第9話【慎ましさには程遠く】
探索から帰るたび、声は減り、間に流れる空気が重くなっていく。居ない仲間を思い出すことすら今の彼らには酷なことだ。死を意味する不在は、空白をもって生存者へのしかかる。
異常捜索員の手掛かりを探す暇もない。明確な敵「月の魔女」の存在が、確かな亀裂を隠していた。
そしてその亀裂は重たい足音に砕かれる。求めるものはただ一つ。神の誘惑を蹴ってまで信念を貫いたのは、己の強さを信じていたからに他ならない。手加減も躊躇も一切求めない。ただ望むのは、強き者との戦いだけだ。
illust/享鳥 ゆず@uzura_yuzu