二国合同軍事演習II

レオナ

――王子、此度は貴国の協力によって
我ら白の帝国と貴国とで行う合同軍事演習が
滞りなく実施できる運びとなったことを感謝する。

過去に行われた合同演習では、
我ら帝国軍と貴軍との連携強化を目標の一つに掲げ、
その目標はある程度は達せられたと考えている。

そこで、今回はより一層の連携強化を図るべく、
以前の演習に参加できなかった兵たちにも
是非とも貴軍との戦闘経験を積ませたいと思う。

有事の際の連携を速やか且つ強固なものとするには、
互いの戦力の把握が不可欠だからな。
この機に貴軍にもあらためて実力を示してもらいたい。

……さて。今回の演習においては
普段の魔物討伐の任とは異なる
『大討伐ミッション』という形式を用いさせてもらう。

大討伐ミッションでは通常のミッションとは違い
幾つか異なる点がある事に注意しておけ。

まず大討伐ミッションでは
『敵を撃破すること』
それのみが唯一の目的となる。

兎に角一人でも多く相手を倒す、
それこそが最も重要だ。

たとえライフが0になってもクリアとなり、
それまでに倒した数はカウントされ
戦果として記録される。

つまり、自軍の被害を恐れるよりも
少しでも多くの相手を打ち倒す事に
専念することが重要ということだ。

出撃コストが時間経過で回復しない事も留意しておけ。
『援軍要請』のスキルを持つ者や、ワルキューレを
出撃メンバーに入れることを忘れないようにな。

また敵を倒してもEXPやゴールド、
ドロップ品を手に入れることはできない。
その点も覚えておくように。

演習は帝国領内の軍事施設で実施することとなる。
貴国の兵たちにも予めそう伝えておいてくれ。

演習とは言え、こちらは手を抜くつもりは毛頭ない。
実戦と同等の緊張感をもって臨まねば、
真に意味のある演習とはならないからな。

其方も気を抜かずに相手をしてくれ。
此度の演習も王国と帝国双方にとって
意義のあるものとなることを願っているぞ。

それでは『大討伐ミッション』開始とさせて頂く！

ケイティ

帝国軍の皆さん、お待たせしました。
準備が整いましたので、開始の合図を――

？？？

――ねえねえ、リロ姉さまは？
リロ姉さまもここに来てるの？

？？？

リーザ様。元気が良いのはリーザ様の美徳ですが、
他国からいらした御方のお話を遮っては
不作法と思われてしまいますよ？

リーザ

いたたッ！　痛い、痛いってば！
もう、笑顔で腕を極めないでよね。
マリカったら、メイドのくせに馬鹿力なんだから。

マリカ

うふふ……王国軍の皆様、失礼いたしました。
私はマリカ。白の帝国で女官を務めております。
そして、こちらが帝国の誉れ高き――

ディアナ

騎士団長、ディアナと申します。
此度は貴公と剣を交えること、
誠に光栄に存じます……王子殿下。

王子

…………。

ヒース

 ……さて。顔合わせが済んだところで本題に入ろう。
此度の演習では、かねてより我々が研究を続けている
魔力を付与した武具を使用させてもらう。

ディアナ

無論、私たちはそのような武具は用いず、
普段どおりの武装で臨ませていただきます。
本来の実力をお示しするために。

ヒース

魔力を付与した武具は
魔物によって構成された部隊、
黒の軍団の兵たちに持たせてある。

彼らによる攻撃には魔法の力が宿るということだ。
魔法の前では如何に頑強な鎧とて意味をなさない。
たとえゴブリン兵だろうと侮らないことだな。

ケイティ

ご忠告痛み入ります。
王子、魔力を付与された武具を使う
魔物の攻撃にご注意ください。

レオナ

 ……注意事項の説明は済んだようだな。
王子、準備はいいか？

王子

…………（こくり）

レオナ

……承知した。
それではこれより、
帝国王国合同による軍事演習を開始する！