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Last-modified: 2008-10-19 (日) 13:54:05

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200 名前: Let's肝試し!(61) [sage] 投稿日: 2008/10/17(金) 15:25:17 ID:lYWzSWtk
ー――更に数分後、外―――
エリウッド「あ、やっと出られた」
エフラム「太陽が眩しいな」
ヘクトル「やっぱ外ってのは気持ちいいよな」
廃ビルから無事脱出した三番手三人の帰還、
新鮮な空気を肺いっぱいに取り込み、また伸びをする者もいる
セリス「あ、兄さん達だ」
エリンシア「お帰りなさい、お疲れ様でした」
帰還すると同時に外で待っていた家族達が出迎えてくれた
三人は家族達の方へ歩み寄り口々に「ただいま」と声をかけた
リン「どうだった? 結構楽しめたかしら?」
エリウッド「うん、まあそうかな…」
ヘクトル(主に嫌がらせだったけどな、くそ…)
今回一番の被害を被ったヘクトルは内心で悪態をついた
本来の趣旨にのっとって脅かされたのは
二階のミカヤとアイクによるゲストペアとの出来事だけだ
エリウッドも顔には出さないが内心苦笑していた
エフラム「それにしてもアレには驚かされたな…」
アルム「アレって何さ?」
エフラムは今回の肝試しで唯一脅かされた、奇妙な女性の事を話した
アルム「へぇ、ちょっと意外だな、兄さん達が怖がる存在があったなんて」
ちなみに言うと三人とも結局あの女性の正体がミカヤだと気づいていない
だが、三人のほかの人は皆事情を知っていた
三番手三人が廃ビルに入り、
少ししたときにアイクとミカヤが戻ってきてないことに気づいたが、
アイクはよくわからない理論の元にラグネルを持参していたが紛失し、
探しに行っていたため丸腰と思われたが、『まあアイク(兄さん)だし』と
よくわかるようなわからないような信頼をされ、
ミカヤは一番手で入ったとき何故だか光魔法を発動していた、それも大規模の、
以上の二点により二人は大丈夫だろうと皆で納得し、待つことにしたのだ
それから二人(エリウッドとヘクトル)の絶叫が空気を揺るがしてから数分後
二人が出てきたときに事情を聞いていた
ついでにその時にミカヤから
ミカヤ「あの時に脅かしたのは私とアイクだってこと内緒にしておいてね」
と口止めもされていた、本人いわく、プライドを傷つけたくないらしい、
口止めの件について皆が了承の意を伝えながら
リンやセリカはあのヘクトルが絶叫しながら逃げ出すところを想像して大笑いしてしまった、
ゆえに…
リン「そ、そう…それは大変だったわ、ね」
セリカ「ほ、ほんと…ね」
エフラムの説明を聞いてしまったことにより、
二人はまた想像してしまい笑いをこらえるのに必死になっていた、体を押さえ笑いを鎮めようとする
201 名前: Let's肝試し!(62) [sage] 投稿日: 2008/10/17(金) 15:26:02 ID:lYWzSWtk
ヘクトル「あ? 何してんだお前ら」
二人の前に今脳内で必死に逃げ回っている人物が現れた
リン&セリカ「「ぷふ! …くっくく…」」
ヘクトル「人の顔見ていきなり笑い出すなよ!!?」
失礼極まりない態度にヘクトルは怒りだすが、
ついに問題の人物の顔が視界に入ってしまったことで耐えきれなかったようだ
大笑いを始めてしまった二人を見てヘクトルは、何かついてると勘違いし、しきりに自分の顔を擦る
エフラム「とりあえず、四番手、ラストだ、行ってこい」
アルム「僕たちか…楽しみだなぁ」
廃ビルを遠くへ見据え、期待のまなざしを向けるアルム
エイリーク「はい、どんな事が待ち構えているのでしょうか…」
同じように期待するエイリーク
リン「だいぶ待たされたからね、たっぷり楽しませてもらわないと割に合わないわ」
さっきからヘクトルの滑稽な場面が頭から離れない状態になりつつも、気を取り直したリン
今にして思うと異色の組み合わせである、どんな肝試しになるのだろうか、
最後の大詰め、四番手による最後の肝試しの始まりである、三人はゆっくり廃ビルへ足を踏み入れた
―――肝試しアルム&エイリーク&リン―――
―1F―
アルム「へぇ、思ったよりすごいなぁ、ボロボロだ」
エイリーク「靴音が響き渡ります…不思議な感覚ですね」
リン「いいところ見つけたじゃない」
しばし入ったところで見える範囲を見渡す三人、その三人から離れたところの影に

リーフ「あ、入ってきた」
ロイ「ターゲット確認」
仕掛け人達三人の姿があった
リーフ「さーてまず僕らがすることは」
ロイ「たった一つ」

リーフ&ロイ「「マルス兄さん落ち着いて、お願いだから」」

二人の視線の先には仕掛けに使う道具を物色しながら部屋の中を動き回るマルスの姿
マルス「HAHAHA! リン姉さんのターンキター、テンションも上がってきたーー!!」
さっきからずっとこの調子である、マルスのヘクトルいじりに次ぐ二つ目の楽しみが到来したのである
ロイ「どうしようか、あれ」
リーフ「やる気にはなってるみたいだけど」
先ほどの二人の呼びかけもどこ吹く風、全く聞いちゃいない
ロイ「まあ…マルス兄さんが落ち着くまで、あらかじめ仕掛けた罠に任せようよ」
リーフ「まずマルス兄さんを落ち着けるところから始めないとしょうがないなぁ…」
ふぅ、とため息を一つ吐き、一先ず二人はマルスを抑える事にした
1Fにいるうちは平和になりそうだ
202 名前: Let's肝試し!(63) [sage] 投稿日: 2008/10/17(金) 15:26:38 ID:lYWzSWtk
リン「? なにかしらあれ」
エイリーク「え、なにか見えるんですか?」
リン「ほら、あそこ、何か垂れ下がってる」
アルム「え、見えないよ」
探索を開始した三人、案内表示を見て階段の方へ向かっている最中のことだった
リンが何かを発見したのだ
リンはその垂れ下がっている何かに駆け寄り、掴む…が他二名にはまだ見えない
頭に疑問符を浮かべながらリンに近付くとその正体がわかった
エイリーク「糸ですね」
アルム「よく見えたね、リン姉さん…目良すぎ」
リン「そう?」
脅威の視力である…リンの手には細い糸が一本握られていた
リン「とりあえずどうしよう、あきらかに罠っぽいけど」
アルム「んー任せるよ」
エイリーク「でも折角マルス達が仕掛けた罠ですよね…」
リン「そうねー…」
糸を掴んでいないもう一方の手を顎に添え、うーん、と悩むリン
あえてはまってやるべきか、引っかかる前に発見したのだから無視してやるべきか…
なんの気なしに足を動かし、立ち方を変えた時だった
プツンッ
足下でなにかが切れる音がした
リン「へ?」
シュルルと自分の掴んでいた糸が上へ抜けてしまい、事態が飲み込めずにいると
ガガンッ! ガンッ ガンッ
アルム「わ!?」
エイリーク「!?」
リン「な、何!?」
突如すぐそこの部屋からなにかが乱暴に壁を叩く音がした、しかもまだ続いている
ガンッ… ガッ…
数秒後、ようやく音が収まった
エイリーク「え、えと、どうします? 見に行きますか?」
リン「…うん、確かめなきゃ気が済まないわ」
アルム「何なんだろう…」
先導してリンが部屋のドアに手をかけ、ドアを開ける
少し日が傾いたためにすぐそこの窓から光が入っていたため音の正体が明らかになっていた
アルム「石…それも大量に」
廊下側の壁に大量の石が糸で吊るされていた、
共通して糸が天井まで続いており、一か所に集結している
エイリーク「あ、なるほど…」
さっきのはこの石が壁を叩く音だったのだ
リン「不覚にもちょっと驚かされちゃったわね…」
アルム「いや、誰だって驚くと思うよ…あんな大きな音がしたら」
リン「うー…気に入らないわね…マルスに知れたらと思うと…」
いつもなら物陰で動向を見守るところだが当の本人は未だ発狂中であるため、それは杞憂である
エイリーク(ふふ、いつも仲がよろしいですね、二人とも)
逃げるマルスとそれを追うリン、そしてマルスが捕まり、リンに締め上げられる
これはもはや日常風景と化している、二人とも認めようとはしないが実際仲がいいのだ
エイリークはそんな二人を見るのが密かに好きだったりするのだ
どこか微笑ましい物を見るような表情でエイリークが
自分の方を見ているのに気づいたリンは、どうかしたのと問いかけるが
エイリークは、なんでもありませんとにこやかに返す
姉の笑顔がどこか引っかかりながらもとりあえずリンは歩きだした
アルム「微笑ましいよねぇ」
エイリーク「本当です」
二人は聞こえないように話したがリンの耳にはしっかり届いていた
しかしなんの事かわからずリンは頭に疑問符を浮かべた
203 名前: Let's肝試し!(64) [sage] 投稿日: 2008/10/17(金) 15:27:26 ID:lYWzSWtk
探索を再開した三人、今度は目の前に中途半端に開いたドアがあった
道をふさぐような形で開いている
アルム「何あれ、何で開いてるんだろ」
エイリーク「本当ですね、ドアは開けたらちゃんと閉めるものですよ」
アルム(え、そっち?)
些か見当違いな意見を述べられアルムはちょっと思考をストップさせてしまった
そんなアルムを余所にエイリークはほんの少しだけ怒りを感じていた
リン「あれ、なんか変よこれ」
もうすでに調べていたリン、行動力はかなりあるようだ
アルム「変って何が?」
リン「来てみて」
言われたとおりにドアに近寄ってみる
アルム「え?」
思わず困惑してしまう、そこにはドアの閉まる方向どちらも壁だったのだから
エイリーク「不思議ですね」
アルム「あれ、こっちの壁、なんか凄い亀裂走ってる」
アルムの言うとおり、一方の壁に大きな亀裂があった
リン「新しいわね、最近できた傷よ、これ」
エイリーク「…一部壁がへこんでます、よっぽど凄い力だったんでしょうか」
察しのいい方はわかるかもしれない、3番手達のときヘクトルが壁に激突した時の名残だ
アルム「誰かがぶつかったのかな?」
エイリーク「ぶつかっただけじゃ普通こんな亀裂は走らないと思いますが…」
リン「そもそもそんな馬鹿なんていないでしょ、さすがに…
   何か大質量の物体がぶつかったんでしょう?」
―――外―――
ヘクトル「…へっくしょい!」
シグルド「なんだ、風邪かヘクトル」
ヘクトル「いや…は…へっくしょい! …これは誰かが噂してやがんな」
エリウッド「はは、悪い噂かな?」
ヘクトル「お前な…」
その『大質量の物体』とやらはリン、あなたの身近な存在だ
―――廃ビル内(1F)―――
リン「ま、とりあえずほっときましょ、こんなの」
アルム「そうだね、ちょっと気にはなるけど」
造りが妙なだけで、とくに何があるってわけでもないので三人は一先ず進むことに
エイリーク「あ、ちょっと待ってください」
リン「?」
先に進もうとする二人から離れ、再び先ほどのドアに近づくエイリーク
パタムッ…
エイリーク「ちゃんと閉めておきませんとね」
アルム(まだこだわってたんだ)
ドアをキッチリ閉める、どうせ他に誰も通らないだろうに…律儀である
それが彼女のいいところでもあるのだろうが…
やるべきことをやってスッキリしたのか、ちょっと晴れやかな顔で二人の元へ戻るエイリーク
リン(姉さんらしいというかなんというか…)
204 名前: Let's肝試し!(65) [sage] 投稿日: 2008/10/17(金) 15:28:21 ID:lYWzSWtk
ギッ…
アルム「あれ?」
何故だかドアが少し開いてしまった
エイリーク「おかしいですね、もう一度」
二人の下へ戻りかけた足を再びドアへ向ける
パタムッ…
エイリーク「これで大丈夫です」
ギギィ
リン(…)
また開いた…
エイリーク「あ、あれ? んしょっと…」
今度はさっきより強い力で閉める、押し込むような形といって相違ない
ギィー
リン「ね、姉さん、もうほっときましょうよ」
なぜかいつの間にか勝手に開く扉との闘いに発展しつつある、ここで止めないとまずいと思ったリンだが
エイリーク「いえ! 絶対に閉めます!」
リン(あー…変なところのスイッチ入っちゃった)
思わず顔を手で覆うリン、この姉はしっかり者だ、本当に
彼女の誠実さはいろんな人に好かれているのも事実、だが…
リン(時々融通利かないのよねー…)
そう、それは誠実でありすぎるが故の欠点、
それをリンは恐れていた、だから止めようとしたのだが遅かった、閉まらないドアとの格闘が始まった
アルム(なんでだろ、今のエイリーク姉さんがかなり滑稽に見える)
さっきから閉めては開き、閉めては開きの繰り返し、ドアを閉める音、開く音がほぼ一定のリズムを奏でる
しばしその音で1Fの廊下を満たすことになる
いつ終わるかわからないしょうもなさすぎる戦いを繰り広げる一名とドア、
それを見ている他ない二名は
リン「ねえ、しりとりでもする?」
アルム「しりとり乗った」
時間潰しを始めるのだった…
―――十数分後―――
エイリーク「んー…」
まだ閉まらない、これでも諦めない執念は認めたいところだ
リン「エ、エイリーク姉さん、そろそろ諦めて…」
エイリーク「いえ! 絶対に諦めません!」
アルム「もうしりとりで何言ったかわかんなくなってるよ!」
リン「もうそのドア明らかに壊れちゃってるわよ、私たちじゃどうにも」
エイリーク「そうだ、アイク兄上なら直せるかもしれません!」
いい事を思いついたと言わんばかりにエイリークは表情を輝かせる
アルム「え、ちょ、姉さ」
エイリーク「ちょっとアイク兄上呼んできます!」
思いたったらすぐ行動、颯爽と走りだすエイリークをリンとアルムは見てるしかなかった
アルム「ねえ、リン姉さん、僕時々エイリーク姉さんがわからなくなるんだ」
リン「奇遇ね、アルム、私もよ」
我が姉のよくわからない執念の凄さを目の当たりにし、二人はため息を吐いたのだった…
そしてその数分後
アイク「これか?」
エイリーク「ええ、お願いします」
アイク「任せろ」
アイクを引き連れてエイリークが戻ってきた
205 名前: Let's肝試し!(66) [sage] 投稿日: 2008/10/17(金) 15:30:23 ID:lYWzSWtk
―――ちょっと前(外)――――
急にエイリーク一人単独で外へ出てきて、周囲の注目を集める中
アイクを呼びに行った時のエイリークの一言である
エイリーク「アイク兄上! ドアを直してください!」
なんとも直球でわかりやすい用件の伝え方である
ミカヤ「は…?」
ヘクトル「あ…?」
シグルド「へ…?」
エフラム「…」
その場にいた全員がとりあえず声を発する者、絶句する者のどちらかになった、
全員の目が点になる、呼び出しを食らった本人を除いて…
アイク「ドアが壊れたのか?」
エイリーク「壊れているドアがあるんです、お願いできますか?」
アイク「まあ、構わん、案内しろ」
こちらですと案内するエイリークと
いつの間にかどこから持ってきたのか工具箱を手についていくアイクを
その場にいた皆はただ茫然とそれを見送ることしかできなかった…
――――現在(廃ビル内1F)―――
アイクは工具箱を手に作業に取り掛かる
アルム「なんで工具箱なんてあるの」
リン「まあ、アイク兄さんだしってことで」
アルム「納得できる辺り怖すぎる」
手慣れた手つきで着々とドアを直すアイク、それを笑顔で見守るエイリーク
傍観するリンとアルム、妙な絵面だ
リン「それにしても手慣れてるわね、兄さん」
アイク「まあ、工務店の人間だしな、これぐらい出来なくては話にならん」
アルム「いや、それでも思わず見入っちゃうよ、よく家も直してくれてるし」
リン(よく家を直すという表現がすでに私たちの家はよく壊れることを表してるわね)
皆があらためて感嘆する中、黙々と作業をするアイク、しかし蝶番のネジを締め直そうとした時だった
アイク「む、ドライバーがない…」
リン「え、それないと無理じゃない?」
206 名前: Let's肝試し!(67) [sage] 投稿日: 2008/10/17(金) 15:30:59 ID:lYWzSWtk
アイク「まあいいか」
アルム「え、『まあいいか』って何が」
おもむろにラグネルを取り出し剣先でネジを締め出す
リン「ちょっ待っ…えぇーーーーーーー!!?」
アルム「アイク兄さんSUGEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!」
思わず二人は絶叫してしまう、エイリークも茫然としている
アイクは器用にドアも押さえながらもう一方の手でラグネルでネジ締めをする
アイク「どうした、こんなの普通にできるものだろう」
アルム「いや、なりませんて普通、ていうかどうやってるのさ」
アイク「ん? ほら、こういう風に剣先をネジの穴に当ててだな」
リン「いや、説明されても不可能に見えるし、そもそもなんでそんなことできるの」
アイク「まあ、俺も出来るまで一日かかってしまったが…」
リン「いや一日で出来たのが凄いんですけど?」
アイク「グレイル殿に『剣でネジ締めは工務店で働く者として当然だ』と言われてな」
アルム(え、ちょグレイルさんもできんの? これ…ていうか当然の事なの?)
アイク「そういえばあの時のグレイル殿様子がおかしかったな、顔が赤かったし、
    なんか足がふらついてたり、訳のわからん奇声発したり」
リン(ちょ、それ完全に酔ってますから!?)
アイク「ついでに言うと、出来るようになったの見せたら顔が引きつってたな…なんでだ?」
アルム(気づこうよ、アイク兄さん!!!)
アイク「ん、話してるうちに終わったぞ、どうだ?」
エイリーク「あ、はい…しっかり直ってます」
未だ精神的に回復していないエイリークは途切れ途切れに言葉を紡ぐ
アイク「そうか、じゃあ俺は外にいるぞ」
さっさと道具を片づけて外へ歩みを進めるアイク
エイリークが慌てて感謝の言葉を言うが、気にするなといつもらしい台詞を残し、去っていった
アルム「結論、アイク兄さんの辞書に不可能の文字はない」
リン「完全に同意」
エイリーク「私も同意です…」
すぐそこに2Fへの階段があることに気付かず、
しばし三人はアイクの去っていった方をただ見つめていたのだった―――