第10話(最終回)【きっと、また会えるよね】

Last-modified: 2009-03-20 (金) 11:31:03

八神家。
夕食の準備をしているはやて、それを手伝うシャマルとシグナム。
ザフィーラは、居間にちょこんと座って通販番組を興味無さそうに見ていた。
そして、ソファに座りメイは悲鳴を上げている自分の体の節々に塗り薬を塗っていた。
「だっらしないなぁ~、メイ…。」
メイの後ろでその様子を眺めていたヴィータが溜め息混じりにそういった。
「…う、うん…。」
と返事しつつも薬を両ふくらはぎに、両腕にすりこむメイ。
「しかたないんちゃう?メイちゃん、管理局の戦技室でシグナムとザフィーラにしごかれてたみたいやし…。」笑いながらそう言うと、はやてはスープをかきまぜて、少量お玉で掬い、小皿に移して味見する。
「…うん、これでよしと。ほんならシャマル、皆の分のお皿の用意をして、シグナムは机の上にナプキン敷いて箸とスプーンをだしてやぁ。」
テキパキと指示をだし、それに従うシグナムとシャマル。
メイも手伝おうと腰をあげたが、シャマルが微笑みながら、座っておくようにと手で促した。
今はヤマトとの戦闘の六日前だ。
シグナムがヤマト対策を、ザフィーラが接近戦を教えてくれている。
もちろん、管理局の仕事の手伝いをしながら、その合間に訓練をしている。
訓練中は自分の武装をフルに活用すべく、ヴィータ、シグナム、ザフィーラから指導を受けている。
また、朝は早く起きて、ザフィーラの子犬形態と長距離ランニングをしなければならない。
ヤマトと戦う前に果てるのでは?と言うのがメイの本音である。
「できたで~、皆、いただきますしよか?」
八神家全員が食卓につき、はやての号令で皆が箸を手にとった。
「どやぁ?メイちゃん、おいしい?」
肉を頬張ったメイを見ていたはやてが聞いた。
「…ゴクンッ!うん、おいしいよ。」
「はーやーてぇ!何でメイのだけ量が多いんだよ?」とむくれるヴィータ。
確に、メイのお椀、皿に盛られている料理は、他のものたちよりも一周りほど多い。
「メイちゃん、六日後にはヤマト君と決闘やいうてたやんか?
せやから、その前に沢山食べて、力をつけんとな。」微笑み、メイを見るはやて。メイもはやてに笑って
「ありがとう…。」
とお礼を言った。

アースラ食堂。
「ヤマトは、オールレンジだね。」
黙々と料理を完食していくヤマトにフェイトが言った。「でも、パワーと遠距離戦ではメイちゃんに勝ってるよね?」
なのはが言った。
「あいつは接近戦主体だからな。そのためにはこっちも接近戦に注がなければ…。」
メイの格闘戦は強い。でも遠距離ばっかで戦っていると勝負にはならない。
故に、オールレンジ(主に遠距離)で戦うヤマトは相手の格闘を見極めなければならない。メイも遠距離対策は取っているだろう。
その為に、G-バードの様なチャージに時間がかかるような砲撃ではなく、なのはのようなアクセルシューターみたいにしたい。格闘はラケルタがゼータのハイパーメガランチャーではなくてライフルのロングサーベルで身軽な接近専用武器が望ましい。
「射撃魔法は多いけど、一応、前になのはが教えてくれた射撃魔法なら少しは使えるよ?」
(皆さん、もうお忘れかもですが…一応、ヤマト君は高度な射撃の練習をしていました。)
「うん、じゃあ、次からは私が射撃を教えるから…、フェイトちゃんは対格闘戦を…。」フェイトは快く承諾し、サンドイッチを頬張った。

アッというまに時間が過ぎ、ヤマトもメイも、それぞれに修練を積み、周りの者たちはその手伝いをした。

勝負前夜、メイは八神家のベランダで星を眺めながら、統合世界のことを考えていた。
自分がこの世界に来て、だいぶ経った。
色んな事に巻き込まれて、状況を理解するのに必死で、今までゆっくり考えることもなかったが、それでも全く心配していなかったと言うわけではない。
ただ、気になっても自分ではどうにもできないし、シグナムたちははやてのことで手一杯で、メイの世界の探索どころではなかった。「…どうなったんだろ…。」ふと口から出る言葉。
「どうしたんですか?」
「シャマルさん…。
自分の世界のことを考えてました。」
「明日の事を心配しなくていいんですか?」
と、意味ありげな笑顔を浮かべながら、ホットミルクのカップを手渡した。
「いや…、もちろん、心配ですよ?
勝てるかどうか、不安ですしね。」
カップを受取り、一口すする。ホットミルクは甘く、寒空の下で冷えたメイの体を暖めた。
「取り合えず、やれることはやったんだ。」
「あとは、一条寺メイ。お前が全力を出せるかどうかが勝敗の鍵だ。」
カップを持ったヴィータとシグナム、ザフィーラもやって来た。
ザフィーラは無言でこちらを見ているだけだ。
「シグナム、うちもそっちにつれてってやぁ…。」
家の中からはやての声が聞こえた。
一旦、シグナムが家の中まで戻り、はやてをだっこして連れてくる。
「いよいよ明日やな。がんばってなメイちゃん。
明日は勝っても負けても、ご馳走用意しとくからなぁ。」
「うん、がんばるからね。」はやての言葉にメイも答えた。
「それじゃあ、メイちゃんの健闘祈って乾杯やぁ。」
五人はカップを打ち付けた。

「いよいよ。明日だな…。」少し遅い夕飯のハラオウン家。
クロノが口の中のものを飲み込みながら言った。
「…あぁ。」
味噌汁をすするヤマト。
ちなみに今日はなのはが泊まりに来ている。
「ヤマト君、明日はがんばってね。なのはも応援するから。」
「格闘には気を付けて、冷静にやれば、ヤマトなら、きっとできるから。」
「華から格闘戦で行くつもりさ。砲撃は切り札です。なのはもフェイトも、訓練に付き合ってくれてありがとな。…それからクロノも…。」
「とってつけたように言うな!
と、まぁ、君にも今回の闇の書事件では、色々と世話になったからな…。
明日は、期待してるよ。」クロノは顔を赤くしながら、ご飯を掻き込んだ。
そんな、ヤマトとクロノを見ていたなのはとフェイトは顔を見合わせて笑う。
「ところで、リンディさん。統合世界は、俺がもといた世界は見付かりましたか?」 会話に混ざらずせっせと鍋に野菜や肉団子を足しているリンディ手を止めた。
「それが、まだ見付からないのよ。
一応、あなたとメイさんの発言を元に探してはいるんだけどねぇ。」
お玉でアクをすくいとっていく。
「そうですか…。」
アムロさんやブライト艦長などはどうしてるだろう。
ヤマトもメイと同様に、自分のいない統合世界、特にロンド・ベルのクルーと戦況を心配していた。だが、帰る方法が見付からない以上、ジタバタしていてもしょうがないし、管理局が探してくれているのだから、まかせるしかなかった。
落胆した表情を見せるヤマトにリンディが言う。
「管理局も全力で探しているから…、今は明日のことを…ね?」
「はい、もちろん、負けるつもりはありませんよ?メイだって望んでいますから」
「そう…、それを聞いて安心したわ。
これが終わったら、どこか温泉でも行きましょう。
もちろん、なのはさんも。」
「温泉、いいんですか?」
「いいんですか?リンディさん?元の世界やここでは戦いばっかだったから温泉でリフレッシュしたいですね」
なのはも、ヤマトも嬉しさを隠せないようだ。
賑わう八神家、賑わうハラオウン家。
こうして、夜がふけていく。そして明日は決着をつける日。
メイもヤマトも跳ねる鼓動を押さえ付け、眠りに着いた。

当日、海鳴市海上に結界が張られた。
その広い空間に二人の少年少女が宙に浮いている。
一人は一条寺ヤマト。
フリーダム、ゼータ、ダブルゼータ、F91、Hi-νを合体したオールスタイル。紺と白をベースにしたバリアジャケットを装着し、背には翼のようなフィンファンネル3枚、計6枚の蒼い魔力翼を展開している。そして両手には、白に蒼のラインが入った剣に可変可能銃型デバイス、ファーウェルが握られている。
もう一人は、一条寺メイ。
ジャスティス、エピオン、メリクリウスを合体したオールフォーム。赤に白をベースとしたバリアジャケットを装着し、背には赤い魔力翼と兵器がある。
翼は閉じられたままだ。
そして両の手の甲には鉄甲を装着しており、右手にはデバイス・ファフニールのビームソード、エピオンソードが握られており、左手には熱がこもっており、相手の武器強奪・破壊にも使えるシグナムのレヴァンティンのシュランゲフォルムに似たヒートロッド。
睨み合いが続き、二人の戦闘態勢は整っていた。

管理局、アースラ。
ブリッジに巨大な空間モニターが開いている。
左右に小さなモニターがヤマト、メイのみ写していた。アースラスタッフは仕事を交代しながらこの戦闘を見ることになっている。
エイミィは二人の魔力、バイタル計測を行う。
リンディ、なのは、フェイト、アルフ、ユーノ、クロノ、はやて、シグナム、シャマル、ヴィータ、ザフィーラは皆、モニターの前に集まっている。
そして、口々にがんばれ、がんばれと呟いていた。

『それでは始めます。準備はいいかしら?』
ヤマトとメイ、二人は頷く。ヤマトの右腕には黒いリボン、左腕には桜色のリボンが巻かれていた。
なのはとフェイトが巻いてくれたものだ。
それが、力を込めた際に微かに揺れた。
メイのバリアジャケットのベルトには、ヴィータの好きな兎のキーホルダーが下がっている。
また、左右の手首には白いリストバンドをつけていて、緑の刺繍でがんばって下さいと書いてある方はシャマルが刺繍したものだ。
紫色でがんばれや!と書いてある方は、はやてが書いてくれたものである。

『それでは……。』
リンディの声にヤマトとメイの、アースラスタッフの緊張が高まる。
『始めッ!!』
声が響き、ヤマトとメイが同時に動き出す。
皆が息を飲む中、二人の戦いが始まった。

メイは即座に距離を詰めようとする。
しかし、ヤマトがそれをさせない。カートリッジを一発消費し、翼を展開。
爆発的なスピードでメイから離れる
「間合いを離した!?」
声を漏らすメイだが、これは想定範囲内だ。
『ルプスビームライフル』
銃を構え、牽制攻撃に入る。

「よし、ヤマト、まずは自分の間合いをとれたな。」
クロノがガッツポーズをとった。
「行け!ヤマト!!」
「ヤマト君そのまま逃げて!!」
「がんばれ~、ヤマトくん!」フェイト、ユーノ、なのはが叫んだ。
もちろん、現地の彼等にはこの声援は届かないのだが、なんと言うか、つい声を出してしまうのだ。
八神家一同の顔は真剣で、特にはやてとシャマル、メイが心配なのか、落ち着かないようだった。

「全てを高めるエピオンシステムを出さないのか!」
ヤマト目かげて放たれる緑色の一本の奔流。
ヤマトは体を逸らすだけで難無くかわし、距離を縮めようとする。
「やっぱ、これじゃ勝負にはならない!!行くよ!」
『ハイパービームサーベル・ダブルゼータ』
「こっちも!ファフニール」
『ビームソード』
ヤマトはダブルキャノンの砲身からラケルタより大きい白い筒を一本取り出して、メイはルプスをビームソードに変える。二つとも同じ出力の魔力刃。そして大きい魔力刃がぶつかり合う!
メイの動向を確認しながら、ヤマトは片方の白い筒から魔力弾をメイに目がけて撃つ。
『プラネイトディフェンサー』
メイの周囲に展開するいくつかの円盤らしきものが電撃を放ち、魔力弾を無効にしてしまう。
2人はいったん離れ、メイはヤマトをじっと見据え、ヒートロッドを構えた。
ニューハイパーバズーカから薬筒が二つ、弾けとび
『シュラークブレイズ』νハイパーバズーカを、左肩に担ぎ、新たにカートリッジを充填しようとしたその時、メイが動いた。
左手のヒートロッドが、ヤマトに向かっていく。『パッシュ』
ヒートロッドに絡まるニューハイパーバズーカ。「ッ!?」
『ヒート』
ヒートロッドは熱を放ち、ヤマトは急いで左肩からバズーカから離れて行き、バズーカが爆散された。
『ハイパーメガランチャー』
フリーダムが長身のある銃へと変化する。
ヒートロッド、放つタイミングをきめているのはメイだ。
毎回メイは腕に内蔵されているヒートロッドを伸ばしては武器に絡ませて、破壊や強奪をしている。
ならば、絡まる前に斬る!
これが今回、クロノから教わった対策だ。
一瞬でもメイの反応が遅れればいい。
そして距離を取るためには自分だけが離れるよりも、相手も離したほうが距離を稼げる。
その為のビームコンフューズだ。

「…何?」
メイは何が起きたかわからないまま、態勢を建て直す。

「よし、ヤマト、そこだ!」
拳を作り、振り上げるクロノ。
「ク、クロノ?」
「あら?」
「ク、クロノ君?」
クロノの発言にフェイト、リンディ、なのは、エイミィが目を丸くする。
さして、表情を変えなかったのはレティ・ロウラン提督だけだった。

目前にまで迫る蒼き閃光。カートリッジを消費し
『ラウンド・シールド』
蒼い閃光を寸でのところで魔力の流れを発生させる。閃光は、まるでメイを避けるようにして曲がっていった。
「ッ!?砲撃が…曲がった?」メイは驚きを隠せなかった。

このシールドは、対メイ戦用にヤマトがオリジナルで産み出したものだ。
なのはとの訓練中に何度も撃墜されるなか、ヤマトは正直、なのはの砲撃に防御は無意味なのでは?
と思い始めていた。
そこで、普通にシールドを展開して駄目なら、強化すればいい。
そう考え、カートリッジを消費することで強固な障壁を作り出した。
だが、結局、なのはのディバイン・バスターを防ぎきることはできても、その代償に魔力を根刮ぎえぐりとられ、防ぐためだけに攻撃に移るための魔力をも使わなければならない。
それでは防いだ意味がない。
反撃できなければ、防御はただの時間稼ぎにしかならない。
そんな試行錯誤の末に編み出したこの障壁は相手の砲撃を反らすと言うもの。
なのはやフェイトたちの障壁とは性質も形状も違う。小型で投躑可能。
カートリッジを消費し、圧縮魔力を一気に噴射する。魔力の流れをつくることで相手の格闘をその魔力の流れが反らすのだ。

メイは通常射撃を連射する。
放つ魔力弾はヤマトを避けていく。
「なんで!」
ビームソードの切っ先がヤマトの目の前を斬った。
離した筈の間合いはすでにメイの間合いになっていた。
『ラウンドシールド・パージ』
迎え撃つしかないと判断したメイは、覚悟を決め、ソードを構える。
『ツヴァイスラッシュ』完全なるヤマトの間合いで超高速の突きが放たれた。
「フッ」
ヤマトは少し微笑んだ。
『ビームコンフューズ』
ヤマトはパージしたラウンドシールドに通常射撃を行った。それにラウンドシールドは過剰反応を起こし、爆散して、魔力刃の破片が散らばった
それは障壁みたいなもので攻撃にも防御にも使える魔法。

「もらった!」
「いけぇーヤマト君!!」
フェイトとなのはが声をあげる。
対する八神陣営はメイの名前を呼び、あかん!などの声が聞こえる。
しかし、シグナムは腕を組み、少しだけ、口の端をつり上げた。

メイはヤマトのトリックから放たれる障壁の鋭い欠片に対し、左半身を前に出す。
そして、左手をラケルタにしてハイパービームサーベルの側面に刃を這わせ、そのまま左足を軸にしてターンし、振り向き様に、右のソードで一閃を見舞った。
一方、ヤマトは横一閃を外し、メイの左サーベルでハイパービームサーベルを弾かれバランスを崩している。

突きは正面からの力には強いが、他方向からかかる力には弱い。

シグナムがヤマトとメイの戦闘を元に、あの強力な突進力を持つ突きの弱点を見い出していた。

『ラウンドシールド』
ファーウェルによって自動で張られる障壁。
バチィッッ!!!!
サーベルの直撃を全力で拒絶する。
ファフニールからカートリッジが消費された。
形成される2つの魔力弾。独特の音を発し、紫電を這わす。
「ッ!?」
メイがサーベルによる攻撃を引っ込めった瞬間。
『ラウンドシールド・Iフィールド』
砲撃を反らすための障壁をヤマトは張った。
『ヴァリアント』
バシュッ!
「そんな砲…!?しかもアークエンジェルと同じ名前だ」
砲撃事態はそれたが、体を衝撃が駆け抜ける。
(距離が近いからなのか?)
二発目。
至近距離でのクスィフィアスの連射がヤマトを襲う。
三発目。
ヤマトの脳が揺れる。
(何発も喰らうのは危険だ)ラウンドシールドを解除し、カートリッジを消費。
翼を展開して、上昇することでヴァリアントから逃れる。と、そこへ
『ファンネル』
切り放された六個の小型兵器がヤマトを包囲する。
速度も射撃角も全てが不規則な砲撃魔法。
「ならば、こちらもだ!」
『フィンファンネル』
ヤマトも後ろの翼を切り離して六機の無人兵器を展開。
ファンネル合戦で互いのファンネルは本体ではなくファンネル同士で戦っている。
互いに擦れ違う二種類のファンネル。そしてファンネルの魔力が無くなり、使用者の元に戻って、チャージする
「ファンネル合戦は引き分けか」
「そうみたい」
互いも認める合戦。2人の激闘は今だ続く。
『ハイパービームサーベル・ゼータ』
『ハイパービームソード』
「「これで、決める!!」」
必殺の一撃が、魔力の濁流が荒れ狂う猛獣のごとく繰り出される奔流みたいな二つの魔力刃。
鍔迫り合いになる。どちらかが気を抜けばホームランになるのは間違いないだろう

戦闘をみているもの達は皆、ヤマトの敗北を確信した。片方の魔力刃で高出力の魔力刃を抑えられるわけがない。片方を抜刀してもタイムログがある。
なのは、ユーノ、クロノ、アルフ、リンディも、そう思い、敗けを確信した。
エイミィが計測しているヤマトとメイのバイタルサイン。そして魔力。
ヤマトの魔力が減少し続ける。
「まずいな、このままじゃ。」
「うん。鍔迫り合いに勝ったとしても、攻撃に移るだけの魔力がないと…。」
クロノの呟いた一言に、ユーノが言葉を返す。
フェイトは目を閉じ祈った。
あれだけ、練習したんだ。あれだけ、なのはにボロボロにされて、それでも勝つためにがんばったじゃないか!
目を開き、
「ヤマトッ!!!」
名前を叫んだ。

ハイパービームサーベルの魔力刃の出力が少し弱くなる。
(こっちは魔力で上げているんだ、そう長くは…向こうはカートリッジ…)
苦悶の表情を浮かべ、ヤマトは耐える。
もう持たない。という気持ちと、負けたくない。という気持ちが競り合い出す。「ま…だ……ぐっ。」
まだ終わらない。
いや…終われない。
フェイトも、なのはも自分を勝たせる為に協力してきれた。
時間を裂いて、管理局の仕事をこなしながら…。
まだ全力を出してない。
出しきれていない。
「負けて…たまるかぁぁぁああぁ!!!」
何かが弾ける、初めてではないこの感覚。
ハイパービームサーベルの魔力刃の出力がどんどん上がるいや自分の背丈の2倍先まで達した。
消費されるカートリッジ。圧倒的な出力で鍔迫り合いが続く。
「なに!?」
自分を押しているヤマトを目にし、メイは足払いでヤマトの態勢を一時崩した。
突如、爆発が起こり、煙があがる。
その煙をかきわけ、襲い来る一本の極大の砲撃。
『G-バード』
声と共に、爆発を起こし、無数の砲撃がメイに向かい放たれる。
『プラネイトディフェンサー』
二本のサーベルと電流障壁を駆使して凌ぎきり、先ほどまで煙をあげていた場所に視線を向ける。
ヤマトの姿は、そこにはなかった。
『Warnning!プラネイトディフェンサー』
ズンッとメイの頭上に張り出された障壁に衝撃が走る。
メイが見上げたそこには、貫かれた障壁と突き刺さったハイパービームサーベル。
そして、無表情なヤマトの姿が目に入った。
ガシャンッ!!ガシャンッ!!
ハイパービームサーベルから同時にカートリッジが一発ずつ消費される。
「ヒットエーーンド!」
『アルティメットクロス』障壁が砕けちり、辺りの空間が歪み、爆砕。
海は水しぶきをあげ、メイは超スピードで海面に叩きつけられた。

「し、信じられない。ヤマト君の魔力が…跳ね上がった…。戦闘開始時よりもはるかに高い数値です。」
「すごいわね。まさか、ここまでとは思っていなかったわ。」
魔力の計測をしていたエイミィが驚きの声を上げ、リンディは感嘆の声を漏らす。
「フェイトちゃん、ヤマト君、やったね!」
なのはがフェイトに微笑む。だが、フェイトの表情は真剣そのものだ。
まだ終わってない。
そんな表情をしていた。

「メイッ!!」
声を上げるヴィータ。はやてもシャマルも、シグナムも声を上げる。
ザフィーラも口をあけたまま固まっていた。
その時、再びエイミィが声を上げた。
「そんな…メイさんの魔力もッ!?」

「やったのか?俺は…、勝ったのか!」
先ほどまで勝ちを確信していたが、なんだか信じられなかった。
あっというまの決着。
やった…勝った!
自分の力で、一対一で勝ったんだ。模擬戦に終止符を打ったのだ!
『ハイマットフルバーストミーティアシフト・エピオンシステムフルドライブ』
「ッ!?な…何?」
慌てて回避行動をとるヤマト。
海に空く巨大な穴。
そこから噴き出す魔力のうねり。
そして姿を現すメイ。
バリアジャケットはリアクターパージされ、赤色のインナースーツが剥き出しになっている。
メイはもう、一発の被弾もダメージも許されない。
ヤマトもだ。フルアーマーは破壊され、さらに機動性重視にバリアジャケットをパージしている。
早くもあとがなくなっていた。
『Reload.サーベル&ライフル』
「……行くよ…。ヤマト…」
新たにカートリッジをリロードし右手にソード、左手にメガルプスライフルもち、メイは相手を見据える。
先ほどまでとは明らかに違う眼。鋭く、相手を見据え、翼が展開された。赤い光が輝きを増す。
「……。」
ヤマトも無言のままに翼を展開した。見とれてしまうほどに色鮮やかな光が翼から噴き出す。

モニターしている全員が息を飲む。
誰かが生唾を飲み込んだ音が、静まったアースラ内に響いた。
刹那。
交錯する真紅の閃光と蒼色の閃光。
舞い散る紫電、走る稲妻。空を自在に駆ける二つの光。撃ち合う剣。交錯する魔力弾。
そして、相手とのぎりぎりの距離ですれちがうヤマトとメイ。すれちがう蒼と真紅の翼。
ヤマトが咆哮し、通常ハイパービームサーベルを操り、メイを目がけ振り下ろす。
メイはソードで受けるが、容易く弾き飛ばされる。しかし、宙返りをしてうまく体制を建て直し、そのまま攻撃に移り、すれちがい様にヤマトに胴切りを見舞った。
もちろん障壁のお陰で、無傷ではあるが衝撃が体を駆け抜ける。
相手はバリアジャケットを損傷しているのだ。
障壁を貫通させ、一撃当てればどちらかの勝ち。
だが、その一撃がなかなか当たらない。
それがヤマトをいらつかせていた。

「まずいな…。」
シグナムが呟いた。その横で頷くザフィーラ。
「へっ!?何でなん、シグナム?」
メイの方がヤマトにダメージを与えているように見えるはやてにとって、シグナムとザフィーラのこの反応は意外だった。
「主、私たちが戦闘時に装着している騎士服は自身の身を護るためのものだということはご存じですよね?」
頷くはやて。そして、気付く。
「ということは、メイちゃん…。」
「そうだ。騎士服を損傷したメイは障壁を貫かれたら、もうあとがない。」
腕を組んだままのザフィーラが言った。
「そして、相手は障壁貫通に特化した剣士。」
シグナムが続けた。
「もし一撃でも当たったら、メイの敗けは決まりだな。」
ヴィータが声音を低くして続けた。
「…たぶん、メイさんには相当なプレッシャーがかかっています。」
シャマルが不安そうに言う。
「集中力をきらせば、一条寺メイは負ける。
持久戦は…不利だ。」
シグナムのその言葉に、はやては頭を振る。
「あかん、みんなそんなことばっか言うとったらあかんよ!メイちゃんはうちの家族や!応援してやらなあかん!!
がんばれぇ!」
八神家一同によるエールがメイに送られた。

『ディバインバスターwithフィンファンネル』
ヤマトがなのはから教えてもらった砲撃魔法。
ヤマトのハイパーメガランチャーと展開するフィンファンネル。
数は7つ。魔法陣を発生させて発射される七つの蒼色の奔流
放たれた奔流は、メイに向かって一直線に放たれる。
着弾し、舞い上がる煙。だが、煙を裂いてメイが姿を見せ、右手のソードをメガルプスに連結。銃剣ルプスとなる。
飛び散る薬筒。
放たれる奔流をヤマトは避け、ラウンドシールドを発生させて、メイに向かって手裏剣見たいにして投げた。
「…くっ!!」
顎を伝う冷や汗を拭う暇なく、シールドを展開。
しかし、弾き飛ばされ、バランスを崩し、上半身がのけぞる。
『MEPE展開・ルプスラピッド』待ってましたとばかりにカートリッジを消費。残像を残して、ルプスの連射がメイを襲う。

MEPE展開・ルプスラピッド、高速射撃戦闘が得意なヤマトの魔法。カートリッジを一発消費することで、移動する際に質量を持った残像が発生、その残像は本物に近く、相手は間違って捕捉してしまう。さらに一定の間隔でしか発射できないルプスを出力を落とすことによってマシンガンみたいな高速連射ができる。
その威力はガンダムF91すら凌駕すると言われている。

猛然と迫るヤマトの突攻。
「ファフニール!」
『Alright, Double Shield!』
メイの前に縦一列にシールドが張り出される。
そして、メイは腰にファフニールを下げた。
「そんなものでは!!」一枚目のシールドを容易に貫き、二枚目に差し掛かる。やや抵抗され、しかし、それでも止まらない。
見事に突き破り、残りはメイだ。
メイは両の手の平に、手より一回り大きい環状魔法陣を発生させた。
『フォルティス・ヴァリアント』

腰に下がっているファフニールとファトゥムの砲台から消費されるカートリッジ。
「もらったぁぁああ!!」
フォルティスはできたとしてもヴァリアントはまだ生成途中だ。

どう見ても間に合わない。はやてとシャマルが目を閉じた。
「ヤマト!駄目だッ!!」
フェイトが声を上げた。なのはもクロノ、ユーノ、アルフ、リンディは突然の大声にフェイトに視線を向けた。

「なっ!?」
バチィッ!!
ラケルタを白刃取りし、ヤマトのスピードに合わせて後ろに翔ぶメイ。
「つっ!やられてたまるもんですか!!」
咆哮とともに生成されたフォルティスとヴァリアントを放った。
「うわぁぁ!!」
ヤマトは弾かれ、後退する。「くっ!ファーウェル!!」
二つのファーウェルを両腰にマウントさせる。
『ヴェスバー!』
『メガキャノン!』
閃光がぶつかり合い、爆散。
『GNソード・ハルバードモード』
ヤマトがGNソードを連結させ、一閃を見舞う。
しかし、メイはそれを後退することでかわし、ルプスを連結。
カートリッジを消費し太い奔流を放った。
無情にも、その奔流はヤマトのによって反らされる。

結界内に魔力が充満する。こんなところでスターライトブレイカーを放てば、とんでもないパワーを秘めたものが出来るだろう。
そんな中で、戦うヤマトとメイ。
結界内が振動を始める。

「くっ!!」
冷や汗がメイの頬を伝う。ヤマトの一撃はメイを障壁の上からでも容易に叩き落とすだろう。
だから直接障壁で受けることはしない。
「いい加減、負けを認めろ!!」ヤマトの斬撃をかわし、その際に射撃を放つ。
二刀の剣による斬撃を交しながらヤマトの間合いで射撃を放つメイ。
避けきれない部分はライフル形態のままで受ける。
ヤマトの蹴りは障壁で受け、すかさずメイも蹴りを放つ。
一方ヤマトは苛立つばかりだ。自分の間合いで攻撃が当たらない。それならばと、距離をとりフィンファンネルとアクセルシューターを生成、メイに向かって放った。
「そんなもの!!」
メイが回避しようと行動をとったその時、フアクセルシューターの進行方向に障壁が発生、反射しメイに向かっていく。
「なっ!!こ、これは!?」
『シールド』
フアクセルシューターが直撃、炸裂し、爆煙が上がる。
『ダブルG-バードセットアップ・バイオコンピューター稼働・ゼロシステム・アルティメットドライブ』
煙から逃げるようにして出てくるメイの視界に入ったのは、ヴェスバーの強化版の発射体勢に入っているヤマトだった。
「砲撃っ!?なら、私は!!」『ハイマットフルバーストミーティアシフト・エピオンシステム・アルティメットドライブ』

「二人の魔力からして、これが最後の大技…だな。」
エイミィがモニターに表示している二人の残り魔力を見て、クロノが言った。
「決着が…着く!」
シグナムが言う。
「だけど…、砲撃は手数の多いメイちゃんに有利なんじゃ?」
なのはが呟いた。

ヤマトは発射体勢に入ったまま、ヴェスバーで空になったカートリッジをリロードする。
(ファフニールのカートリッジを空にすれば、俺の勝ちが確定する。リロードする暇を与えない!でもお互い、アルティメットドライブ…こっちもカートリッジが空になる可能性が高い…ほとんどは魔力でやっているけど、バイオとゼロの起動で8発、発射で4発消費する。さっきので4発消費している…次のスターライトブレイカーで2発消費。
ファーウェル、ファフニールとも装填弾数は左右合計二十発。
さっき、メイがリロードしたときから、数えてる。連結バスターに四発。ヴァリアントに二発、フォルティスに二発。
エピオンシステム起動に四発。他武装起動に六発。
計二十発。
ファフニールの残弾はゼロになるかもしれない!ファーウェルの残りのカートリッジは2発。勝利はほぼ間違いなく確定だろう。どう考えても荒業だ)

ヤマトはハイパーメガランチャーから一発ずつカートリッジを消費。
空気中から魔力を掻き集める。

「これって…なのはの!?」
思わずアルフが声を上げた。
「スターライトブレイカーに似てるけど…。」
とユーノ。
「あぁ、多分、こうでもしないと、あのシステムには勝てないだろうな。
だけど…これなら…ヤマトは勝てるかもしれない。」
「なんで?」
クロノの言っている意味がわからないアルフにシグナムが説明する。
「そうだな…。一条寺メイのミーティアは拡散型。相手の数が多かったり、敵が大きければ大きいほどその威力を発揮する。
他方、一条寺ヤマトの砲撃は万能型。敵の種類問わず何でも扱える。フィンファンネルという特殊武装で死角のない攻撃もできる。
この時点でパワーの差がでる。押し合いになれば、一条寺ヤマトに優勢だ。」
「あぁ、一見するとミーティアは太い魔力の奔流に見えるけど、実は数が多いだけだからね。」
相槌を打つクロノ。

ヤマトは笑う。勝利を確信した。ファフニールにはもうカートリッジがない。
「ハイメガキャノンを超える砲撃魔法!!」『Burst!!』
「これで決める!!」
『Dischage!!』
二人の咆哮が木霊すと同時、轟音とともに放たれる砲火。
メイは押し合いをすると決め込んでいた。
しかし、確かに見えた。
ヤマトが放つと同時に動き出したのが…。

辺りはG-バードとミーティアフルバーストの激突、反応、爆散によりすさまじい光の輝き放つ。
モニターしていたなのは達は目を閉じた。

不快なほどの眩い光の中をヤマトは飛翔する。
『Till The Enemy.500, 400, 200, 100』
距離が縮むのが早くなった。意味するところは相手もこっちに向かってきているということだ。
恐らく、カートリッジのリロードはしていない。
こちらが動いたあとすぐに動いたはず。
メイの影をうっすらとだが捕えた。
『Highspeed…Warnning!!
Shield!!』
ファーウェルが張ったシールドは全包囲。
頭上、四方八方、足下からのランダム砲撃。
「そんな…、カートリッジは…もう…!!」
ヤマトの視界の人影、メイが目前まで迫っていた。
ハイパービームサーベルの一閃で薙払う事を決め、長剣を振り下ろす。
MEPE展開のスラストで本来ならば使うはずだった強化された魔力刃が、メイのビームソードによる一閃を防ぎ、弾く。
その直後に閃く真紅の閃光。通常射撃ッ!?
辛うじてかわすヤマト。

メイはヤマトが動いたのを確認したあと直ぐに動き出していた。
両方の武器の装填弾数は二十発。しかし、最大は二十二発だ。
最後の二発を使い、十枚のうち、四枚だけを飛ばす(カートリッジが足りないため四枚しか飛ばせない)。残りの六枚の内、二枚は四枚の翼の魔力にプラスする。やがて見えるヤマトの影。
メイの残りの魔力はない上に、カートリッジはゼロ。リロードする暇は…ない。自分の魔力も限界に近い。ファンネルにより、案の定動きを止めたヤマト。
メイは迷わず右のヒートロッドで斬りかかる。しかし、強化されたサーベルが斬撃を阻み、弾いた。
反動で持っていかれる体をそのままに、ライフル形態の左のファフニールで直ぐに射撃。
ヤマトが体勢を崩したのが目に入った。
(今だ!!)
反動を利用、半ば強引にターンし、右のファフニールをショットライフル形態に変え、ヤマトの額につきつけた。

光が止む、もはやヤマトも自力でシールドを張るだけの魔力は残っていなかった。カートリッジを使って張ることはできるが、隙が生まれる。
目の前にいるメイは、ヤマトに銃口をつきつけたまま、引金を引こうとはしなかった。
(何のつもりだ!?こ、降参を待ってるのか?)
光がはれる。
モニターしている皆が沈黙した。
そして、メイが口を開く。「私の…負けだね…。」

「えっ…、な、何で。唐突に」
メイが引金を引くと、カチッと音がしただけだった。魔力切れ、一方のヤマトはまだ魔力刃健在、カートリッジも残っている。
「弾切れ!?」
「私はもう魔力が残ってない。でもヤマトは…。」
言いたいことは分かる。だが、納得いかない。
なおも何か言おうとするヤマトにメイは言った。
「また、やればいいよ。…これから、何度でも。」
「な、納得いくか!!俺はメイに致命打を一回も…。」
「でも、私はバリアジャケットを損傷しているし、ヤマトは…ー」
『メイさん、ヤマト君!今からアースラに転送ー…。』
メイの言葉を遮り入ってきたエイミィから通信が途絶える。
そして、ヤマトとメイ、二人は異変に気付いた。
ミーティアフルバーストと収束G-バードが衝突した場所に淀みが出来ている。広がりくる淀。
不思議と嫌な感じはしなかった。
「ヤマト、これって…。」肩をすくめるメイ。
「でも、嫌な感じはしない。そんな気がするんだ」
「嫌な感じって?」
「命の危険とか…さ。淀みの中心にある白い光、見えるだろ?眼前に」
言われてみればそうだが、しかし、得体のしれないものは怖い。
「まぁ、それは俺も怖いけどね。」
「どうする?」
「とりあえず、応援またないと…、結界を破るだけの魔力も、もうないな。」
「ファフニールもファーウェルも、警告しないみたい。」
危険ではない…。そういうことだろうか…。しかし、自分が危機に面して気付いてないとき、いつも知らせてくれいたのはファーウェルだった。
恐らく、メイのファフニールもそれは同様だろう。
「前に…グリプス戦役の終盤の時にアーガマクルー一同で言ってた事を覚えてはいるか?」
『みんなで生きて帰ろう。地球圏もコロニー圏も争いがない世界にそして人類の革新が待っている』
「…覚えてる。アムロさんとクワトロ大尉を筆頭に。バルチャーのみんなや、ドモンさん達もいた」
なおも広がる淀みを前に何を言い出すかと思えば…とメイ。
「達成はできなかったけど、戦死した戦士は決して無駄死ではないと。」きっぱり言い切るヤマト。
「けど、それじゃ…また!」メイは頭を振って否定する。
「今度は俺達、みんなで戦いを止めよう。戦争がある限り」
「それで…駄目だったら?」「なら、力づくにでも戦争を止める。こんな思いは2度としたくはない」
「うん」
「そうやって、皆で植えていこう?何度も失敗を繰り返してしまう俺たちだけど…。そうやって変えていこう…。少しずつ…。確実に…。」
メイはしばらくヤマトを見ていた。ヤマトはメイを見ている。
やがて、ヤマトがヴェスバーを待機状態にさせて、差し出した。

「いきなり変われっていったて…無理だけど…。やってみる価値はあるね」
「だから、吹き飛ばされないように、戦いを止めよう。」
ヤマトはメイの手を握った。目前にまで迫る淀みが、ヤマトとメイを包み込む。
「私たち…死ぬのかな?」
「…この世界には俺もメイも本当は存在していないからな…。もしかしたら死ぬかもしれないし、死なないかもしれない。」
淀みは二人の体を飲み込もうとする。
「…もし死ななくて…、それで元の世界に戻れてたら…、また勝負しようね。今度はMSで!」
ヤマトは頷いた。
「全力全開の手加減一切なしだ!」
「約束だよ?」
二人が握っていた手が離れ、そして、それぞれは光に飲まれって行った。

アースラ。
「駄目だ、通信も念話も駄目。結界は解除したけど、二人がいない…。」
「そんな…、ヤマト…。」
「メイさん…。」
艦内に重苦しい雰囲気が包む。クロノや、エイミィが何やら思いつめている。
舞台のセッティングミスだと思っているのだろうか。「捜索は…続けましょう。結界内で何が起こったか分からない以上、まだ生きている可能性はあるわ。
全責任は私が負います。」モニターは淀みが発生したと同時に、何も写さなくなった。
通信も、連絡をとる手段も何もかもが突然異常をきたした。
それに、とリンディは続ける。
「突然来たんだもの、突然帰ってもおかしくはないわ…ねっ?」
その言葉にいくらか雰囲気は軽くなり、あきれたように数人が笑った。

『ヤマトッ!』
『起きてくださいよ!メイさんッ!!』
カミーユがヤマト、ジュドーがメイの名を呼んだ。
聞き慣れた声でヤマトとメイは意識を取り戻し、目を醒ました。
「こ、ここは…。」
見慣れた狭い空間、見慣れたMS、見慣れた人物、それがラー・カイラムだと理解するのに少し時間がかかった。
「そっか…、俺達、元の世界に戻ったんだ。」夢かとも思ったが、模擬戦したはずのフリーダムとジャスティスがラー・カイラムのMS収容部屋に置かれていた、パイロットスーツを脱がされた時に、ヤマトはそれぞれ色の違うリボンが手首に。
決戦前、桜色のリボンはフェイトが、黒色のリボンはなのはに巻いてくれたものだった。
メイは両腕にリストバンド、キーホルダーがポケットに入っていた。
はやて、シャマル、ヴィータがくれたものだった。
「夢じゃないんだな、これは」
「ホントだね…」

なのはたちと過ごした約一ヶ月は確かに現実だった。

闇の書事件から6年後。
桜舞う季節。
なのはたちは、各々成長し、管理局の職につくことになった。
高校に入学してから数日が経つ。
そして今日は管理局に勤めている仲間、クロノ、ユーノ、エイミィ、皆が集まる日だ。
もちろん、はやても、フェイトも、ヴォルケンリッターの皆も…。
学校の屋上になのは、フェイト、はやての三人は集まっていた。
「ねぇ、なのは、はやて…。」
呼ばれた二人はいつもと変わらぬ元気な顔を向ける。「…うぅん、何でもない。」三人はそれぞれデバイスを取り出した。
「大丈夫だよ、フェイトちゃん。」
「きっと、ヤマト君もメイちゃんも無事やって。」
言葉にしなくても、どうやら二人とも分かっていたようだ。自分が何を聞こうとしていたのかを…。
「きっとまた…会えるよね…」
三人は声を揃えデバイスを起動させた。

管理局民間協力者
一条寺ヤマト、一条寺メイ共に現在も捜索中。

蒼い翼と真紅の翼はまだ、戦場を駆けている。
運命を、未来を、混沌渦巻く世界を変えるために…。不屈の心を持つ、小さな少女が言った。
「永遠なんて…ないよ。人は変わる。皆変わっていく…、私もあなたも…変わっていかなくちゃいけないんだ!」
その言葉を胸にとめて…。

フィフス・ルナ遭遇戦
「一条寺ヤマト!フリーダム行きます!!」/「一条寺メイ!ジャスティス出ます!!」
2人はフィフス・ルナに赴き、工作活動の阻止へ向かった。

(完)