球畜

Last-modified: 2024-04-05 (金) 06:32:39

20世紀初頭にMLBで活躍したタイ・カッブ(1886年~1961年)の蔑称。

概要

カッブはMLBのキャリアにおいて、9年連続を含む12回の首位打者、MLB史上初の通算4000本安打達成*1、現在もMLB記録の生涯通算打率.366*2、1909年には世界唯一の六冠王*3を達成するなど華々しい成績を残しアメリカ野球殿堂入りの第1号選手の一人となり「球聖」の別称が付けられた。
その一方で「最高の技術と最低の人格」「メジャーリーグ史上、最も偉大かつ最も嫌われた選手」と言われるほど素行面での悪名も高く、人種差別主義者であり、乱闘の際には相手にを突きつけるなどとても暴力的であったという。これらの行動から周りから嫌われていたため、一族の為に立派な墓を作ったが一族から墓に入る事を拒まれた、自身の葬儀には球界関係者が4人しか参列しなかったという逸話がある。
なんJではこれらの粗暴なエピソードに加えて、タイ・カッブがランナーでホーム突入の際に相手捕手に飛び蹴りを食らわせる画像が有名。「ぐう聖」の反対が「ぐう畜」であることに准えて、カッブの別称「球聖」から「球畜」の蔑称が定着することとなる。
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実際のタイ・カッブ

長らく素行の悪さが伝えられてきたカッブであるが、実はその悪評のほとんどが記者によって意図的にでっち上げたものだったことが判明している。前述の人種差別主義者だったという明確な証拠は無く*4、前述の葬儀についてもカッブの家族が球界関係者の参列を予め断っていたためである*5。カッブが自身の出自についての野次を浴びせた観客を殴ったために無期限の出場停止処分となった際*6、チームメイトがこの処分を不服として試合をボイコット*7。カッブがチームメイトを説得して*8ボイコットを止めさせたという畜生とは真逆の人柄を表すようなエピソードがある。

 

カッブの現役中期頃からベーブ・ルースがメジャーリーグで頭角を現し、ルースの後の活躍は誰もが知るものである。容姿やプレースタイルが真逆な2人は何かと比較されることが多く、ルースが誰もが認める「ヒーロー」であるのに対し、カッブは「ヒール」として扱われることが多い。このことから華々しい成績を残したにも関わらず、前述の悪評が広まったこともあって何かと不遇な扱いを受けていた選手であった。

 

粗暴であったことにも理由があり、カッブは父親を尊敬していたがその父親が不倫をしていた母親に殺されるという過去があったせいで性格が粗暴に変わってしまったと言われている。*9

 

ある時にMLBを永久追放となった選手*10に出会った際、誰も自分の事を覚えていないだろうと漏らしたその選手に対してカッブは「ああ。お前が優れたバッターだった*11ということ以外、忘れてしまった」と言い放ったぐう聖エピソードもある。

 

つまり、なんJにおいて、でっち上げのエピソードから「球畜」の蔑称を付けられたことは完全に風評被害である

タイカップ式バット

日本で「つちのこバット」「こけしバット」など呼ばれるグリップエンドの非常に太いバットはカッブが現役時代使用していたバット形状に似ているため「タイカップ*12式バット」と総称されたりする。

著名な使い手

  • 藤原満(元南海)
  • 福本豊(元阪急)
  • 山崎賢一(元大洋/横浜→ダイエー)
  • 赤星憲広(元阪神)

小柄な選手に使い手が多いが使いこなすのが難しいバットであり赤星引退後はフライボール革命の影響もあり現在ではほとんど使われていない。

関連項目


*1 通算で4189安打。
*2 小数点第5位までで表すと.36649。なおWikipediaでは通算打率.367になっている。
*3 一般的に打撃六冠は打率、本塁打、打点、安打数、盗塁、出塁率の6部門を指す。ちなみにカッブが六冠王に輝いたのは22歳の時であり、放った本塁打は全てランニングホームランだった。ちなみにMLB史上5人目にして最年少の三冠王でもある。また打ったホームランが全てランニングホームランだった唯一の三冠王でもあり、カッブの24年間のキャリアでも唯一の本塁打王獲得のシーズンでもあった。なお同年の成績は打率.377・9本塁打・107打点・76盗塁・216安打・出塁率.431。ちなみに、115得点・296塁打・長打率.517・OPS.947もこの年のア・リーグトップである。
*4 黒人少年を付き人として雇ったり、ニグロリーグのデトロイト・スターズの試合に頻繁に観戦する、来日した際に中等野球に飛び入り参加をし熱心に指導をした等、人種差別者とは到底思えない行動を多くしている
*5 所謂事実上の家族葬にあたる。
*6 1912年(明治45年)5月15日、ニューヨークのヒルトップ・パークでのタイガース対ニューヨーク・ハイランダース(現:ニューヨーク・ヤンキース)の試合。しかもこの時カッブに野次を飛ばした被害者は事故で片腕を失い、もう片方の手も不自由な観客で、試合開始からカッブに対して野次を飛ばしており試合が進むにつれ過激化、遂には「お前は半ニガー(白人と黒人のハーフ。つまり黒人と浮気をしていたとされる母親のことを指しての野次)野郎だ!」という罵声を浴びせた事でこの乱闘騒ぎに発展してしまった。なおこの暴行に巻き込まれた別の被害者曰く、「その男を蹴るんじゃない!両手がないんだぞ!」と止めたにも拘らず、カッブは「両足が無くたって知るもんか!」と怒鳴り返したという。
*7 この時タイガースのヒューイー・ジェニングス選手兼任監督は、選手が現れないと罰金5000ドル(当時の日本円で1万円ちょっと)を支払わなければならなかったため、それを回避するために地元の大学生や商売人などの素人を1人10ドルの契約でかき集め、3日後の5月18日、フィラデルフィア・アスレチックス(現:オークランド・アスレチックス)と対戦。5回までにアスレチックスから2点をもぎ取ったものの、相手のアスレチックスが前年度ワールドシリーズ覇者だったのが災いし、24対2というワンサイドゲームで惨敗した。
*8 その際、アメリカン・リーグはカッブの出場停止処分を10日間に軽減した。また、このボイコット事件以降、再発防止策としてリーグに登録している選手以外は出場できないという規定が作られた。
*9 この事が上述の乱闘騒ぎの原因にもなったとみられる。なお実際に父を殺したのは不倫相手だった事が裁判後に判明している。
*10 アスレチックスなど3球団でプレーし、1919年のワールドシリーズでの八百長事件、「ブラックソックス事件」に関与したとして永久追放処分を科された「アンラッキー・エイト(悲運の8人)」の1人である、ジョー・ジャクソンの事。
*11 J・ジャクソンは最多安打2回、最高出塁率1回を記録するなどの実績を残しており、通算打率もMLB歴代3位の.356をマークしていた。
*12 かつての日本ではこの表記が一般的に使われていた。