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Last-modified: 2008-10-19 (日) 13:54:35

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369 名前: Let's肝試し!(40) [sage] 投稿日: 2008/08/04(月) 23:58:25 ID:skrQ2hBJ

マルス「――まあ、こんな感じでお願いするよ」
アイク「わかった、俺はこれでテレビをいじればいいんだな?」
マルス達が向かったのはアイク、ミカヤがこれからエリウッド達を脅かす部屋である
アイクの手にはリモコンが、もちろんこの部屋のテレビのリモコンである(部屋に置いてあった)
ミカヤ「う、うまくできるかしら…」
アイク「まあ、やってみよう、ミカヤ姉さん」
ミカヤ「そ、そうね…頑張ってみるわ」
マルス「じゃあ、後はエリウッド兄さん達が来たらってことでよろしくー」
ヒラヒラと手を振り、リーフとロイの手伝いをするためマルスは部屋を後にする
バタンッ…
ドアが閉められる
アイク「さて、これをかぶらないとな…」
アイクの手には大きめの布、自分は姿を隠さねばならないからだ、
頭からそれをかぶるとアイクの姿は見えなくなり部屋の置物の一部と化す、静寂が訪れる
ミカヤ「し、静かよね…」
アイク「そうだな」
ミカヤ「エリウッド達いつ来るかしら…?」
アイク「わからん」
ミカヤ「ア、アイク…? もう少し会話を発展させて欲しいんだけど…」
アイク「そう言われてもな…静かなのはそうだし、エリウッド達がいつ来るかも俺にはわからんぞ」
ミカヤ「そ、そうよね…ごめんなさい、やっぱり何か出そうで怖くて無茶な会話をふっちゃったわね…」
アイク「…」
しばしの間また静寂が続く、そこにアイクが口を開いた
アイク「…何か出ても大丈夫だ」
ミカヤ「え…」
いきなりの言葉、暗い中ミカヤはアイクの方を見る(具体的な位置はわからないが)
アイク「少なくとも俺の前で家族に手を出すやつは許さん、
    俺は家族や大切な奴らを守る力を得たいから修業をしてきたんだ
    そしてその家族にはミカヤ姉さんもちゃんと入っている」
ミカヤ「…」
アイク「どんな存在が相手だろうと俺が守る、だから安心してくれ」
そうだ…今、自分の近くで私のためにわざわざ付き添ってくれている家族がいるのだ
自分の都合で振り回してる形なのに…
ミカヤ「ふふ…ありがとうアイク」
アイク「…いや」
相変わらず素気ない返事を返し、再び気配を殺し、
アイクは再び置物へと化す――が、またアイクが沈黙をやぶる
アイク「なあ、姉さん…」
ミカヤ「どうかしたの?」
どこか深刻そうな声でアイクが言うので心配を含んだ声色でミカヤは返事を返す
アイク「…テレビの電源ボタン…ってどれだ?」
ミカヤは思わず脱力するのだった…

――――現在(2F:アイクとミカヤが潜んでいた部屋)―――
アイク「それにしても案外楽しかったな」
ミカヤ「そうね…さっきも言ったけど、三人にはちょっと申し訳ないけどね…」
アイク(しかし…妙だな…?)
持っていたリモコンを目の前にかざし、しばしにらみ合うアイク
370 名前: Let's肝試し!(41) [sage] 投稿日: 2008/08/05(火) 00:00:24 ID:BP6/61sd
マルス「ん? どうかしたのアイク兄さん」
アイク「あ、いや、なんでもない」
マルス(?)
どこか慌てた様子でアイクはリモコンと向き合うのをやめた
マルス「どうだった、ミカヤ姉さん、少しは慣れた?」
ミカヤ「うん…ほんの少し…だけどね」
マルス「(進歩あったのか無かったのか…)まあ、楽しんでもらえたならよかったよ
    エリウッド兄さん達はちょっと災難だったかもしれないけどね」
ミカヤ「まあ、楽しかったのは事実よ、アイクもありがとう、わざわざ付き添ってくれて」
アイク「…(なぜだ?)」
しきりにテレビに向かってリモコンをいじるアイク
ミカヤ「アイク? どうかしたの?」
アイク「! いや、なんでもない…」
マルス「さっきからどうしたのさ、挙動不審だよ?」
アイク「気にするな」
マルス(いや気になるんだけど)
ミカヤ「とりあえず帰りましょう?」
アイク「…すまん、ちょっとマルスに話したいことがある、部屋の外にいてくれるか?」
ミカヤ「うん、いいけど…あまり一人で待たせないでね…」
ミカヤは部屋を出てすぐそこで待機する、
すぐそことはいえ一人で待てるようになったのだから進歩だろう
ミカヤが出て行ったのを確認し、アイクはマルスに向き合う
マルス「で? 僕に話って何?」
アイク「些細なことかも知れんが、ちょっとこれが気になってな」
そういって差し出したのは先ほどからいじっていたリモコン
マルス「ただのテレビのリモコンじゃないか、それがどうかしたの?」
アイク「いや、ちょっと見ててほしいんだが…」
そういってアイクはテレビにリモコンを向け、電源ボタンを押す
マルス「…?」
ところが何も映らない
アイク「動かないんだ」
マルス「もしかして壊れてた? それ」
アイク「いや、それはない、さっき三人を脅かしたときは作動した」
そう、あのとき確かに砂嵐が映った
マルス「じゃあ単純に三人を脅かし終えると同時に壊れたんじゃない?」
アイク「…やっぱりそうだろうか(…じゃあ最後勝手にテレビが切れたのはなんでだ…?)」
一番肝心なところを声にしなかったようだ…
マルス「だってそうでもなきゃ説明つかないじゃない」
アイク「…そうだな、すまん、くだらん話をしてしまった」
マルス「いや、気にしないでいいさ、とりあえず僕は行くよ」
アイク「ああ」
リモコンをテレビの横に置き、マルスとアイクは部屋を後にした…
マルス「じゃあ僕達は持ち場に戻るよ」
アイク「ああ、頑張れ」
ミカヤ「頑張ってね、でも怪我とかはしないように気をつけてね」
マルス「はーい」
返事をし、マルスは先行させたリーフとロイの後を追い、3Fへ上った
ミカヤ「じゃあ行きましょうか、アイク」
アイク「わかった」
帰るときのミカヤの足取りは最初の時より多少軽くなっていたことを記述しておく…
371 名前: Let's肝試し!(42) [sage] 投稿日: 2008/08/05(火) 00:01:46 ID:skrQ2hBJ
―3F―
エリウッド&ヘクトル「「はぁー…はぁー…」」
エフラム「はぁ…いきなり走り出さないでくれ、しかも3Fへついてからも無駄に走りまわって…」
エリウッド「ご、ごめん…」
ヘクトル「それにしても何だったんだよ…今のは…」
エリウッド(し、心臓が…)
エフラム(それにしても少し意外だな、この二人があそこまで…過去に何かあったのか?)
ちょっとしたトラウマがあります
ヘクトル「ちくしょー…このままじゃ情けなさすぎるぜ…ぜっっったいにこの3Fで挽回してやるぜ!!」
エリウッド(だから挽回じゃないって…ああ、もう突っ込むのがめんどくさい…)
エフラム「それにしても無駄に入り組んでるな、この階層は」
すぐそこの案内表示には行き先が10項目近く書いてあった
ヘクトル「まあ、これまで通りだ、部屋を一つ一つ見てまわろうぜ」
エリウッド「了解、じゃあ行こうか」
案内表示に階段のある方向へ三人は歩み始めた

マルス「やあ、二人とも」
ロイ「あ、マルス兄さんおかえり」
リーフ「結構いい線いったみたいだね、悲鳴がここまで聞こえてきたよ」
マルス「アイク兄さんが言うには、ミカヤ姉さんの演技、なかなかだったらしいよ」
リーフ「へぇー…」
ロイ「あ、仕掛けだけどある程度終わったよ、相変わらず攻撃的だけど…」
マルス「上出来上出来、さてヘクトル兄さんを生暖かい目で見守ろうじゃないか」
リーフ(完全に遊ばれてるよヘクトル兄さん!!)

エフラム「あった、扉だ」
ヘクトル「よっし、じゃあ開けるぜ…ってあれ?」
ガチャガチャ…
ヘクトル「おい、開かねーぞ」
エフラム「貸してみろ、どれ」
ガチャガチャ…
エフラム「本当だ開かない」
ヘクトル「ちっハズレか」
エリウッド「僕も試してみていいかな」
ヘクトル「無理無理、開きやしねーよ」
エリウッドはドアノブを掴み、回す―――
スーーーッ
――のではなく、横にスライドさせた
ヘクトル「なんだこれ!? 普通に不自然だろ!!」
エフラム「なぜ、ドアノブがついてるのにスライド式なんだ…!!?」
エリウッド「あれ、冗談のつもりだったのに…本当に開いちゃったよ」
ヘクトル「そして冗談のつもりだったのかよ!?」
とりあえず扉は開いた、三人は中へ足を踏み入れる
そこは…
エリウッド「給湯室…かな?」
エフラム「そうみたいだ…」
ヘクトル「なんかボロボロのヤカンがおいてあるな…多分間違いねぇと思うぜ」
そう、そこは給湯室、働く人たちに一時の安らぎを与えるお茶などを作る場所
部屋に入って間もなく、台の上に放り出されていた物をヘクトルが手に取った
ヘクトル「うお…期限切れの『しっこくカレー』見つけたぜ」
エフラム「捨てとけ…ついでに聞くがどのぐらい過ぎてる?」
ヘクトル「んー…5年ぐらいか」
エリウッド「う、食べるの想像しただけで胃が…」
エフラム「いや、想像しないでくれ」
372 名前: Let's肝試し!(43) [sage] 投稿日: 2008/08/05(火) 00:02:52 ID:skrQ2hBJ
ヘクトル「他にもまだ何かあるかもしれねーな…」
そういってヘクトルは下の棚を開け始めた
エフラム「いや、なぜ探す」
ヘクトル「なんかこういうのって探したくならねーか?」
エフラム「ならん」
ヘクトル「まあ、いいじゃねーか、ちょっと探させろよ」
エフラム「別に探す行為を否定してるわけじゃない、好きに探せばいい」
ヘクトル「じゃあ探させてもらうぜ」
エリウッド「うぅ…胃が」
下の棚を開けては閉め、開けては閉めを繰り返し、ヘクトルは探し始めた
エフラムはそれを傍観する
ヘクトル「…お、『セシリアおばさんのクリームシチュー』発見」
エフラム「…参考までにどのぐらい過ぎてるか言ってみろ」
ヘクトル「なんかかなり忘れ去られてたみたいだな、8年経ってる」
エリウッド「う…」
エフラム「…」
不覚にもちょっと想像してしまい、口元を押さえるエフラム
どうやら、なぜかここはレトルト食品とか既成食品を買っておいた物の溜まり場になり
結局忘れ去られてしまったようだ
ヘクトル「うお、今度は『やらなイカ』が出てきたぜ」
エフラム「なんだそれは…ちょっと貸してみろ」
ヘクトルからそれを受取り、それを見てみる
そこにはビラクの顔がプリントされており、
『酒を飲むイイ男よ!酒のお供に是非俺とやらなイカ?』
そう書いてある…要するに早い話がスルメだ
なんの気なしに期限を見てみるとそれは10年以上過ぎていた
エフラム(おそらく誰も開ける気がしなかったんだろうな…というか誰だ買ったのは)
とりあえず部屋の隅に放り投げた…きれいな放物線を描き、床に落ちる
ヘクトル「んー他にも何かねーかなー」
なぜかノリノリで探すヘクトル、次々と積まれつつある大量の期限切れ食品を白い目で見るエフラム
勝手に想像して一人うずくまるエリウッド、こうして奇妙な構図ができつつあった…
エフラム(というかなんでこんなにあるんだ…)
やることがなく、ヘクトルの積み上げていった期限切れ食品を物色するエフラム
エフラム(んーと…『アシュナード殺し』…これは酒か、プリントしてある顔が凶悪だ…)
置くとタプンと中身が多少入っている音を立てる、開封はされてるようだ
エフラム(これは…『ジェイガン爺さんのお漬け物』…もうなんか水分なくなってるぞ…!)
とりあえず放り投げる
エフラム(ん…これ『特効薬』じゃないか…って…これ『特効楽』…漢字が違うぞ!? なんだこれは!?)
中身は入っており、得体の知れないものなので慎重に置く
エフラム(…ん? 食品じゃないな、これ…『フライボム』?)
手に取り説明書を見る、ちなみに形は完全に『フレイボム』である
エフラム(「揚げ物を作る際に、材料と油を入れ、揚げ始めて約2分たったときにこれを入れると
     一瞬で揚げ物が出来ます」…ほぉ、すごいな…ん?)
エフラム自身、揚げ物を作ったことはないが、
以前エリンシアが揚げ物には手間がかかると言っていたのを思い出し、
これだけで出来るのならすごいのだろうとエフラムは思ったのだ
しかし、まだ細かい字で注釈が書かれている
エフラム(「なお、ご使用の際には大きな爆発が起き、火を噴くので、
      鍋と皆様の身の安全は保証しかねます」って、おい!!)
ものすごい危険物である、とりあえずその辺に慎重に置く、爆発されてはたまらない
エフラム(危なすぎるぞ全く…次は…これは『Sドリンク』じゃないか、ようやくまともなものが…ん?)
よく見るとSのところにかなり小さい文字で書き足されており全部読み上げるとこうなった
『Sazaドリンク』
エフラム(前言撤回する…なんで作ったんだ…というか疲労回復するのかこれは)
これもまた未開封である、とりあえずその辺に放る、
ある人物、通称『グリーン・ウィンド』を思い出しながら…
373 名前: Let's肝試し!(44) [sage] 投稿日: 2008/08/05(火) 00:03:50 ID:BP6/61sd
エフラム「おい、ヘクトル…いくらなんでも掘り出しすぎだ…」
ヘクトル「んーこれ以上はないみたいだな」
エリウッド「頼むからこれ以上得体の知れないものを出さないでくれ…胃が持たない」
ヘクトル「じゃあ、最後にあそこだけ調べて次行こうぜ」
ヘクトルが視線を向けるは上の棚、この部屋に一つだけあったのだ
エフラム「調べるのならさっさとしろ…」
ヘクトル「何かねーかなー」
すぐそこにあった踏み台を足下に置き、その上に乗り、棚を開ける
カパッ…ゴワンッ!!
ヘクトル「いってえぇーーーーー!!!」
なぜかフライパンが振り子のように襲ってきた、まさかこうなるとは予測していなかったらしく
ヘクトルは顔面にフライパンが直撃してしまった
エフラム「…次いくぞ」
ヘクトル「待てコラ! スルーすんな!!」
エリウッド「顔面押さえながら言っても格好つかないよ…?」
ヘクトル「ちくしょーー!!」

リーフ「まさか引っかかるとは思わなかった」
ロイ「うん…ほとんど捨てたような罠だったんだけど」
マルス「さすが…いじり甲斐あるよ…」
ロイ「マルス兄さん怖すぎ」

ヘクトル「あー…くそ…さっきから顔面ぶつけっぱなしだぜ…」
エフラム「…」(もはや呆れ果ててる)
エリウッド「なんというか…少しは警戒しようよ…ヘクトル」
ヘクトル「…」
あまりにも的を射ている事を言われ閉口してしまう…
エリウッド「ん、またあったよ扉」
エフラム「よし、俺が開けよう」
ガチャガチャ…
エフラム「またか…さっきみたいに横か?」
…動かない
エフラム「どうやら完全にしまっているようだ」
ヘクトル「今度こそハズレか?」
エリウッド「んーもしかしたら…」
扉に歩み寄るエリウッド
そしてドアノブに手をかけ
ガラガラ…
上に持ち上げた…
ヘクトル「今度は上かよ!?」
エフラム「というかなんでわかったんだ」
エリウッド「いや、なんとなくそんな気が…」
ヘクトル「つーか狭いな入口…」
ドアノブがひっかかってしまい、これ以上持ち上げられないのだ
人が入るにはそれなりにかがむ必要がある
エフラム「いったい誰が設計したんだ…」
エリウッド「知らない…わざとこういう作りにしたのかな?」
ヘクトル「なんのためだよ…」
とりあえず開けたドアをくぐる…
三人が潜り抜けた先には
少し大きめの古いソファーが向き合うように置いてあり、その間にやや大きな丸机がある…
ただそれだけ、他には何もなかった
374 名前: Let's肝試し!(45) [sage] 投稿日: 2008/08/05(火) 00:04:41 ID:BP6/61sd
エリウッド「僕が思うに応接室?」
ヘクトル「っぽいな…」
エフラム「殺風景だな」
そう、本当にそれだけなのだ、部屋は大きくはない、
真ん中に置かれたまだ綺麗なソファーと机がどこか一層寂しく見せる
エリウッド「なんで持っていかなかったのかな…まだ使えそうなのに」
エフラム「忘れられたのか…? いずれにせよもったいないな」
ヘクトル「…もしかして持ち出せなかったんじゃねえか?」
エフラム「…あの入口の所為か」
エリウッド「あー…」
この部屋の唯一の出口、つまりはさっき入ってきたところだが…
なぜか異様に横幅がなく、加えて変なつくりをしてるため縦に出口が短いのだ
運び出すのには無理がある…
エリウッド「てことは、かつてはあんな作りじゃなかったんだね」
ヘクトル「そういうことだろうな、じゃなきゃここにこのソファーと机が有るわけがねえ」
エフラム「ということはあの扉は修理した時かなんかの設計ミスか…誰がやったんだ」

ロイ「ねえ、マルス兄さん、誰が直したの、あの扉」
マルス「僕も詳しくは聞いてないけど…ちゃんとした工務店に頼んだってきいたよ、
    でもこの有様は本当にちゃんとした工務店だったのかな」
リーフ「…工務店…ねぇ…まさかね?」
ロイ「心当たりがあるの?」
リーフ「ずっと前にアイク兄さんから聞いた話なんだけどさ、
    以前に工務店がベグニオン社のビルの修理を受け持ったらしいんだ」
マルス「…」
リーフ「んで…その時、セネリオさんが主にどういう風に直すのか、
    計画書みたいなのを全員に渡したんだって、
    広いから各自担当する場所を作り分担してやったらしいけど…」
ロイ「…」
リーフ「その時ワユさんが計画書に書いてある内容理解できずに適当に直したらしいんだ…
    セネリオさんが『何をしてるんですか』と聞いたら、
    『細かいことは気にしない!』ってそのまま続行しちゃったらしい」
ロイ「いや、気にしようよワユさん…」
マルス「前向きすぎるのも問題だね」
リーフ「この話が場所とか時期的にも合うし…もしかして…と思って」
ロイ「多分それだよ…じゃあ給湯室のもワユさんか…
   でも、そんな風にしちゃって工務店には苦情こなかったの?」
マルス「…この当時から社長は誰だったか、
    そしてその工務店には誰がいたか考えればいいんじゃない?」
ロイ「…把握…したような気がする」
リーフ「恐るべし我が家のフラグクラッシャー…」
375 名前: Let's肝試し!(46) [sage] 投稿日: 2008/08/05(火) 00:06:43 ID:BP6/61sd
ヘクトル「…何もないな…」
エフラム「そのようだ、次へ行こう」
エリウッド「…あれ? なんだろ、これ」
ヘクトルとエフラムがエリウッドのほうへ視線を向けると
エリウッドはソファーの座る部分を開け、奇妙な箱を取り出していた
サイズは両手にそれなりに余る、といったところか
ヘクトル「あきらかに罠っぽいが…気になるな」
エフラム「俺もだ、ちょっと気になる」
エリウッド「僕も…ちょっと開けてみようか」
ひとまず丸机に箱を置き、箱のふたへ手をかける
代表して発見者のエリウッドが開けるようだ
エリウッド「いくよ…!」
カパッと箱を開ける、その瞬間
デーデッ! デーデッ! デーデッデデデー!
…どっかで聞いたことのある音楽が静寂の空間に流れた
エリウッド「…これって」
エフラム「しっこくのテーマ…か?」
ヘクトル「…これ、オルゴールじゃね?」
エリウッド「…オルゴールが奏でる音じゃないんだけど?」
箱を開けると箱の内部には赤い絨毯が敷かれていた、それを取ると
全部黒で出来たオルゴールの部品が音を奏でる姿を現した
ヘクトル「何で出来てんだよ、これ!?」
エフラム「わ、わからん」
エリウッド「少なくともこんな重みのある音を奏でる金属は知らないよ僕…」
なおも鳴り響くしっこくのテーマ
ヘクトル「うあー! 耳に残る!! とりあえず止めろ!」
エリウッド「う、うん」
エリウッドは箱を閉める―――が
デーデデデッデーデッ! デデデッ デー デーデデデーデーデー
デデデーデッ デーデーデーデッ!! デデーデッデーデー…
エフラム「おい…止まらんぞ」
ヘクトル「うがー!! うっせぇっつーの!!」
エリウッド「こ、壊しちゃったかな…?」
結局ネジが切れるまでこの音楽が流れたとさ…
エフラム「…頭の中でしっこくが踊ってるんだが」
ヘクトル「…あ、今頭の中のしっこくが月光出した…」
エリウッド「改めて聞くと強烈なテーマだね…」
とりあえず箱を元あった場所へ戻し、部屋を後にする三人だった…
ちなみにこの箱、リーフ達の仕掛けたものではない
あまりにもさっぱりしすぎた部屋なので満足のいく罠をしかけられなく断念したそうだ
この部屋に罠を仕掛けにきた際、箱の存在には気づいていたが得体の知れないものなので放置したようだ
なぜここにあるのかは一切不明である

エフラム「…身の程をわきまえよ」
ヘクトル「…乙女よそなたは私が守る」
エリウッド「…このエタルドはサービスだからまずは喰らって落ち着いてほしい…」
ヘクトル「…頭からしっこくが離れねー…」
エフラム「勝手にしっこくの言葉が出てしまう…」
エリウッド「うー…あ、エタルドが輝いてる…」
重症だ…とりあえず進むと扉を見つけた
ヘクトル「あ…扉だ…よっし開けるかー…」
エフラム「身の程をわきまえ…じゃない、お前に任せられるか、そなた…違う違う、お前は下がってろ」
ヘクトル「大丈夫です騎士さま…じゃねぇよ…大丈夫だ、私も開けられます…これもねーよ…俺が開けるって」
エリウッド「ていうかヘクトルそれ乙女の…じゃなくて…ミカヤ姉上のセリフだよ…」
本気で重症である、しっこく(のテーマ)恐るべし
あれこれ話した結果結局ヘクトルが開けることになったようだ
ついでにその影響で少し時間がかかり『状態異常:しっこく(仮名)』もマシになったようだ
ドアノブに手をかけ、ドアを開ける

109 名前: Let's肝試し!(47) [sage] 投稿日: 2008/09/03(水) 08:09:47 ID:A7IuqY2z
ギィッ…
ヘクトル「普通のドアだ」
エフラム「普通だな」
エリウッド「普通だね」
今までの常識を覆すドアがある階層にしては普通なドアを開け、とりあえず中へ入る
エフラム「資料庫か?」
ヘクトル「みたいだな、ちょっとカビくせえな…」
エリウッド「あ、窓がある、開けてくるよ」
エリウッドは小走りで奥へ行き、ギギギッという少し耳障りな音をたて、窓を開ける
部屋は資料庫というだけあり、それなりに広く、部屋を仕切るように金属製書類棚が3つほど置いてある
もっとも、資料そのものは…
エフラム「だいたい資料は持ち出されてるな」
ヘクトル「いくつか残ってるけどボロボロで読めねーよ」
エリウッド「ああ、窓から入ってくる空気が美味しい…」
三人の言うとおりである(一人関係なかったが)
ヘクトル「にしてもすごいサビてるな、この棚」
棚の表面を指でなぞるとサビてるときのザラザラとした感触が伝わる
エフラム「かなり長い間放置されていたんだろうな」
エリウッド「もうなんかちょっとした事で倒れちゃいそうだよ…少し傾いてるし」

ロイ「ねぇ…本当にやるの? これ…少し危なくない?」
マルス「仕掛けちゃったものは仕掛けちゃったんだし、今更でしょ」
リーフ「まあ、やっちゃおうよ」
マルス「じゃあ作動させるよ」
マルスは戸惑いなく頑丈な糸を引いた…

ギギギッ…
ヘクトル「なんか聞こえねえか?」
エフラム「ああ…なんか軋むような音がする」
エリウッド「――! 二人とも、部屋の端に寄るんだ!」
棚がいきなり揺れ始めた、今にも倒れそうである
エフラム「! まずい!」
ヘクトル「ちょ…待て、俺今部屋の真ん中で間に合わな…だぁーーー!!?」
ガシャンッ!! ドタンバタン!! ガンガンガン!!
エリウッド「げほごほ…埃がすごい…ヘクトル、エフラム、無事かい?」
エフラム「俺は大丈夫だ、ヘクトル、お前はどうだ」
ヘクトル「ああ、なんとかな…かなり危なかったぜ」
幸いにも棚が上手い具合に倒れたことで隙間ができ、ヘクトルはその隙間にいた
必要最低限の物をどけ、ヘクトルは這い出てきた
ヘクトル「ふぅ、死んだかと思ったぜ…」
エリウッド(死んでもオームとかバルキリーとかあるけどね…)
エフラム「さすがに肝が冷えたぞ…」
三人は目の前の書類棚全てが倒れている惨状を目の当たりにしていた
エリウッド「とりあえず出ようよ、埃がすごくて…」
エフラム「賛成だ、息苦しい…」
ヘクトル「おう、早く出ようぜ」
埃がたちこめ、息苦しくなった三人は片手で鼻と口を押さえ早足で部屋を後にした…
それと入れ違いになるようにさっきとは別の訪問者三名
110 名前: Let's肝試し!(48) [sage] 投稿日: 2008/09/03(水) 08:11:04 ID:A7IuqY2z
ロイ「うわ…これはひどいや…」
リーフ「ひどい有様です」
マルス「…これはちょっとやりすぎじゃないかい、二人とも…
    ヘクトル兄さんやエフラム兄さんはともかくエリウッド兄さんにはまずいって…」
マルスは折れた金属製書類棚の支柱となる部分の一部を拾い上げながら言った
それはまるで先端が槍のように鋭くなっており、当たり具合によっては…
ロイ「違うよ、これは僕らじゃないよ」
マルス「あれ…なら僕が引っ張ったのはなんだったのさ?」
リーフ「これだよ」
リーフが手にしていたのは重めで表面がデコボコしたボール、大きさは野球ボールぐらいである
ロイ「棚の上にこれを複数いれたダンボールを置いたんだよ、マルス兄さんが引っ張ったのはこれ」
ロイは傍に落ちていたダンボールをひろいあげ、それに結びついていた糸を手に取る
マルス「そうなのか…じゃあ本当に間一髪だったのか兄さん達」
リーフ「みたいだね…別の意味でこっちも肝が冷えたよ」
ロイ「あちこちに罠を張る前に部屋の安全性とかもう一度確かめた方がいいかも」
リーフ「もう兄さん達4Fの階段に着くだろうし、僕らも4Fに先回りして安全確認しよう」
リーフ達は4Fへ先回りするべく隠し階段へ急いだ…

エリウッド「もうすぐ4Fだね、そこに階段がある」
ヘクトル「もうゴールはすぐそこだな、よっし、とっとと行こうぜ」
エフラム「確か旗が置いてあるんだったな、見落とさないように探そう」
この三人も4Fへの階段を上っていった…
―4F―
ヘクトル「ここもそれなりに入り組んでやがるな」
エフラム「旗を探し出せば終わりか、だがどっちへ向かえばいいんだこれは…」
エリウッド「まあ、これまで通り見てまわろうよ」
エフラム「廊下の一番奥…だったか、旗が置いてあるのは」
ヘクトル「今にして思うと結構曖昧だな」
エリウッド「ゆっくり探せばいいさ、とりあえず行こう」

リーフ「とりあえず部屋みたけど、大丈夫だよ」
ロイ「あっちの部屋も大丈夫そうだよ」
マルス「こっちも確認してきた、異常なさそうだね」
どうやら手分けをして安全性を確認してきたようだ、
そこまで時間はなかっただろうに仕事の速い三人だ…
ロイ「さすがにさっきみたいな事がまた起きたらまずいもんね…」
リーフ「まあ、再度確認してきたんだし、今度は問題ないでしょ」
ロイ「でも、一応用心しとこう」
マルス「そうだね…」
三人はこれまで通りエリウッド達の姿が確認できる場所に身を潜めた

エリウッド「あ、扉だ、開けるよ…なんか重いなぁ…」
エフラム「手を貸そう」
ヘクトル「俺も手伝うぜ」
ドアノブを回し、結構重めの扉を力を込めて押す
無事開き、中に身を滑り込ませる、ドアが重い音とともに閉まる
111 名前: Let's肝試し!(49) [sage] 投稿日: 2008/09/03(水) 08:12:15 ID:A7IuqY2z
ヘクトル「…物置か、これ」
エフラム「そのようだな…なんかいろいろ置いてあるぞ」
ヘクトルとエフラムは部屋の奥へ進み、部屋を見て回る
エリウッドは部屋に入ってすぐのところを見ているようだ
ヘクトル「ガラクタばっかだな」
エフラム「ああ、さっきの給湯室と同じ状況みたいだ」
使用回数残り少ない武器(良くて数回)とか、たんなるガラクタ置き場である
(ちなみにマルスがスリープの杖を発見した場所でもある)
ヘクトル「この手斧、まだ一回使えるじゃねーか」
その辺にほっぽらかしてあった手斧を手に取る、
鉄製の棒に刃を取り付けただけの簡素なデザインだ
エフラム「この槍もだ、どうせなら最後まで使ってやればいいものを」
エリウッド「物は大事にしないとね」
エフラムは槍を、エリウッドは剣を手に取る
ヘクトル「よっし、最後の一回は俺が使ってやるぜ!」
エリウッド「使うって…誰かに向って投げる気かい? 危ないよ」
ヘクトル「要するに何かに当てればいいんだよな」
エフラム「自分で投げて自分で喰らっておけ、手斧だし出来るにだろう」
ヘクトル「んなことするわけねーだろ!! 俺死ぬじゃねーか!」
エリウッド「大丈夫だよ、君なら手斧一回ぐらいじゃ死なないよ」
エリウッドによくわからない信用をされているヘクトルは少し頭を抱えた
ヘクトル「エリウッドお前な…あーもういい、エフラム、そこに槍を立ててくれ」
エフラム「これに当てる気か、まあいいだろう」
エフラムは先ほど見つけた槍を、
その辺に置いてあった荷物(ガラクタ)で床に対し垂直に立つよう固定した
ヘクトル「よっし、俺の華麗な手斧投げを見せてやるぜ」
ヘクトルはそう言い、固定した槍と距離をとる
エフラムとエリウッドはヘクトルの後ろへ避難する
ヘクトル「おりゃあ!」
勢いよく手斧を投げる、右に旋回し、固定した槍にクリティカルヒットする
エリウッド「さすがだね、斧の扱いにかけては本物だ」
エリウッドがパチパチと拍手を送る
ヒットした手斧はブーメランのように回転しながら手元へ戻ってくる、その時だった
スポッ ドガン!! ガンッ
エフラム「…おい」
エリウッド「い、痛い…」
なんと刃の部分がすっぽ抜けてしまい、エフラムの傍のすぐ後ろの壁に勢いよくめり込んだ
棒の部分はヘクトルが思わず事態で動揺し受け取り損ね、
後方のエリウッドの方へ向かい、頭にクリーンヒット
ヘクトル「…悪い」
とりあえず謝罪するヘクトルだった
エリウッド「いたた…それにしてもこの部屋には何もしてないのかなマルス達」
エフラム「罠らしきものは見当たらんぞ」
エリウッド(だいぶ痛みがひいてきたよ…)
ヘクトル「マジでなにもないのか? 奴らの事だし、ぜってー何かあるはずだぜ」
エリウッド(あれ、なんだろ、これ)
エリウッドは未だ少し痛む頭を押さえながら、
荷物の中から不自然ににょきっと飛び出している長い棒に目を引かれた、
とりあえず手を添え、引っ張って見ることにした
エリウッド(持ち上がらないな…よいしょ!)
とりあえず無理矢理引っ張ってみる、なんとか持ちあげた
棒の先端には大きな黒い金属の塊がついている
エリウッド(変な物取り出しちゃったよ…って、あれ…体が勝手に)
112 名前: Let's肝試し!(50) [sage] 投稿日: 2008/09/03(水) 08:13:11 ID:A7IuqY2z
ガンッガンッガンッ!
いきなり部屋に妙な音が響き渡りエフラムとヘクトルは音源に目を向け、言葉を失う
エフラム「…何をしてるんだ?」
とりあえず先に回復したエフラムがそう問いかけた、目線の先を追うと
そこには巨大な金槌を一心不乱に振り続けるエリウッドの姿が
エリウッド「わ、わからない、でも体が止まらないんだー!」
ヘクトル(どっかで見た気がするなあれ…)

ロイ「マルス兄さんでしょ、あれ置いたの」
マルス「うん」
リーフ「なんで持ってるのさ…」
マルスが置いたもの、それは地区対抗格闘技大会のハンマー、
取るとしばらくの間勝手に振り続け、当たるとすごーく痛いものだ
マルス「ちょっと持ち出してきたんだ、ついでに言うと取った人は
    軽度のバサーク状態になるように細工してきた」
リーフ「ちょ…」
ロイ「危なくない? それ」
マルス「大丈夫さ、あれで殴られても猛烈に痛いだけで絶対に命には関わらないさ、
    実際あれで死者は出てないしね」
リーフ「兄さんテラ鬼畜」
マルス「うるさいうるさいうるさーい!
    最近では威力が上った金色のハンマーとか出てくるし
    それがピコハンだったときの安心感はとてつもなく大きいんだ!
    いつもピンク球とか赤帽子ヒゲ親父や電気鼠
    その他色んな人に当たりのハンマーのとき
    あれで殴られるのがどんなものか皆少し知ればいいんだーー!!」
ロイ(よっぽど嫌だったんだろうなぁ…というか私怨入ってるよね、これ)
マルスが句点をおかず一息で先ほどの長いセリフをまくしたてながら軽く発狂する中、
物置内では…
エリウッド「あ…あれ? 体が…」
エフラム「…なんでこっち向くんだ?」
ヘクトル「そしてなぜ近づいてくるんだよ?」
エリウッド「わからないよ、でもなんか…殴りたい気分だ」
どうやらバサーク状態になりつつあるようだ…目つきが段々変ってきた
エフラム「冗談はよしてくれ…」
ヘクトル「お、おい…」
エリウッドが二人に一歩近づく、ヘクトルとエフラムが一歩下がる
また近づく、下がる…
ヘクトル「エリウッド! 正気に戻れ!!」
エフラム「くそ…どうすればいい…!」
ドアを開けて逃げればいいではないかと思うかもしれないが
ここのドアが異常に重いので開けて逃げるまでにやや時間がかかってしまう
それまでに追い付かれたらアウトである、部屋もそこまで広くはないのだ、所詮物置だし…
エリウッド「ふ…ふふ…はっはは…」
ついに笑い始めた、俯いているため表情はわからない
ヘクトル「エリウッド…?」
エフラム「…?」
そしてエリウッドは顔を上げる、その瞳には怪しげな光が宿っていた
エリウッド「殴らせろおぉーーーー!!!!」
ヘクトル&エフラム「「わーーーーーー!!!!」」
狭い物置内での追いかけっこが始まった
113 名前: Let's肝試し!(51) [sage] 投稿日: 2008/09/03(水) 08:14:29 ID:A7IuqY2z
エリウッドのハンマーが無差別に周囲を破壊しまくる
ヘクトル「うおっと!? 正気に戻れエリウッドー!!」
エフラム「ヘクトルの言うとおりだ…おわっ! 正気に戻ってくれ!!」
エリウッド「HAHAHAHAHA!!」
完全に壊れてしまっている…
エリウッド「我殴る! 故に我ありーーー!!」
エフラム「どっかで聞いた気がする言葉だなーーー!!??」
ヘクトル「なんかデフォルトとかいうやつの言葉じゃなかったっけかーー!!?」
(注:デフォルトではなくデカルトです)
ドゴンッ!! ドガアッ!!
物置内にある物をヘクトルとエフラムを追いながら片っぱしから潰していくエリウッド
潰した際に四散する残骸を避けながらエリウッドと距離を取るヘクトルとエフラムには
まさに命がけである
ヘクトル(そうだ…確かアイク兄上がハンマー相手には
     カウンターで返り討ちにしてやったって話してたな…よし!)
ヘクトルは近くにあった斧を手に取る
エフラム「ヘクトル!? 何をするつもりだ!」
いきなり斧を手に取り、今までに見たことのない構えでエリウッドに向きなおるヘクトル
ヘクトル「まあ、見てろって…!」
意気込んで、床を踏みしめる
エリウッド「デストローーーーイ!!」
ヘクトル「いくぜ、エリウッド!」
ガインッ!!
ヘクトル「NOOOOOOOOOO!!!」
エフラム「何がしたかったんだお前はーーーー!!!!」
失敗したようだ…ぶっつけ本番で出来るような芸当ではなかったらしい、宙を舞うヘクトル
エリウッド「HAHAHA!! 蝶! サイ! コォー!!」
ヘクトル&エフラム「「アッーーーーーーー!!!」」

リーフ「ねぇ、本当に大丈夫なの…」
マルス「ここまでなるはずじゃなかったんだけどなー…」
ロイ「ヘクトル兄さん、エフラム兄さん…冥福を祈るよ」
リーフ「いや殺さないでおいてあげようよ」
マルス「まあ、もうちょっとしたら効果は切れるけど…」

数十秒後…
エリウッド「あ、あれ? 僕は何をしてたんだろ…なんか暑いなぁ…」
どうやら正気に戻ったようだ、今まで体を動かしていたため額には爽やかな汗が…
エリウッド「なんだろ、いい運動したような気が…って…」
額の汗を拭いながら周囲を見渡すと物置の物が四散し、壁や床はヒビだらけ(一部に穴)
その中にヘクトルとエフラムがボロ雑巾のようにへばっている光景が広がっていた
エリウッド「ふ、二人とも大丈夫かい…?」
ヘクトル「全然…」
エフラム「大丈夫じゃ…な…い」
それだけ言うと二人は床に突っ伏し、機能停止
エリウッド「ちょ、二人ともしっかりしてくれー!」
結局二人がある程度回復するまでその場から動けなかった…
ようやく動けたのはそれから十数分後の事だった

エフラム「少しクラクラする…」
ヘクトル(あれはマルス達が置いたのか…? だったら覚えとけよ…)
両者ともかなりのダメージを負い、やや足取りが頼りない
ヘクトルは罠を仕掛けた三人にひそかに恨みを募らせつつあった
エリウッド「なんかわからないけどゴメン…」
エフラム「ああ…大丈夫だ、多分…」
とりあえず旗を探さねばなるまい、
エフラムとヘクトルがある程度回復したところで行動を再開した

307 名前: Let's肝試し!(52) [sage] 投稿日: 2008/09/19(金) 00:24:14 ID:uSZhD2z2

行動を再開して、少ししたところ、廊下を歩いていた三人は
ついに目的の物を見つけた、赤い旗である
ヘクトル「お? あれじゃねーか?」
エリウッド「そうみたいだね、でも」
エフラム「その手前に部屋があるみたいだな」
廊下の先のすぐそこの行き止まり、そこに確かに赤い旗が置いてあった、
だが三人から見て行き止まりのちょっと手前右方向にドアがあり、
まるで三人を誘うような雰囲気を醸し出している
エリウッド「どうする? 先に部屋を見るかい?」
ヘクトル「俺はどっちでもいい」
エリウッド「僕もだ…うーん、どうしよ」
エフラム「なら、部屋見てしまわないか? これまで通りかかったところを順に見てるのだから」
エリウッド「うん、異論ないよ」
ヘクトル「決まりだな」
少し今までと違うそれなりに御大層なドアを開ける
エフラム「社長室だな」
エリウッド「うん、間違いない」
ヘクトル「ああ、それ以外ありえねー」
部屋の奥が大きな窓、景色は綺麗で、そしてその手前に机と椅子が置いてあり
そこに座ったものは窓を背にするような形になる
一番お偉いさんがいる場所の定番である、先ほどのドアのデザインからも間違いないだろう
部屋の端にはそこまで大きくはないがガタのきている本棚がある
床は誰かが大暴れでもしたのだろうか、ボロボロなのでお世辞にも状態は良いとは言えない
ヘクトル「なあ…一言だけいいか?」
エフラム「ああ、言いたいことはわかる、俺も言いたい」
エリウッド「多分僕もわかるよ、僕も同じく…どうせなら同時に、せーのっ」
ヘクトル&エフラム&エリウッド「「「社長の机と椅子小さすぎる!!!!」」」
ヘクトル「ありえねーよ!! 何歳児用のだよ!」
エフラム「俺達の膝の少し上ぐらいまでしかないぞ」
エリウッド「前々からサナキ社長が社長やってたって聞いてたけど…本当みたいだね」
社長室の奥には、ょぅι"ょ用(つまり幼児用)の
かわいらしいデザインの机と椅子が鎮座していらっしゃった
かなり荒い使い方をされたのか、ボロボロのズタズタである
ついでに言うとこのぐらいの高さの机は大人にとっては
見事に泣き所に当たることがあるので傍を通る際にはご用心
ヘクトル「うわ、軽っ」
エリウッド「かなりいい素材を使ってるみたいだね」
エフラム「ん、値札じゃないか、これ」
机の裏側にボロボロの値札シールが張ってあった、はがし忘れたのだろう
エリウッド「どれどれ…って…ちょ…」
代表してエリウッドが裏側を覗き込むと、驚愕の表情へ変化する
ヘクトル「あ? どしたよ、エリウッド」
エリウッドが机の裏側を見るためにヘクトルは机を持ち上げながら問いかけた
エフラム「そんなとんでもない値段が表示されてるのか?」
エリウッド「いや、破れてて具体的な値段はわからないけど読めるところだけで…0が…7つある」
エフラム「何!!?」
ヘクトル「0が7つ? んーと、一、十、百、千、万…十万…百万!?」
エリウッド「0が7つだから少なくとも一千万以上だ…」
ヘクトル「なんだとーーー!? 一千万って0が何個だ!!?」
エリウッド「7個だよ! さっき言ったじゃないか!!」
エフラム「どう見てもそんな価値あるものに見えんのだが…!?」
三人は思わずまじまじと机と椅子を見る、先ほどでも述べたがズタズタのボロボロである
当時の子供に価値が分かるはずもないとはいえ…子供とは無邪気で恐ろしいものである
308 名前: Let's肝試し!(53) [sage] 投稿日: 2008/09/19(金) 00:25:45 ID:uSZhD2z2
リーフ「なんか兄さん達が騒がしいんだけど」
マルス「なんだろね、とんでもないものでも見つけたのかな」
ロイ「僕らなんか変なの置いたっけ?」
マルス「まあ、いいや、とりあえずやろうよ」
ロイ「そうだね、やろっか…今回のかなり嫌がらせくさいけど」
リーフ「本来は脅かすのが肝試しだけどね」
マルス「なんかエフラム兄さんとヘクトル兄さんはいじりたくなるんだよ」
ロイ(本当に性格悪いよね、マルス兄さん…いや、いいところもあるけどさ)
リーフ「(エリウッド兄さん、とばっちり?)まあ、始めようか…」
リーフは社長室のドアへ鍵を持った手を近づける

カチャリ…
エフラム「ん?」
ヘクトル「あ?」
エリウッド「え?」
ドアの方から音がした
エフラム「まさか」
エフラムがドアへ近寄り、ドアノブを回そうとするが強い抵抗を感じた
エフラム「…やはり、鍵がかかった」
ヘクトル「マジかよ」
エフラム「このドア、内側からは開けられないみたいだな…」
ドアノブには鍵穴がある、このドアは鍵がないと開かないということだ
ヘクトル「マルス達の仕業か? あの野郎…」
エリウッド「でもどうしよう、壊すには無理そうだよ、見た目より強度があるみたい」
エフラム「なんでわかるんだ?」
エリウッド「これ…なんだけど」
エリウッドの手にはいつの間にか一つのノートがあった、
ペンでかかれた題名はかすれてしまい、読めない
ノートの開き目に指を入れながら二人に近付く
ヘクトル「なんだこれ、つーかどこにあった?」
エリウッド「そこの本棚…かなり目立たないところにあったから気になっちゃって、
      とりあえずここを見て、適当に開いたページなんだけど」
エフラム「ん…」

謎のノート『天気:曇り 日付:………
      サナキ様が起こしたあの一件により、本社ビルは甚大な被害を被った
      私の軽はずみな行動が原因だった…その一件が原因で
      本社ではサナキ様の行動を制限するべきだという意見が出ました
      私は反対した、罰を受けるのは自分であるべきなのに…でも聞き入れられなかったのです
      結果、サナキ様の何時もいらっしゃる社長室の扉は修理の際、
      めったに破れない強度を持つ扉にし、サナキ様は、ほぼ軟禁状態になってしまった
      まだ幼いゆえ気にしていらっしゃらないようですが…すみませんサナキ様』
309 名前: Let's肝試し!(54) [sage] 投稿日: 2008/09/19(金) 00:26:32 ID:uSZhD2z2
エフラム「なんだこれは、日記か」
エリウッド「そうだと思う、誰が書いたかはわからないけど…」
ヘクトル「なんか読んでて心なしか暗くなるな」
エリウッド「うん…ちょっと可哀相だね…とにかく、扉がかなりの強度を持ってるのは間違いないんだ」
ヘクトル「くそ、どうすっかな…ん?」
エフラム「なんだ、なにか思いついたか?」
ヘクトルはエリウッドから日記を受取り、裏表紙を注視する
ヘクトル「よーーっく見ると名前書いてあるぜ、これ」
エリウッド「え、そうなのかい?」
ヘクトル「ああ、んーと…? シ…グ…ノ…レン?」
エフラム「シグノレン? 誰だそれは」
エリウッド「ちょっと貸してくれるかい?」
ヘクトル「ああ」
今度はエリウッドが裏表紙を注視する
エリウッド「ほんとだ、うっすらとだけど読める…ヘクトル、これ『ル』じゃない?」
ヘクトル「あ、マジだ、これ『ル』だな、『ノ』と『レ』じゃなかったのか」
エフラム「ということはシグルン…どこかで聞いたような」
エリウッド「シーグルン…シグールン…あ! これシグルーンさんじゃないか?」
エフラム「ああ、あの人か」
ヘクトル「聞いたことあるな、確か主に社長の面倒見てた人とか…」
エリウッド「苦労してたんだろうなぁー…」
ヘクトル「んーもう少しこの日記読んでみないか?」
エフラム「確か人の日記というのは安易に読むものではないんじゃなかったか?」
エリウッド「僕もどうかと思うんだけど」
ヘクトル「でも今、何か方法知るとしたらこれしか手掛かりないぜ、悪いとは思うけどな」
エフラム「珍しく正論だな…仕方ないか?」
エリウッド「うーん…しょうがない…気は進まないけど、すみません、シグルーンさん…」
心の中で謝罪を入れた三人は日記を開き見る、エリウッドが日記を開くのを他二人が覗き込む形になる
エリウッド「とりあえず、扉の事が知りたい、このページから後の日を順に見ていこう」
エリウッドは次の日を開く

日記『天気:雨 日付:………
   サナキ様が社長室へ軟禁状態になって初日、天気に負けず、
   元気に部屋の中を走り回っていらっしゃる、なんとも愛らしい…
   サナキ様のお付きとして、責任を持って見守るとしよう、
   それが私のあの一件の責任であり、意思なのですから』

ヘクトル「ふと思ったんだが、『あの一件』ってのはなんなんだ?」
エリウッド「わからない…ただ内容からすると、シャレになってないみたいだね」
エフラム「『甚大な被害』とさっき書いてあったからな、よほどの事だったんだろう」
エリウッド「しばらくはサナキ社長を案じてる内容だけだね、少し飛ばそう」

日記『天気:シムベリン 日付:………
   サナキ様も不審に思い始めたようだ、無理もない、
   ここのところほとんどと言っていいほど部屋から外へ出てないのだから
   心が痛む…こんなに愛らしく、この世界で最も可愛いサナキ様が
   今にも泣きだしそうに私を見るのです…ああ、サナキ様…』

ヘクトル「よっぽど心を痛めてたみたいだな」
エリウッド「みたいだね…お気の毒に」
エフラム「…次へ行こう」
エリウッド(ところで『天気:シムベリン』って…快晴のことかな?)
また数日ぐらい飛ばす…
310 名前: Let's肝試し!(55) [sage] 投稿日: 2008/09/19(金) 00:28:20 ID:uSZhD2z2
日記『天気:曇りのち雨 日付:………
   今日もサナキ様は元気がない…アイク様の写真を見せてもいつもより反応が悪い…
   サナキ様の沈んだ顔を見るたびに私も心が重くなります、いつ笑顔が戻るのでしょう』

ヘクトル「…アイク兄上…」
エリウッド「何歳ごろから夢中だったんだろう」
エフラム「…長い片思いだな」
エリウッド「もう少し飛ばしてみよっか…」

日記『天気:晴れのち曇り 日付:………   
   今日のサナキ様はたった5924歩ぐらいしか歩いていらっしゃいませんでした…
   いつもなら平均の8590.24歩は歩くはずなのに…
   元気もない様子…ああ、サナキ様…サナキ様
   ――――追記――――
   夜中、どうしても寝付けなくなりこうして夜に日記をかいています
   サナキ様の事を考えるだけで寝られません…
   サナキ様数え唄もとうとう五万に達してしまいました…いつ寝られるのでしょうか…
   サナキ様が50001人…サナキ様が50002人…』

ヘクトル「急に内容おかしくなってね?」
エフラム「そろそろ暴走してる気がする」
エリウッド「とりあえず、キリがないね…思い切って一月分飛ばしちゃおうか」

日記『天気:サナキ様 日付:サナキ様
   サナキ様サナキ様サナキ様サナキ様サナキ様サナキ様サナキ様
   サナキ様サナキ様サナキ様サナキ様サナキ様サナキ様サナキ様
   サナキ様サナキ様サナキ様サナキ様サナキ様サナキ様サナキ様
   サナキ様サナキ様サナキ様サナキ様サナキ様サナキ様サナキ様
   サナキ様サナキ様サナキ様サナキ様サナキ様サナキ様サナキ様(略)』

ヘクトル「KOEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!!」
エフラム「モニカ自重」
エリウッド「シグルーンさん、数ページに渡ってずっと書いていらっしゃる…!?」
それはもうページ余すところなくビッシリと
これだけ書いて利き手は痛くはならなかったのだろうか…最後までまったく歪みのない字だ
エリウッドは日記を閉じ、本棚へそっとしまいこんだ…
エリウッド「二人とも、見なかったことにしよう」
ヘクトル&エフラム「「了解」」
三人は今回の事を頭の外へと先ほどの日記の内容を追いやった
いつのまにか忘れる事を願って…
だが、人間というのは忘れたいと思うものが記憶に鮮明に残る生物でもある

エリウッド「あー…と、とりあえずどうしよう?」
ヘクトル「あきらめて壊すしかないんじゃねぇか?」
エフラム「あの扉壊すにしても道具がないと厳しいぞ」
周りを見渡してもあるのはガレキぐらいである
ヘクトル「ないものはしょうがねぇよ、力づくだ」
エリウッド「んーそうなんだよね…でもなぁ…」
チャリンッ
突然部屋に金属の凛とした音が響き渡った
エフラム「ん?」
音の出所を追うと…
エリウッド「鍵?」
ヘクトル「もしかして、ここの鍵か?」
ボロボロの床の上で微かな光を放つは、たしかに鍵だった…

リーフ「鍵、投げ入れたよ」
マルス「よーし、じゃあ嫌がらせ開始だ」
ロイ(すっごい楽しそうだよ、マルス兄さん…)

117 名前: Let's肝試し!(56) [sage] 投稿日: 2008/10/12(日) 11:22:18 ID:YZlxLT5V

エフラム「とりあえず、ここは」
エリウッド「拾って試すしかないよね」
ヘクトル「だな」
エリウッドが鍵へ近づき、身をかがめ、手を伸ばしたときだった
チャリンッ…
エリウッド「あれ?」
手は空をつかんでしまった、もう一度手を伸ばす
チャリ…
綺麗な音色と共に鍵はエリウッドと距離を取ってしまう
エリウッド「あれーもしかして僕、鍵に嫌われちゃったのかな」
エフラム「違うと思うが…」
エリウッド「えい!」
今度は一気に距離を縮め、鍵に手を伸ばし掴む…寸前でスルッと抜けられてしまった
チャリッチャリッ…
挑発するように動いている…さっきまでは綺麗な音色だと思ったが、
この瞬間三人には嘲笑うかのような音色に聞こえたという
エフラム「ちょっとムカっときたんだが…」
ヘクトル「俺もだ…折りたくなる」
エリウッド「今は折っちゃだめ、使用後なら構わないけど」
目が据わってきた…
エリウッド&ヘクトル&エフラム「「「待てーーーー!!!」」」
鍵との追いかけっこというシュールなバトルが今始まった
チャリンッ! チャリチャリ…
エフラム「くっ! すばしっこい…」
エリウッド「あ、ヘクトル! そっちに行ったよ!」
ヘクトル「よっしゃあ!」
鍵がものすごい速度でヘクトルの方へ向かう
ヘクトル「って、おい!?」
…が、ここでクルッと180度方向転換、器用な動きをなさっている
エリウッド「え、え? 僕の方に…!」
突如思わぬ動きをしたため、エリウッドは焦ってしまった…その結果
エリウッド「って、うわぁ!?」
エフラム「あ…」
ドサッ!
なんと床のくぼみに足を引っかけて転んでしまった、前述でもあったが
床の状態はお世辞にもいいとは言えないのだ、
そこらじゅうにガレキがあるわ、くぼみができてるわ、ヒビがあるわで…
とにかく歩きにくい事極まりない
エリウッド「あいたた…ん?」
転倒した際に打った背中に片手を添えつつとりあえず体を起こすと
エリウッドが手を伸ばせば届くような位置で鍵がチャリチャリと動き回っている
どーみてもあからさまに馬鹿にしている
エリウッド「鍵!! 貴様ぁ!!」
エリウッドがキレました

リーフ「おおう…エリウッド兄さんマジ切れ…」
マルス「めったに見れないね」
ロイ(一応、ごめん、兄さん…)
三人の両手には、よーーーっく見ないと存在がわからないほど細い糸
これで鍵を操ってるのだ、三人とも壁の穴から中の様子を覗き込み、巧みに鍵を動かす
なかなかのコンビネーションである、
しかも鍵を追いかけている三人(現在はエリウッド一名だが)には
糸が当たらないようにもしている、器用な連中である
しかしどんな結び方をすれば180度方向転換できるようになるのだろうか…?
118 名前: Let's肝試し!(57) [sage] 投稿日: 2008/10/12(日) 11:23:15 ID:YZlxLT5V
ヘクトル「落ち着けエリウッド!」
エフラム「そんなに走りまわったりしたら…」
数十秒後エリウッドは鍵を追いかけるのをやめてしまった…
エリウッド「はぁー…はぁー…」
息切れである、そこまで体力のある方ではない上に
床の状態の悪さがジクジクと体力を削っていくのだ
エフラム「大丈夫か?」
エリウッド「う…ごめん、取り乱した、ちょっと頭が冷えたよ」
相変わらず挑発するように鍵が動き回っている
ヘクトル「こんなときこそ冷静に、てな」
エフラム「ちょっと休んでてくれ、俺達二人が追う」
エリウッド「あう、ごめん…」
椅子を探すが、ょぅι"ょの椅子には座るのが無理なので、
間に合わせでその椅子とセットの机に座りこむ
本来の使用法と違う上に行儀が悪いが、仕方ない
エフラム「いくぞ、ヘクトル」
ヘクトル「おう」
まずエフラムが飛び出した、伊達に主に槍の修行馬鹿ではないらしく
ガレキをうまく避け、鍵を追う、運動神経は本物のようだ
鍵はエフラムから距離を取るためそこらじゅうを動き回る
ヘクトルがその動きを目で追い、エフラムに合わせるように鍵を追う
やはりこちらも伊達に斧を振ってるわけではない、いい動きをしている
いつもは喧嘩が絶えないが、この二人は結構息の合った動きが出来るようだ
ヘクトル「この野郎! 待ちやがれ!」
エフラム「待てと言われて待つ奴だったら苦労しない…!」
だが鍵のほうだって負けていない、鋭角方向転換、急加速などトリッキーな動きをして翻弄する
ヘクトル「この!」
距離を縮め、ヘクトルが手を伸ばし、鍵を掴もうとするが…
チャリーンと音とともに跳躍した、どうやってるのだろうか
ヘクトル「エフラム、お前の方に行ったぞ!」
エフラム「わかっている!」
だが跳んだ先はエフラムの足元、鍵、万事休すか?
チャリッと音を立て、床に落ちた時を見計らい、手を伸ばすエフラム
エフラム「よし、これで…!?」
しかし急にエフラムの視界に鍵がドアップで映った、その瞬間
スカーン!!
なんとも聞こえのいい音が響き渡った
エフラム「が…」
鍵が地に着いた瞬間、再び跳躍した、さすがにそこまで想定できなかったのか、
あるいは油断していたのか鍵がエフラムの顔面にクリティカルヒット、威力三倍
エリウッド「エフラムー!?」
ダメージが大きかったのか、顔面を押さえながらその場に尻もちをついてしまった
エフラム「…」
何も言わず、ただ顔面を押さえるエフラム、それは羞恥心から無言を貫いているのか
それとも本気で痛くて声が出ないのか…それは本人のみぞ知る
ヘクトル「なにやってんだお前…」
どこか笑いを抑えているような少しくぐもった声でヘクトルが声をかけてくる
エフラム「う、うるさい…」
せめてもの反抗、ただそれもむなしいだけだと言ってから気づいたエフラムは
人知れず肩を落とすのだった…
119 名前: Let's肝試し!(58) [sage] 投稿日: 2008/10/12(日) 11:24:58 ID:YZlxLT5V
エリウッド「相変わらず挑発してるみたいだね…」
鍵は三人から遠く離れた部屋の角、そこで無駄に8の字を作って遊んでいる
ヘクトル「おい、耳貸せ、エフラム」
エフラム「ん?」
ヘクトルはエフラムにしか聞こえないように小さい声で話す
ヘクトル「あいつは今、端っこに居る、逃げられる方向も限られてる、だから」
エフラム「ああ、追い込むには絶好のチャンスだな」
ヘクトル「だからお前と俺で少しずつ距離詰めてせーのっでとびかかろうぜ」
エフラム「悪くないな」
作戦は決まったようだ、早速実行に移す
ジリジリと鍵ににじり寄る、鍵も動きを止める…緊迫した空気が流れるが妙な光景である
にらみあう人間二人と鍵…シュールだ、鍵は目がないため睨めないが…
ヘクトル「(よし、ここからならいけそうだ)せーのっ!」
エフラム「はっ!」
ヘクトル「うおりゃ!」
ゴチンッ!!
ヘクトル&エフラム「「…!!!」」
お約束…頭から衝突、声にならないようで、呻く二人、鍵も取り逃した
ヘクトル「いてーなこの野郎!! ちゃんと物が見えてんのかその眼は!!」
エフラム「貴様こそ人の事が言えんだろう!! この石頭が!!」
ヘクトル「誰が石頭だと、このロリコンが!!」
エフラム「ロリ…貴様!! 喧嘩売ってるのか!」
ヘクトル「すでに売ってるぜ!!」
ズキズキと痛む頭を押さえながら不毛な争いを始める二人
エリウッド「ふ、二人とも…そんなことしてる場合じゃないよ」
この部屋にはエリウッド達三人と鍵が一個
鍵は口をきけぬので、エリウッドが止める役になるのは必然だった
ただ声は届かなかったようだ…二人の口論は止まらない
エフラム「そこまで言うのであれば一人で捕まえてみろ!」
ヘクトル「いいぜ、やってやるよ、お前の力なんかなくったってなぁ…」
ヘクトルは鍵に向きなおった、鍵は相変わらず挑発する動きを繰り返している
ヘクトル「俺一人で十分だ!」
床を蹴り、鍵へと一目散に走り出す――――

―――十数分後―――
ヘクトル「ぜえー…ぜぇー…」
…捕まえていない
エフラム「ヘクトル、もう終わりか?」
エリウッド(さすがにもう体力回復したよ)
ヘクトル「いや…まだ…まだだ!」
重い足を懸命に動かし、鍵を追うが
まだ体力に余力があったときに指一本も触れていない有様で追いつけるはずもない
数歩走り、ガクッと膝をつき、両手をついてしまう
ヘクトル「くそ…なんでこんなにすばしっこいんだよ…! 猫かっつーの…」
その時ひょいっと鍵が跳躍し、ヘクトルの背に乗っかる
ヘクトル「おいコラ…」
また跳躍し、今度はヘクトルの頭に乗る…ヘクトルの何かが壊れた
ヘクトル「…頭にのるにゃー!!」
エフラム&エリウッド((『にゃー』!?))
ヘクトル「うにゃーーー!!!」
呂律がまわらなくなっている…加えてなぜか追う時の目が野性的になっている
エリウッド「ああ、ついに馬鹿が全身に回って新たな馬鹿の世界に到達した!!」
エフラム(あれが馬鹿の極みか…いや、まだ上があるのか?)
二人は鍵追いに参戦するべきか迷ったが、ヘクトル自身まだ音をあげていない…
彼はプライドがそれなりに高い方でもあるので
水を差すような事をすると後でちょっとうるさい事があるので、とりあえず傍観した
ヘクトル「ぎにゃーーー!!」
エリウッド「ヘクトルが猫のラグズに…化身出来たら色的にライさんとかぶりそうだ」
エフラム(デブ猫…)
120 名前: Let's肝試し!(59) [sage] 投稿日: 2008/10/12(日) 11:26:07 ID:YZlxLT5V
マルス「ハハハ! 見ろ! ヘクトル兄さんが猫のようだ!!」
ロイ「(かなり)申し訳ないけど…見てて面白いね」
リーフ「マルス兄さんノリノリ杉」
それなりに糸を動かすリーフ、控え目に動かすロイ、体全体を使い糸を動かしまくるマルス
ヘクトルが完全にバテるまでの残り数分、ヘクトルは完全に遊ばれることになるのだった…

それからはというと、エフラム、エリウッド二人が追い、
その間ヘクトルが小休止を取り、再び参戦し(猫化は治った)
三人で追い、なんとか鍵の捕獲に成功したのだった
(ちなみにマルスが張り切りすぎてバテたため、動きが鈍くなったのを捕獲)
エフラム「ほれ、ヘクトル、お前が開けろ」
エフラムが鍵をポイっと放り投げ、綺麗な放物線を描き、ヘクトルの手に鍵が納まる
ヘクトル「ん、なんで俺なんだよ」
エフラム「(一応)お前が最大の功労者だろう、花ぐらい持たせてやる」
ヘクトル「エフラム、お前…」
エリウッド「そうだね…君が締めなよ、ヘクトル」
ヘクトル「…わかった」
鍵を握りしめた後、扉に歩み寄り鍵を持ち、鍵穴に差し込み、回す…
ガチャリッ…
エリウッド「お、開いたのかな?」
ヘクトル「みたいだな…よっと」
ギィーッ…
古めかしい若干耳障りな音が響きながらドアが開いた
エフラム「ようやく…か」
エリウッド「旗はすぐそこだね」
ヘクトル「取ってくるぜ」
部屋を出て向かって右の行き止まり、そこに赤い旗が筒の中に二本置いてあった
その内の一本を手に取り、筒から取り出す
エフラム「あとはここを出るだけだな」
ヘクトル「よし、さっさと出ようぜ」
エリウッド「そうだね…でもその前にこれでもどうかな?」
エリウッドは右手で拳を作り自分の顔の手前ぐらいまで上げ、手の甲を二人に見せる
エリウッド「まだゴールじゃないから気が早いかもだけど」
エフラム「いや、悪くないな」
エフラムもエリウッドに倣う
ヘクトル「へへ、そういや久々かもな、これやるのは」
右手に持った旗を左手に持ち替え、右手を二人に倣わせる
そして、三人で拳を突き合わせた
それはあるときは家族として、または友人として、同士として、
一つの目的に協力し、達成したときの合図
三人の合図は家族としてなのか、友人としてなのか、同士としてなのか…
はたまた違うものなのか、全部ひっくるめてなのか…
それは三人しか知らない…もしかしたらわからないかもしれない、でもそれでいいのかもしれない
エフラム「ふ…」
ヘクトル「へへ…」
エリウッド「あはは…」
どんな答えだろうが必ずそこには『絆』というものがあるのだから―――
三人はしばしその場で笑いあったという…
エリウッド「さあ、帰ろうか」
ヘクトル「だな」
エフラム「ああ」
三人は出口へと歩み始めた…
121 名前: Let's肝試し!(60) [sage] 投稿日: 2008/10/12(日) 11:27:16 ID:YZlxLT5V
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エリウッド「さて、出口どっちだっけ」
ヘクトル「覚えてねーよ…」
エフラム「来た道なんて一々覚えられん…」
…脱出にはまだ少し時間がかかりそうだ
エリウッド「あーさっきの鍵騒ぎで道順忘れちゃったよ…」
ヘクトル「俺もだ…一応覚えてたんだが」
エフラム「お前が? 冗談だろう、お前の記憶力はそこまでよくない」
ヘクトル「んだとコラ! 俺の記憶力なめんじゃねーぞ!」
エフラム「じゃあお前の専用武器の斧名言ってみろ」
エリウッド「エフラム…それはさすがに」
ヘクトル「アマルーズ!」
エリウッド「…へ?」
エフラム「は…?」
エフラムはさすがに今のは冗談で言ったのだが予想だにしなかった返答に言葉を失う
思わず二人とも歩みをとめ、ヘクトルの方を見る
ヘクトルは二人の視線に気づき、ふと自分の発言を思い返すと…
ヘクトル「(ん…? なんか変だな…あ!)ちょ、待て今のは冗談というやつで…」
とっさに言い間違えた事に気づきヘクトルが赤面しながら二人に弁解しようとするが
エリウッド「ヘクトル…君は…もう末期なのかい?」
どこからかハンカチを取り出しエリウッドは涙を拭う
ヘクトル「おい…だからな、今のは」
エフラム「…終わってる…な」
ヘクトル「終わってるってなんだよ!!? つーか人の話を聞」
エリウッド「大丈夫だよ、どんなに馬鹿でも家族は君を見捨てないよ…」
ヘクトル「嫌な同情すんなぁーーーーーーーーーー!!!!!!」
涙を拭いながら自分の肩に手を置くエリウッドの心の底からの悲しい同情により
ヘクトルは廃ビル全体、あるいは外まで明瞭に聞こえる絶叫を放ったのだった…
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一方こちら仕掛け人達は
リーフ「さて、次で最後だね」
ロイ「うん、大詰めだね、頑張ろうよ」
リーフ「もちろんさ、だから…」
ロイ「その…」

リーフ&ロイ「「いい加減に体起こそうよマルス兄さん」」

リーフとロイの視線の先には床に倒れ付すマルスの姿
マルス「ちょ…ちょっと待って、息が…」
先ほどの鍵操りを心の底から楽しんでいたようだ、
息切れで苦しそうな顔のどこかに恍惚とした表情がある
一向におきようとしないマルスを見てリーフはこう呟いた
リーフ「全く…次はリン姉さん達なんだけどなぁ…」
『リン姉さん』という単語にマルスは体をガバリと起こした
マルス「そうだ! 次はリン姉さん達の番じゃないか! こうしちゃいられない」
さっきまでの疲れは何処へやら、何事も無かったように立ち上がり平然と走り出した
おそらく仕掛けをしにいったのだろう
ロイ「本当にマルス兄さんはリン姉さんが好きなんだねぇ」
リーフ「ミカヤ姉さんが言うにはずっと前はよくリン姉さんについて回ってたみたいだしね」
ロイ「はは、じゃあ僕らも行こうよ、時間も無いし」
リーフ「了解っと」
先行したマルスにだいぶ遅れるような形で二人は後を追ったのだった…

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