夢魔（ナイトメア）

【種族名】

　夢魔。ナイトメア。

【ルーツ】

　夢魔姫ジャスリー。

【属性門】

　夢魔の門に属する。同じ門に属する死霊（スペクター）とは性質が近く、同一視されることもある。
　夢魔はリリスと同一視されることを嫌うが、死霊との関連については甘んじて受け入れる。
　属性門については添付ファイル参照。

【外見】

　全員が女性。それも儚げな美女、美少女である。優しさや高貴さ、優雅さを重要視し、それに見合った服装にもこだわる。中身よりも外見にこだわる傾向がある。人間は見た目十割。

【司る側面】

　眠り。休息。慰め。怠惰。逃避。依存。忘却。嘘。美。高貴。母性。優しさ。月。安心。アヘン。

【思想】

　夢魔の思想の根底には徹底した「主観論」がある。
　世界中の全ての人間が彼を不幸だと思っていても、当人が自分を幸福だと信じているのであれば、彼は幸福なのである。妄想や現実逃避、依存は夢魔にとっては否定するものではない。
　夢魔の魔法の本質は「今有る状況を最大限に肯定的に解釈することで世界を作り替える」ことである。
　ただしこれは、事実の否認や努力の軽視という問題を孕んでいる。
　そして事実の否認と肯定的解釈によって塗り固められた世界が長続きすることはほとんど無く、世界が壊れるときは大抵は悲惨で絶望的な状況が待っている。そして夢魔はそれを承知している。

　夢魔とはアヘンであり、麻酔であり、鎮痛剤であり、バファリンである。
　それは苦痛からの逃避と安らぎと安眠をもたらすが、これらは決して治療薬ではない。
　しかし睡眠や安心、苦痛からの逃避は人間が求める基本的な欲求に根ざすものであり、夢魔の誘惑を退けるのは至難の業といえる。

　偽りの世界を作り出すための夢魔の力は相当なものだ。夢魔の多くは家事万能で献身的。母親のように無条件の愛情を持って人間に尽くしてくれる。どんな暴言や不義理を行っても赦し、夢術や幻術がそれをサポートする。こうして人間は夢魔の手のひらの上で優しい嘘の世界に閉じ込められる。"周囲からはアヘン依存にしか見えない"のだが。

【パワーソース】

　人間が強い絶望や後悔の念を感じているときに放出する絶望のオーラを、夢魔が吸収することで魔力を得る。人間はオーラを吸われても死んだり、絶望が和らぐわけではない。
　その人間が夢魔に好意を抱いている場合は絶望のオーラの質が高くなり、逆に敵意を抱いているとオーラを吸収できない。そのため、夢魔は相手に好意を抱かれつつ絶望に突き落とすという矛盾を強いられる。

【魔法】

夢術/Dreammancy

睡眠導入/Sleep Inducingと、夢渡り/Soul Accessのふたつの力から成り立つ。

幻術/Chimerstry

自分の心の中にある空想に命を与える事ができる。夢魔によって作られた幻像は人間の知覚や計器ですら騙すことができる。幻術の規模は夢魔の力によるところが大きいが、変身や成り済ましのほか、粗末な部屋や屋敷を豪邸にすることもできる。

運命操作/Manipulation of fate

この能力は明確に使われる事は無いため、他種族や夢魔自身についても正確なところは不明。そこに夢魔が存在するだけで偶然と因果が歪まれ、災禍が引き寄せられる。疫病神的な能力である。
夢魔は迫り来る災禍をどうすることもできないが、どのような災禍がくるかはおぼろげながら理解できる。限定的ながら未来予知/Future Sightの力も含む。

【個体数】

　夢魔姫。七夢魔。百夢魔の１０８名。

【実体希薄】

　夢魔は純粋な肉体を持たない精神生命体であり、幻術によって自らの姿を作り出している。
　触れる幽霊といった状態に近い。憑依などの肉体奪取は行わないが、幻覚変身による"なりすまし"は多々行う。

【戦闘】

　夢魔は全員がドレスソードとマージスタッフを操る魔法戦士である。
　その腕力や魔力は他の悪魔に対して蟷螂の斧に近いものがあるが、幻影による透明化や魔法反射などの絡め手を得意とし、罠に嵌まれば死が待っている。まったく油断できない存在ともいえる。

【人間との関係】

　古来より夢魔と関わって数奇な運命を辿った人間は枚挙に暇がない。
　経営者、独裁者、軍人などの大きな野心を持った人間を好み、その隆盛と挫折を見守る。

【天使との関係】

　互いに明確な敵意を持ち合わせてはおらず、むしろ敬意すら抱いているが、両者が出会う状況は人間を巡ってかち合うことが多く、敵対関係になることが大半。地上においては多くの場合、天使の警告を受けた夢魔は大人しく退散し、天使はこれを追求しない。

【リリスとの関係】

　夢魔とリリスは姉妹とも言われるが、夢魔のほうはリリスを「はしたない妹」と評し、同一視されることを嫌っている。ただし利害の絡まないところでは友好関係にある個人も多い。互いに面と向かって敵対的な態度を表明することはほとんどない。

夢魔たちの言行録

「善人らしく振る舞って相手が最後までそれを信じ切れば、貴方は善人になれます」
「例え世界全ての人間が貴方を否定しても、貴方の真実は揺らぎません」
「いつ何時も身嗜みには気をつけましょう。まずは形から入るのです」
「不幸な人々の数だけ夢が必要なのです。世界には」
「人間は幸せだから笑うのではなく、笑うから幸せなのです」
「美しいものは人の心を慰める。困難な時こそ私達が必要となりましょう」
「世界を構成する一なる元素は愛」
「そして愛の反対は憎しみではなく無関心。夢に見るまで憎んで頂ければ、夢魔としてこれほど栄誉なことはありません」
「貴方は今夢を見ている。否定できますか？ その根拠を示せますか？」
「信頼とはともに未来を歩んでいこうという意思」
「平安と幸せを得るためには信じることです。疑いから幸福は生まれません」
「はい。他人を信じることは難しいでしょう。だからこそ信頼は力になるのです」
「夢魔の武器はこの姿と、声と、心です。幸福と不安を交互に与えて依存に陥れる。阿片と同じですね」
「人は誘惑や脅迫に抵抗することは容易いですが、善意や愛に抵抗することは難しい」
「この世は人の物」
「人間には、辛い現実から逃避する権利もあります。そしてそれが当人にとって、幸せな夢を叶えるものに思えるならば。それは素敵なことではありませんか？」
「気にしないことです」
「人間は突き落とされた崖が高ければ高いほど、這い上がったときに素敵になれますから」
「私の見せる夢は幸せだった頃の記憶。望みの叶った世界」
「悲しい夢は私が追い払ってあげる。だから安心してお休みなさい」
「お姉さんに任せなさい」
「私、貴方のお母さんになります」
「睡眠は人の幸福の多くを占めます。人は生涯、生き続ける限り猫のように眠り続けなくてはなりません」
「ではこうしましょう。貴方が私のことを「美しい」と言うまで、私は貴方を愛しましょう。貴方が美しいと言わなければ、私は貴方の寿命までお側にいます」
「愛の言葉は、相手の目を見ながらいうものですよ？」
「片思いでもいいの。二人分愛するから」
「幸せのカケラも、不幸せのカケラも、どちらもいっぱいあって、世界を満たしてるの。だから、身近の幸せが見つけられない人は、どこまで探しに行っても見つけられない」
「私と契約して、夢使いになってください」
「ではこの契約書にサインを」
「だって悪魔ですもの」
「感謝します。この運命に」
「もう、何も怖くない」
「どうしました？ 急に黙り込みましたね。ご安心を。屈服は一時の恥。後に待つは身を委ねる悦びだけです。さぁ投了の宣言を。聞こえません。大きい声ではっきりと」
「それではおやすみなさい。今夜は私の夢を見てくださいね」
「シーユーアゲイン。ハバグッドドリーム」