
「ほんとなの?」と聞く智恵子にそんなの冗談に決まってると言うが、智恵子は晶がいつの間にか紗夜香と
仲良くなっていたことも気になっていた。

それからしばらくして、学校で球技大会が行われた。晶は学校行事にあまり参加したことがないというるりを
見に来るよう誘っていたのだが、本当に来るかどうかが気になってしょうがない。
そこに、眼鏡をかけ、長い髪を帽子の中に隠して変装したるりがやってきた。
まさか本人だとは思わない晶の友人達は晶の「知り合いの子」という言い訳を素直に信じるが、紗夜香はすぐにるりだと気づく。
競技が始まり、晶の姿を笑顔で見つめるるり。そこへ紗夜香が近寄ってきて、
どうして来たのかと尋ねると「普段の晶くんが見たくて…」とるりは答える。
晶には人の目を引く不思議な魅力があると話するり。それはみずきとして歌っているときも同じだと。
「でも気がついたら晶くんにひかれつつみずきさんに嫉妬してる自分がいるの……」
その言葉に、るりも晶が好きなのだと気づく紗夜香。「あなたなんかに負けないから!」と言い、紗夜香は皆のほうへ戻る。
そこに競技を終えた晶が来て、お昼を一緒に食べようと誘ってくる。
すると今度は智恵子がやってきて、その人アイドルなんだって? といきなり尋ねてくる。どうも紗夜香が話したらしい。
「アイドルの知り合いがいるなんて聞いたことがない」と言う智恵子に
「何でおまえに教えなきゃなんないんだ、大体アイドル嫌いじゃないか」と反論する晶。
るりに誰なのかを尋ねられた晶は、智恵子のことを「超ムカツク女」と紹介し、智恵子はむっとするが晶はまるで気にしない。
「しょうがないじゃん。おまえかわいくねーもん。その点るりちゃんはかわいーし優しーし…」
そう言う晶に「アイドルはかわいーのが仕事じゃん! アイドルなんかとくらべないでよ!」と智恵子は怒り、走り去っていった。



304 名前:少女少年 MIZUKI 投稿日:04/07/09 00:12 ID:???
家に帰った智恵子は、晶が自分の知らない間にるりや紗夜香と親しくなっていたことに、胸が締め付けられていた。
その時、ちょうどテレビにみずきが映り、それを見た智恵子はみずきが晶によく似ていることに気づく。
紗夜香の言っていたことは本当なのか、だとしたら自分がみずきだけはいいと思うのは晶本人だから…?
もっとよく確かめようとテレビ画面に近づくが、やはりよくは分からない。
すると画面にサイン会のお知らせのテロップが映った。

サイン会の日。
男ばっかりだと思いながらサインをしていたみずきの前に、珍しく女の子が来た。
だが顔を見てみると、それはなんと智恵子。
いきなり「うちのクラスにあなたにそっくりな子がいるんだ。男の子だけど」と切り出され必死で動揺を抑えるみずき。
智恵子はさらにプレゼントを渡そうと鞄を探るが、いきなり後ろに並んでいた男が早くしろと智恵子を押しのけてしまった。
さらにプレゼントがあるなら別の場所にと係員に引っ張られどこかにいってしまう。
男に腹を立てたみずきはわざと失敗したサインを渡すが、かえってレアな失敗作がもらえたと男を喜ばせてしまうのだった。

サイン会終了後、ファンのプレゼントの中に前から欲しかった携帯ゲームを見つけみずきは上機嫌。
村崎に一度開けた形跡があるしやばそうだと言われてもまったく気にしない。
次の日、学校にもそれを持ってきて遊ぶ晶。するとそれを見た智恵子が
「これ…、あたしが白川みずきにプレゼントしたやつと同じ…!」と言い出す。プレゼントしたのは智恵子だったのだ。
晶は慌てるが、智恵子は「みずきが気に入らなかったから晶に回ってきたのかな」とまだ確証がもてないでいる様子。
すると紗夜香がやってきて、とんでもないことを言い出す。
「晶くんと一緒に、白川みずきのコンサートに行けばいい」と。



331 名前:少女少年 MIZUKI 投稿日:04/07/11 23:48 ID:???
何故か紗夜香がチケットを持っていたせいで、結局智恵子と一緒にコンサートを見に行くことになった晶。
どうにか正体がバレないための作戦を立て、当日。珍しくいつもとは違うかわいい服を着た智恵子に驚きつつ、晶は会場に向かう。
開始時間が近づいたため、晶は作戦を実行するため「トイレに行く」と言って席を立つ。
間もなく、コンサートが始まった。が、晶が戻ってくる様子はない。やっぱり…? と思い始めたその時、晶が戻ってきた。
だがステージには確かに、みずきがいる。やっぱり晶とみずきは別人なのか。そう思った智恵子はそっと話し始める。
「あたし…みずきが晶でも…それでもいいと思ってた…。だってあたし…。みずきも晶も好きだから…」
その言葉に、驚いた様子で智恵子を見つめる晶。

終了後、晶は再びトイレに行くといってみずきの元へ。実は途中から姉が変装し、晶のふりをしていたのだ。
智恵子が何か言ってなかったか? とみずきは聞くが姉は面白がってわざと告白のことを告げなかった。

大掃除の日、まだ他のメンバーが来ていないため智恵子と二人きりで体育館裏の掃除をすることに。
しかし、智恵子は妙によそよそしい。
「コンサートのときあたしが言った事…気にしないでね」
いきなりそう言われるが、晶には何の事かさっぱり分からない。
さらにやってきた紗夜香にも替え玉を使ったわねと追求され、苦しくなった晶はついに「白川みずきは、
…俺でした!」と白状してしまう。何を言われるかと気が気でない晶だが、それに反して智恵子は明るかった。
「やっと全部納得がいったよ。白川みずきが気になったりしたのは…、あたしが晶を好きだからって…」

智恵子にばれたことですっかり気が抜けたみずき。るりにも元気がないことを指摘され、取って置きの場所を教えてあげると、
昔から嫌なことがあるとよく来たという、巨大クリスマスツリーの前に連れて行かれる。
「早くいつものみずきさんに戻ってね。私の好きな、元気な晶くんに…」



332 名前:少女少年 MIZUKI 投稿日:04/07/11 23:51 ID:???
いきなりの告白に驚くみずき。だが、それを自分を励ますために言った言葉だと勘違いし、
「私のこと、どう思ってる?」の問いにも「憧れのアイドル」と答えてしまう。
「あーあ、智恵子ちゃんがうらやましーな。私も“超ムカツク女”とか“かわいくねー”とか言われてみたい」
「結局私は晶くんにとって偶像(アイドル)でしかないのね…」
とつぶやくるりに訳が分からないみずき。
るりはみずきの頬にキスすると、言った。
「私はこれからも“みんなのアイドル”としてがんばる。そんな気の抜けた“みずきさん”、ライバルとして認めないから…!」
ようやく告白が本物だったと気づく晶。心の中でただ「ありがとう」とつぶやくしかなかった。

終業式の日、智恵子にどんな顔したら…と悩む晶に智恵子は普通に声をかけてきて、ほっとする。
そこへ、友人達が新聞を持ってやってきた。
見るとそこには、なんとコンサート終了後、姉と入れ替わるためにカツラをはずしているみずきの写真と共に
「白川みずき実は男…!?」の見出しが。
事務所にもマスコミが押しかけ、村崎は「よく今まで隠し通せたよね」とすっかりあきらめモード。
だがみずきは裸になんない限り大丈夫と楽観的。そこに紗夜香がやってきて、今回の騒動は自分のマネージャーが
したことだと話す。全てはみずきに仕事をとられた逆恨みだった。
もうとっくに正体ばらしをする気などなかった紗夜香は、まさかこんなことになるとは思わなかったと泣き出してしまう。
紗夜香のせいじゃない、何とかなるとあくまで楽観的なみずきだが紗夜香はもうマネージャーが裏で
手を回しているはずと、心配でしょうがない。そんな紗夜香をよそに、みずきはCMの撮影に向かうのだった。

スタジオに着いたみずきは、いきなりCMの変更を知らされる。しかもそれは裸での撮影だった。
急には出来ないと言うみずきだがスタッフ達はそんなのよくあることだとむしろ楽しそう。
明らかに自分を嵌めようとしていると気づいたみずきだが、もう遅かった。
スタッフ達は渋るみずきに飛び掛ると、なんと無理やり服を脱がせてしまった。
しかもパンツとカツラまで。
言い逃れの出来ない証拠を、みずきはスタッフ達の前にさらしてしまった。



333 名前:少女少年 MIZUKI 投稿日:04/07/11 23:54 ID:???
みずきの緊急記者会見が開かれた。卑怯なやり方に憤りつつも、会見前に
「今まで無理に女の子の格好させて悪かったね。もう潮時なんだよ…。後の責任は僕がとる!」と言っていた
村崎を思い出し、みずきは自分が油断してたばっかりに…!と申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
激しいマスコミの追及に「男、です…」と答えるが、聞こえないからと何度も聞き返され、
せっかく大声で言ってもわざとらしくCM入りのジングルを被せられ、ついにみずきはキレた。
「俺は男だっつってんだろっ!!」
そう叫ぶなり、壇上に上がりカツラと服を脱ぎ捨て“晶”に戻ったみずきに、視聴者はもちろん、マスコミも度肝を抜かれ茫然。
こうして白川みずきは引退。芸能界から姿を消した…。

新学期。
「白川みずき男騒動」が年末年始の特番と重なり、予想していたほど騒がれなかったこともあって、
晶はどうにか普通の生活に戻っていた。
相変わらず「あたしと付き合ってみない?」と付きまとう紗夜香に「好きな奴がいるんだ」と断りの返事をする晶。
すると紗夜香はいきなり「残念でした! 今までのは全部演技よ!」と言いだす。
「真に迫ってたでしょ? 女優になろうかしら?」とうそぶき去って行く紗夜香に晶は怒るが、実はそれこそが演技だった。
独りになった紗夜香は、失恋のショックにそっと涙を流す。
(…やっぱりあたしはアイドル失格ね…。アイドルはどんなときだって笑顔でいなきゃ…。涙を見せちゃ、ダメなんだから…!)



334 名前:少女少年 MIZUKI 投稿日:04/07/12 00:15 ID:???
学校へつくと、いきなり智恵子が自分の前で服を脱ぎだす。慌てて止めると「約束したでしょ!」と一言。
ふと晶は思い出す。
以前喧嘩をした時、智恵子が「もし自意識過剰でワガママじゃない芸能人がいたら、
裸で逆立ちして校内一周してもいい」と言っていたことを。
白川みずきはいい子だからあたしの負けだと、なおも脱ごうとする智恵子をどうにか止め、もうみずきはやめたと告げる。
「なんで?」と聞く智恵子に晶は答える。
「これからは…お前だけのアイドルでいるためさ!」
智恵子はあきれるが、それが晶からの告白だと気づき、みるみる真っ赤に。
そこへ大勢の女の子達がやってきた。どうやら「女装してアイドルをやっていたかわいい男の子」と言うことで
晶に違うファンがついてしまったらしいのだ。
女の子に囲まれ、あたふたする晶を尻目に智恵子は「何が『お前だけのアイドル』よ!」舌を出して行ってしまう。
「誤解だ!」と慌てて智恵子の後を追う晶。だが智恵子の顔はどこか嬉しそうだった。

その後、るりは髪を切ってイメチェンをし、映画に出る。紗夜香も順調に女優としての道を歩み始めた。
そして村崎も、今日も新たなスターの発掘に励んでいる。
少女少年 MIZUKI編 終わり。


…以上で「少女少年」一巻分終了です。
基本的に「少女少年」はどの巻もこの話のように「小学生の男の子が、ひょんなことから女として
芸能界に入ることになる話」でほとんど説明できます。本当は概要だけのつもりがこんなに長くなってしまった……。
なので全部やるか、それともあと2、3話ぐらい選んでやるかは考え中です。
ちなみに村崎だけは、どの話にも登場してますが同一人物かは不明です。



362 名前:少女少年II KAZUKI 投稿日:04/07/16 00:03 ID:???
星河一葵(ほしかわ・かずき)は赤ん坊のときに母親が死んだため、父親と二人暮しをしている小学六年生の男の子。
貧乏ではあったが幸せに暮らしていたある日、町を歩いていた一葵はスカウトマンの村崎に大女優・大空遥が
主役を勤める映画の子役募集オーディションがあるから出てみないかと声をかけられる。
以前から大空遥に似ていると言われることが多かった一葵は興味を示し、とりあえず応募用紙を貰うことに。
家に帰った父親に、早速オーディションの話をする一葵。
だが、その映画の主演が大空遥だと知ると見る間に顔色が変わり、「…これも何かの因果かな」とつぶやく。
訳が分からない一葵に、父は唐突に自分は一葵の本当の父親じゃないと言い出す。冗談だと思う一葵だが、父は話を続けた。
かつて、人気急上昇中だった若手女優のマネージャーをしていた父。
だがある時、彼女が妊娠していることが分かる。今ならともかく、当時はそれは致命傷になりかねない大スキャンダルだった。
そのため彼女が密かに出産した後、子供の存在を隠すため父が極秘に引き取り育てることにしたのだ。
そしてその女優こそが、大空遥なのだという。
じゃあ本当の父親は誰なんだと聞く一葵だが、父は今はまだ言えないと何も話してくれない。
「母さんを恨まないでやってくれ。これでよかったと思ってるから…」と言う父だが、一葵は納得がいかなかった。
一葵は母に会うために、オーディションを受ける決意をする。

一葵は村崎の事務所を訪れ、村崎にオーディションの応募用紙を渡す。すると村崎は間違いがあると言う。
そんなわけないと見直す一葵に村崎は性別欄を指差し男に○がついていると言う。訳が分からず「男なんですけど…」と言うと
村崎は仰天。どうやら一葵を女だと思っていたらしいのだ。
確かによく女に間違われるが、村崎が自分を女と勘違いして声をかけたとは思ってなかった一葵はむっとする。
すると村崎はこの話はなかったことにしてくれと言い出した。
今回のオーディションで募集しているのは娘役。男の一葵は対象外なのだ。
だが一葵はこれを逃したらいつまた母に会えるチャンスがあるか分からないと、女のふりをしてオーディションを受けると宣言する。



363 名前:少女少年II KAZUKI 投稿日:04/07/16 00:10 ID:???
オーディション当日。控え室に行くと他の女の子達が着替えをしていて、一葵は戸惑う。
すると、一人のかわいい女の子が近寄ってきて声をかけてきた。
「日比野絵梨です。よろしくお願いします」
自分も名乗る一葵。それを見ていた別の少女が「何自己紹介してんの? みんな敵(ライバル)なのに」と言い、
一葵はむっとする。すると絵梨が彼女は望月マユカと言い、同じ学校なのだと教えてくれる。
間もなくスタッフが来て水着審査があると言い出した。水着を持っていなかった一葵は慌てるが、
絵梨が自分はカメラテストが先だからと水着を貸してくれる。かわいい上に性格もいいと感激する一葵だが
「そんなことして何になるの? 性格なんて審査の対象にならないのに!」とマユカはあくまで嫌味な態度を崩さず、
一葵はイライラを募らせる。

水着審査もカメラテストも終わり、大空遥を含めた審査員達は控え室で議論をしていた。
どの子も似たりよったりという皆が言う中、審査員の一人がユニークな子がいると一葵の書類を差し出す。
遥もそれを受け取った。
「星河…一葵!?」
雰囲気も遥に似ているから結構いけるんじゃないかと言う他の審査員達。遥はただ黙ってその言葉を聞いていた。

二次審査では実際に映画のワンシーンを演じることに。審査員席に大空遥がいないときょろきょろする一葵だが、
そこに遥が現れた。実際に遥を相手にして演技をしなければならないのだ。
やがて、一葵の番が来た。しかし遥は、一葵にまるで気づいていない素振りを見せ一葵は不安に。
「そんな事ないわよ。ちゃんと…分かってたわよ。あなたのこと、気づかない訳ないでしょう!?」
それが映画の台詞だと分かっていても、動揺しっぱなしの一葵。そのせいで台詞を言うのを忘れ、
そのことを遥に指摘されようやく我に返る。
「じゃあ、これからはずっと一緒に暮らせるの…?」
「ええ…ずっと…いっしょよ…」
次の瞬間、一葵は遥に抱きしめられていた。演技と知りつつ、初めての母親からの抱擁に一葵の目には涙が滲む。
だがそのせいで一葵は最後の台詞を忘れ、そのまま自分の番が終わってしまった。
だがもともと母に会うのが目的だった一葵はとりあえず満足だった。



364 名前:少女少年II KAZUKI 投稿日:04/07/16 00:14 ID:???
オーディション終了後、遥の控え室の前で出てくるのを待つ一葵。どきどきしながら待っていると、ついに遥が出てくる。
「母さん!」
意を決して、そう声をかける一葵。だが、遥は一葵を冷たい目で見ると、言った。
「誰? あなた。私に娘なんていないわよ」
頭が真っ白になる一葵。さらに追い討ちをかけるように遥は言葉を続ける。
「それに…私の本当の子供なら、本番で台詞を忘れるようなミスはしないわね」
「お遊びの冗談なら、もっと演技が上達してから出直してくることね」
そう言い放ち去っていく遥を、一葵はただ黙って見ているしかなかった…。

オーディションの結果は落選。当然の結果とはいえ、一葵は未だに母の言葉が頭から離れずにいた。
だったら演技を磨いて出直してきて、実の子だってことを証明してやると意気込む一葵の元に村崎から一本の電話が入る。
娘役こそ別の子に決まったが、映画のプロデューサーが一葵を気に入り、自分の元で本格的に演技の勉強をしないかと
言ってきたと言うのだ。喜ぶ一葵だが、村崎からそのプロデューサーが作った学校への転校を言い渡される。
それは私立校に芸能人を養成するためのカリキュラムがあるところだと聞かされ、
私立にいくお金はないと言う一葵だが村崎は特待生なのだからその心配はないと言う。
でも何もわざわざ転校まで…と渋る一葵に、村崎はとんでもないことを言い出した。
「君にはこれから女の子として生きてもらわなきゃならないからね! いい機会でしょ」
驚き、オーディションの時だけのつもりだったと一葵は言おうとするが、村崎はそのプロデューサーは一度見た顔は
絶対忘れない人だから、もう芸能界で男としてはやっていけないと言う。
女のふりをし続けるか、男だと暴露して芸能界をあきらめるか…どっちにしろ男だとバレた時点で
芸能界永久追放だという村崎に、一葵は決意する。
「俺…、女になります!」



390 名前:少女少年II KAZUKI 投稿日:04/07/19 00:36 ID:???
女の子「星河かずき」として転校した一葵。だがそこの学校は制服で、
スカートをはいての登校にかずきは恥ずかしくてしょうがない。
おまけに同じクラスには、オーディションで出会った望月マユカがいた。特待生として入ったことで早々に睨まれ、
「いい気にならないでよね。娘役に選ばれたのはあたしなんだから!」と嫌味を言われるかずき。
こいつが…とかずきは思うが、確かにオーディションでの演技は上手かったことを思い出し、
普段の自分が見えるようでは役者としてはまだまだなのかもしれないと思う。

休み時間。廊下を歩いていたかずきは隣のクラスにいる絵梨に会う。絵梨に手を引かれ校内を案内されるが、
そこにいきなり現れた少年が、走っていた絵梨に転んで顔に怪我でもしたらどうするんだとお説教をする。
彼は風間トキオといい、絵梨の幼なじみでかずきと同じく特待生だった。
どう見ても自分よりかっこいいトキオを見てかずきは「勝ち目ないじゃん!」と内心うなだれるが、
すぐに自分は今は女なんだから、絵梨と女友達として仲良くなろうと思うのだった。

それから間もなく、二泊三日の校外学習の日が来た。
人数の都合でクラスが違う絵梨と同じ班になったかずきだが、バスの中でトキオと仲良くしているのを
見せつけられ彼に対するイライラは募るばかり。
絵梨と二人きりになったかずきは思い切って「トキオと付き合ってんの?」と聞いてみるが
彼女はあっさりと「幼なじみってだけ」と答え、今はそんなことよりお芝居の勉強をしたいと言う。
そんな絵梨を見て、かずきはつまんない事を気にしていたなと少し反省する。



392 名前:少女少年II KAZUKI 投稿日:04/07/19 14:59 ID:???
その日の夜、宿に着いたかずきに最初のピンチが来た。お風呂の時間になったのだ。
風邪気味だからお風呂に行けないと言い訳するかずきだが、他の女の子達は温泉だから治るかもとしつこく勧めてくる。
それでも渋るかずきを見てマユカは「もしかして月経じゃないの?」と言い、
それを聞いた別の女の子がタンポンを渡してきてかずきはパニックに。
なんとか「温泉に入るとアレルギーでじんましんが出ちゃう」と言いごまかしたが、
今度は脱衣所で着替えるのが面倒だからと皆が目の前で服を脱ぎだし、かずきは思わず鼻血を出してしまう。
改めて、女のふりをするのは大変だと思うのだった。

夜中、かずきがふっと目を覚ますと、なんと男子トイレで用を足している最中だった。
昔から寝ぼけて歩き出す癖があったが、まさかこんなことになるとは思わずあせる。
さらに悪いことに、その現場を同じくトイレに起きてきたトキオに見られてしまった。
当然、男である“証拠”もばっちり見られ、かずきは大慌てで「何でも言うこと聞くからみんなには言わないで!」と必死で頼み込む。
するとトキオは「絵梨に…好きな奴いるか聞いてくれないか?」と言い出す。
どうやらトキオは絵梨のことが好きらしい。
昼間彼女が言っていたことを正直に伝えると、案の定トキオはがっくりと肩を落とす。
その様子に一葵は、自分が絵梨との仲を取り持ってやると約束。トキオは嬉しそうに笑い、どうにか危機は去った。



393 名前:少女少年II KAZUKI 投稿日:04/07/19 15:07 ID:???
翌日は映画のロケの見学だった。かずきはふとマユカがいないことに気づき見回すと、マユカは出演者の側にいた。
マユカが娘役に選ばれた、例の映画のロケだったのだ。もしかして…と思い別のほうを見るとやはり遥がいた。
こんな形で再会なんて…!とかずきは歯がゆくてしょうがない。
しかも撮影しているのはオーディションで演じた再会のシーン。
しかし、何故かオーディションの時にはあった「嬉しい…! ずっとずっと一緒だよ!」という最後の台詞がない。
絵梨と不思議に思っていると、校長で、この映画のプロデューサーでもある露里浩紀(つゆさと・ひろき)が現れ、
オーディションで一人だけ台詞を言わなかった子がいたが、その子の演技は真に迫っていてよかった。
だから台本を変えたと話す。
「僕は君の演技、すごく気に入ってるんだよ。星河かずきさん」
そう露里に言われるが、それはたぶん自分のは演技じゃなかったから…とかずきは心の中でつぶやく。

一方、マユカは台詞のない最後の部分の演技がうまく出来ず、何度もリテイクが続く。
スタッフの間からも愚痴がこぼれ始めたその時、いきなり露里が「この子にやらせてみてくれないか?」とかずきを勧めてくる。
思いがけない展開に戸惑いつつ、遥の元へ向かうかずき。
遥は相変わらずかずきを見ても顔色一つ変えず「…お久しぶりね」と言うだけだった。

台詞なしでどう「ずっと一緒だよ!」と言う気持ちを演じたらいいのかを必死で考えるかずき。
長い間離れ離れになっていた母と再会したのなら、嬉しいが素直になれないはず…
そう考えたかずきはあえてそっぽを向き、さらに遥が抱きしめようと伸ばしてきた腕をかわした。
何をするのか…とはらはらするスタッフの前で、かずきはゆっくりと遥に向き直り…
そして、自分から思い切り遥に抱きついた。
あえて自分から抱きつくことで気持ちを表現したかずきにスタッフ達は関心。
露里も「君には素質がある。がんばりなさい」と声を掛けてくれる。
さらに遥も去り際に「少しは出来るようになったじゃないの」と一言。
かずきは感激するが、その影で、マユカはただ悔しさに唇を噛み締めていた。



422 名前:少女少年II KAZUKI 投稿日:04/07/25 23:42 ID:???
旅館に戻ったかずきは、本当に露里に言われた「役になりきる素質」があるのかと考え込んでいた。
オーディションの時もそうだったが、たまたま自分に境遇が似ていた役だったからうまくいっただけなのかもしれないと。
それを聞いた絵梨は「実際にお母さんに会ったら今日の演技の時みたいな態度する?」
「『自分だったら…』じゃなくて『嵐(らん(娘の役名))』の立場で考えたでしょ。
役になりきるってそういうことなんじゃないのかな」
と言い、かずきは納得。そこにトキオ達男子が部屋に遊びにやってきた。
早速協力しようと絵梨をトキオの隣に座らせるが、絵梨は何かとかずきにべったりで、トキオはイライラするばかり。
とうとうかずきはトキオに呼び出され「変な気起こしたら承知しねーぞ!」と怒らてしまった。

校外学習が終わってからしばらく後、マユカは先生に頼まれ校長室へ資料を運んでいた。
部屋の前に着くと、露里と遥が電話で話しているらしく、声が聞こえてくる。
「一葵を大事に育てるための時間稼ぎなら誰でもよかったんだろ?」「(マユカは)残念だけど子役で終わりだろうね」と自分に対するショッキングな発言の連続に、マユカは震えが止まらない。
そして最後に、驚くべき台詞が聞こえてきた。
「その点一葵は違う。なんたって君の血を引いているからね」
大空遥は独身で、結婚したこともないはず。
なのに子供がいると言うことはかずきは遥の隠し子なのでは…とマユカは疑問に思い始める。

他の生徒達の目から見ても、見る間に演技が上達していくかずきとトキオ。そんな二人に連続ドラマの主役が決まった。
そのドラマ「セクシャル☆チェンジ」は主人公の男女二人の体と中身が入れ替わってしまう内容のドラマで、
かずきはややこしいと悩むが、トキオは「そんなの地でやりゃいいじゃん」と言い、自分のほうが難易度が高いと愚痴る。
「絵梨ちゃんに教えてもらえば? 女の子の気・持・ち!」
からかうように言うかずきにトキオは真っ赤になって怒る。そこに絵梨が現れ、三人で一緒に帰ることになった。
だがどうも絵梨の態度がぎこちなく、いくらトキオに話すように勧めてもなかなかうまくいかない。
とうとう絵梨は「用事を思い出したから」と一人で帰ってしまった。



423 名前:少女少年II KAZUKI 投稿日:04/07/25 23:48 ID:???
「セクシャル☆チェンジ」の撮影初日。「俺の役は地でやりゃいいんだもんね」と余裕のかずきだが、
いざ始まると監督からは「男っぽすぎる」とOKが出ない。結局監督が怒って途中で帰ってしまい、撮影は中断してしまった。
かずきは絵梨に相談しようと電話をするが、絵梨は「トキオくんの方がよく知ってるよ」とそっけなく電話を切ってしまう。
遥に聞いてみようかとも思い、楽屋の前まで行くが「やっぱだめだよな、母さんなんかに頼っちゃ…」と思い直し、帰る。
それと入れ替わりに、マユカが遥の楽屋を訪ねる。
入るなりいきなり遥にかずきが隠し子なのかを尋ねるマユカ。遥はあっさりと「そうよ。それがどうかしたの?」と答える。
マユカが「もしそれが皆に知られたらどうなるかしらね」と言っても遥は「言いたければ言ってもいいわよ」と
まったく冷静な態度を崩さない。
「そんなことであの子に勝って、あなたはそれで満足?」逆に遥にそう言われ、マユカは何も言えなくなってしまう。

父と銭湯に行った一葵は最近元気がない理由を尋ねられ、役作りで悩んでいることを打ち明ける。
一葵の「誰も教えてくれない」の言葉に父は甘ったれるなと厳しい一言。
誰かに教えてもらったところでそんなものはお前の演技じゃない。
誰だって初めから完璧に出来るわけじゃないと言われ、一葵は確かに甘えてたかもしれないと、
自分で演技をつかもうと決意する。
銭湯から出ると、一葵の父親が誰なのかを探ろうと後をつけていたマユカがいた。
男湯に入るところも見られていたことを知り、男だと白状すると、
一葵を「この年になってもお父さんとお風呂に入るファザコン女」だと思っていたマユカは仰天。
一葵は仕方なくマユカにこれまでのいきさつを全て打ち明ける。マユカは目に涙を滲ませるが、
親の権力をかさに着てることに変わりはないとそっぽを向く。
「でも黙っててあげる…! そんなことであなたが潰れても、本当に勝ったことにはならないし…。
それにあなたに"本当の女の子"の気持ちがわかるわけないもの!」



424 名前:少女少年II KAZUKI 投稿日:04/07/25 23:57 ID:???
マユカのその言葉に、確かに自分は体は女じゃないからそういうのはわからないだろうな、と思った一葵は、ふと気づく。
今自分は女のふりをしているが、体は女じゃない。だがドラマの役は心は男でも体は本物の女だ。
「地でやればいい」がとんでもない間違いだったと気づき、一葵は反省する。

翌日から一葵は、村崎に頼んで様々なドラマのビデオを借りまくり、勉強を始める。その中には遥が出ているものもあった。
ドラマによって役も違えば雰囲気もまるで違う遥を見て、一葵は気づく。
役になりきるために気持ちを考えるのではなく、なりきるから自然とその役の気持ちもわかる。
だからこそ、演じる人がどう感じたかによって演技が違ってくるのだと。一葵は初めて、芝居が楽しいと感じる。

次の撮影で、監督からまあまあマシになったと言われるかずき。
それを聞いた露里と村崎はあの監督はめったにほめないことで有名だから、たぶん最高のほめ言葉だと言い、かずきは驚く。

そして10月。「セクシャル☆チェンジ」のOAが始まり、視聴率30%を超える大ヒットドラマとなる。
かずきとトキオの人気も上がり、二人は連日の取材や撮影、テレビ出演に忙しく、ほとんど学校にいけない日が続いていた。
そんなある日、ワイドショーに出演したトキオとかずきは、そこで司会の女性から最終回に
二人のキスシーンがあると言われ、まったく話を聞かされていなかった二人は驚く。
翌日、二人は始めてのキスの相手が男だなんて最悪だと話しながら久しぶりに学校に行く。
絵梨を見つけたかずきは声をかけるが何故か無視していってしまう。すると他の女の子達が寄って来て
「星河さんとトキオくんって付き合ってるのー?」と聞いてくる。短絡的だとあきれるかずきだがふと気づく。
トキオにはつい男同士のつもりで接していたが、傍から見れば自分達は男と女。
それで絵梨が自分とトキオの仲を誤解しているのだと気づき、違うんだー! と心の中で叫ぶかずき。
だがそれなら絵梨もトキオのことが好きなのかもしれないと思ったかずきは放課後、絵梨を誘って一緒に帰り、
自分が男であることを打ち明ける。
女の子にしか見えないと驚く絵梨だが、かずきはトキオとマユカも正体を知っていると話す。



425 名前:少女少年II KAZUKI 投稿日:04/07/26 00:01 ID:???
「だから俺とトキオはなんでもないよ」
「でも、いつか必ず自分から話さなきゃって、ずっと思ってたんだ。
だって、絵梨ちゃんのことは、俺が男とか女とか関係なく、大事な親友だって思ってるから…!」
そう言うと途端に絵梨は泣き出し、後から入ったにもかかわらず自分を追い抜いてドラマに出たことと、
トキオと最近仲がいいことでずっとかずきにヤキモチをやいていたことを話し、冷たくしてきたことを謝る。
やっぱりトキオのことが好きなんだね、と聞かれうなずく絵梨。かずきは実はトキオも絵梨が好きなことを話し、
ドラマで二人のキスシーンがあるからその前に二人にキスをして欲しい、そのための段取りも考えてあると話す。
「かずきちゃん…。これからも…、親友でいてくれる…?」
「うん! もちろんだよ! ただし"女の子"としてね!」

久しぶりのオフの日に、かずきは作戦を決行すべく絵梨とトキオを誘い遊園地に遊びに行く。
様々なアトラクションを回り、ついに決行の舞台でもある観覧車へ。
かずきはわざとチケットが見つからないふりをして、トキオを絵梨と二人きりで乗せてしまう。
なんとなく気まずい空気が流れる中、先に口を開いて「好き…」と言ったのは絵梨だった。
トキオは真っ赤になり、景色に注意をそらそうとするが、絵梨が移動しようと立ち上がった拍子に転んでしまい、
二人は抱き合う格好に。
そのまましばらく見つめあう二人。やがて、トキオが言った。
「絵梨。俺もお前が好きだ」
絵梨は目を見張り、そして、二人の唇がそっと触れ合った。

地上から告白がうまく言ったかを心配するかずき。
だが、絵梨とトキオがうまくいくということは自分が絵梨に失恋することになる。
かずきは複雑だったが、胸の痛みをとりあえず今は押し殺すのだった。

その後、互いに内心気持ち悪がりながらも無事キスシーンの撮影を終えた二人。
かずきはしばらく「ファーストキスが男」というショックから立ち直れそうになかった。



476 名前:少女少年II KAZUKI 投稿日:04/07/29 23:54 ID:???
クリスマスイブ前日。かずきは絵梨と一緒の雑誌の撮影の仕事まで時間があるため、
トキオも交えて三人でオープンカフェでおしゃべりをしていた。絵梨は最近露里にも力がついてきたことを認められ、
忙しくしていたのだ。
トキオは絵梨と一緒に仕事が出来るかずきを羨ましがり、自分も女の格好をしようかなと言い出し、かずきは呆れ顔。
そこへ、雑誌の編集部の者だという西村と言う男が二人を迎えにやってくる。
いつもなら村崎が来るのにと不思議に思うが、急用で来られなくなったと言う男の言葉を信じ二人は車内へ。
だがトキオは男の車のナンバーが横浜ナンバーなのに気づく。
今日の仕事の雑誌の編集部があるのは品川。会社の車で迎えに来たのなら当然品川ナンバーのはず…。
西村は二人を乗せると猛スピードで車を発進させ、それと入れ違いに、来られなくなったはずの村崎が。
男が二人を連れ去る目的だったと気づいたトキオは村崎にそのことを話す。
村崎はそこにいながら何やってたのとトキオを叱るが、トキオの男が雑誌の撮影のこと、
村崎のことも知っていたという話に、内部事情に詳しい者の犯行かと思う。
幸い、トキオが車のナンバーを覚えていたので、その線からあたってみようということに。

一方二人は、車内で西村がポットに入れて持ってきたジュースを飲んですっかりくつろいでいた。
ところがジュースを飲んで間もなく、二人は強烈な眠気に襲われる。
かずきがジュースに睡眠薬が入ってたのだと気づいたときにはもう遅く、二人は眠ってしまった。
気がつくとそこは見知らぬ家の中。
まだ眠っている絵梨も、目を覚まして誘拐されたことをかずきから説明されパニックに。
どうしたら帰してもらえるのと尋ねると、西村はとりあえず明日のクリスマスイブまで一緒にいてくれたら考えると
不気味な笑みを浮かべるだけ。
かずきのPHSも外に捨てられてしまい、逃げようとしても幹線道路まで10kmあるから無駄だと告げられる。
どうすればいいのかと思いつつ、かずきは男として絵梨を守らなきゃと思うのだった。



477 名前:少女少年II KAZUKI 投稿日:04/07/29 23:57 ID:???
西村が別室に行き、かずきは絵梨を必死で励ますが、絵梨はきっとお母さん心配してると泣きじゃくるばかり。
絵梨ははっとし、お母さんがいないのにごめんねと謝るが、かずきは気にしないと言う。
「…お母さん、生き別れって言ってたよね。どんな人だったか覚えてる…?」
そう聞かれ、母親の話を始めるかずき。
話を聞いた絵梨はもしかしてお母さんって大空遥? と聞き、かずきは何でわかったのかと驚く。絵梨は前から、
もしかしたらそうではないかと思っていたらしい。それに遥も、かずきのことは特別そうに見ていたと言われ、
胸が震えるかずき。だがきっと遥は自分の事なんか心配していないだろうとかずきは笑って言う。

夜になり、西村が寝た隙にこっそり抜け出したかずきは、捨てられたPHSをなんとか探し出し、村崎に電話をかけようとする。
ところがそこに西村が現れ、ついにPHSを踏み壊されてしまった。
「もう帰さないよ。かずきちゃん」
心の中で父と母に助けを求めるかずき。その時、警察がトキオと村崎と共にやってきた。
かずきのPHSの現在位置を知らせる機能で居場所がわかったのだ。
ところが眠っていた絵梨が起き出して来てしまい、西村に人質に取られてしまう。
かずきは警察のこっちに来なさいという言葉を無視し、絵梨の代わりに俺をタテにしろと西村に詰め寄る。
女の子が俺だなんて…と言う西村にかずきは「俺は男だ!!」と言い放ち、驚いた隙をついて急所に一撃を食らわせ絵梨を救出。
西村も警官に取り押さえられ、無事事件は解決した。
両親にすがって泣く絵梨を複雑な思いで見つめるかずき。するとそこに父とマユカ、そして…遥が現れる。
それまでの冷たい態度が嘘のようにかずきを思いきり抱きしめ「…無事でよかった…!」と涙を流す遥に、かずきの目にも涙が。
その時、一斉にカメラのフラッシュが二人に向けられた。
どうやら追いかけてきたマスコミがかずきの「俺は男」発言を聞いていたらしい。
さらに、遥は生番組を放り出してここに駆けつけてきたため、二人の間に何か関係があるのではと問いただしてくる。
トキオとマユカはレポーター達を止めようとするが、遥は二人を制すると前に進み出た。
「…わかりました。今ここで全部お話します。一葵は…私の"息子"です」



486 名前:少女少年II KAZUKI 投稿日:04/07/31 23:09 ID:???
自分の子であることも、男だということもあっさり認めた遥に驚く一葵。
レポーター達はダブルスクープだと色めき立つ。
レポーターの一人にどうして女の子のふりをしてたのかと尋ねられ、一葵は正直に母さんに会いたいと思ったからと答える。
それを聞いて「かずきちゃんがここまで来れたのは大空さんのおかげというわけですね」とレポーターは言うが、
遥は全てはこの子の実力で、私はこの子に何もしていないと強く否定する。
オーディションで会えた時も、嬉しさで胸がいっぱいになるのを抑えて、あえて突き放したのだと。
親子であることがわかればマスコミに心無いことを書きたてられ、一葵が傷つくかもしれない。
元々一葵の存在を隠していたのも、彼とその父親に迷惑を掛けたくなかったから。だが一葵は、自分の前に現れた。
それならば「大空遥の子」ではなく「一人の役者」として勝負をしてもらおうと思い、全てを隠していたのだと。
「皆さんも一葵の実力はよくご存知でしょう。だって一葵はこの半年間、立派に"女"を演じきったじゃないですか」
遥のその言葉に、考えてみれば男だとは思わなかったとざわめく報道陣。
正体を知っていたマユカと絵梨でさえ、本人から教えられるまでは気づかなかったのだ。
「これでお分かりいただけたでしょう? ですからどうかこの子を…今までどおりこれからも、よろしくお願いします!」
そう言って深々と頭を下げる遥に驚く一同。いつしか皆の間から、拍手が沸き起こっていた。

その後、東京に戻ってから正式に記者会見が開かれ、その後も様々な取材が続き、家に帰る間もなく数日が過ぎる。
だがその間も、一葵の実の父親については一度も触れられることはなかった。

それらが一段落つき、一葵は遥と露里と共に食事をすることに。
二人が知り合いだと知り、不思議がる一葵に遥は本当の父親について話し始める。
「あなたの本当のお父さんは露里さんといって…、この人の弟さんなのよ」
つまり露里は一葵の伯父。かずきが男だと言うことも初めから知っていたのだ。
黙ってて悪かったねと謝る露里。そして二人は、詳しいいきさつを話し始める。



487 名前:少女少年II KAZUKI 投稿日:04/07/31 23:13 ID:???
露里の紹介で彼の弟と知り合い、交際を始めた遥。
だが彼は事故で亡くなり、そのショックと過労から遥は倒れ、その時に一葵を妊娠していることが判明する。
彼は芸能界とは何の関係もない人間。知られれば子供はもちろん、彼もスキャンダルに巻き込まれることは目に見えていた。
それでも愛する人の忘れ形見を産みたかった遥は密かに出産し、その存在を隠すために当時マネージャーであった、
一葵の育ての父に託したのだ。

遥はこれまで存在を隠してきたことを一葵に謝り、これからは一緒に暮らさないかと話す。
だが、一葵は親子は形じゃないと言い、母さんとは離れてても親子の絆を感じるし、
血が繋がってなくたって本当の親子に負けない、強い絆もあると話し、それを断る。

父が待つアパートに帰る一葵。一葵が遥と暮らすことを選んだと思っていた父は驚き、何で戻ってきたんだと尋ねる。
「だって、ここは俺の家じゃん…!」
父は泣きながら、一葵を思い切り抱きしめた。

その後も子役として、仕事を続ける一葵。その日はマユカとのドラマ撮影の仕事だった。
マユカは一葵は大空遥の才能を受け継いでるんだからやっぱり不公平だと愚痴るが、
一葵はマユカだって最近うまくなってるじゃんと励まし、マユカは真っ赤に。
露里はそれを見て、確かにマユカはうまくなったと思いつつ、一葵には周囲にいい影響を与える才能もあるのかもしれないと思う。

そして4月。中学生になった一葵は初めて男子の制服を着て学校に行く。
「かっこいいー」「似合うじゃん」と一葵をはやし立てる絵梨とトキオ。
そしてマユカは、一葵の横でそっと頬を赤らめていた。

新しいドラマが始まる――。


少女少年II KAZUKI編 終わり。



489 名前:少女少年III YUZUKI 投稿日:04/08/01 00:52 ID:???
橘柚季(たちばな・ゆずき)は四国のとある小さな島に住む小学六年生の男の子。
三人兄弟の末っ子だが、あまりにも女っぽい声と顔立ちから、寝ている間に化粧をされたり、
無理やり女装をさせられたりと、毎日のように二人の兄達からセクハラまがいのいじめを受ける日々を送っていた。
そのため柚季はいつしか、この島から出たいと強く願うようになる。
そんな彼の夢は、日曜夜九時からやっているオーディション番組に合格し、アイドルになって東京へ出ること。
話を聞いた幼なじみで、柚季以外の唯一の六年生の佐倉ちよ子は、こんな田舎の子がデビューできるわけないじゃんと言うが、柚季は本気だった。
柚季はオーディション用紙を取り寄せ応募し、見事合格。二次審査のために憧れの東京に行くことに。

会場に着き、人の多さに驚く柚季。
番号に従って行った場所に自分以外に女がいないことを不思議に思っていると、いきなり誰かがぶつかってくる。
ショートカットの気の強そうなその女の子に「どこ見てんのよ! どうせ田舎から出てきたおのぼりさんでしょ!」と
図星を突かれむっとする柚季にさらに別の女の子が「何番?」と話しかけてきた。
女の子は番号が近いことを知り、「一緒に並ぼ!」と柚季をその子から離す。
その子は桃園ユリと言い、タレントスクールに通っているのだという。
柚季はうらやましがり、普段は海に向かって歌っているだけだと話すとユリは「面白ーい」と笑顔に。
するとまた先程の女の子が「うるさいわね!」と注意してくる。柚季はこっそり、あかんべーをするのだった。

二次審査は歌唱力の審査。自分で歌いたい曲のCDを持っていき、それを歌うのだ。
だがこの会場のステージの上で歌わされると知り、柚季は驚く。
おまけに始まってみれば皆上手で、あの嫌味な子――梅咲文華(うめざき・あやか)でさえ、ものすごく歌が上手い。
まったくのど素人なのにと緊張する柚季だが、ユリも震えている。
柚季はユリを励まし、ユリはお礼を言ってステージに向かう。
それを見た文華はまた「ばっかじゃないの、敵に塩送るようなマネして…!」と嫌味を言い、再び柚季は腹を立てる。



490 名前:少女少年III YUZUKI 投稿日:04/08/01 01:00 ID:???
ついに柚季の番が来た。だがこのままではとても他の子に太刀打ちできそうにない。
その時ふと、以前ちよ子に声が高いから女の子の歌のほうが合ってると言われたことを思い出し、
急遽ユリが持っていた白川みずきの「天使の予感」のCDを借り、それを歌うことに。
そして結果は…合格。他にもユリと文華が合格し、オーディションは終了。
そこに今回の企画のプロデューサーである村崎ツトムが現れ、女の子三人のユニットでデビューさせるつもりだと説明。
その言葉で、柚季は自分が女と間違われているらしいことを知り、パニックになる。

別室に連れて行かれ、改めてプロフィールを書かされる柚季。
だが性別を記入するところで、柚季は本当は男かを告げるべきかで悩んでいた。
柚季は村崎から新学期からは東京の学校に転校させるつもりだと告げられ、気持ちが揺らぐ。
さらに東京では村崎の家に住み込みだと聞かされ、柚季は結局女で通して、東京で暮らすことを選ぶ。

家に帰った柚季から女に間違われて通ったと聞かされた兄達は大爆笑。
だが柚季が何で女に間違われたんだろうなあと不思議がるのを見て「すまん…」と謝る。
実は兄達が、偶然柚季のオーディション用紙を見つけ、軽いイタズラのつもりで性別欄の○を「女」に書き直したのだ。
柚季は怒るが、そのおかげでオーディションに受かったようなものだと思うと責めることも出来ない。
女としてやってくつもりだからこれ以上邪魔するなと言うと兄達はまたもや爆笑。
両親は悲しんだが、何とかデビューを許してくれた。

東京行き前日。ちよ子にそのことを告げる柚季。
柚季はこれから東京だと思うとわくわくすると語り、東京で見たことをあれこれ話すがちよ子は急に立ち上がり、
「さっさと行っちゃえ! ばか!」と走り去っていってしまう。
東京行きの高速バス乗り場では兄と両親、友人達が見送ってくれるが、そこにちよ子の姿はない。
あんな別れ方したくなかったなと思いつつバスに乗る柚季。
だがバスが発車したその時、後ろの方にちよ子の姿が見えた。慌てて後ろに行き、ちよ子を追う柚季。
「ちよ子っ…! 俺がんばるからっ…。きっと…」
やがてちよ子は見えなくなり、柚季は何故か胸が苦しくてたまらなかった。



512 名前:少女少年III YUZUKI 投稿日:04/08/05 23:34 ID:???
東京に着いた柚季は早速村崎の家に。
そこにはユリと文華もいて、デビューまでに結束を固める意味合いを兼ねて三人で暮らすのだと村崎は説明する。
幸い部屋は別だが、柚季は用心のため男とバレそうな物は全て捨てようと、荷物の整理を始める。
すると「from兄貴ーず」と書かれた包みが出てきて、その中には女物の下着が。
柚季は一瞬頭に血が上るが、女のふりをしなければならない今、好都合な物だと気づき兄達に感謝する。
その直後、ユリが眠れないからと部屋を訪ねてきた。
一緒に寝てもいい? と頼まれ柚季はしぶしぶ承諾。同じベッドで寝ることになり、手まで繋がれ柚季の緊張はピークに。
ふと柚季は、ユリが震えていることに気づく。ユリはこれからうまくやっていけるかが不安なのだ。
柚季はユリを励まし、やがて話は故郷の島のことに。
同じ学年の子は自分の他にもう一人しかいないと話すとユリはきっと寂しいよねと言い、
柚季は島を出る前のちよ子の様子を思い出し、そうだったのかもしれないと思う。

翌日。
ユリがぴったりくっついて眠っていたせいでほとんど寝られなかった柚季は、初めてレッスンのためスタジオに行く。
文華は、柚季がほとんどレッスンを受けたこともないと知り驚くが、そうとは思えない柚季の歌唱力と、
心なしか村崎の扱いがいいことに嫉妬を覚える。

初日からぶっ続けのレッスンで柚季はくたくただったが、夕べのユリの言葉を思い出しちよ子に電話をかける。
柚季はちよ子に謝り、そしてまだ自分が女としてやっていくことを告げていなかったことを思い出しそれも話す。
だがその会話を文華に聞かれてしまい「どういうことか説明してもらおうじゃないの」と問い詰められる。
ついには裸になるのと実家の電話番号を教えるのとどっちがいいかと聞かれ、しぶしぶ柚季は番号を教える。
文華が電話をすると、出たのは兄達だった。単刀直入に柚季は男か女かを尋ねる文華に不安になるが、
兄達は「柚季は正真正銘、僕達のかわいいい妹ですよ」と答え柚季は一安心。
それでも文華は身内だから口裏を合わせている可能性もあるし、まだ納得していないと言う。



513 名前:少女少年III YUZUKI 投稿日:04/08/05 23:39 ID:???
追求は収まったが、それからもレッスンのたびに文華に目の敵にされ柚季は困り果てていた。
ちよ子に相談すると服装や言葉遣いをもう少し女っぽくするように気をつけたほうがいいと言われる。
しかし言葉遣いはともかく、服は新しく買うお金がない。
だがそれから間もなく、兄達から届いた宅配便には女物の服と下着、そして「がんば!」と書かれた手紙が
入っていて、柚季は改めて二人に感謝する。

翌日、柚季は初めてスカートをはいてスタジオに。そこには三人のサイズを測りに来たスタイリスト達がいた。
だが柚季が男かもしれないと思っている文華は裸になることを渋る。
何度も促されようやく脱いだものの、計り終わった瞬間、耐え切れなくなりスタジオを飛び出してしまう。
慌てて後を追いかけた柚季は、ついに自分は男だと文華に白状し、裸は見てないと弁解する。

デビューする事になったいきさつを話す柚季。文華はいい加減な動機で応募したとあきれるが、
一方で相当な実力があるのかもしれないと思う。柚季はさらに話を続け、最初は確かに東京に出たいだけだったが、
実際に来てみて周りの人たちのレベルに圧倒され、自分が井の中の蛙だと気づいた。
だから、ここまで来たからには自分がどこまで通用するのかやってみたくなったのだと話す。
文華は思わず柚季に見とれ、そういうことならつきあうと言うのだった。
だが代わりに柚季は男だとバレないように文華に徹底的に特訓を受けることに。

それから三週間後、柚季達のオーディションがTVで放送され、夏休みにあわせてのCDデビューも決まった。
めまぐるしく日々は過ぎ、ついに三人は「Girlish(ガーリッシュ)」というユニット名でデビュー。
プロモーションのための全国ツアーも始まった。
ツアーは四国にも行くことになり、柚季はちよ子が来てくれるかなと胸を躍らせるが、客席を見て島の人が全員
応援に来ていることに驚く。だが島の人たちは当然、柚季が男だと知っている。
もし皆が下手に野次を飛ばして、自分が男だとバレてしまったら……柚季の胸に一気に不安が広がった。



30 名前:少女少年III YUZUKI 投稿日:04/08/20 00:17 ID:???
不安を感じつつも、柚季はステージに上がる。
島の皆は意外なほど大人しく、それどころか応援のための垂れ幕まで作っていた。それを見て柚季は胸がいっぱいになる。

終了後、ちよ子と兄二人が控え室を訪ねてきた。久しぶりにちよ子と二人きりになるが、柚季は何を話していいのか分からずどうもぎこちない。
そこにちょっかいを出してきた兄に柚季は怒るが、ちよ子はようやく「いつもの柚季だ」と笑顔を見せる。
柚季は兄達の話から、ちよ子が自分が男だとばれないよう、島の人達にお願いして回っていたことを知る。
そこへユリが現れ、思わず今の話を聞かれたかと柚季は驚く。そんな心配をよそに、ユリは柚季と二人で話したいと言うしぐさを見せる。
二人になると、ユリは急に月経が来たので困っている、初めてだからよくわからないし、ゆずきちゃんしか頼れる人がいないと泣き出す。
柚季は慌ててちよ子に相談するが、彼女も困惑するばかり。結局柚季はユリにちよ子を紹介し、二人で生理用品を買いに行くことになった。

長い買い物に柚季がいらだっていると、二人が戻ってきた。
ユリちゃんみたいにかわいくなりたいと言ったちよ子に、ユリがメイクをしてあげ、髪型も変えていたのだ。
だが柚季はイライラも手伝ってちよ子を見るなり「全然似合ってない! そんなの…、ちっともちよ子らしくないよ…!」と怒鳴ってしまう。
ちよ子はショックで泣きながら走り去り、ユリも「ひどい!」と怒る。
そして柚季もちよ子を傷つけてしまったことにショックを受ける。

結局ちよ子に謝る機会がないまま、柚季は東京に戻ってきた。
だが柚季にしてみれば、正直に似合ってないと思ったから親切で言ったつもりなのに、何故あんなに傷ついたのかがわからない。
文華に相談すると、彼女は女心がわかってないとため息をつき、デビュー曲の意味をちゃんとわかって歌ってるのかと言い出す。
文華に促され歌ってみた柚季は、ようやくその歌が「かわいくなりたい女の子の気持ちを歌った歌」だと気づき、
ひどいことを言ったと反省する。



32 名前:少女少年III YUZUKI 投稿日:04/08/20 00:22 ID:???
意気消沈した柚季に文華が電話して男らしく謝るよう勧めていると、もう寝たはずのユリが起き出して来た。
幸い話は聞かれていなかったらしく、とりあえず二人は安心して部屋に戻る。だがユリは二人の後姿を険しい目で見ていた。

それからも仕事が忙しく、ちよ子に謝る時間が出来ないまま月日が過ぎていく。
その日は学年誌の表紙の撮影とインタビューだった。
インタビュー終了後、撮影まで少し時間があるため休憩することになったが、
文華はトイレで柚季にインタビューのダメ出しを始める。
そこにユリが来たため、二人は慌ててごまかし、トイレを出て行く。二人を見るユリの目はさらに険しくなっていた。

控え室に戻ると、いきなりユリが服のファスナーを下ろして欲しいと柚季に言い出す。
戸惑う柚季に変わって文華がやろうとしても「ゆずきちゃん、やって!」と言い張る。
様子がおかしいと思うとユリは涙を流し、柚季は文華とちよ子には本音で接しているのに
いつも自分に対してはぎこちない、自分だけのけ者みたいで寂しいと言い、柚季は胸が痛む。
すると文華は誤解を解くためにといきなり柚季は男なのだとユリに話してしまう。
それを聞いたユリはこれまで何も知らずに自分が柚季と添い寝をしたり月経のことを相談してしまったことを
思い出し、ショックのあまり「うそつき!」と柚季をののしり「あたしだけ知らなかったなんて…、
みんなあたしをだましてたのね!」と怒りをあらわにする。
文華がなだめようとしてもユリは効く耳を持たずついには
「ゆずきちゃんなんて大嫌い! 絶対許さないから…!!」と言い放ち泣き出してしまった。
そんなユリに文華は柚季を嫌うのは勝手だが、柚季が男だとばれたらユニットそのものがなくなる可能性がある。
だからこのことは誰にも内緒にしておくようにと言うのだった。



33 名前:少女少年III YUZUKI 投稿日:04/08/20 00:26 ID:???
それから間もなく三人は村崎から三人のうちの一人をソロデビューさせると告げられる。
とりあえず誰がデビューするかはセカンドシングルのレコーディングと振り付けのレッスンで決めると言うが、
柚季はもしもこれがきっかけでGirlish解散などと言うことになったら、それこそ秘密を守る理由がなくなってしまうと慌てる。
だがここまできたら後には引けないと必死にレッスンを頑張ることにするのだった。

表紙を飾った学年誌が発売された頃、町に出かけたユリは女の子達がGirlishの話をしているのを聞く。
文華は「かっこいい」柚季は「歌がうまくていい」と言う彼女達だが、
ユリに対しては「名前なんだっけ?」「目立たない」「かわいいんだけどそれだけ」と辛辣な評価だった。
そのせいもあるのか、ある日のレッスンでユリは動きが硬いと村崎に注意を受ける。
何も事情を知らない村崎は悩みがあるなら他の仲間に相談するよう言うが、そんなことが出来るわけない。
さらに追い討ちをかけるように、村崎は柚季のソロデビューが正式に決まったと告げる。
どうしてと尋ねるユリに村崎は柚季には今までのアイドルにはない何か、一言で言えば強烈な個性が柚季にはあると言う。
その言葉にユリは危なくそれは柚季が男の子だからと言いそうになってしまうが、
文華がごまかしたおかげで何とか気づかれなかった。
Girlishは今までどおり活動すると聞き、柚季は安心するがユリは「もうゆずきちゃんと同じ部屋に
泊まりたくありません!」と言い出し、村崎の家に戻るなり荷物をまとめて
「家に帰る! ユニットももうやめる! ゆずきちゃんといっしょにいたくないの!」と出て行ってしまう。
次の日、文華がユリの家に電話をかけるが、母親からはユリは村崎のところにいるはずだと言う答えが返ってきた。
家に帰ると言ってたのに、今一体どこに――? 二人にはまるで見当がつかなかった。

その頃、ちよ子が庭で水撒きをしていると、突然ユリが訪ねて来る。
「どうしたの?」と声をかけると、ユリはちよ子に抱きつき泣き出した。



53 名前:少女少年III YUZUKI 投稿日:04/08/27 23:16 ID:???
昼を過ぎても、ユリからの連絡は来なかった。
部屋に戻った二人は改めてユリが行きそうな場所はないかと考えるが、どちらも心当たりはない。
その時、柚季は気づく。
ユリは自分を本当の女の子だと信じて何でも相談してくれてたのに、自分は正体を隠すことに精一杯で、
ユリを無意識に避けて、深く聞こうとしていなかったかもしれない。
そのくせ文華には、男だとバレていることもあって何でも相談して…ユリの気持ちを考えて、柚季は胸が痛んだ。

ちよ子はユリと海辺で話をしていた。
ユリは柚季が自分に本当のことを打ち明けてくれなかったことを気にして「友達失格なのかな…」とつぶやく。
ユリは昔から人によく見られようと気を使い、猫をかぶる癖があり、それが空回りするせいか友達を作るのも下手で、
柚季とちよ子のように遠慮しないで話せる関係がうらやましいと話す。
するとちよ子は以前ユリにメイクをしてもらった時のことを引き合いに出し、
きついことを言われたけど、あの一言で柚季の言うとおりだと気づいたのだと言い、
それと同じで猫をかぶっているユリはユリらしくないことがわかってしまうのではないかと話す。
「もっと力を抜いて…今の"本当の自分"を出してもいいんじゃない? ユリちゃんは、ユリちゃんなんだから!」
そこへ、島の子供達がユリの姿を見つけて押し寄せてきた。
ちよ子は歌ってと騒ぐ彼等を仕事で来てるんじゃないからと追い返そうとするが、
ユリは人前で歌うのは好きだからと言い、歌い始める。

ユリは歌いながら思う。
本当は人に注目されるのが大好きだけど、本当の自分を見せたとき受け入れてもらえなくなるのが怖くて、
ずっと上手く歌おう正しく踊ろうと考えてばかりいた。
だからこそ気取ったところのない柚季の歌とダンスが信じられなくて、怖くて…そして、羨ましかった。
(…でも本当の自分を隠してるのに、本当の友達も仲間もファンも作れるわけないよね…!)
その時、ユリには自分の前で踊っている柚季の姿が見えた気がした。
(本当の私は…、やっぱりガーリッシュのユリでいたい――)



54 名前:少女少年III YUZUKI 投稿日:04/08/27 23:20 ID:???
その夜、兄達からユリが来ていると電話をもらった柚季は、すぐさま四国に向かう高速バスに乗りユリを迎えに行く。
途中ファンに話しかけられて写真撮影に応じるが、こんなときでも笑える自分に柚季は自己嫌悪を感じる。

ちよ子の家に泊まることになったユリは、柚季の子供の頃の写真を見て楽しく話す。
応援しなくちゃと明るく笑うちよ子にユリはあたしだったら泣いて引き止めちゃうと言う。
その言葉に、ちよ子も「ほんとはあたしだって引き止めたかったよ」と本音を漏らす。
夜寝床に入ったちよ子は考える。帰ってきてほしいのも事実だが、一方で柚季に東京で頑張ってほしいとも思っている。
一体自分の本当の気持ちはどっちなのか……確かなのは、自分が柚季を好きだということ――。

翌朝、柚季は島に到着しちよ子の家を訪ねるが、あれきり謝っていないこともありなんとなく入りづらい。
だが柚季を見つけたちよ子はいつもと変わらない調子で声をかけてきて、柚季はほっとする。そこへ、ユリが出てきた。
「ごめんユリちゃん! 一緒に東京に帰ろう!」
柚季が言うと、ユリは柚季にしがみつき涙を流す。柚季はほっとするが、ちよ子は複雑な顔をしていた。
二人は高速バスを待ち、ちよ子も見送りに来てくれた。田舎に戻るのもほっとするからちょくちょく戻ろうかなと
つぶやく柚季に、ちよ子は気持ちを押し殺して「何甘えたこと言ってんのよ!」と言い、バスに乗る二人を笑顔で見送る。
去っていくバスを見ながらちよ子は泣いた。

ユリが戻り、セカンドシングルも無事発売されGirlishの二度目の全国ツアーが始まる。
柚季のソロのPRも兼ねたものだったが、ユリの人気が急上昇していて押され気味かもと柚季は思う。
一方で、柚季にはもう一つ気になることもあった。それは、四国に迎えに行った時ユリが帰りのバスの中で言った言葉だ。
「ちよ子ちゃんに言われて決めたんだ。これからは"本当の自分"に素直になるって…!」
本当の自分は何なのか、ファンは皆本当の自分を見てくれているのか…本当の自分を知っているのは――。
柚季の脳裏に、ちよ子の顔が浮かんだ。



55 名前:少女少年III YUZUKI 投稿日:04/08/27 23:25 ID:???
ツアーは札幌に行き、柚季のソロ曲「True Girl」も大きな反響を呼んでいた。
三人と村崎は打ち上げで蟹鍋の店に入ることになったが、ふとちよ子のことが気になった柚季は
二人と村崎を先に行かせ、電話をしてみるがいつまで経っても誰も出ない。
そこで兄達に電話を掛けてみると、ちよ子が入院したと知らされる。
盲腸だったのが土日であったため島の病院はどこもやっておらず、処置が遅れ腹膜炎になりかけているらしいのだ。
柚季は動揺するが、兄達はちよ子が柚季には言わないでほしいと言っていたことを告げ、気にしないで仕事をしろと電話を切ってしまう。
柚季はすぐさま村崎に事情を話し、四国に帰らせてほしいと頼む。
だが村崎からはプロならその辺のことは割り切ってもらわないとと冷たい返事が返ってくる。
ユリと文華も頼むが年明けには二人もソロデビューすることが決まっている大事な時期に、
そんな甘えは許されないとにべもない。
プロとしての自覚を持ってほしいと言われ、柚季は思う。
友達が死ぬかもしれないときに、笑って仕事をしなければならないのがプロだというのなら、自分は――。

翌日。
公演が終わると柚季は即座に兄達に電話をかけ、手術は成功したと聞き一安心する。
が、ちよ子がうわ言で自分の名を呼んでいたと聞き、ついに堪えきれなくなり泣き出してしまう。
(こんなの…、もう嫌だ! こんなの本当の俺じゃない…!)

全国ツアーもようやく、ラストの東京に来た。だが柚季は最初から元気がない。
ましてやソロ曲の内容は「自分に素直になれない女の子」の歌だ。
柚季は歌いながら次第に言葉を詰まらせ、ついに泣き出して演奏を中断させてしまった。
観客がざわめく中、柚季は言った。
「ごめんなさい…。私…、歌手をやめます」
会場が大騒ぎになる中、柚季はちよ子のことを話し、自分は大切な人がピンチならその人のそばにいたい。
それがプロ失格だというのなら自分は歌手をやめると改めて宣言する。
「立派なプロになるよりも、本当の自分でいたいから――。勝手なこと言ってごめんなさい…」
そして「やめないで」コールが響く中、柚季はステージを降りた。



56 名前:少女少年III YUZUKI 投稿日:04/08/27 23:30 ID:???
舞台裏で村崎は柚季を必死で説得するが、決意は固かった。
そして「そもそもスタートからして間違ってたし」と、ようやく柚季は自分が男であることを明かす。
村崎は「信じたくないよ~!」と絶叫するが、一方でオーディションでのびのび歌っていたのが
柚季の魅力だったのに、最近はそれが失われていくように感じた。
それは、男だということ=本当の自分を隠していたからなのかもしれないと思う。

そして柚季はGirlishを正式に引退し、四国へと帰っていった。
(俺は負けて帰るわけじゃない。東京に行って初めて、自分が本当に輝ける場所を見つけたんだ――)

島に帰った柚季を、皆とちよ子が迎えてくれる。その手には最初のツアーのときに掲げていた垂れ幕があった。
「おかえりゆずき!」
ちよ子は笑顔で柚季を迎えた。

しばらくして、ユリと文華からビデオレターが届く。
内容は文華とユリのソロデビューが二月に決まったこと。CMの出演も決定したこと。
未だに村崎が柚季に未練たらたらなこと、そして、Girlishの新メンバーを決めるオーディションが今度行われることを伝えていた。

いつものように海辺で話すちよ子と柚季。
「そばにいてやれなくてごめんな」という柚季に気にしてないと言うちよ子だが、柚季は自分が悔しいと言う。
「だからこれからは、ずっとお前のそばにいる。何かあったらすぐ飛んでいける距離にいるよ」
「え…」
「だから、お前もずっと俺のそばにいろよなっ!」
お互いに真っ赤になってそっぽを向く二人。だが柚季は何とか勇気を振り絞り言葉を続ける。
「俺が、ちよ子のそばにいたいの! 俺、お前が好き…だから!」
感激したちよ子は、柚季にキスをする。
だがその場面を兄達にばっちりビデオにとられてしまい、文華とユリに送るビデオレターに入れられてしまうのだった…。

少女少年III YUZUKI編 終わり



267 名前:少女少年IV TSUGUMI 投稿日:04/09/25 23:47:02 ID:???
休日の昼。小学生ぐらいの格好いい少年と、ロングヘアの可愛い少女の二人連れが道行く人々の注目を集めていた。
だが実はこの二人男同士。
少女のほうは少年――大嵩雪火(おおたか・せっか)の親友、白原充(しろはら・みつる)の女装した姿だった。
充は女の子の方が得だからと、度々女装しては女性限定の特典をフル活用しているのだ。
その日も映画館のレディースデー料金目当てに女装をし、ファーストフード店でもレディースセットを頼む充に、
雪火はあきれ顔。
トイレに行った充がこの格好で男の方に入るのも…と迷っていると、サングラスをかけた怪しげな男が声をかけてくる。
「援交か?」と警戒した充は逃げ出すが転んでしまい、カツラが脱げてしまった。
男だとばれてしまうと慌てて充は店を飛び出し、生徒手帳を落としてしまう。

翌日、充は学校に着いて初めて生徒手帳を落としたことに気づく。
そこに、人気アイドルの逢見藍沙(おうみ・あいさ)が登校してきた。
藍沙は世間のイメージとは裏腹に、学校では愛想のない、暗い三つ編み眼鏡っ子で、
ほとんどのクラスメイトが彼女を快く思っておらず、充もその例外ではなかった。

放課後、公園で雪火と話していると、昨日のサングラスの男が現れた。落とした生徒手帳で充の学校を探したのだ。
逃げようとすると男は芸能プロダクションの村崎と名乗り、充をスカウトしたいと言い出す。
だが村崎の事務所が女性タレント専門だと聞き、まさかと思っていると、予想通り村崎は女装して女の子として
芸能界でやって行く気はないかと言ってくる。
渋る充に、何なら初めから男だと明かす女装タレントでもいいと言う村崎。
どっちにしろばれたら格好悪いと言う充だが、村崎のその気になれば億単位で稼げるのにの言葉にすっかり目が眩み、タレントになることを決めるのだった。



268 名前:少女少年IV TSUGUMI 投稿日:04/09/25 23:48:43 ID:???
「白鳥つぐみ」という名でアイスクリームのCMのオーディションを受けることになった充は会場へ。
だがCMで共演する&審査員をするのが藍沙だと知り、つぐみはばれないかと戦々恐々とするが、
藍沙は挨拶をしたつぐみにそっぽを向く。
それを見た他の子達は「性格悪そう」「人気あるからって調子乗ってる」と藍沙の悪口を言う。

一次審査のアイスクリームを食べる審査でつぐみは好印象を残したが、次の二次審査では
藍沙に対する印象を述べるように言われる。
審査が始まると、他の子達は先程の態度が嘘のように藍沙を褒めちぎり、つぐみは女は怖いと思うが、
自分も普段、学校で藍沙を快く思ってないことに気づき、俺もあいつらと同じだと、思い切った行動に出る。
「あたしははっきり言って、藍沙のことをあまりよく思ってなかったです!」
審査員達が絶句する中、つぐみは続ける。
「でも…よく考えたら、あたしは藍沙のこと何にも知らないわけで…、そういうごく一面だけ見て人を判断するのは
よくないなって今思って…。だから、藍沙のいろんな面を知ることが出来たら、藍沙に対する印象もぜんぜん違って
くるんじゃないかって…」
審査員の一人が「決まりだな」とつぶやいた。

それから程なくして、オーディションに合格したという知らせが来た。だが、藍沙のマネージャーがオーディションで
つぐみが言ったことを受けて、つぐみのホテルの部屋を藍沙と一緒にしてしまったのだ。
それ以来、充は学校で藍沙の姿を見るたびに妙に意識するようになってしまう。
それを見た雪火は向こうは充がつぐみだとは微塵も思っていないのだから、いつも女装している通り普通にしていれば
いいとアドバイスをする。だが充はそれ以前に、女の子と二日間も同じ部屋だということが気にかかっていた。

(続く)