EBM ワークショップ

Last-modified: 2010-02-28 (日) 23:46:14


EBMワークショップ とは

CASP Japan の
http://caspjp.umin.ac.jp/workshop/index.html
↑この読み物は良いですよ!是非ご参考にして下さい。



Evidence Based Medicine は、教育領域の手法も取り入れています。
ですので、EBMはワークショップ形式で学べる数少ないジャンルです。
最近ではBLSやACLSなどでグループ学習を経験している人も多いと思いますが、ああいったグループでの学習がワークショップの特徴です。
EBMワークショップはACLSなどと違って、行為のトレーニングがないので、寸劇のような要素がありません。(嫌いな人は、嫌いでしょ?)
どちらかというと、レクチャーを聞いて、論文をよむなり検索するなりして、ディスカッションするという結構なじみのある学習方法になっています。

ワークショップの準備について

チューターの選定とチューター練習

勉強会に熱心に参加している人がベストです。
チューターはティーチャーではないので、「教えることが出来るかどうか」は基準ではありません。主にコミュニケーションがとれるかどうかが基準です。
ですので、主催者ときちんとコミュニケート出来るかどうかで決めるのが大事です。
それが出来ているなら、当日使用する論文について相談したり、レクチャーポイントを話し合うことは可能なのですから。


あと、ネット環境をそれなりに利用出来ることも大事です。
メールをしたくない、とか携帯を持たない方は、チューターや裏方には向いていません。
当日の現場では雑用をお願いできるかもしれませんが、それぐらいです。


事前にTTD(tutor training day)を開いて、チューター技術の確認と、レクチャラーのプレゼンを吟味しましょう。
チューターの技術は、
・自分から教えない
・質問があったら、「みなさんはどう思うか」の質問を場に返して待ちます。
よく言う7秒ルール、17秒ルールというやつです。
・意見が出ないなら、雪だるま方式で各自の意見を抽出します。
基本的には、これぐらいのパターンを練習して当日に臨むことになります。


論文の準備としては、もちろんきちんと読み込むことです。
そして、出来たら関連論文も読んで、場合により参加者にも配れるような配慮が必要です。
レベルが高くて、情報が足りない場合は二次文献の記事が必要となったり、システマティックレビューや他のRCTが必要なこともあります。

チューターミーティングを忘れずに

当日の朝と夕方、ワークショップがはじまる前と終わってからは必ずミーティングをしましょう。
論文の難しい点や、疑問をきちんと解決しておくことはもちろん、難しい点についてグループをどう引っ張るのかはチューター同士で意思疎通があったほうが良いです。
以前にミーティングを入れるの忘れて、痛い思いをしました。。
やはりチューターにとってワークショップは大きな経験なので、ミーティングやまとめをしないと大きな経験がただのストレスになってしまうもんなんですね。
ミーティング、大事です!

必要な物品

100円ショップで購入するもの

・お茶、お菓子
存続している勉強会にアンケート調査をしたところ、「無料の食べ物が出る勉強会」は続くオッズが高くなったそうです。

・紙コップ

・領収書
病院や、大学などに費用の申請をされる方も多いのです
・画用紙、マジック
ホワイトボードがあれば一番よいでしょう。
ただ、備え付けのホワイトボードのペンがかすれて書けないことが多いので、自分で買って持っていくのがベストです。チューターやレクチャーをすることが多い人は、何色も購入して持ち歩きましょう!


最近は大きい紙をつかっているワークショップが多いです。
通常よく見るサイズは大きすぎるので、今回は四つ切りの画用紙を準備しました。
やすいスケッチブックがあったら、それでもOKです。
これも、チューターはマジックを持参するのがベストだと思います。

・名札フォルダー
これも100均ショップ&回収して使い回し。

その他

・アンケート
これを忘れてはいけません
・デジカメ
黒板や、紙をノートに書くのは時間がかかります。
デジカメで一発です。
・パソコン、プロジェクター、ケーブル、USBメモリ
ネットはなくても出来ます。
パソコン、プロジェクター、ケーブル
そしてデータを渡し合い出来るようにメモリ
2人ぐらいには持ってきてもらいましょう
・名簿
うけつけでチェックをするのに使います
・資料の予備
必ず、忘れてくる人がいます

物品以外

・打ち上げの準備
コミュニケーションと食事は切っても切り離せない関係にあります。
費用はリーズナブルなところが良いですよね。結構ワークショップにくるだけでも金かかるので。

・部屋の確保は再確認を
カギがないとか、部屋がダブルブッキングとか、嫌なこともあります
気を付けて
部屋はフラットな部屋が必要です。大きめで、大きすぎない机と椅子が要ります。
机の大きさは「もしビールがあったら盛り上がるな」という大きさです。宴会とスモールグループは基本、同じなのです。

ワークショップのよしわるし

良いところは、オトナの勉強に効果的だということです。
面白く出来ています!
基本的なレクチャーが終われば、論文の吟味なり検索なりの実技を体験して頂いて、そこで自分の聞きたいこと、感じたことを伝えてもらってディスカッションが進みます。
だいたいにおいてポジティブなフィードバックが帰ってきて、くじけることなく勉強出来るんです。


ですがこの、
・ポジティブな優しい雰囲気
・言いたいことなんでも言っていいのよーんという感じ
・そして出会い
そういう楽しみにはまってしまって、本来のEBM学習を見失ってしまうとこれは問題児です。
EBM学習のとっかかりをつかんで欲しいのが真意ですから。
僕や仲間のように、EBM教育が大事であると一念発起してワークショップを繰り返すのは変わり者ですね。モンダイジ・・なのかな?
本来は、ある程度EBMが理解出来たらワークショップは卒業するものだろうと思います。


ワークショップに関する本も沢山出ています。amazonで検索すると、ずいぶんとひっかかってくるようになりました。
良い点は、意見を出し合って思いもがけないことに気づかされることです。
しかし出てくる意見が、一定レベルに達していない場合は、全体の議論も進化しません。
ですので、スモールグループにどんなメンバーが居るのかということが成功に大きな比率をしめます。
2人のチューター(ファシリテーター)を置く場合は、1人がまとめて1人がリードするような役割を担ってもらうようにはしています。しかし、これでも限界を感じることは多い。
とくに医療系のワークショップなわけで、よく専門家が参加してくれます。
そのコメントは、やはり広がりと深みは素晴らしい。。専門家のレベルに感心して、ワークショップが終わった後にワークショップ全体の達成とか議論のレベルを振り返ると、どうしても専門家のひと言に負けている感が否めません。


そりゃそうなんです。知識、経験ともに負けているのですから。
つい期待しがちですがワークショップを繰り返すことで、専門家のレベルに達する・・のでは無いんですね。ワークショップで学べることは、これとは別で「上達の糸口をもらう」こと「コミュニケーションを介して成長すること」を「知る」のが中心。
そんなにすごいハイレベルに達するわけではないのです。
学んで上達することは、1つの方法では達成できません。
ワークショップだけに燃え上がってはいけないのです。
日頃の思索、読書、論文の吟味、スタッフや患者さんとの会話があって、ワークショップも有効に作用します。


また専門家の人には自分の知識や技術を説明したり、コミュニケーション手法を学んでもらういい機会でもあります。
専門家はベテランです、彼等は次に組織を担う存在なのです。
でも、医療分野では組織のマネジメントなんか習いません。
ワークショップで、自分の専門知識を軸に学びを展開し、小さいグループを運営することはささやかなようでも非常に重要な学習内容であります。

ワークショップの今後

数年前から、地方での開催が少しずつ増えて来ています。
「年に1-2回、しっかり論文の吟味をすることは大事ですよ!」
と草分けのN先生がおっしゃっておられましたが、地方で年に一回ぐらいこういう集まりがあるのは、日常業務の中でも良い刺激になるのではないでしょうか。
日頃の隠し味として、年に一回のお祭りとして、広がっていってほしいなぁと願っています。

EBMのレクチャーをしていて、つらつらと



EBMを教えるというか、スモールグループを手伝う人をチューターと呼びます。
最初EBMのワークショップに参加したときは、チューターをするなんてすごい人たちだと思っていました。
が、そんな私もなりゆきで、EBMを学ぶ仲間ができて、あちこちでワークショップやセミナーをしてきました。
レクチャーをしていると、はじめたばかりの6年ほど前は、何をしていても「僕が」面白かったです。
資料を工夫して作り上げるのも楽しいし、レクチャーをしていてどっとウケたりするともう得意満面でした。



EBMを学び始めて7年目ぐらいの最近になって感じるようになったのは、なんだか自分が浮いているような妙な感じ
講義の内容は、あまり変えていません。
でも、なんというか以前のような、聞き手とつながるぐっとした感じがない。


いろいろ考えてみましたが、思い当たるフシが二つ。
 1)内容が少しずつではあるが、マニアックになってきている。

資料は同じで、全体にあまり変えていませんが、ウケるだろうと選んだ話をするとマニアックすぎて面白くないみたいです。
しらないうちに、重箱の隅をつついてたんでしょうね。
初心の人たちに何を教えるのか、いったい何がわかっておられないのか。。。もういちどもとに戻る必要があります。
最初にEBMを学ぶ人は、けっして面白い!と思ったり爆笑したりはしないもんです。
サケット先生の最後の授業の模様について、教えてもらったことがありますが、薬学部の学生達にシナリオの紙を一枚配って、「どうする?」とか尋ねてあとは延々と黙っているような、なかなかに静かな授業だったようです。
でも、最初はそういう時も過ごしていかなくてはいけません。
そういう時間、しっかり考えることをこえて、はじめておもしろさが理解出来るようになる。。。ように指導者が導かないと、いけませんよね。
 2)自分が「面白い!」と思える話をしていない。
ついつい、「大事なポイント」だら「きっとウケる話」とかしてしまうんですよね。
こんなの、今の私には必要ないんじゃなかろうか。
芸人じゃないんだから。
やっぱり、自分が「凄くおもしれぇ!これ大好きだ!」
ということを、紹介するときの勢いが大事だと思います。
だって、僕たちがEBMを勉強し続けてきたのは、面白いからなんですから。
面白くなかろうが、マニアックだろうが、「きいてくれ!これ、すっげぇ面白いんだよ!」という感じが伝わらないと。
まず感動ありき、です。
もちろん感動させるのはそうそう無理ですが、感心もってもらわないとね。


「なんかこいつ変やけど、むちゃ楽しそうやなぁ・・」
と苦笑いされるぐらいのほうが、よっぽど僕的には好感がもてますからね。


僕は昔ドラムをしてましたが、同じことを感じてました。
「このフレーズが好きやねん!」と、自分が好きなフレーズ叩きまくるドラマー、カッコ良かったですよ。
ブレッカーブラザーズの「ヘビーメタル・ビバップ」なんか、同じフレーズ何回出てくるねん!っていうぐらいだったし。
最近あまり聞きませんが、ドラマーのスティーブ・ガッド師匠なんかも、やはり個性的な特徴のあるフレーズが多かった。。
もちろん、アマチュアでも好きなのは「好き」が伝わってくるドラマー。
多少ずれてようが、間違おうが、逆に正確だろうが上手かろうが、関係ないんです。
演奏は、「下手なのが伝わる」=「下手でもいい演奏」ですよ。
「下手なのを見透かされる」=「本物の下手」というよりも、「もう駄目」。


 3)参加者が中心の学習になっていない
これは矛盾した問題です。ここが教育の難しいところですね!
「自分が楽しい」といいつつ、「学習者が中心」でないといけないのですから。
2)の自分の感じているおもしろさを伝えることは、あくまでも入り口です。
それを通じて、参加者と繋がることが出来たら、もちろん主役は参加者です。
この「学ぶ主役」の移行を、スムーズにやるのが大事ですねぇ。



いろいろ気づいて、改善しなきゃいけないところが山盛りです。
とりあえず、最近面白かったEBMの話しをまとめとこうかな・・・
・・・あれ?思いつかないぞ!
そう。
勉強不足でもあったのです。
地道な勉強、情報収集がおろそかになっているのも、あらためて気づいてます。
日々、精進ですね。
EBMで遊び倒すのです!

ワークショップの論文を決めるまで

ワークショップの論文を決めるまで→別ページです。

参考書籍

4007000697
4007000697「ファシリテーション革命」
4007000697 著者:中野民夫さん
中野民夫さんの本。ファシリテーション(EBMではファシリテーターと呼んだり、チューターと呼んだりします)という技術、考え方にスポットを当ててくれています。
僕は教育の才能がないので、相手の良いところを引き出すのは努力なしには無理です。そのための本。

 

0415365260
「Learning in Grouls」
著者:David Jaques、Gilly Salmon
オックスフォードでEBM の教育者向けワークショップに参加したときに、近所の本屋で買いました。スモールグループのルールが簡潔かつ明快に書かれています。スモールグループにはいろんな「型」があるの、知ってました?僕の好きなFish Bowlというスタイルや、シンジケートというグループのマネジメント・・本当にいろいろ有るんです。ちょっと他にはない本。有る意味で過激に教育の「場」をまとめ上げています。ちょっとでも読んで欲しい本ですね。
著者はオックスフォードのBrooks大学で指導している方のようです。
http://www.brookes.ac.uk/services/ocsd/2_learntch/small-group/sgtindex.html
で内容が少し読めます。
オックスフォードはだいたいの大学がsmall group learning を基本にしているようです。大学によっては講堂というもの自体がないところもあるとか。
学生はSGDか、指導者と二人でのディスカッションを行って学習を深めていくのだそうです。

 

185775400X
「Groups」
著者:トリシャ・グリーンハル
トリシャ・グリーンハル先生のこの本を抜いてはいけません!この本が出た当時、グループワークの本はこれしかないんじゃないかというぐらいにインパクトがありました。ま、他の本を知らなかっただけなんだけど。参加者の性格分けには、唸らされました。
トリシャさんが凄いところはEBMのしっかりした本も書いて、質的研究の本も書いて、教育の本も書いているところ。れっきとした臨床教授ですからね!しかもお母さんだし。生きてる間に一度お話ししてみたい先生ですね。何考えてはるんやろ??