第一部.定理23
今のことを逆に言えば、必ず無数に存在していること間違いなしの化身は、これまた必ず次のどっちかのようにして生まれてくるはずだ。それ以外の生まれ方はない。
- 神のある途方もない性質から、無数の化身が直接生まれる。
- ほかの化身(の性質)からも、無数の化身が間接的に生まれる。親化身から生まれた子化身は、たとえ一見ただのつまらない化身に見えたとしても、親化身が1.のようにして生まれていて、その親化身に神の性質がちゃーんと引き継がれているからこそ、子化身も生まれることができたんだ。
理由
ぼくスピノザは、オブジェクト指向プログラミングの元祖か(嘘)?ハッキングが神様ごっこに近いという直観も捨てたもんじゃないかも。そして、「オブジェクト指向」が「自然だ自然だ」って言われている理由が、最初はどことなくピンとこなかった理由も何となくわかる。「ものごとは常にある性質を帯びていて、それを複製すると性質もコピーされる」という考え方を、何も不自然に思わないで理解できる日本人がいるなら見てみたいものだ(笑)。これは文化の違いで、どっちがいいとか悪いの問題じゃないし、ちょっと訓練すれば身につくものだから。だから逆に、最初に感じた「違和感」を未熟なものとして切り捨てる必要もない。
- 化身は、本体とは違うほかの何かの中にいて、その本体を通じて化身のことを考えることができる(というかそうすることしかできない)ものだって、わざと謎めいたことを第一部.決めごと5に書いたよね。この「本体」が神だってことはもうわかってもらえたと思うし、ああやって謎めいた書き方をした理由ももうわかるよね(笑)。
- ところで、第一部.定理15で書いた通り、化身(も含めたあらゆるもの)は神だけの中にあるんだし、必ず、神を通じてその化身について考えないと意味がなくなってしまう。これもいいよね。
- だから、ここでもし化身が間違いなく存在していてしかも無限だというふうに考えられるんなら、その化身がどういうものかを考えたりあれこれ調べたりするときには、必ず神(の性質のうちどれか)を通じて推測したり感じとったりするってことになるよね。
- 無論だけど、ここでは神の性質には、1.無限と、2.それがに存在している必然性ってものがどっちも表れてしまうんだから、それが成り立っていればの話なんだけどね。要するに第一部.決めごと8で書いた「永遠」が表れるってことだし、そのどうしようもなさ、途方もなさが表れているってことなんだけど。
- とすると、もう無数にあるとしか考えようがないこの化身というやつは、どうしたって神の性質(の、どれか)の、途方もない本性から生まれてくるはずだ。
- 途方もない本性をもった性質から化身が生まれてしまうのは、
- というわけで、化身は必ず存在してしまうし、しかも無数になるんだ。化身の数に限りがありますのでお早めに(笑)なんてことはありえないって、もうさっき説明したしね。
おしまい。
最初に書いた「入墨師(物質)と入れ墨(化身)」の関係を(無茶を承知で)ちょっと思い出してみれば、どんな入れ墨(ひとりでにどんどん増えて本物のように動く不思議な入れ墨になっちゃうんだけど)を描いたって、入墨師の身体の上(というか中というか)に描いたってことは間違いない。しかも入墨師の身体は無限大(笑)なんだし、手も使わないで身体のどこにでも立体として描ける(笑)、フシギな入れ墨だ。
だから入れ墨がどんなに「おれはこんな奴の身体に描かれたくない!」(爆)なんて泣いて文句を言ったところで、入墨師の身体から逃げ出すことはできないし、入墨師の趣味や筆の「くせ」を変更することはできない。入れ墨が入墨師の力を借りて自分をコピーすることはできるけど、何回コピーしても入墨師の趣味や「くせ」まで必ずコピーされてしまうんだし、だいたい入墨師の身体の上にあるんだし、入墨師に手伝ってもらっている限りいやでも入墨師の趣味や「くせ」が反映されてしまうもんね。入墨師に何を頼んだって無駄なんだし(笑)、コピーを手伝ってくれるのも、入墨師が「そういう人だから」というだけなんだから。
後の楽しみをちょっとだけ先に言ってしまうと、今言った「本物そっくりの立体入れ墨」のことをぼくたちは「本物だ」と言っているんだ。だから「本物そっくり」っていう言い方は正確じゃなくて、ぼくたちは基本的にこの「立体入れ墨」という化身にしか実感がわかないんだ。だから、ぼくの話が最初よくわからなくても無理もないし、最初は「物質?!何それー?」って思うのがむしろ当然だ。一発でわかったっていう人の方が信用できない(爆)。
言い替えれば、ぼくたちがリアルに感じられるのは実はことごとく化身なんだ。でも化身は夢でもマボロシでもないよ。さっき必ず存在するっていったでしょ。ただ、化身と違って物質は「ちゃんと考えないと」それが本当にあることがわからないってことが違うだけなんだけどね。だから「この世は何もかも夢だマボロシだ、ああ虚しい」なんて騒ぐのがばかばかしくなってくるよね。
はい、もう入れ墨のことは忘れて。あんまりたとえ話をすると勘違いのもとになるから。