登録日:2009-07-29 (水) 22:20:29
更新日:2024-03-20 (水) 20:06:40
所要時間:約 25 分で読めます
▽コメント欄
Tag: ジョジョの奇妙な冒険 ジョジョ 3部 スターダストクルセイダース ダービー兄弟 ギャンブラー オシリス神 オシリス エジプト9栄神 スタンド使い イカサマ ダニエル・J・ダービー ダービー オービー バービー チョコレート 違うんだなそれが 猫 発狂 魂 神経質 強敵 グッド 内海賢二 石井康嗣 銀河万丈 兄 ダービー・ザ・ギャンブラー バクチ打ち 岸祐二
D'.A.R.B.Y
Dの上にダッシュがつく…
声優 : 内海賢二?(OVA版)、岸祐二(part3対戦格闘ゲーム版)、石井康嗣(ジョジョASB)、銀河万丈(TVアニメ版)
【概要】
エジプト9栄神のうちのひとつ『オシリス神』の暗示をもつスタンド?使い。
小奇麗にめかし込んだ服装に口髭と両頬に描かれた横縞模様が特徴の中年紳士。
鷹揚でキザな口ぶりに小粋な身振り手振りがよく似合っており、油断の無い鋭い眼光の持ち主。
後に21歳の弟に「兄とは10歳歳が離れている」と説明されているところから、登場時の年齢は31歳と思われる。
あらゆる賭事をこよなく愛し、ギャンブルで生計を立てている生まれついてのギャンブル・クレイジー。
無敗であるという申告から察するに、登場時点で日本にも不動産という形で多量の財産を所有*1しており、
肉の芽も植え付けられてなければ、報酬目的でDIOに手を貸しているわけでもないという3部の中でもかなり珍しいタイプの刺客である。
そのためなぜDIOに手を貸しているのか地味に謎。恐怖感から屈服した、純粋にカリスマに魅かれた等いろいろ考えられるが。
「バレなければイカサマとは言わない」?が信条で、賭けに勝つためには手段を選ばない。
もちろんイカサマだけでなく、指の感覚だけでトランプのカードの位置が分かるという特技を持つなど、純粋なテクニックでも抜きん出ている。
この洗練されたテクニックと計算尽くされた行動、そして狡猾に仕掛けるペテンにより賭事には滅法強い。
イカサマの事前仕込みも余念がなく、勝負する前にいくつか仕掛けている上に当然それ等を見抜く能力自体も優れている*2。
スタンド能力で賭事で負かした対戦相手の魂をコインに変えそれを収集することが趣味。
膨大な量のコレクションだが、それ以上に凄いのは対戦相手の名前、日時、場所を正確に記憶していること。
これは言い換えれば殺した相手の首級を逐一保管しているようなもので、
自慢のコレクションを見せられたアヴドゥルはその悪質さに完全にドン引きし、「悪魔だ…」と呻き声を漏らしていた。
なお、名乗りには拘りがあるようで、ジョセフの相手の名前をわざと間違えられた時には怒鳴りつけている。
最終的にジョセフがダービーの掌の上だったことを考えると演技だったと考えられなくもないが。
わたしの名はダービーというんだ!
オービーでもバービーでもない!
また、表面的には紳士的に振る舞っているが、内心では口汚く毒づいたり、浮かれてややお茶目なところを見せるなど、等身大の人間的な感情も豊かであり、
勝負のラストに緊張の糸がキレた時はそれが一気に表に出て盛大なシリアスブレイクを見せることに…
ギャンブルに対しては相当な拘りがあり、
戦いに来たのではないッ!
生まれついての『賭け師』だから
戦いに来たのだッ!
と断言してのけている他、承太郎のブラフに対する反応から、数少ないDIOのスタンド能力の秘密について独力で目星をつけられている人物と考えられる。
DIOとダービーの性格から「DIOともギャンブルで対決したのでは」と想像されていたが、スピンオフクレイジー・Dの悪霊的失恋?では実際にDIOと彼との勝負の様が描かれた。(後述)
テレンス・T・ダービー?という10歳年の離れた弟がいるが、内心では子供の頃から心を見透かされてしまう弟のスタンド能力にいつも怯えていたとの事であり、弟とは過去に(ちょっとした事でも)ゲーム勝負をした事はただの一度もない。
過去に弟のガールフレンドにちょっかい出したせいでブチ切れられて半殺しにされたり*3、弟に「古いタイプの人間」と言われバカにされるなど兄としての威厳は皆無で、大胆不敵な現在の雰囲気とは裏腹に兄弟仲は悪く、肩身の狭い青春時代を過ごしていたようである。
ただ弟のテレンスが全てにおいて上位互換なのかと言うとそうでもなく、承太郎たちは後にDIOの館でテレンスともゲーム勝負をすることになるのだが、テレンスはスタンドの「心を読む」能力に頼り切っている節があり、ダニエルなら苦も無く見破っていたであろう簡単なイカサマを見抜けずに引っかかって敗北している。
「ダニエルだったら見破っていたイカサマを見抜けなかった」と言う点は承太郎も作中で指摘しており、スタンド能力抜きでの純粋な勝負師としての格は兄ダニエルの方が数段上である。
また、テレンス自身も尊敬云々はともかく、「兄はギャンブルとイカサマの天才だった」「天才詐欺師だった」ということは本心から認めていたようである。
【活躍】
カイロの郊外にあるカフェにDIO?の館の位置を聞き込みにやってきた一行の前に現れる。
◆第一戦
館の位置を種に「外にいる猫?は左右どちらの魚の燻製を食べるか」という遊びのような賭事を仕掛け、乗ってきたジャン=ピエール・ポルナレフ?相手にさりげなく魂を賭けるという言質をとる。
あらかじめ仕込んでおいたイカサマ*4で賭けに勝ち、ポルナレフの魂をスタンド能力で奪う。
ちなみに、実はこの勝負が始まった際、ポルナレフ自身は「魂を賭ける」とは言っていない。
「賭けるのは、魂なんてどうです?」という、ダービーの冗談めかした提案に対して声に出した返事もしていない。
「魂を賭けるという条件をあらかじめ提示されたうえで賭けに乗った」という事実自体が「魂を賭ける」という宣言と同じ扱いになる、と示す事例である。
◆第二戦
それを人質に今度はジョセフ・ジョースター?と対戦。
ルールは「ウイスキーを入れたグラスにコインを交互に入れ、先に溢れさせた方の負け」というもの*5。
最初にこのゲーム自体の解説をしておくと、このゲームの本質はいわゆるニム(石取りゲーム)の派生である。
それぞれ「石の残り個数」が「表面張力の限界」、「石を取る行為」が「グラスにコインを投入する行為」、「最後の石を取る」が「酒を溢れさせる」に当たる。
つまり、勝利条件は"コインをあと1枚でも入れたら絶対に酒が溢れる状態で相手に手番を回す"こと。
一方、通常のニムと違うこのゲームならではの醍醐味は、"具体的にコインがあと何枚入るか目視でははっきり分からない"ことと"本当はまだ余裕があったとしてもコインの入れ方がまずければ酒が溢れかねない"ことである。*6
従って、ダービーが初手で見せたコイン5枚投入などは、その集中力こそ称賛に値するものの、このゲームの本質からすれば大した意味もないパフォーマンスでしかない。
コイン投入の限界枚数を見切って一手でゲームを決められたのならともかく、その後でジョセフも投入できていることから分かるように、いくら百戦錬磨のギャンブラーと言えども訓練したこともない酒の表面張力の見切りなど初見でできるはずもなかった。
それを踏まえたうえでジョセフの仕掛けたイカサマは、"コインと一緒に液体を含ませた脱脂綿を指に持ってコインを入れる時に液体を水増しし、コインを入れた枚数以上に表面張力の余裕を削る"というもの。
このイカサマを有効たらしめるには、やはり今にもグラスから溢れんばかりな酒の表面張力の限界を的確に見切る眼力と経験が無ければならず*7、「あと一枚でも入れれば確実に酒はグラスから溢れるように仕組んでやった」と心の中で勝ち誇ったジョセフが、豪語する通りにこのゲームをやり慣れていたことは間違いない。
得意のゲームに持ち込んだ時点でジョセフの勝ちは最初から決まっていた……はずだった。
スットォ~~ンと軽快に、ダービーが入れたコインは酒を溢れさせることなくグラスの底に沈んだ。
完全に想定していなかった事態にさしものジョセフの余裕も崩れ、遂には「これ以上賭けを続けたら、絶対に自分が負ける」と、心の中で敗北を認めてしまう事となる。
ジョセフが魂を抜かれた直後、グラスを改めた承太郎が見つけたのは、グラスの底に貼りついたチョコの欠片。
ダービーの仕掛けたイカサマとは"グラスの底にチョコレートの欠片を仕込んで予めグラスを僅かに傾かせておき、肝心な場面で太陽光を当ててチョコレートを溶かしてグラスを水平に戻す=表面張力に余裕を作る"というものだった。
言葉にすれば只それだけだが、振り返れば全てが如何に周到に仕組まれていたかが分かる。
ダービーは、勝負を受けた時点でこのゲームの本質もジョセフが自ら指定したこのゲームの百戦錬磨であることも瞬時に理解したうえで、全てを逆手に取っていたのだ。
如何に慎重にゲームを運ぼうとも肝心要になる表面張力の見切りについては、自分では絶対にジョセフの経験には及ばない。
ならば、どうすればいいか?
簡単である。ジョセフに見切ってもらえばいいのだ。ただし、1枚分だけ誤認した状態で。
ジョセフがイカサマをしようがしまいが、自分がそのイカサマを見抜けようが見抜けまいが、それはどうでもいい。
肝心なのは、ジョセフは絶対に"あと1枚でもコインを入れれば確実に酒が溢れる状態でダービーに手番を押し付けてくる"という点だけだ。
だから、ダービーはこのイカサマを仕掛けた。
そう考えると、最初のコイン5枚投入も決して的外れなパフォーマンスなどではなかった。
ダービーにとって最も警戒すべき事は、当然ながら、仕掛けたイカサマの露見である。
イカサマではないかと問い詰められるだけなら偶然の事故なり何なり幾らでも言い訳はできるだろうが、問題はそんなことではない。誤認が解けてしまえば自分の敗北は必至なのだ。
そして、これも当然ながら、ゲームが長引けば長引くほど、つまり集中してグラスを視る機会が増えるほど、ジョセフ達がグラスの傾きに気づく可能性は高くなる。ついでに、いくら自分を日除けにしているとはいえ、チョコの欠片も熱気で溶け出す可能性も否めない。
だからこそ、ダービーは少なくないリスクを冒しながらも一気5枚投入などという派手な真似をやってみせたのだ。
この派手なパフォーマンスの真意とは、偏に"ゲームの進行を早める"ことにあった。
敢えてジョセフに苦言を呈すなら、この時にダービーは決して的外れなパフォーマンスでプレッシャーを掛けたつもりになるような男ではないと看破し、警戒すべきだっただろう。
"相手が勝ち誇った時、既にそいつは敗北している"。
皮肉にも、自分の得意な流儀をきれいに相手にやられてしまった形となった。
もっとも、ダービーの方も決して計算づくな余裕の勝利だった訳ではなく、むしろ相当にリスキーな綱渡りをしている。
本人も一瞬ビビっていたように、コインの5枚投入で酒が溢れていた可能性も充分あったし、チョコレートの仕掛けもちゃんと作用してくれるかはかなり際どい。そもそも傾きがちゃんとコイン1枚分なのかどうかも実は賭けの要素が大きい*8。そして繰り返しになるが、万一ジョセフ達が仕掛けに気づいたら、イカサマと証明できるかどうかに関係なく、その時点でダービーの敗けは確定だった。
ダービーにとってもジョセフは、リスクの大きさに比して一か八かの要素が強いイカサマをせざるを得なかったまごう事なき強敵であり、ヒヤヒヤものの勝負であった事は間違いないだろう。
なお、よく指摘される「ジョセフが波紋を使う」という打開策だが、特殊石鹸水ではなくウイスキーなので保たない可能性が高い。さらにダービーが波紋についての情報を既に得ていて、イカサマ発覚で負けとなるリスクすらある。
脱脂綿のイカサマをチョコレートのイカサマで返されて万事休すのジョセフ。
一見するともはや打つ手なしの状況に思われるが、実際はそうではない。
作中ではジョセフがあっさりと負けを認めてしまっていたが、実はあがく手段が一つだけ残されていた。
ヒントはダービーの「酒が蒸発してしまうまで待つ気かね」というセリフ
そう、みもふたもない話であるが、酒が蒸発するのを待てばよかったのである。
実はこの勝負、「コインを投入する番になったら何秒以内に投入しないと負け」といった取り決めは一切されていない。ジョセフはあのまま酒が蒸発するのを何時間でも待つことが可能だったのだ。
屁理屈のように聞こえるがしかし、大事なことである。オシリス神は心が負けを認めた相手から魂を抜き取るスタンドであるが、逆に言うと心が負けを認めなければ何も干渉することができないスタンドである。ジョセフが何秒以内に投入するといった約束をしていないという一点のみを主張し心から訴えれば、勝負を引き分けにできた可能性があったのだ。
もっともホリィのタイムリミットのこともあり、DIOの館の位置を特定するのを急ぐ状況で酒が蒸発するのを待っていられる余裕があるかという問題があるが。
加えて、ゴネるにしても酒が蒸発するのを待つ間に心のどこかで負けを認めてしまう可能性もある。
もしこれを読んでいるあなたがこの手のゲームで賭けをする場合は、相手からこの手の屁理屈の主張を受けることを避けるために、「何秒以内に投入する」という取り決めを事前にすることを忘れなきよう・・・
ちなみにジョセフに「オービー」だの「バービー」だの名前を間違えられて怒っていたが、本気なのかジョセフを油断させるための演技なのかは不明。
怒っていたのは本気だが、本気の怒りだからこそそれを見せればジョセフも油断するだろうという計算も働かせていた可能性もある。
◆第三戦
そして、承太郎と最も得意なゲームであるポーカー?で勝負することに。
まず承太郎はテーブルに置いてあったトランプカードを「星の白金」の動体視力でダービー同様にカードの順番を当てる芸当をやってのけた上でこれからはイカサマをし難くすると恫喝。
その言葉に本気を見たダービーは新品のトランプの封を切り承太郎にトランプカード自体にイカサマが無いか確認させる。
ちなみにキチンと読むと分かるがこの時に使ったトランプのデッキは「ジョーカーは1枚」という日本で標準的なジョーカー二枚組の物とは違う事が分かる。
そして最初は一発勝負でカタをつけようとしていたが、セカンド・ディール*9というテクニックを見破られ、指をへし折られる。
思いっきりイカサマの現場を押さえられているが、実はまだ承太郎の魂のベットが済んでなかったのでオシリス神的にはノーゲーム扱い(=賭けが成立していない)らしい。
そこで先述のセリフを吐き、ポルナレフとジョセフのコインを分割して6枚に増やし、承太郎に白いチップを同じく6枚渡す。
最初の勝負は「8&9のツーペア」の承太郎に対し、「J&Qのツーペア」でダービーが勝利。ベットされた承太郎のチップ3枚を奪う。
一見するとイカサマ抜きの普通の勝負の結果にしか見えないが、後述の仕込みを前提に考えると、通常起こりえる範囲でギリギリの勝負を演出しつつダービーを勝たせるイカサマをしていたと考えられる。*10
その後、ツーゲーム目ではディーラーの少年に自分には最強クラスの手である「Kのフォアカード」*11を配らせ、承太郎に「ブタ」の手*12を配らせるというインチキ極まりないイカサマをやらかしていた。
実はこの少年や先の猫のみならず、カフェのマスターも含め、ダービーの視界にいる全員があらかじめ配置していたダービーの仲間で、しかも誰を選ぼうがカードのイカサマができるほどの腕前をもっていた(ただしDIOの事は何も知らない)。勝負が始まる前から必勝の態勢を構築していたのである。*13
だが、承太郎はカードを全く見もしないままに勝負を決定。
カードを見ないという奇策に動揺するダービー、対して承太郎はアヴドゥルの魂も賭けると言い出す。
アヴドゥルは自身が熱くなりやすく賭け事は苦手で有る事と承太郎を信頼している事を宣言し承太郎の策に身を委ねるという事でチップを増やす事自体は承認される。
暫くして「ブラフだ」と判断し、ポルナレフの魂でコール、そしてもう賭ける魂がないはずの承太郎に対してジョセフの魂をレイズ(上乗せ)。
入院している花京院の魂を賭けるよう持ち掛け、承太郎のポーカーフェイスを崩してから敗北をさせようと目論む。
しかし、承太郎は何の躊躇いもなく、その場にいない花京院の魂も賭ける*14。
その自信に、ダービーは凄まじいスピードと精密さを持つ''''{「『星の白金』でカードをすり替えたのでは?」}と疑心暗鬼に陥り出す。
ダービー自身はたとえ『スタープラチナ』のスピードでも眼前でイカサマが行われれば見逃さない自信はあったが、
勝負と無関係の動作とは言え、承太郎がいつの間にかタバコを咥えて火をつけるところ、ジュースを持ってくるところを見逃していた事に気づく。
そのせいでイカサマについても「何かやったのでは?」と可能性を無視できなくなっていた*15。
それでも「自分の前でイカサマはできない」という自信から、承太郎のハッタリだと断定して勝負に出ようとするが、
対する承太郎は「まだ俺のレイズの権利が残っている」と言い、なんと母親ホリィの魂まで賭けるという大暴挙に出る。これにはダービーのみならずアヴドゥルも驚愕(というよりドン引き)していた。考えてみれば旅の目的であり承太郎がダービーに倒されてしまえば尽きてしまう命ではあるため花京院の魂よりは妥当ではあるが。
正真正銘、もう賭けるものが無いはずの承太郎から出たこの言葉に、完全に冷静さを無くした状態で、
レイズするチップに代えて『DIOのスタンドの秘密』を賭けさせられてしまう。
なまじDIOのスタンドの実態を知ってしまっていたことが逆に足枷となり、最早勝っても負けても完全に詰んだ状態になってしまい*16、精神的に追いつめられたダービーはついにDIOへの恐怖が嵩じて取り乱す*17。
賭けるのか!賭けないのか!
ハッキリ言葉に出して言ってもらおうッ!
言ってやるゥゥゥゥ
コールしてやるゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
コール!コール!コール!
コール
コール
コール
「コ…」
「コ………」
「ココッコッ…」
声が出ない…。
ビ…ビビっちまって
こ…声が出ない……
い…息がッ!息が
ヒッ ヒック ククク
「コ……」
半ば自暴自棄になりつつも博打打ちの意地でコールを宣言しようとするが、DIOへの恐怖心には勝てず、声が出ないダービーはついには立ったまま気絶。
心の中で「降り」を選び、勝負に敗北した。
この勝負で極度の恐怖のあまりダービーの髪は真っ白になってしまい、精神も崩壊。
コレクションされていた魂も解放されたのだった*18。
勝負の直前、「2人ともあまりの緊張感で頭がおかしくなった」と言っていたが、結果的には自分があまりの緊張感で狂ってしまった。
その信念の強さからモハメド・アヴドゥル?に「真に強い男」、
承太郎からは「今まで出会ったどんなスタンド使いより危険なヤツ」「大した奴だ?」と敬意さえ表された。
実際、たった一人でジョースター一向を倒そうとし*19、かつあと一歩でそれができたかもしれない刺客であった。
敗北後のダービーの消息は不明だが、精神が崩壊して発狂したことやテレンスの「兄は再起不能になった」という発言から、ギャンブラーとして再起不能になっただけでなく、まともな日常生活も送れないほどの廃人になったのは確実だろう。
余談ではあるが、ダービーのセカンド・ディールを看破した承太郎だが、ダービーに雇われた(もしくは弟子の?)ディーラーの少年の仕掛けたイカサマは完全にスルーしている。
承太郎が気付けなかっただけなのかもしれないが*20、もしそうであるならば、この戦いの真の勝者はディーラーの少年と言うことになりえるだろう。後払いだとしたら報酬は貰えそうにないが……。
おそらく少年の腕はダービーよりも劣るはず……そのイカサマを承太郎が見抜けなかったということは、まさに「イカサマは心理的盲点を衝くこと、目がいいだけではイカサマとはわからない」ことの証明といえる。
一方、承太郎がダービーに勝利できたのも賭けの技術ではなく精神面で蹴倒したからこそ、すなわち「心理的盲点」を衝いた結果であり、上の言葉はまさにこの勝負の真髄を表している。
◆番外 vsDIO?
クレイジー・Dの悪霊的失恋?において、スタンドによる過去の再現という形でDIOとダービーの対決が描かれている。
弟?はすでに部下として忠誠を誓っていたが、ダニエルはあくまで対等な関係を要求。それに対してDIOがポーカー勝負を提案している。
「君は子供の頃の愛称がダニー?だったりしなかったか?」
勝負開始から早々に「ダニーなんて品のない名前をしているやつは箱詰めにして焼き殺してやりたくなる」と
酷い言いがかり揺さぶりをかけられ動揺するも、冷静にイカサマを実行。
自分には最強の役である「Aのファイブカード」、DIOには何も揃っていない「ブタ」を配ってのける。
勝利を確信しながら自分の手札を確認するが…
自分の手札にあったのは「ブタ」の手札。しかもそれはダービー自身が間違いなくDIOに配ったはずの組み合わせ。
この時ブタの手札にもハートのAが使われているが気にしてはいけない
驚愕と共にDIOの手元を確認するが、DIOの手札にはなぜか指紋の形に血の跡がついている。
いつのまにか自らの爪が割れ、指先が血まみれになっていることに気がつくダービー。
それはDIOの手札が「ダービーの手元にあったカード」であり「配られたお互いの手札を全く気付かないうちに交換された」ことを示していた。
混乱するダービーをよそに、DIOは勝負師としてのダービーの実力を高評価。
そして広げられたDIOの手札は…ダービーが最初に配ったはずのブタ。
ダービーが改めて自らの持つカードを確認すると、そこにあったのは「血の指紋がついたファイブカード」。
腰を抜かすダービーに対してDIOは「この勝利は貸付だ」と宣言する。
お前が負ける時は私の顔に泥を塗ったも同じ
もうお前は遊びであってもわざとでも決して負けられない
お前が負ける時 それは「崩壊」を意味する!!!
そしてダービーは「この男に従わないと死ぬ」「それ以外の全ては何もかも無駄」と悟り、部下としてジョースター一行を待ち構えることになる。
【スタンド】
わたしは『魂』をうばう「スタンド使い」!
賭けというのは人間の魂を肉体から出やすくする!
そこをうばいとるのがわたしのスタンドの能力!
スタンド名:『オシリス神』
破壊力-E
スピード-D
射程距離-D
持続力-C
精密動作性-D
成長性-D
名前の由来は古代エジプトにおける生命と農耕の神。
死後の世界を治める王でもあり、魂を奪い保管するスタンドなのもそこからであろう。
ちなみに壁画などでオシリスは緑色の肌で描かれ、
それに対応してかスタンドの『オシリス神』のカラーもその系統で彩色されている場合がある。
ヘッドランプ状の目を持つ大柄な人型スタンドだが物理的なパワーは持たないらしい。
◆能力
対象の肉体から魂を取り出して掌で加工、ギャンブルに用いる白黒のチップのような形に変えてしまう能力。
チップの表面には目を閉じた対象の顔が刻印されている。
人間の魂は「敗北」を認めるとエネルギーが限りなくゼロになる性質を持ち、その一瞬を狙って魂を引きずり出すスタンド。
弟のテレンスのスタンド『アトゥム神』と同タイプのスタンドであり、
ダニエルは「賭け事」で勝負を行う。
種目は何でもよく、右か左かの二者択一のようなシンプルな勝負でも相手が魂を賭けると請け負えば成立する。
本体であるダービーが負けを認めない限り奪われた魂は肉体には戻らず、魂が戻らないまま本体が死ぬと奪われた魂は死に向かう。
また本編の描写でも分かる通り、これから魂を取られる予定の人物の真っ白な状態のチップをいくつでも生成する事が可能。
アヴドゥル・花京院・ホリィのチップが最初から分割済みの複数のチップで出ている事からそれが分かる。
負けとは文字通り賭け事勝負での負けを指すが、たとえ賭け事自体がまだゲーム決着前であったとしても、本人が心の中で負けを認めてしまうとその時点で魂を抜かれてしまう。
最大の弱点は、このスタンド自体には物理的な攻撃力と、「賭け事を有利にする能力」は一切無い事。
できることは「魂の取り立て」と、「取り立てた魂のコインを好きな数に分割する」のみである。
つまり、勝負自体は完全に本人同士のガチンコ勝負である。
とは言っても、根っからのギャンブラーであるダービーにとっては弱点とはなり得ないだろう。
ダービーによれば証文さえあれば、賭けに参加していない人物相手でも能力を行使可能らしい。
同タイプの『アトゥム神』は相手が賭けに同意しなくても、それどころか賭けに自分が負けても、相手がショックを受けて魂に隙が生じればある程度干渉できる。
また先述の通り『オシリス神』には勝負自体に干渉する能力が無い分『魂の取り立て』の方に能力を割いている可能性も高く、
それらから考えるに『オシリス神』も証文を見せて相手にショックを与えれば魂を奪えるのかもしれない。
なお、テレンス含め、ダービー兄弟は劇中では明確に生まれついてのスタンド能力者である事が明かされている敵側では数少ない人物である。
証拠としては、兄ダニエルは子供の頃から弟テレンスのスタンド能力に気付き、怯えていた事や、少なくとも1984年*21以前からコインコレクションをしている為。
ちなみにDIOがエンヤ婆?と共に「弓と矢?」を手に入れたのは1986年、ディアボロ?を通じてである。
【余談】
- 函装版「ジョジョニウム」のあとがきによると、
直接的な暴力を用いずに戦うVSダービーは荒木先生にとってもひとつの新境地だったようで、以降彼のような変則的な勝負を挑んでくる敵スタンド使いが登場するようになった。
こうした敵と交戦する時は勝負を受けた相手に「グッド!」と返すのがお約束となっている。
- OVA版では殆どの敵がハブられるかアレンジが入っている中、VSダービーだけ異様に原作再現度が高かったりと謎の優遇を受けている。
- テレビアニメ版のカードモーションの撮影には、実在のマジシャンである紙磨呂氏が協力している。
- スタンド能力は似たような能力があっても何かしら差別化出来る所はあるが、ダービー兄弟のように完全上位互換の存在するスタンドは非常に珍しい。
一応、『オシリス神』は魂を分割で賭けれたり、魂を封じたチップも弟の人形とは違い完全に沈黙しているため、差別点はあるという意見もある。
- 名前の由来は歌手・演奏家の「テレンス・トレント・ダービー(現:サナンダ・マイトレイヤ)」から。
本人が拘っていた「Dの上にダッシュがつく」という独特な表記も氏に由来する。そして言わずもがな、弟テレンスの名前の由来でもある。
また、ジョセフがダービーに行った「名前を敢えて間違って読んで集中力を削ぐ」作戦は、映画「スティング」*22で主人公が敵であるギャング相手にポーカーをしたシーンが元ネタ。
また、「サマ師のキングのフォアカードをブタのブラフで降ろさせる」というシチュエーション自体が時代劇『必殺必中仕事屋稼業』の『負けて勝負』という回が元ネタと言われている。
- SFC版『ジョジョの奇妙な冒険』ではなぜかエンヤ婆の町におり、カードをめくり数字の大きさを競う勝負を仕掛けてくる。
負けたら精神力をとられるが、スタンド使いかどうかも定かではない。
勝つと普通に情報をくれる。というか、承太郎以外の4人は必ず負け、最後の承太郎で必ず勝てるようになっているので、勝負自体が茶番である。
- AC格闘ゲーム版ではプレイヤーキャラとしては参戦していないが、モードセレクト時と敗北時のコンティニュー演出として登場。
コンティニューせずにゲームオーバーになるとそのキャラクターは『オシリス神』によって「バーン」と挟まれてコインに変えられるという演出が見られる。
- 上記の移植版であるPS版のスーパーストーリーモードでは
■猫が右左どっちの肉をとるか
■表面張力コイン(ジョセフは水の量を増やす、ダービーは減らすイカサマができる)
■ポーカー(10から13とAのカードのみで行う。こちらのコイン枚数が少ないか、一定以上勝負を行うとブラフが出せる。)
以上の3種類のミニゲームが用意されており、非戦闘要員としてはかなり愛されている。
なお、ポルナレフは高確率で負けるが1/256の確率で勝利可能。
「なにいいいいいッ!」と驚いた後に「おいっ邪魔だッ!どきなっおっさん!」と押しのけられるダービーの姿は必見。
ペットの躾が足りなかったのだろうか。まぁ、猫は自由な生き物だから仕方ない。
ジョセフも展開次第で勝利可能。
ポルナレフの魂を返却してもらった後にアブドゥルと承太郎に任せる展開になる。
ポーカーは展開次第ではブラフなしで勝利可能。
もちろんこの後の展開はお察しの通りであり、自信満々に勝負を吹っ掛けておきながら、3度にわたって敗北すると言うかなりマヌケな事になる。
- アイズオブヘブンでは原作後に正気を取り戻したダービーが登場(ストーリー上では2回戦うことになる)。
杜王町のカフェを拠点にしているような描写が見られる他、承太郎へのリベンジを目的としており、DIOのためではなく、ギャンブラーの誇りを取り戻す為に戦うと宣言している。
精神的に屈したかつての自分を恥じており、メンタル面では原作当時と比べてかなり強くなっている。
コインコレクションは引き続き行っているようで、アルバムには承太郎専用の特等席があるとか。
『スタープラチナ・ザ・ワールド』のことも知っており、それを使ってこなかった承太郎に不愉快を感じていたほど。
なお、承太郎が時間停止を使わなかったのは「たとえ時を止めてもその先の罠をダービーが仕掛けてくるはず」「時を止めた程度ではダービーには勝てない」と判断していたためであった。
- アーケードゲーム「ラストサバイバー」?では、なんとバトルロイヤルの主催者として登場。
マップに配置される「ダービーの刺客」を倒しチップを集めることがラストサバイバー(優勝)への近道となる。
「さて!露伴先生?
追記・修正をするなら君の方にも携帯を渡したいと思うがまだ例の言葉を聞いていなかったな」
「……………いいだろう……ぼくの『魂』を賭けよう」
「グッド!」