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Last-modified: 2008-09-25 (木) 22:38:34

リーフ「やー、学校が半ドンで終わるなんてラッキーだったね」
ロイ「……ラッキーかな? 校舎半壊してたけど。あれじゃ後々大変だよ」
リーフ「大丈夫だろ。ユリウスとユリアの兄妹喧嘩なんて日常茶飯事だし、先生達も事後処理には慣れたでしょ」
ロイ「喧嘩っていうか、ユリアさんの一方的な粛清だったけどね……」

 学校の帰り道、兄弟並んで家路に就く二人。
 自宅近くの広場の前に差し掛かったところで……

シーダ「あ、ロイ君にリーフ君。ごめんなさい、ここは今立ち入り禁止なの」
マリク「遠回りになるけど、ちょっとここで曲がってくれないかな?」
リーフ「へ? マリク先輩にシーダ先輩?」
ロイ「いいですけど……何でですか?」
シーダ「それは……」

 ドゴオォォォォンッッ!!

ロイ「うわあ! 広場から天高く吹っ飛ばされる人影が……ってマルス兄さん!?」
リーフ「しかも受身も取れずにヤバい角度で落下したよ!?」
マリク「……あれなら大丈夫です。命のオーブを持ってますから」
ロイ「い、いや、ていうか、何してるのマルス兄さ……」

マルス「ふはーっはっはっはっ! その程度か小娘ェ!!」

リーフ「…………」
ロイ「…………」
リーフ「とうとう闇のオーブに呑み込まれた……?」
ロイ「それともユンヌさんの報復……?(>>2-104)」
マリク「いいえ。アレはただの“ごっこ遊び”です」
リーフ・ロイ「はい?」

チキ「シャギャーッ!(まだまだー! カクゴしろこうてーいっ!)」
マルス「ぬうううううん! 効かぬ、効かぬわーーーーッ!!」
チキ「シャギャーッ!(おのれー! これならどーだー!)」
マルス「ぐっがあああああ!!」

ロイ「ああ、マルス兄さんが尻尾にはたかれてオリバに叩かれたバキのように豪快に吹っ飛んでく!」
リーフ「うわけどノータイムで起き上がった! 命のオーブ凄ぇ!」
エリス「(ぱたぱた)ごめんなさい、遅くなって」
マリク「大丈夫、間に合いました! 皆さん準備してください!」
マリーシア「はーい!」ユミナ「うん!」レナ「はい!」チェイニー「OK!」
リーフ「……な、なんかすごい物々しい準備だけど、これほんとにごっこ遊び?」
マリク「説明は後で。今はそんな余裕は……」

 ゴオオオオオオオ! どぎゃん!(盛大に上がる土煙)

シーダ「……っ! 必殺霧のブレス、来ました! 心拍停止!」
マリク「くっ……! ユミナちゃん、レスキュー起動! レナさん、同時にワープを! チェイニー、これ持って代行!(光のオーブを渡す)」
チェイニー「おっし、了解!」
レナ「行きますよ、気を付けて!」
ユミナ「……、レスキュー完了! エリス様!」
エリス「ありがとう、では、オーム起動!」
チキ「シャギャー?(マルスおにーちゃん、だいじょうぶ?)」
マルス?「ふっふっふっ。はーっはっはっはっ! まだだ、まだまだだ!」
チキ「シャギャーッ!(わぁ、すごーい! よーし、負けないよー!)」

マルス「……ふう。死ぬかと思った」
リーフ「いや死んでたし」
マルス「あれ、リーフにロイ? 何してんの、こんなとこで」
リーフ「何って、ここ帰り道だし」
ロイ「むしろ兄さんこそ何してるの?」
マルス「見れば分かるだろ? チキと、悪の皇帝退治ごっこしてるんだよ」
リーフ「……いや、命がけのごっこ遊びなんて、見て分かりたくない」
マルス「まあ正直僕もごめんなんだけどね。けど仕方ないよ。メディウス爺さん、ぎっくり腰で入院中だから」
リーフ・ロイ「…………?」

チキ「シャギャーッ!(どらごん・きーっく!)」
マルス?「うおおおおおお!?」

シーダ「マルス様! チェイニーもそろそろ限界です!」
マルス「よっし。じゃあ、マリーシアはチェイニーにリブローを。レナさんとユミナちゃんはワープとレスキューを用意して待機。次の霧のブレスと同時に、土煙に紛れて入れ替わるよ」
シスターズ「「「はい!」」」

 ゴオオオオオオ! ぎゃん! シュイーン!

チェイニー「……うう。くっ、我が妹ながら、なんて恐ろしい力だ」
リーフ「そーいえば、この人も竜王さん家の人だったっけ」
ロイ「そうだったね。竜にならないし竜を呼んだりもしないし、ついでに出番もないから忘れてたけど」
チェイニー「おろ? わりとトラウマな事実を悪気なく言ってるそこの二人、マルスの弟どもじゃないか」
ロイ「あ。こんにちは」
チェイニー「おっす」
リーフ「こんちわ。……で、この惨状は一体何なわけ?」
チェイニー「? 惨状って、チキがマルスと遊ぶときは、大体こんな感じだぞ?」
リーフ「え? けど、こんな騒ぎ、今まで知らなかったけど……」
チェイニー「あー、まあ、最近はメディウス爺いじめに切り替えてたもんなー」
ロイ「……そういえば」
チェイニー「上手い解決方法だったよ、うん」
リーフ「……老人虐待が?」
チェイニー「しょうがないだろ? 竜の怪力でじゃれつかれて、人間が耐えれるはずがないんだから」
リーフ「そうだけど」
チェイニー「竜の相手ができるのは竜しかいない。……けど、チキやファは『竜殺し』の神竜だ。そこらの竜族じゃ遊び相手にゃならないんだよ」
ロイ「あ」
チェイニー「だから、相手が務まるのは、攻撃力を半減できる地竜のメディウス爺くらいのもんだ」
リーフ「けど、例えばアイク兄さん辺りなら充分相手できそうだけど……」
チェイニー「アホか。『マルスと一緒に』遊びたいのに他の奴に押し付けてどうする。泣くぞそんなことしたら」
リーフ「……う」
チェイニー「大体、マルスがなんで重さ20の壊れた剣で頑張ってると思ってんだ。万が一にも怪我させないように、すげぇ気を遣ってんだぞ、あれでも。アイクなんて馬鹿力に任せたら、例え竹刀でもチキ泣かせそうで不安だろうが」
ロイ「……ひ、否定できない……」

 ドシャアアアアアア!

マリーシア「……! リブローの杖、折れました!」
シーダ「チェイニー! お願い、止めて!」
チェイニー「おう! ……ま、無駄話はまたの機会にな」
リーフ・ロイ「…………」
チェイニー「おーい、チキー。そろそろ昼飯だから帰るぞー」
チキ「シャギャーッ?(えー? もっと遊びたいなー)」
チェイニー「こらこら。ンなこと言ってっとイドゥン姉に怒られるぞ」
チキ「キュー……。(しゅるしゅる)はぁい……。じゃあねマルスお兄ちゃん」
マルス「ああ、もう帰るの? 昼ならうちで食べていけばいいのに」
チキ「ほんとう?」
チェイニー「こら。せっかくイドゥン姉が作ってくれた昼飯を無駄にする気か」
チキ「ぶー……。ばいばい、マルスお兄ちゃん」
マルス「うん、またね。いつでも遊びにおいで」
チキ「うん!」

マルス「はあ……、今日も乗り切ったぞー……。レナさん、マリーシア。破損したものの修理は任せるよ」
レナ・マリーシア「「はい」」
マルス「マリク、シーダ。悪いけど、周りの迷惑かけた家の人に、代わりに謝っておいて。僕はちょっと限界……」
シーダ「分かりました」マリク「お任せください」
マルス「それじゃ、今日はこれで解散。お礼はまた今度。ありがとうございましたー!」

マルス「(地べたにばったりと寝そべって)……はー……」
ロイ「……お疲れ様」
マルス「うん、ほんと疲れた。……けどまあ、子供が元気なのは良いことだよ」
リーフ「ちょっと元気過ぎる気もするけど……」
マルス「いや、まだまだ。もっと元気に遊んでもらわないと」
リーフ「……マジ?」
マルス「大マジ。……ロイは覚えてるだろ? チキたちと初めて会ったころ、すごく寂しそうだったの」
ロイ「あ……うん。同じ歳の子たちと合わなくて、チキとファとミルラ、三人だけ孤立しててすごく可哀相だったね」
マルス「そうそう。あの頃すごく寂しい思いをしてきたんだから、その分今元気に遊ばないとね」
リーフ・ロイ「…………」
マルス「ま、男の僕やエフラム兄さんと付き合ってきたせいで、女の子にしてはやんちゃになっちゃったけどね」
リーフ(あ、あれを「やんちゃ」の一言で済ませるんだ……!)
ロイ(なんて図太い神経なんだ、マルス兄さん……!)
マルス「……さ、帰ろうか。うちでもお昼が待って……」

ファ「ローイにいーちゃ! あーそーぼっ!」(ぼふっ)
ロイ「わわ、ファ?」
ファ「うん! えへへ、ファだよ! あそぼ?」
ロイ「(嫌な予感……)い、いいけど、何して?」
ファ「あんこくりゅうたいじごっこ!」
マルス「…………。さ、リーフ、僕たちは邪魔だろうから先に帰ろうか」
リーフ「…………そ、そうだね。じゃあ先に行ってるよロイ。……頑張れ(ぼそっ)」
ロイ「…………うん、頑張る…………」