*AboutTRPG

Last-modified: 2023-11-16 (木) 10:37:32

TRPGについて

TRPGって何?

コンピュータRPGとTRPG

 多くの人は「TRPG」を知らなくても、Tの字を除いた「RPG」、ロール・プレイング・ゲームなら知っていると思います。コンピュータ用ゲームの一大分野であり、主人公になりきって小さな事件を解決していくうちに、徐々に力をつけ、やがて世界を変える勇者になる……と言う物語風ゲームを楽しむアレです。家庭用ゲーム機なら『ドラゴン・クエスト』や『ファイナル・ファンタジー』、パソコンなら『Wizardry』や『Ultima』や『イース』と言ったRPGは、名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。もちろん、他にもRPGと呼ばれるゲームはたくさんあり、ここに挙げた名前はごく一部に過ぎません。
 これらのRPGは皆、電子機器の上で動く「デジタル」なゲームですが、これらは果たして、電子機器のおかげで生まれたゲームでしょうか?

 正解は「NO」です。最初期のコンピュータRPGとして知られる『Ultima』『Wizardry』より10年も前から、「アナログのRPG」がありました。それが「TRPG」です。当時のコンピュータRPGは、TRPGから「デジタル向き」の部分だけを抜き取り、当時のコンピュータで可能な限り再現した「TRPGの一部分」に過ぎないものでした。現在、コンピュータRPGはコンピュータならでは、デジタルならではの機能が大きく進化し、TRPGとは似て非なるゲームになってしまいましたが、それでもいくつかの部分で「先祖であるTRPGの名残」を見ることができます。例えば「活躍するのは1人ではなく、主人公とその仲間たち」と言う形は、元となったTRPGが「グループで遊ぶもので、1人が1キャラクターを担当する」ことの名残なのです。

 TRPGがなければ、コンピュータRPGと言うゲームはこの世に存在しなかったかも知れません。そういう意味で、TRPGはコンピュータRPGの「御先祖様」と言えるでしょう。

TRPGは「ルールあるごっこ遊び」

 TRPG とは、ごっこ遊びの一種である「テーブルトーク・ロール・プレイング・ゲーム Table-talk Role Playing Game」の略です。
 ごっこ遊びと書くと「ごっこ遊び? いい歳して程度の低い幼児の遊びみたいなのやってるのかよ」なんて思うかも知れませんが、

 TRPGはごっこ遊びの一種ですが、決して「程度の低い幼児の遊び」ではありません

 例えば、司法を学ぶ学生が裁判官、原告、被告に分かれて擬似法廷を開廷する勉強法があります。例えば、営業職が同僚を相手に擬似営業活動を行い、営業マンとしての技術向上を図る訓練法があります。これらはいずれも「ロール・プレイ」です。
 TRPGに含まれる「ロール・プレイ」も、これらと同じ意味です。これらに共通するのは、ルールと目的を持った疑似体験と言う点です。

 では、TRPGはどんな目的を持っていて、TRPGではどんな疑似体験をするのか?

 TRPGの目的や疑似体験は、使うルールや実際に遊ぶ参加者の自主性によって決定されます。TRPG全体を見渡せば、疑似体験そのものを楽しむのが目的と言えるでしょう。
 TRPGでは空想に現実感を与える手段として、不確定要素により「思いがけないハプニング」を再現するルールを組み込んでいます。現実でも、簡単なことで思わぬ失敗をしてしまったり、ちょっとしたことを「ど忘れ」したり、あるいは何気ない行動や諦めていた行動で意外に良い結果が得られたり、と言うハプニングを経験したことはありませんか? それらを再現するために、多くのTRPGではサイコロなどの「偶然に任せて結果を選択する道具」を使って、行動した結果の良し悪しやハプニングの有無を決めます。
 このルールによりTRPGの参加者は、実際に体を動かさなくても歩いたり走ったり、現実には素人でもプロ並みの技術や知識を持てたり、果ては現実では体験できない魔法使いや巨大ロボットのパイロットになれたりするのです。
 ただし言い方を変えれば、TRPGは「仮想現実」であり、必ずしも全てが思い通りになるわけではありません。もっとも、空想だからと言って全てが思い通りになると、やがて刺激を感じなくなり飽きてしまうでしょう。思い通りになるかならないか分からないスリルは、現実のものでも空想でも、映画や小説でもTRPGでも同じなのです。そしてTRPGは空想であるため、スリルに伴う危険性が(現実より)少なく、より純粋にスリルを娯楽として味わえるのです。これは、読者である我々が映画や小説の主人公と一緒に、彼等のスリルを味わうのに似ています。

 まとめると、TRPGは「ルールに従い、仮想現実の世界で疑似体験を楽しむゲーム」と言ってよいでしょう。

TRPGの欠点

 一方でTRPGは、欠点も少なくありません。

 まず、TRPGを遊んでいるグループを傍から見ると「自分たちだけの世界に浸り、内輪ネタでやたら盛り上がる変な集団」に見える事実です。
 例えばTRPGで可能な疑似体験のひとつに、異性を体験することがあります。熱が入ると言動が異性っぽくなってしまうこともしばしばです。しかし、普段は礼儀正しいごく普通の青年が、友人と机を囲んで女性のような高めの声と口調で会話していると、傍から見れば隠れた変な趣味がある人にしか見えません。
 また、TRPGは戦争をモチーフとしたゲームを先祖に持つため、仮想世界で剣や盾を持って敵と戦うことも少なくありません。仮想敵と戦うことに、TRPGの楽しみを見出す愛好家も少なからず存在します。しかし、それを動作ではなく会話で行なうため、会話の流れによってはしばしば物騒な発言が飛び出します。第三者が、それらの「物騒な発言」を断片的に聞いて誤解し、実際にトラブルに発展したこともありました。
 コンピュータRPGと異なり、TRPGは「目に見えるもの」が多くないため、無用な誤解を招きやすいのです。だからと言って、TRPGに興味のない人に無理な理解を迫ってはいけません。予備知識のない人には、誰でも知っているような言葉に置き換え「ごっこ遊びのようなゲーム」「即興演劇のようなゲーム」と説明するのが無難です。

 次いで、多くのTRPGではサイコロを使うため、サイコロを振るギャンブルと間違われることもあります。
 特に年配の方にこの傾向が強く、サイコロの音から仁侠映画や時代劇でおなじみの「丁半博打」や、第二次世界大戦後に普及した「チンチロリン」をイメージする人は少なくありません。
 こうした誤解に対しては「金銭を賭けていない」と説明し、ギャンブルではないことを理解してもらうべきでしょう。

 そして非常に重要なのですが、TRPGと言うゲームは(残念ながら)マイナー・ジャンルであるため、愛好者の中に非常に偏った価値観の持ち主が存在すると言う事実です。
 それらは、空想に多くを委ねるTRPGの特性から、独善的で一般社会に受け入れられない現実に対する何らかの欲求不満を、TRPGの場で解消、あるいは解消の糸口にしようと狙っていることがほとんどです。多くの場合、現実と空想を(無意識に、あるいは意図的に)混同したり、TRPGの特性を曲解した「現実では受け入れられない言動も、TRPGを通じてなら受け入れられる」と言う誤った認識に基づいたりしています。こうした「問題あるTRPG愛好者」は、他人とのコミュニケーション能力が一般的な人より著しく劣っていることも少なくありません。
 これらはTRPGそのものと言うより「愛好者個人の問題点」なのですが、マイナー・ジャンルでプレイ人口が少ないゆえ、偏った価値観を是正したり対処したりできず、結果として良識的な他の愛好者が嫌な思いをしてTRPGを止めてしまう……そんなことが嘆かわしいことに実際に起こり、しかも決して少なくないのです。
 以下に、よく見られる「問題あるTRPG愛好者」の一例を挙げておきます。

  • 一般の社会的マナーに対して無頓着な者
  • 特定の話題のみに終始し、その話題についていけない者に疎外感を抱かせる者
  • 自身の(状況によっては独善的な)価値観が受け入れられないことに否定的な者
    • 自身の価値観が、必ず賞賛を浴びるものと思い込んでいる者
    • 自身の価値観を絶対的なものとして初心者や他の参加者に教示し、疑念や反論を許さない経験者
  • 女性に対して配慮の欠ける男性
    • 初対面の女性に対して、ゲーム以外のプライベートにまで立ち入ろうとする男性
    • 現実の女性に対してセクハラ行為を行なう男性
    • 事前の了解なしに、ゲーム中に登場する架空の女性に対して性的行為を行なう(行なわせる)男性
  • 「女性であること」を理由に、ゲームのルールや社会的マナーを超越した優遇を当然と考える女性

 しかし多くのTRPG愛好者は、あなたやあなたの隣人と同様に、社会的マナーを守り、自分自身を守りつつ他人の良いところを受け入れ、あなたの親しい友人になる可能性を秘めた「普通の人」たちです。「問題あるTRPG愛好者」に遭遇してしまうのは、実は単なる不運に過ぎません。
 もし最初に出会ったTRPG愛好者に「問題あるTRPG愛好者」が含まれていたとしても、それだけでTRPG愛好者の全員を「社会的問題児」と思わないでください。より多くのTRPG愛好者と交流を持つことで、「問題あるTRPG愛好者」はごく一部だと気づけるはずです。
 そしてあなた自身が「問題あるTRPG愛好者」とならないために、「TRPGは一般の社会的マナーを守った上で成り立つゲーム」だと言う不文律(もちろんTRPGに限った話ではありませんが)を忘れないでいてください。

TRPGはコンピュータRPGより「自由」か?

 よくあるTRPGの説明に「TRPGでは、コンピュータの代わりの役目を人間がやるので、コンピュータRPGと違ってやりたいと思ったことが自由に何でもできる」と言うものがあります。この解説は概ね正しいのですが、ある種の誤解を含んだ文章でもあります。それは「自由に」「何でもできる」と言う点です。

 ゲームの中の“世界”は、コンピュータRPGではコンピュータが、TRPGでは人間が、それぞれ管理しています。しかしコンピュータRPGの場合、現在の技術的な制約により不要なデータは削らざるを得ず、事前に用意したデータにない対応はできません。対してTRPGの場合、事前にデータを用意していなくても、“世界”を管理している人間がその場でデータを「でっち上げ」ることができれば、様々な事態に対応できます(そうした「でっち上げ」が苦手であってもTRPGは遊べますので、必ず対応できるとは限りませんが)。

 こうした特性は「自由」と言うより「柔軟」と言うべきでしょう。TRPGはコンピュータRPGより「柔軟」なのです。

(この項書きかけ)

「ロール・プレイ」の意味二つ

 TRPG愛好者は、ゲームに対する考え方が概ね二分しています。一方は「仮想世界の人物になりきる」ことを大事に思う人、もう一方は「目的を達成するために自分の役割に徹する」ことを大事に思う人です。
 二つの考え方は、どちらも正しい考え方です。TRPGの「RP」、すなわち「ロール・プレイ」は、「仮想世界の人物になりきる」意味も「自分の役割に徹する」意味も持っています。

 このため、TRPGのルールそのものも、「仮想世界の人物になりきる」ことを重視するものと「自分の役割に徹する」ことを重視するものの二種類があります。この二種類は厳密に分けられるものではありませんが、古いTRPGは「自分の役割に徹する」傾向が、新しいTRPGは「仮想世界の人物になりきる」傾向があります。

より詳しくTRPGを知るために

 参考になるであろうサイトを以下に挙げておきます。

TRPGの歴史

【参考リンク】

TRPG誕生前夜

 TRPGと言うゲームの系譜を遡ると、ウォー・シミュレーション・ゲームに辿り着くことになります。いわゆるボードゲームの一種ですが、『双六』や『人生ゲーム』や『モノポリー』などとは異なり、戦争を模擬的にゲーム化したものです。平たく言えば『大戦略』『信長の野望』などの戦争ゲームを、地図や駒を用いてアナログでやるゲームです(もちろん、アナログ版が先でパソコン版の誕生が後です)。

 ウォー・シミュレーション・ゲームの概念そのものは古来から存在していました。誰でもご存知のアナログ対戦ゲーム、囲碁や将棋、チェスなどです。しかし、それらのゲームは余りに抽象化されすぎ、現在ウォー・シミュレーション・ゲームと呼ばれるゲームとは程遠い代物であるのも、間違いありません。
 現在のウォー・シミュレーション・ゲームの原型となったのは、SF作家の祖としても知られるHerbert George Wells(H.G.ウェルズ)が出版した『Little Wars』(1913年)と言われています。
 『Little Wars』はミニチュア・(ウォー)ゲームと呼ばれる、要するに駒(ミニチュア)を使って模擬戦争するゲームで、第一次世界大戦(1914年-1918年)直前に反戦を目的として出版された本です(遊んでいる様子を描いたリプレイも付いていたようです)。反戦と言う目的は達せなかったものの、『Little Wars』はこの類のゲームを初めて明文化し、後のウォー・シミュレーション・ゲームの礎となりました。
 『Little Wars』を契機に、近現代の戦争をモチーフにしたウォーゲームが作られるようになり、第二次世界大戦(1939年-1945年)を経て世界初の商業ボード・ウォーゲーム『Tactics』(1952年)が発売されます。しかし当時はまだゲーム作成のノウハウそのものを暗中模索している状態で、やがて『Tactics』の発売元は経営危機に陥ってしまいます。
 その後、紆余曲折を経てボードゲーム情報誌『The General Magazine』(1964年-1998年)が創刊されるに至り、ようやくウォー・シミュレーション・ゲームが広く認知され、多くの愛好家に遊ばれるようになりました。

TRPGの産声(1970年代前半~)

 どんな創作にも言えることですが、特にアナログ・ゲームでは、遊んでみて面白いゲームを真似して自分好みのゲームを自作したくなるものです。無論、ウォー・シミュレーション・ゲームでも例外ではありません。
 そんな、有志が趣味で製作したウォー・シミュレーション・ゲームのひとつに、アメリカのゲームサークルが製作した『Chainmail』(1971年)がありました。

 『Chainmail』はウォー・シミュレーション・ゲームには珍しい「個人戦闘」に注目したゲームで、他にも駒の「成長」や地図を記すといった、現在のTRPGに通じる多くの概念を内包していました。また、1960年代初頭にイギリスから輸入されたJohn Ronald Reuel Tolkien(J.R.R.トールキン)『指輪物語(ロード・オブ・ザ・リング)』(1954年-1955年)の影響を受けて、中世ヨーロッパを舞台にしていました。
 後に、現実では不可能な怪物との戦いや魔法と言ったファンタジー要素も遊べるように、追加ルールが提供されたことからも、『指輪物語(ロード・オブ・ザ・リング)』が『Chainmail』に与えた影響の大きさを窺い知ることができるでしょう。

 この『Chainmail』を基に、『Chainmail』の考案者Gary GygaxがDavid L.Arnesonと共にルールを調整・整理し、ウォー・シミュレーション・ゲームとは一線を画すゲームを誕生させました。世界初のTRPG『Dungeons & Dragons』(1974年)です。
 アメリカ生まれの新しいゲームは、たちまち多くの人々を魅了しました。『D&D』に追従して、アメリカやイギリスのアナログ・ゲーム・メーカーが次々とTRPGを作成、発表し、TRPGの可能性を広げました。『D&D』を追従しつつも独自の簡略化を遂げた『Tunnels & Trolls』(1975年)、古典SFの名作『Traveller』(1977年)や、緻密でリアルな異世界を背景に持つ中世ファンタジー『Rune Quest』(1978年)などです。また『D&D』をパソコンで簡略再現した『Wizardry』は、現在私たちが知るコンピュータRPGの原点のひとつとなりました。

TRPGの日本輸入(1980年代前半~)

 TRPGと言う新しいジャンルのゲームが誕生してまもなく、TRPGは日本にも輸入されました。しかしそれは、英語に堪能なアナログ・ゲーム愛好家と言う、限られたごく少数の人間だけが知る、非常にマイナーなゲームでした。

 当初、その面白さを知る有志は、『D&D』を始めとするTRPGを自力で日本語に翻訳していました。彼らの努力によりTRPGと言うゲームが少しずつ認知されるにつれ、海外産のTRPGが正式に版権を得て翻訳、商業展開されるようになります。もちろん翻訳作品だけではありません。日本初の商業TRPG『ローズ・トゥ・ロード』(1984年)を筆頭に、日本人が考えた日本人のための純国産TRPGや専門情報誌なども、少しずつ作られるようになりました。
 しかし日本では、『D&D』から派生したコンピュータRPG『Wizardry』やそれらの派生ゲームが、TRPGより先に普及したため、TRPGは主にパソコン用ゲーム雑誌で「あの『Wizardry』の基になったゲーム」と言う形で紹介されることがほとんどでした。
 また黎明期のTRPGは、価格は5000円前後、ルール・ブックやサイコロなどがセットで箱に入った「ボックス・タイプ」がほとんどで、ルール・ブックはホチキスで背を留めた薄っぺらな冊子が数冊。「中身の割に高額」と言う印象が拭えない上、数少ない専門店でしか見ることのできない、非常に敷居の高いものでした。

 そんな中、積極的にTRPGの普及活動をしていた関西のクリエイター集団「グループSNE」が、ゲーム・ブックから誕生したイギリス産のTRPG『Fighting Fantasy』を、続いて『D&D』に続く古典ファンタジーRPG『Tunnels & Trolls』シリーズを文庫で出版しました。『FF』は残念ながら日本ではあまり普及しませんでしたが、一方の『T&T』は「ソロ・シナリオ」と呼ばれる、一人で遊べるゲームブック風のデータ集が人気を集めました。当時マイナー・ジャンルだったTRPGは、一緒に遊ぶ相手を見つけることが非常に困難だったため、一人で遊べるデータ集は非常にありがたいものだったのです。

 こうしてグループSNEは、日本におけるTRPG流通の問題にひとつの解答を示しました。それでも、TRPG関連書籍の出版社は社会資料的な書籍を扱う出版社に限られたため、TRPGを決定的に普及させるには至りませんでした。

日本におけるTRPG普及(1980年代後半~)

 TRPG黎明期の日本において、マイナー・ジャンルだったTRPG普及の大きな担い手となったのは、関西のクリエイター集団「グループSNE」が世に送り出した『ロードス島戦記』と『ソード・ワールドRPG』だと、誰もが認めるところだと思います。

 『ロードス島戦記』は元々、パソコン用ゲーム雑誌でTRPGと言うゲームを紹介するための記事でした。元祖にして最も偉大なるTRPG『Dungeons & Dragons』のシステムを用いて、(当時)グループSNEの一員だった水野 良氏が提供した背景世界で遊んだ過程を、リプレイと呼ばれる読み物にしたのです。その読み物は人気を博し、TRPGと言うゲームの知名度の向上に一役買います。
 しかし一方で困った問題も起こりました。『D&D』はアメリカ産のTRPGで、グループSNEが好き勝手にできる代物ではありません。『D&D』で遊んだ『ロードス島戦記』を単行本として出版するには『D&D』の版権が必要で、日本における『D&D』の版権は既に他の会社のものだったのです(『D&D』日本語版の最初の出版は1985年、『D&D』版『ロードス島戦記』リプレイ記事の連載開始は1986年)。つまり、読者に人気で単行本化の要望が高い『ロードス島戦記』を、単行本として出版できない事態に陥ったのです。
 これらの問題を解決するために、グループSNEは二つの対応策を取りました。ひとつは「読者の要望に応えて『D&D』版『ロードス島戦記』を小説化して出版する」こと、もうひとつは「版権の問題を克服するために自前のTRPGを作成する」ことです。

 文庫小説化され大手出版社から出版された『ロードス島戦記』(1988年)は爆発的な人気を得ました。アニメーション化やゲーム化されてメディアミックス作品の先駆となり、日本に西洋風ファンタジー・ブームを巻き起こし、現在のライトノベルと言うジャンルの基礎を築く偉業を成し遂げました。
 日本に「エルフ」のイメージを定着させたのも、この『ロードス島戦記』です。エルフの特徴の多くはJ.R.R.トールキン『指輪物語(ロード・オブ・ザ・リング)』からの模倣ですが、髪からはみ出すほど長く尖った耳は、『ロードス島戦記』を起源とした、日本のエルフ独自の特徴なのです。このことからも、『ロードス島戦記』が後の時代に与えた影響の大きさを窺い知ることができるでしょう。

 なお余談ですが、1980年代当時のパソコン用RPGは「ごく一部のユーザーしかクリアできない難しいゲーム」が主流でした。しかし、そうしたパソコン用RPGの在り方を革命的に変えるゲームが登場します。日本ファルコムから発売されたアクションRPG『イース』です(1987年)。誰でもクリアできるけれど簡単にはクリアできない『イース』は、多くのユーザーの支持を得て、現在でも続編がリリースされるほどの人気を博しました。『イース』以降、パソコン用RPGは誰にでもクリアできるゲームが主流となり、万人受けしない難しいだけのRPGは姿を消していきます。
 『D&D』版『ロードス島戦記』リプレイが始まったのが『イース』発売1年前の1986年、掲載されたのがパソコン雑誌で『イース』はパソコン用RPG。どちらも後の時代に大きな影響を与えた点といい、何か不思議な因縁を感じずにはいられません。
 ちなみに、コンシューマ用RPGの代表『ドラゴンクエスト』は1986年、『ファイナルファンタジー』は1987年に、それぞれ第一作となるファミリーコンピュータ版を発売しています。

 一方、自前のTRPGとしてグループSNEは、『ロードス島戦記』と同じ世界の別の場所を舞台とした『ソード・ワールドRPG』を作成、発表します(1989年)。
 『ソード・ワールドRPG』は『ロードス島戦記』派生作品と言う位置づけで、『ロードス島戦記』の成功手段をほぼそのまま踏襲していました。すなわち、紹介記事としてリプレイの先行発表、小説『魔法戦士リウイ』シリーズを始めとする関連小説(ライトノベル)の展開、知名度を上げ読者の要望に応じた形でのルール発売、と言う形式です。
 それまでも海外からの翻訳TRPGを文庫形態で発売していたグループSNEは、この『ソード・ワールドRPG』のルールを文庫本として発売します。文庫タイプのTRPGはそれまでも、数少ない専門店でしか入手できなかったTRPGに対し「書店ならどこでも入手可能」、当時5000円前後の価格が主流だったTRPGに対し「1000円でおつりが来る価格」と言う利点を持っていました。しかし『ソード・ワールドRPG』が他の文庫TRPGと大きく異なったのは、購買層を中高生に広げた点でした。
 純国産の『ソード・ワールドRPG』は、海外産の翻訳TRPGより日本人に馴染みやすいものでした。また低価格で携帯性に優れる文庫本は、中高生ユーザーにとって「サイコロと本さえあれば、放課後の学校で遊べる」と言う大きな利点がありました。これが大手出版社から出版された関連書籍や『ロードス島戦記』の知名度と相乗して、底辺拡大効果をもたらしたのです。結果として『ソード・ワールドRPG』は、TRPGと言うマイナー・ゲームの知名度を引き上げることに成功し、国産TRPGとして一大成功を収めました。

TRPGブームと冬の時代(1990年代~)

 TRPGとして一大成功を収めた『ソード・ワールドRPG』。当然、日本のTRPG界はこれに追従し、その方式を模倣するようになりました。
 新作発表の際、まず雑誌でリプレイ記事を先行紹介し、「おもしろそう」「遊んでみたい」と言う意欲を掻き立てた上でルールを発売すると言う流れです。
 販売形態は文庫タイプが主流となりますが、TRPGに必要なデータ一覧が文庫サイズのページ面積では見にくかったこともあり、文庫より一回り大きいB5版やA4版の書籍タイプも少しずつですが発売されるようになりました。中には専用カードなど付属品が付いた書籍もありました。こうした流れにより、サイコロや専用カードなどの付属品が付いたボックス・タイプのTRPGは、専門店でしか買えないことも相まって、徐々に姿を消していきます。
 TRPGと言うゲームを紹介する書籍もいくつか発売され、中にはすぐに遊べる簡易ルールを収めたものもありました。

 しかしブームと言う時代の流れは粗製乱造を引き起こすもので、それはTRPGにおいても例外ではありません。多くのTRPGが乱造された玉石混淆の状態は、徐々にTRPGブームを翳らせるものとなっていきました。
 この時期『Dungeons & Dragons』日本語版は、突然と言ってよい版権譲渡(1993年)やアメリカの原書発売元の買収(1998年)などで、版権契約に混乱が生じました。そのため実質的なサポート打ち切り状態となり、TRPG普及の牽引力を失ってしまいます。
 また『ロードス島戦記』によるファンタジー・ブームもこの頃には終焉を迎え、『ソード・ワールドRPG』はリプレイや関連書籍に傾倒し「TRPG普及のためのリプレイ」から「リプレイ生産のためのTRPG」と言う(文字通り本末転倒な)様相を呈して、その牽引力を衰えさせていきました。

 一方、日本にTRPGと言うゲームを輸入した愛好家や、TRPGをキッカケに海外の様々なアナログ・ゲームに興味を抱くようになった愛好家は、TRPGではないひとつのアナログ・ゲームに注目するようになりました。
 『D&D』を産んだアメリカ産の、元祖トレーディング・カード・ゲーム『Magic: the Gathering』(1993年)です。
 TRPGより手軽に短時間で遊べる『M:tG』は、前もって準備さえしておけば、ちょっとした暇な時間に対戦できることもあって、TRPG愛好家の間でもたちまちブームを引き起こしました。海外のゲームを自力で翻訳していたTRPG愛好家は、今度は『M:tG』のルールを自力で翻訳し、『M:tG』ブームの牽引役となったのです。

 粗製乱造と牽引力の衰退によって全体の質が低下していたTRPG界は、日本語版発売(1996年)に伴う『M:tG』ブームによって致命的な打撃を受けることになります。TRPGの主要なユーザーたちが、『M:tG』を始めとするトレーディング・カード・ゲームに流れてしまったのです。こうしてTRPGブームは沈静化し、冬の時代を迎えることになりました。

オンライン・ゲームの隆盛とTRPGへの回帰

 『Magic: the Gathering』の一大ブームから数年後、トレーディング・カード・ゲームのブームが衰退し始めた頃、デジタル・ゲームの世界ではオンラインRPGが台頭し始めていました。
 最初期のコンピュータRPG『Wizardry』『Ultima』の時代から長い間、コンピュータRPGは1人のプレイヤーが複数人のキャラクターを操作する、1人用ゲームでした。しかし技術の向上によるネットワーク化に伴い、複数のプレイヤーがひとつのゲーム世界を共有できるようになりました。オンラインRPGは、ゲームであると同時にコミュニケーション・ツールと化したのです。
 ゲームでありコミュニケーション・ツールであると言う形態は、TRPGにも通じるものでした。そしてコミュニケーション・ツールとしてのオンラインRPGは、TRPG愛好者が求めていたTRPGの形態のひとつを、ある程度実現したものでもあったのです。

 かつてTRPGの普及を妨げた要因とはすなわち、それをプレイする以前の問題でした。
 『ロードス島戦記』『ソード・ワールドRPG』そして『Dungeons & Dragons』に代表される強大な牽引者たちの力を以ってしても、TRPGと云う遊戯を、ルールブックとダイスを持ち寄ればいつでもどこでも遊べる物には出来なかったのです。『Magic: the Gathering』などのトレーディングカードゲームに比べてルールが複雑なTRPGは新規のPLを呼び込む能力にも欠け、冬の時代は続きます。
 しかし、二千年代に到達し益々発展を遂げるコンピュータやインターネットは、TRPGに新たな形態の誕生を促したのです。
 現代に於いて主に『オンライン・セッション』と評されるこのプレイ形態は、従来の、セッションを企画しても人が集まりにくいと云う問題に光明をもたらしました。

そして現在のTRPG

TRPGの遊び方

基礎知識

 TRPGでは、参加者は架空の世界の住人(TRPGでは一般に「キャラクター」と呼ばれます)となり、その世界で起こる様々なハプニングを体験することになります。
 参加者が受け持つキャラクター(プレイヤー・キャラクター)は、必ずと言うわけではありませんが、ハプニングを乗り切るための技術や生まれつきの能力を持っています。しかし、ただ能力や技術を持っているだけでは、ハプニングを乗り切ることはできません。参加者の知恵を駆使し、最善の工夫をし、最後にちょっとした運に頼ることになります。
 運がプレイヤー・キャラクターに味方してくれるかどうかは、多くの場合「サイコロ」で運試しをして決まります。この運試しは「(行為)判定」と呼ばれ、単なるラッキー/アンラッキーな結果の他に、プレイヤー・キャラクターに「達人のうっかりミス」や「奇跡の大逆転」と言った、思いがけない幸運や不幸をもたらすこともあります。
 プレイヤー・キャラクターが遭遇するハプニングは、そのTRPGが「どんなハプニングを体験するTRPGか」によって変わります。TRPGの大半は「ヒーロー/ヒロインになって悪い奴等をやっつける」と言うものです。ただし他にも「ホラー映画のような恐怖体験をする」「悪い奴等はいないけど困っている人たちを助ける」「ちょっと変わった学校生活を送る」「スポーツで頂点を目指す」「恋敵と愛する人を奪い合う」など、様々な種類のTRPGがあります。

遊ぶための準備

使う道具

  • 筆記用具
     TRPGでは、想像したことを忘れないようにするため、頻繁にメモを取ります。書き直したりすることも多いので、消しゴムと、鉛筆や消しゴムで消せるペンなどを準備しましょう。
  • 使うルールのルール・ブック
     TRPGは使うルールによって、その内容が大きく変わります。ひとくちに「球技」と言っても「野球」や「サッカー」や「バスケ」があるように、ひとくちに「TRPG」と言っても具体的には非常に細かく分かれているのです。当然、「野球」なTRPGと「サッカー」なTRPGとではルールも違うので、使うルール毎にルール・ブックが必要になります。
     数は最低でも、参加者1グループに1冊必要です。最も理想的なのは1人1冊(ルール・ブックを参加者自身が用意する)ですが、人数分の数がなくてもゲーム・マスター用に1冊、プレイヤー用に1冊以上あれば遊ぶには充分です。
     なお、同じTRPGのルール・ブックでも、遊ぶために最低限必要な「基本」のルール・ブックの他に、「基本」だけでは物足りない人向けにルールやデータを拡張した「追加」ルールや、ルールの不備や追加データの整理やバランス調整を行い「版上げ(ヴァージョン・アップ)」されたルール・ブックと言った区別があります。もしルール・ブックを購入する場合は、ゲーム・マスターや知り合いに訊ねたり出版社サイトやTRPG情報サイトで確認するなど、事前にルール・ブックの種類を確認しておくと良いでしょう。
  • サイコロ
     「どのルールでも必ず使う」と言うわけではありませんが、多くのTRPGはサイコロを使います。サイコロを使う場合、ルール・ブックには使うサイコロの種類(詳しくは*Keyword:ダイスを参照のこと)が必ず書いてありますので、それを参考に使うサイコロを揃えましょう。
     数は最低でも、参加者1グループに使う種類のサイコロ1個ずつが必要です。最も理想的なのは、参加人数×ルール・ブックが指定するサイコロの数です(あまり使わない種類のサイコロは共有でも構いませんが)。人数分の数がなくても、ゲーム・マスター用とプレイヤー用とにサイコロが分配できれば遊ぶには充分です。
     また、サイコロは消耗品ではないので、TRPGを頻繁に遊ぶようであれば購入を勧めます。数は6面のものを2~3個、10面または20面のものを2個、同じ種類のものは(色を選べれば)異なる色を選ぶと、最低限の応用が利きます。4面、8面、12面のものも持っていて損はしません。6面以外は2個ずつ、6面のものは5~6個持っていれば、ほとんど不自由しないでしょう。なおTRPG愛好者の中には、様々な種類のサイコロを集め持っている「サイコロ・コレクター」も少なからず存在します。
  • 飲み物とお菓子
     TRPGは「テーブルトーク」の呼び名の通り、会話がほぼ必須のゲームです。会話をし続けると喉が渇くので、飲み物はTRPGに必須の道具と言えるでしょう。ただしテーブル上に様々な道具を広げていると飲み物をこぼしやすいので、ペットボトルなど蓋付きの密閉容器に入れておくことを勧めます。飲んだ後、蓋を閉めることを忘れないように。
     用意する飲み物は好みのもので構いませんが、会話で口の中がベタベタしやすいため、甘味の少ないお茶やスポーツドリンクをお勧めします。眠気覚ましのコーヒーも有りですが、ルール・ブックやメモ類の上にこぼすと泣けるので、充分に注意してください。
     お菓子は、参加者間のコミュニケーションを潤滑にし、長時間のプレイで消耗した体力を回復し、手持ち無沙汰な参加者をゲームに引き止めるための小道具です。
     食事の同席は、互いの警戒心を解ける親しい間柄で行なわれることがほとんどです。これは逆に、知らない者同士でも食事に同席すればある程度の警戒心が解ける効果もあります。日本には「同じ釜の飯を食った仲」と言う言葉があるように、同じ物を食べることで連帯感を強めると言う意味合いもあります。お菓子は、こうした効果を安価で手軽に得られる一手段なのです。
     準備するお菓子は、基本的に参加者の好みのもので構いません。TRPG用であることを考慮するならば、手や周囲が汚れないものが理想です。パーティー用お菓子のスタンダード「ポテチ」は、油分で手やメモなどが汚れてしまうので、TRPGではあまりお勧めできません。食べかすが散らばりやすいのも欠点です。同様の理由で、スナック菓子も避けた方がいいでしょう。キャンディやキャラメルなどは、会話中に飲み込んだり口から飛び出さないよう気をつければ、喉を適度に湿らせる効果があり長持ちもします。ただし夏場は融けやすいので注意。好みに合えば酢昆布やスルメ、マシュマロなどでもOKです。
     こうした飲み物とお菓子は、原則として参加者が自身で準備し、遊ぶ際に持ち寄ります。特定の参加者のみが全員分の飲み物やお菓子を準備するのは、経済的な負担が大きく、また必ずしも参加者全員の好みに対応できないからです。また、お菓子は独占せず、同席する参加者全員で分け合うのが原則となります。

遊ぶ場所

  • オフライン
     TRPGをオフラインで遊ぶ場合、会話で盛り上がったりサイコロを転がす音が響いたりするため、騒音には気をつけましょう。また、食べ物や飲み物を持ち込んだ場合は、遊ぶ場所を汚さないように気遣い、帰る際にはゴミなども片付けて、場所の提供者に負担をかけないようにしてください。
    • 公共施設
       公民館など公共施設の一室を借り切ります。時間や賃料は、借りたい公共施設に問い合わせてください。
       遊ぶ仲間だけ数人だけで小さな部屋を借りる(賃料は割り勘)場合と、愛好会が部外者参加OKとして広い部屋を定期的に借りる(数百円程度の参加費を徴収)場合とがあります。
    • 参加者宅
       参加者の自宅を利用します。提供者の厚意に感謝しましょう。
  • オンライン
    • チャット・ツール
    • 掲示板

初心者にお勧めのTRPG

  • 剣と魔法のライト・ファンタジーが好きな方
     『ソード・ワールドRPG(富士見書房グループSNE)』をお勧めします。ソード・ワールドRPGの舞台は、『魔法戦士リウイ』『ロードス島戦記』の舞台と同じ世界「フォーセリア」ですので、これらの作品を知っておくと、より馴染みやすいでしょう。
     ただし『ソード・ワールド2.0』は、ヴァージョンアップしたことで、舞台となる世界や細かいシステムが別ものになっていますので、注意してください。
  • MMO-RPGを経験した方
     『アリアンロッドRPG(富士見書房F.E.A.R)』がお勧めです。特に『Ragnarok Online』の経験者であれば、用語やシステムが似通っているので、すぐにゲームを理解できるはずです。
  • ウォー(シミュレーション)ゲームを経験した方
     最適なのは『Dungeons & Dragons日本語版(ホビージャパン)』でしょう。ウォーゲームの派生形として誕生した“元祖”TRPGは、最もウォーゲームに近いTRPGと言って構いません。
  • TCGを経験した方
     『六門世界RPG(富士見書房新紀元社アークライトグループSNE)』は、あの『モンスターコレクションTCG(ブロッコリー富士見書房グループSNE)』の世界を舞台にしたTRPGなので、お勧めです。
  • 深夜アニメを良く見る方
     『ナイトウィザード(エンターブレインF.E.A.R.)』は如何でしょう? 2007年10月に深夜アニメ化された、同名アニメの原作に当たります。
  • ニコニコ動画でTRPGを知った方
     もちろんニコニコ動画で見たであろう『CoC』こと『クトゥルフの呼び声/クトゥルフ神話TRPG(エンターブレイン)』から始めると良いでしょう。どんな風に楽しめばよいか、リプレイ動画を見た貴方なら既に知っているはずですから。

プレイの段取り

仲間集め

 TRPGを遊ぶには、まず一緒に遊ぶ仲間を探すところから始めます。TRPGを遊んだ経験があったり、TRPGに理解を示してくれる気の置けない友人がいれば、それは恵まれた環境です。もし経験者であれば、それなりの対応をしてくれるでしょう。彼(あるいは彼女)の価値観が完全に公正でない可能性もありますが、疑問に思ったことは遠慮なく訊ねて、その価値観が公正か否かを慎重に見極めてください。

 もし知り合いが一緒に遊んでくれなくても、TRPGを遊ぶ方法はあります。
 ひとつは「コンベンション」と呼ばれる、TRPGを遊びたい有志を集めて開かれる集会に参加する方法です。「コンベンション」の情報については、「日本TRPGガイド」から地域の「TRPGガイド」を選択して、「イベント」あるいは「コンベンション」の予定や情報を探してみてください。
 もうひとつは、インターネットで仲間を探し、チャットや掲示板を使ってTRPGを遊ぶ方法です。こうした方法を用いたサイトは何箇所かありますが、最も規模が大きいのは、情報サイト「TRPG.NET」が運営する専用サーバに、『IRC』と言うチャットソフトで接続するものでしょう。『IRC』を使うにはちょっとした慣れが必要ですが、非常に多くのTRPG愛好者が使っており、また有志によってTRPGを遊ぶための補助ツールも多く提供されていて、手間を掛けるだけの価値は充分にあります。詳細は「TRPG.NET IRC情報」を御覧ください。

 一緒にTRPGを遊んでくれる仲間が集まったら、遊ぶ日時、使うルール、そしてゲームの進行役である「ゲーム・マスター」を決めます。
 ゲーム・マスターとは、映画で言えば監督・脚本・演出・エキストラなどを一人で兼業する参加者です。TRPGにはシナリオ(≒脚本)を準備する時間が必要なので、仲間を集めてから実際に遊ぶまで、ある程度の日にちをあけるのが上手なやり方です。
 ゲーム・マスター以外の参加者はプレイヤー、映画で言えば主役級の主要人物を演じる俳優になります。ただし、誰が主人公なのかは「参加者全員が決めること」です。またTRPGに決まったストーリーはなく、シナリオがあると言っても(推理小説の謎解きのように)ゲームを進めながら徐々に知っていくものなので、ゲーム・マスターが提示したシナリオの断片を手がかりに、アドリブでストーリーを作っていくことになります。

シナリオ作成

 「シナリオ作成」は、ゲーム・マスターのみが行なう準備です。

 ゲーム・マスターは使うルールに基づき、ゲーム進行のおおよその指標となるデータを作成します。これがTRPGの「シナリオ」です。
 先述の通り、プレイヤーはシナリオの内容を事前に知らされません。推理小説の謎解きのように、ゲームを進めながら少しずつ知っていくことで「面白そうな物語を初めて読むような」興奮を味わうのが、TRPGの醍醐味のひとつだからです。
 シナリオは基本的にゲーム・マスターが0から作成するものですが、使うルールによっては、基本となるルールにサンプル・シナリオが付属していたり、シナリオ集が市販されていることもあります。自作シナリオを公開しているサイトも少なくないので、好みのものを探すのも良いでしょう。また、他のルール用のシナリオや、映画や漫画や小説などのストーリーを、使うルール用に構成しなおすと言う手法もあります。

ルールの把握

 ゲームの進行をスムーズにするため、参加者は実際に遊ぶ前に、使うルールやデータを大まかに覚えていた方がいいでしょう。無論、全てのルールやデータを完璧に覚える必要はありませんが、最低でも「キャラクターのデータの読み方」と「基本的な判定のルール」は把握しておきたいものです。
 また、ゲーム・マスターが事前に「キャラクターは作らなくていいよ」と言っていれば、プレイヤーはキャラクター作成のルールを覚えなくても構いません。しかし、キャラクターのデータの読み方を覚え、自分のキャラクターがどんな場面で活躍できるかを知るためにも、一度はキャラクターを作成してみることをお勧めします。

 ルールを把握するコツとしては、

  1. 遊んでみたいキャラクター・タイプ2~3種類だけを覚える
     全部のキャラクター・タイプを一度に覚える必要はありませんが、専門バカにならず覚えられる2~3種類のキャラクター・タイプを覚えておくと、他の人が気づかないことに気づいて、みんなの役に立てるかも知れません。
  2. 特殊能力の名前を覚える
     遊んでみたいキャラクター・タイプが特殊能力を持っているならば、その名前と、どんなことができる能力なのかを、ひと通り頭に入れておきましょう。数値などの細かいデータは、実際にゲームで使ううちに自然と覚えてしまうので、心配には及びません。
  3. 判定ルールの基礎を知る
     TRPGで使われる判定ルールは、かなり大雑把に分けて以下のようになります。これらのうち「どのタイプの判定ルールか」を知っておけば、最初は充分です。
    • サイコロを使うもの
      • サイコロの出目が「難しさ」の数値「以上」で判定成功とするもの
      • サイコロの出目が「難しさ」の数値「以下」で判定成功とするもの
    • サイコロを使わないもの

 もし分からないこと、疑問に思ったことがあれば、忘れないようにメモしておいて、ゲームを始める前に(ゲーム中に思い出したときでも構いませんが)他の参加者に訊ねるようにしましょう。

キャラクター作成

 ゲーム・マスターがキャラクターを準備している、事前に作成したキャラクターを使う、などと言った場合を除いて、初めて遊ぶときには、遊ぶ直前にプレイヤーが自力でキャラクターを作成することになります。

 まずプレイヤーは、自分の好みやゲームに対する慣れなどに応じ、話し合って役割分担を決めます。漫画や小説やドラマなどでも、主人公を助ける準主人公格の脇役がいる方が、主人公が独りの物語より、主人公の魅力を引き立て物語が盛り上がるものです。『指輪物語(ロード・オブ・ザ・リング)』のガンダルフしかり、『ハリー・ポッター』シリーズのロンやハーマイオニーやダンブルドア校長しかり、『北斗の拳』のレイやトキしかり、『ルパン三世』の次元大介や石川五右衛門しかり、『ベルセルク』のパックしかり、……挙げればキリがありません。時に主人公を影から支え、時に主人公以上の活躍を見せ、しかし決して驕ることない脇役は、時に主人公以上に人々を魅了します。
 役割分担が決まったら、ルールに従ってキャラクターを作成します。使うルールによっては、役割分担を決める前にキャラクター作成を始めないといけないでしょう。その場合は、作成途中のキャラクターのデータに基づいて、役割分担をプレイヤー間で調整します。思ったようなキャラクターにならないかも知れませんが、使ってみると新鮮で意外に馴染むものです。第一印象が悪くても、付き合ってみると意外に気の合う友人だと思えば良いでしょう。

 キャラクターが完成したら、プレイヤー同士でお互いに見せ合いましょう。自分のキャラクターがどんな人物なのか想像しながら語るだけでも楽しいものですし、共に行動する仲間のことを知っておいて損はありません。もしかしたら、あなたのキャラクターをもっと「らしく」できる適切なアドバイスがもらえるかも知れませんし、キャラクター作成のルールを間違って覚えていたらきっと忠告してくれるでしょう。もちろん受けるだけでなく、あなたから忠告やアドバイスを与えることもできます。

 最後に、完成したキャラクターをゲーム・マスターに見せて、キャラクターを使う「許可」を得てください。ゲーム・マスターの目前で作成したキャラクターならば、不許可になることはほとんどないでしょう。ただし、キャラクター作成を運任せにするようなルールでは、そのキャラクターが活躍できないことが「事前に」分かってしまうこともあるのです。

 ここでは分かりやすく説明するために便宜的に分けて書いていますが、実際にはもっと雑然と行なわれます。様々な雑談を交えながら、片手間にキャラクターを作成する感じです。
 またキャラクター作成は、ルールやゲーム世界について説明、質疑応答する時間でもあります。ゲームを始める前に思った疑問、キャラクターを作成している最中や他のプレイヤーのキャラクターを見て分からなかった点があれば、遠慮なくゲーム・マスターや他のプレイヤーに訊ねましょう。

プレイ

 TRPGを遊ぶ際に最も気をつけねばならないことは、「自分自身が楽しむと同時に、他の参加者にも楽しく思わせる」ことです。同じTRPGを遊んでいるからと言って、他の参加者が必ずしも同じように楽しんでいるとは限りません。他の参加者が楽しんでいないと気づいたら、その原因は何なのか、よく考えてください。
 もちろん遊びですから、あまり堅苦しく考えるのも困りものです。肩の力を抜いて気楽に、自分の出来る範囲で皆を盛り上げましょう。ただし一人で浮いてしまわないように。……難しいですね。

「他の奴が強いと不愉快だけど、俺が強いのは楽しい」
「他の奴に騙されるのは絶対に嫌だが、他の奴を騙して悔しがらせるのは爽快だ」

 そんなあなたは、遊ぶゲームを間違っています。少なくとも、TRPGより『ディプロマシー』や『スコットランド・ヤード』と言ったボードゲーム(特にドイツ製のもの)を勧めます。手軽で簡単なものがよければ、『カタン(カタンの開拓者たち)』やカードゲーム『ニムト(6ニムト!)』などでも良いでしょう。
 最初は弱くても、あなたはこれらのゲームで強くなる素質を間違いなく秘めています。
  1. 起承転結の「起」
  2. 起承転結の「承」
  3. 起承転結の「転」
  4. 起承転結の「結」

反省会

プレイ風景

こちらを参照のこと。