【ドラクエ狩り】

Last-modified: 2022-07-24 (日) 14:27:29

概要

FC版のDQ2以降の発売時に、小中学生集団ズル休み、社会人の無断欠勤と並んで社会問題となった現象。
ソフトを買えなかった者が購入できた人たちからソフトを脅し取った事件、犯罪を指す。
 
同時期に発生した社会問題には【抱き合わせ販売】もある。

発生要因

当時、ファミリーコンピュータで使われていたROMカートリッジ(ROMカセットとも呼ぶ)は、その製造工程には手間がかかっていた。
また、このROMカートリッジの材料となる半導体が不足していたという理由も重なり、ドラクエシリーズのような人気ソフトは、発売日に購入希望者全員に行き渡ることはなかった。インターネットすら世に無かった時代なので、当然ダウンロードソフトなどもまだ存在していない。
 
多くの玩具店や百貨店などでは事前に予約券や整理券を配布する等の対応を取ったが、今と違ってこれらの予約は店舗がそれぞれ独自にやっているだけのものであり、予約の多さに応じて出荷数が増える等と言った事は特になかったため、発売日の混乱を避ける助けにはなっても、「全員に行き渡らない」事は全く解決されなかった。
 
また、開店と同時に先着順で購入できた店舗もあり、そのような店舗の前に前日晩から徹夜で並んだファンも多かった。
DQ4の発売日である1990年2月11日付の西日本新聞には「ドラクエ求め 1万人の行列」という見出しで次のような記事になった。

東京・池袋のディスカウントショップには、十日から長い列をつくり、十一日午前零時には池袋署調べで一万人を超えた。
福岡市中央区天神一丁目の博多大丸には、深夜までに十数人が並んだ。ほとんどが十~二十代の若者。
一番乗りは、長崎県西彼杵郡から来た無職少年(一九)。
「とにかくドラクエが好き。長崎は各店とも予約で既に売り切れていたので、七時間かけて福岡まで来ました」
と、開店が待ち切れない様子。
デパート側は「百三十本用意していますが、すぐ売り切れるのでは」と驚き、十一日の混乱を警戒するやら、追加発注を心配するやら。
一方、午後七時半に閉店した北九州市小倉北区京町のおもちゃ店前では、二十人ほどの子供たちが道端に座り込んだ。
(一部略)

なお、別の新聞ではDQ3発売直後、このソフトは「一部中学生の間でプレミアム付きの3万円前後で取引されている、という」と報じられた(今で言う「転売」というものだろう)。
 
現在では予約方法が充実したほか、大量生産しやすいメディア、またメディアすら必要としないダウンロード販売も増えてきたこと、近年のゲーム市場がじわじわと縮小していったことで、ユーザーはほぼ確実に欲しいソフトを発売日に手に入れることができるようになった。
良くも悪くも、かつての日本ゲーム文化の全盛期というものを伺い知ることができるだろう。

新聞報道された「ドラクエ狩り」

DQ3・DQ4発売直後の新聞では「ドラクエ狩り」がニュースになり、衆目を集めることとなった。
以下、実際に新聞で報道された事件の一部を列挙する。

DQ3

  • 千葉県松戸市で小学6年生2人組がDQ3を買って自転車で帰宅する途中、後ろから自転車で来た15歳ぐらいの少年2人に呼び止められ「カセットを持っているか。出さないとぶん殴るぞ」と脅され、ソフト2個を奪われた。
  • 宮崎市で中学2年生3人が補導された。3人は、DQ3を買って帰る同市内の別の中学2年生A君を約1キロ尾行し、1人がA君に声をかけ、別の1人が見張り役、残りの1人がA君の自転車の荷かごの中にあったソフトを抜き取り逃走した疑い。
  • 長野県岡谷市で中学3年生の男子生徒4人が恐喝容疑で補導された。4人は同市内の大型スーパーがDQ3購入のために配布した整理券を入手できなかったため、既に券をもらってスーパー近くにいた別の中学生から整理券3枚と現金1万円を脅し取った疑い。
  • 長野市で中学2年生の男子生徒が窃盗未遂容疑で補導された。同市内のファミコンソフト卸売店にDQ3を盗むために侵入するが在庫がなく、あきらめて店外に出たところを警備員に通報された。

DQ4

  • 長崎県佐世保市松川町でDQ4を買って帰宅中の中学1年生の男子生徒が、前から歩いてきた17、8歳ぐらいの少年にソフトをひったくられた。
  • 大阪府八尾市桜ヶ丘で、男子中学1年生が自転車に乗った高校生風の男2人に、買ったばかりのDQ4を奪い取られた。この日だけで計10件、12人が同様の被害に遭った。
  • このほか、埼玉県川口市、愛知県内で各3件、東京都で2件、京都府で1件の同種の事件が発生。犯人はいずれも中高生風の若者。