・DQモンスターズシリーズ
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キャラクター - モンスター - 職業 - 地名 - 呪文? - 特技? - アイテム - 音楽
概要
ドラゴンクエストモンスターズシリーズで3作目のオリジナル作品。
発売日は2003年(平成15年)3月29日。対応機種はゲームボーイアドバンス。
制作会社は【トーセ】、シナリオおよびゲームデザインは【石川文則】。【堀井雄二】は監修を務めた。
2003年4月1日から新会社【スクウェア・エニックス】に移行したため、ぎりぎり【エニックス】単独時代の最後のソフトとなった。
前作まではナンバリングが付いていたが、今作は初めて従来のナンバリングから外れた作品となり、そして次回作からは「ジョーカー」シリーズ3部作として独自に1からナンバリングが与えられていくことになる。
これまでのモンスターズシリーズとは違い、ストーリーを大きく重視したゲームになっている。【ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち】の幼少時の【キーファ】を主人公とした外伝としての要素が強い。
当時の公式サイトはFlashを使用していなかったこともあってか、2023年現在でもスクウェア・エニックスのサイト内に残されている。なお今作では、海外展開は行われていない。
シナリオ
世界設定
本作の舞台は【ドラゴンクエストII 悪霊の神々】の数百年後の世界で、「伝説の大陸」と呼ばれる地である。
【ドラゴンクエスト25thアニバーサリー 冒険の歴史書】をはじめとする公式書籍ではパラレルワールドとせず、DQ2の未来だと明言された。ただし、【ロトシリーズ】という範疇に本作が含まれることはない。
街とダンジョンはDQ2のときとほとんど同じであり、DQ2を遊んだことのあるプレイヤーは懐かしさを覚えるだろう。
しかし、国については【サマルトリア】と【デルコンダル】以外は全て滅びており、往時の栄光は見る影もない。
【ラダトーム】に至っては、【アレフガルド】ごと海底に沈んでいる。
残ったふたつの国についても、サマルトリアでは王朝交代が起こっている可能性があり、デルコンダルでは王制が廃止されて共和政が敷かれている。
【ローレシア】に至っては国があったことすら人々が憶えていないほど徹底的に壊滅している。
また、【ロトの子孫たち】については、世界が平和になったあとでどこかへ去ったということが明かされる。
ロトの血は「今は眠っている」とのことであり、エンディングでは「勇気をもって行動する者がいずれロトと呼ばれるようになるのです」と新たなるロトの勇者の誕生を予感させる詞が語られる。
本作のこのような世界設定についての評価は、DQ2のファンの間では賛否両論である。
一方で、「【ロト】とは何か」、「【勇者】とは何か」ということを外伝作品でありながら再定義しようと試みたり、後述する数多くの斬新なシステムの導入を試みたりした意欲作だといえよう。
ストーリー
ある日、キーファ(当時10歳)は【グランエスタード城】のバルコニーから飛び降りて外へ抜け出そうとしているところを父・【バーンズ王】に見つかってしまい、お仕置きされそうになって逃げだした。
彼の逃げ込んだ先は自分の部屋のタンスの中。すると、どこからともなく不思議な声が聞こえてきた。
声の主の名は、【幻魔王マガルギ】。彼女は窮屈な城を抜け出し、冒険してみないかとキーファに問う。
話が終わり、タンスから出たキーファの目の前にはふしぎな光る渦があった。
渦に飛びこんだキーファの目の前に広がっていたのは、デルコンダルの大地だった。
そこで両親の病気を治す方法を探しているという少年【ルイン】と出会い、ともに旅をすることに。
やがてふたりは、【ロトのオーブ】のことを知る。
ロトのオーブとは、4つすべて集めれば何でも願いごとがかなうという宝玉らしい。
少女【フォズ】と出会ったり、この時代のサマルトリア王国の王子【イクサス】などと出会ったりしながら、ロトのオーブを集めて復活の祭壇に捧げることが本作の目標として語られる。
システム
これまでのモンスターズシリーズからの大きな変更点が多々ある。
まず、モンスターの強化方法は【配合】に替わって【転身】が用いられている。
そして前作までとの最大の違いは、馬車を利用した【キャラバン編成】であり、DQ4~6に登場した【馬車】システムとは大きく異なる。
これにより、モンスターズ1・2で猛威を振るったばくれつけん、まじんぎり、くろいきり、マダンテなどの強力特技が徹底的に削除されたため、本作の最強呪文は【ギガデイン】になった。
ギガデインにとっては、DQ5以来の晴れ舞台である。
そのほかにも、移動する際に減っていき、歩く場所によって減り方が違う【食料】システムや、フィールドを移動していると戦闘以外の何かが起こる【フィールドイベント】、フィールドでは地形によって出現モンスターが異なる仕様など、他のDQと比べても斬新なシステムが非常に多く採用された。
しかし、
- モンスター数はシリーズ最少の200種類。前作のモンスターが多数リストラされている。
- モンスターの系統の分類が過去作と異なっている。
- モンスターを仲間にする方法がイベント加入のみになった影響で図鑑埋めがしにくい。「特定の系統のモンスター以外はパーティに入れない」といった【縛りプレイ】をしようものなら図鑑が殆ど埋まらなくなる。
- モンスターの出現場所が地方によって大きく変わるにも関わらず、移動で【ルーラ】や【トヘロス】が使えるのはゲームクリア後。【せいすい】もアイテムとしては存在しない。
- 【たびのしおり】が存在しない。
- 敵から得られる経験値が少なく、晩成型のモンスターを作ってしまうと後述の特技習得レベルの問題もあってかなりキツくなる。
【メタルスライム】は出現率自体はそこそこだがHPが5に引き上げられ倒しにくくなった上、経験値も前作までの3分の1になっている。 - 前作までとは異なり、ベースキャンプで留守番しているモンスターには一切経験値が入らない。
- キャラやアイテムに関する枠の制限が厳しい。
- 一度に仲間にできる人間キャラの数が少なく、全キャラを回収していると4章の途中で一杯になってしまう。しかも一部のキャラはクリアするまで別れることができない(別れられないキャラの中には中盤で戦力外になるものもいる)。
- 重さという仕様で仲間やキャラの編成に制限があるが、枠が極端に少ない。重いモンスターは晩成型のものが多くシナリオで使い辛い、人間キャラは大人と子供で重さが違うにも関わらず性能差がない等、重さと強さのバランスも悪い。
- アイテムを持てる個数が24個しかないのに、預けることのできないイベントアイテムで圧迫される。モンスターの心を持てる個数も30個と地味に少ない。
- 特技を覚えさせられる数も6つに減少している。
- シナリオの途中で仲間になる人間キャラクターは、クリア後はまるで戦力にならず、ただのモブキャラクターでそろえたほうが強くなる。
- 特技の灼熱と輝く息が削除され、【激しい炎】と【凍える吹雪】という中途半端な所で打ち止めとなっている。
- なお、内部データ上には灼熱と輝く息を始めとした今作で削除された特技の多くが残されている。威力や消費MPもちゃんと設定されており、エフェクトもGBA向けに作り直されている。
- 前作までとは異なり、転身してLv1になってもそれまで覚えた呪文や特技はそのまま引き継がれる仕様になった。それに合わせてか呪文や特技の習得・進化に必要なステータスが全体的に引き上げられているのだが、その度合いが明らかに過剰。
- 初歩的な回復呪文の【ホイミ】ですら、習得Lvが10とかなり遅い。
- 物理以外の攻撃呪文・特技は覚えた時点で既に(消費MPの割に)威力不足になっている場合が多い。これに前述の特技の習得枠減少や強力な特技削除も合わさり、最序盤からクリア後に至るまでひたすら打撃で殴るゲームになりがち。
- 補助・回復系も例外ではなく、ホイミの回復量を上回る威力の全体攻撃を使う雑魚や100近いダメージの痛恨の一撃を頻繁に出す雑魚が出てくる時期にもなって誰も【ベホイミ】を覚えていないということも。
- 一応、その次の章で最初からベホイミを覚えているモンスターが仲間になるが、仲間にするには10000G(【商人】を連れていないと厳しい額)で買う必要がある。
- 敵に【グループ】の概念が存在するが、同種の敵が「1匹+2匹+1匹」等のように別グループに分かれて出現することが多く、グループ対象の特技が不遇になっている。
- 敵の素早さがかなり高めに設定されている上に乱数による素早さのブレも大きく、レベルを十分に上げていても敵に先攻されやすい(なお、本作以降に発売されたDQ8以降のナンバリング作品でも敵の素早さが従来より高めに設定されるようになった)。
- 本作にもモンスターの名前を変更する際に自動で名前を付けてくれるシステムが存在するが、その方法が前作までと異なっており気付きにくい(本作では「何も入力していない状態でBボタン」になっており、前作までのように「おわる」にカーソルを合わせてAボタンを押しても反応しない)。
- どういう訳か【わたぼう】と【ワルぼう】のデザインが過去作と異なっている。
- そもそも主人公である【キーファ】の好感度が、元ゲームの時点で非常に低い。正統派のイケメン剣士と描かれ、【引換券】などと揶揄されながらもプレイヤーから愛されている【テリー】と違い、主人公として操作出来ても別に嬉しくもない。
など、不評点や作りこみの甘さも目立った。
売上
売上は前作であるモンスターズ2の半分以下の60万本ほどであった。
任天堂『社長が訊く・テリワン3D』の対談で、スタッフの【犬塚太一】は、
『テリー』が売れたから、つぎに『モンスターズ2』、その後『キャラバンハート』を出したんですけど、どんどん本数が下り坂になってしまったんです。
それで「つぎはないな」って空気になった(以下略)
と、当時スタッフたちが落ち込んでいた状況を激白している。
http://www.nintendo.co.jp/3ds/interview/creators/vol17/index3.html
DQM+との関連性
漫画【ドラゴンクエストモンスターズ+】のDQ2編でも、本作によく似た世界設定がみられる。
【破壊神シドー】を討ち滅ぼした後、【ローレシアの王子】は失踪。王子を失った【ローレシア】はそのまま没落して滅び、それから何百年ものときが流れた、というもの。
人々から魔物と同一視されたローレシアの王子が逃げるようにして辿り着いた先の世界は異世界あるいは未来のアレフガルドであるようで
章の終わりには元の時代への戻り方がわからないものの、昔のようにまた旅を続けることを選んだ3人の勇者の姿が描かれる。
特筆すべきは、このDQ2編の開始時期がキャラバンハートの発売のわずか1年半前だということ。
これらのことから、キャラバンハートの世界との関係について考察されることも多い。
余談
【ドラゴンクエストモンスターズ 20thアニバーサリー モンスターマスターメモリーズ】によると、初期はDQモンスターズ3として企画されていた。また主人公に関しても、【サマルトリアの王子】や【ガボ】が候補として挙がっており、最終的にキーファになったとのこと。
また続編のジョーカーの企画段階では本作と同じく、人間も仲間にできて一緒に戦う仕様だった模様。更に経験値でレベルが上がり、武器や防具の装備という成長・カスタマイズ要素も考案されていた。
なおDQM・DQM2はそれぞれテリーのワンダーランド・イルルカとして3Dグラフィックでリメイクされたが、今作は人気と知名度の低さゆえか、システムが他シリーズと違い過ぎるゆえか未だリメイクには至っていない。リメイクされればシステム等大きく改善せざるを得ないため難しいところ。
なお、同じくDQ2の後の世界を描いた作品として【ドラゴンクエストビルダーズ2 破壊神シドーとからっぽの島】があるが、こちらでは直接は描かれなかったものの後にまた滅びるムーンブルク国が復興している最中である、まだアレフガルドが沈んでいない所など、本作よりもはるか以前の時代が舞台となっていることがわかる。
(ただしビルダーズ2の主人公はDQ2本編で登場する竜王の子孫やDQ2の制作者がDQ2の時代には滅びていると明言しているメルキド出身であるため、ビルダーズの世界観ではDQ2本編とは歴史が異なる可能性もあるが)