世にイヴルアとトーワのみ在りし頃、神気普(あまね)く世に満つる。
やがて大神たちの姿現れ、神気は凝りて天部となりき。
天部世に満ち、生病老死の苦を知らず、ただ安息に暮らしたり。
これ、黄金時代(こがねのとき)、天部を金種と人の謂う。
やがて光明暗冥二柱大神の力満ち、天部変じて有情となりき。
有情なお力持つものどもなれど、楽を覚えて欲を知り、自ずから苦を招く。
やがて自らの分際を忘れ、大神罰にて裁かれぬ。
これ、白銀時代(しろがねのとき)、有情を銀種と人の謂う。
九大神が世をしろしめし、常世現世(とこようつしよ)の定まりたる。
いまだ力持つ有情も、常世現世にて分際を知る。
やがて自らの源忘れ、住まう世にて生活(たつき)をぞ覚ゆ。
これ、青銅時代(あおがねのとき)、有情を青銅種と人の謂う。
而して神代去り、人の時代の降り来る。
現世に人の子ら満ち、神祇の恩寵求めたる。
やがて人々、神祇の救け享け永久の浄土を築きうるや。
これ、黒鉄時代(くろがねのとき)、有情を鉄種と人の謂う也。
羅刹(宇瑠鬼・鏖鬼)[Raks (Uruk/Orc)]
灰色の肌、発達した下顎からは牙が覗く。
体躯は頑健かつ強壮で、身長は人間と同等だが体幅は人に倍する。
一般的に人間と比して長腕、短脚で背が丸く、前傾気味に歩行する。
ゴモルニアの荒野と境を接する人界の辺境を侵すことがあり、人外の中では人の目に触れることの最も多い種。
ただし、こうした略奪者たちは鏖鬼と呼ばれる未開の種族であり、ゴモルニアの奥地には文明化された羅刹国があるとされる。
羅刹国の住民は宇瑠鬼という文明的な種族であり、体躯は人に近い。
原種は神気が日陰と夜闇に触れ、荒野と沙漠に凝った天部である。
銀種の羅刹は影の都を築いて現世地下を支配した。
塔無き無限の塔より天冥征途を図り、剣の神威に裁かれた。
現存の宇瑠鬼は青銅種、鏖鬼は鉄種に当たる。
夜叉(阿楼舞)[Yaks (Alv)]
蒼白の肌、扁桃形の眼を持ち、耳朶がなく、耳の上端は僅かに尖る。
四肢が長く、体躯は繊細で、身長は人間にやや勝るが極めて痩身である。
神秘に通じ、生来の秘力を有する。
近年では人界での目撃例そのものがほとんどない。
ゼーリア北方の黒の大森林や、ゴモルニアの奥地、古森に住まうと伝説に言う。
原種は神気が日月星三辰の明りに触れ、森と泉に凝った天部である。
銀種の夜叉は天地の二種に別れ、天夜叉は天空城を築いて現世地上を支配した。
永の支配の間に、多くの天夜叉は堕して黒夜叉と化し、龍の七日に裁かれた。
現存の阿楼舞は地夜叉の青銅種に当たる。
- 天夜叉[Heofon-Alv]
- 地夜叉[Hruse-Alv]
- 黒夜叉(虚空夜叉)[Eald-Alv]
金剛(浄敦・土露楼)[Kong (Jotun/Troll)]
緑灰色で硬質の肌、長い耳朶と、尖った上端を持つ耳、外部露出は少ないものの発達した犬歯を持つ。
概して四肢、殊に腕が長く、体躯は頑健強壮、身長は人に倍ないし三倍し、一見痩身だが極めて筋肉質な体格である。
知性は低く、毛皮を用いた腰巻の他にはほとんど着衣がないのが普通。
巨大な体躯から想像される以上の膂力を発揮する。
ゴモルニアの荒野でごく稀に見られるほか、ノルディカの山岳地でも集落への襲撃被害例がある。
しかしこうした目撃例は土露楼と呼ばれる未開種族のもので、ノルディカの諸高峰にはより伝説的な種族が豪壮な館を築いて住むという。
彼らは浄敦と呼ばれ、薄い青紫の肌と土露楼に匹敵する身長のほかは、ほぼ人に等しい体躯とされる。
極めて知性高いが獰猛で、生来氷雪に根ざした秘力を有すると言われ、自在に吹雪や雪崩を呼ぶという。
原種は不明であり、神気から生じた天部ではなく、諸神とは源を別する蕃神であるとも言われる。
現存の浄敦は青銅種、土露楼は鉄種に比定できると見られる。
堅牢(禰舞利・童峰)[Kengr (Svirfneblin/Dwarf)]
ほぼ人に近い肌色、耳の上端がわずかに尖り、総じて美髯を誇る。
頭身の低い矮躯が特徴だが、身幅は人に倍するほど厚く、頑健である。
生来の鍛冶の達者で、古くは神代の力秘める物具をも拵えた。
近年では人里に現れることは稀で、住まうものはさらに少ない。
高峰聳え立つ山脈の地下に、鉱坑を兼ねた都邑を構える。
こうして人々に知られる種族は童峰と呼ばれるものらで、更なる地下にはより原種に近いものらが住まうという。
彼らは禰舞利と呼ばれ、やはり矮躯だが髭薄く、身幅も人と変わらぬ、一見半夜叉の子供のような姿である。
知性は高いが玉石への執着強く、その思想は極めて偏狭独特と伝わる。
禰舞利の目撃例は阿楼舞同様近年ほとんどない。
原種は神気が地上から僅かに伝わり来る陽光に触れ、巌と玉石の洞穴に凝った天部である。
銀種の堅牢は多くの神器を拵え、羅刹に抗して神と通じた。
夜叉と羅刹の堕落より逃れたが、時移り行く中自らを見失った。
現存の禰舞利は青銅種、童峰は鉄種に当たる。