原初の竜姫と神なる力

サキ

――王子、報告よ。

アンナ

忍びの皆さん、偵察ご苦労さまです。
魔王城周辺はどうなっていましたか？

サキ

魔王城の門は突破されてるけど、
中枢の封印は維持し続けているみたいね。
でも、あの周辺一帯が、完全に天界勢力に制圧されてるわ。

チヨメ

潜入作戦をするにも、
包囲の密度が高すぎる感じでしたねぇ。
これはもう、正面からどーんしかないというか。

アンナ

それだけの戦力が相手ならば、
大部隊による「広域戦闘」となりそうですね……。

ナギ

代わり、というわけでもありませんが、
三女神の力の残滓は健在の様子。
魔界の瘴気には悩まされずに済みそうです。

ヤハール

……戦闘状態、というわけではないのね？

サキ

ん、そうね……。
小規模な戦闘は起きていたけど、
基本的には包囲を狭めつつある状況だったわ。

ヤハール

……あの怒らせたら手がつけられないロタンが、
大人しく遅滞戦闘なんてしてるかしら。

アスバール

心配、ですね……。
あの子が無事なら、
きっと大乱戦になっているはずですから。

一般兵

――王子、失礼します！
負傷兵の治療、完了しました！
戦える者はすべて、整列しております！

ケイティ

王子、此度の戦いの目的は
魔王城へ到達することにあります。

そのため、可能な限り
『多くの敵を倒すこと』を目的としたミッションとなります。

「ライフが0になってもクリア」となるため、

敵戦力を削ることを最優先とし、
進撃の活路を拓きましょう。

ただ、ここは魔界の中でも、
物質界との補給路から離れた地点です。
よって、出撃コストが時間経過では回復しません。

スルーズ

私たちワルキューレや、援軍要請のスキルを持つ方を
部隊に編成する必要がありそうですね……。
王子殿下、慎重な部隊編成をお願いしますね！

サバル

ところでぇ、前回の魔王城じゃ、
お宝をこっそりいただけなかったわけだがぁ……。
今回は金銀財宝、ぶんどっちゃっていいかな？

タリエ

……魔王城周辺に、お宝なんてないわよ？
天界の戦力も金銭に興味なさそうだし……。

サバル

ぐぬぬ、やっぱり
EXPもゴールドもドロップ品もなしかぁ！

アスバール

……王子、あなたは良い兵に恵まれているのですね。
あの猫耳の少女、皆の緊張を一瞬で解してしまいました。

あなたと、王国軍の力を信じています。
どうか、魔界と、私のロタンをよろしくお願いします。

ヤハール

――なんだか、変な感じね。
慣れない魔力が渦巻いてるみたいな……。

フローガ

魔界の瘴気とも違う……。
おそらく、何らかの儀式によって、
この空間の魔力自体が歪んでいるようです。

ノーマ

ふふん、それならばばっと突撃して
儀式を止めちゃえば――きゃぁっ！？
なに！？　雷落ちてこなかった！？

オデット

儀式の余波か、あるいは防衛装置か……。
あの黒いクリスタルが、
魔力によって落雷を誘導しているようだな。

ノーマ

やっぱり天界の連中って底意地が悪いわよね……。
対策法はありそう？

オデット

なに、あのクリスタルが落雷の誘導装置なら、
破壊しながら進軍すれば問題ないだろう。

それに、あちらの灰色のクリスタルは
非活性状態にあるらしい。
あれも活性化前に破壊してしまえばよい。

ハルモニア

なるほど、つまりいつもどおり、と。
亜神ディアスの目的が不明である以上、
じっくりと包囲網を敷く時間はありません。

迅速に敵勢力を排除し、
魔王城への道を切り拓きましょう！

落雷誘導装置(活性状態)は
防御、魔法耐性を無視する
遠距離攻撃を行います。
　
また拠点には向かわず、
倒さなくても★の評価には
影響しません。

ロタンがいる間は、
ドラゴン系の敵の攻撃と防御が
アップします。

落雷誘導装置(非活性状態)は
一定時間経過すると
活性状態へ変化します。

ギガエルがいる間は、
魚人を含む水棲の魔物の
攻撃と防御がアップします。

アラエルがいる間は、
鳥人系の敵の攻撃と防御が
アップします。

アラエルが使役する霊鳥は
あらゆる攻撃を受け付けません。
　
アラエルの撃破、もしくは
アラエルが拠点を通過すると
消滅します。

暴走したロタンは物理と
魔法攻撃によるダメージを受けると
攻撃したユニットへ反撃を行います。

……お嬢、さま。
くっ……わた、しは……あぁあッ！

魔王城の方角から誰かが……。
アスバールさん、見覚えはありますか？

あれは……ロタン！
よかった、無事だったのですね！

おじょうさま……。
そうか……お前たちが、お嬢さまを……。

……なにか、様子がおかしくありませんか？

めちゃくちゃおかしいですわよ！
精神支配……というより、
魔力で思考の方向性を……えーっと……。

俺がガードに支配されていた時に似ているな。
心まで縛るわけでなく、
ただその方向性を弄られてるみたいだ。

つまり……？

あの子は！　アタシたちを！
完全に敵だと思いこんでいるってことですわよ！！

……大丈夫です。
私の守護者たるロタンなら、
多少強引に止めても傷ついたりしません。

…………ただ、ひとつ問題が。
あの子を止めれば、おそらく、
魔王城を封印していた力も止まってしまうはず。

…………（ふるふる）

……見捨てることは、できませんよね。
あんなに苦しんでいるのに、
封印のためにそのままにするなんて。

王子、ロタンさんを止めましょう！
迅速な指揮をお願いします！

……お嬢さまから、離れて。
穢らわしい手で触らないで。

亜神ディアス……私は、お前を絶対に許さない。
魔界を、お嬢さまの領土を……何だと思って……。

ね、ねぇっ、ロタンの様子おかしくない！？
これ、怒っちゃってるわよね！？

……まずい、ですね。
ロタンは、普段はおとなしい良い子なのですが……。

……怒ると、誰にも止められなくなるのよ。

ヤハールまで……この裏切り者。
お嬢さまを独り占めしないって、
淑女協定を結んだのを忘れるなんて……。

――もう、許さない。

王子……ど、どうしますか？

正々堂々、正面から……。
わかりました。
皆さん、全力でロタンさんを止めますよ！

ロタン

……お、じょう、さま？
わたしは、いったい何を……。

アトナテス

あまり無理するな、精神が暴走させられてたんだ。
少し休んだ方がいい。

ヤハール

ロタン！　良かった……けど！
さっきの言葉忘れてないからね！？

ロタン

な、なに……？
どうしたのヤハール……？

アルバール

……ありがとうございます、王子。
おかげで、私の守護者は命を救われました。
けれど、あの子に預けていた私の封印魔法は……。

トラム

……私たちは最善の選択をしたわ。
誰かを犠牲にした勝利なんて、
王国軍は、誰も望んでいないはずだもの。

天界の軍勢が魔王城に踏み入るというのなら、
それらすべてを蹴散らしてやればいいだけよ！

？？？

――武神殿は、相変わらずのようですね。
正しさを信じ、迷い、悔い、
それでも輝ける道だけを選ぼうとするとは。

トラム

あなたは――

ラーワル

パパっ！？

オーガスタ

イルドナさん！

アトナテス

……てめぇ、ここに何しに来たんだ。
ソラスたちと違って、あんたはずっと目覚めてたんだろ？
今までどこで、何を企んでいやがった。

ラーワル

ちょっとアトにぃ！
パパは僕を王国に派遣したりしてたでしょ！
ずっと王子のこと手助けしてたし！！

アトナテス

そういうのは黒幕がすることなんだ。
英雄王から……あいつから、
世界を託されたのはてめぇだっただろうが！

アンナ

……あの……あの方はいったい？

トラム

……光の亜神、輝ける者、
英雄王と共に戦った、英傑がひとり。

オーガスタ

私を、天界から逃がしてくれた方ですよ。
この地は戦乱に巻き込まれるから、って。

イルドナ

――その問いには、
本来ならば答える義務があるのでしょう。

ただ、今はあまり時間がありません。
ラーワル、アルタ、これからも
共に英雄王の系譜を助けてやりなさい。

アトナテス、お前の怒りは正しいものです。
ですが、今はその感情を、
世界を救うことだけに注ぎなさい。

アトナテス

お、おい、待て、何言ってやがる。
その台詞、それじゃあまるで――

イルドナ

亜神ディアスの儀式が始まります。
しかし、この世界にはまだ、
それに抗うだけの実力が足りていません。

……彼に、世界を託されたのですがね。
これから先の世界を、
未来を見られないことだけが、私の心残りです。

――王子、時間は私が稼ぎます。
トドメは刺せぬまでも、
傷くらいは負わせられるでしょう。

民の声に、あなたを英雄だと称える声に
応える意志があるならば、
どうか、英雄王の守った世界を受け継いでください。

ラーワル

……えっ、ちょっと待って！
パパっ！　どういうこと！？　ねぇ王子も！！
どうして頷きあってるのさ！？

アルタ

……お姉さま、落ち着いてください。
お父さまを、行かせてあげましょう。

ラーワル

説明してよ！　パパ！！
ねぇっ！！　待ってよぉ！！

アンナ

……王子、急ぎ拠点へ戻り、
負傷者の手当てと補給をしましょう。

おそらく、残された時間はあまりないようですから。

ディアス

――とうとう、決別の時か。
我が物顔でオリュンポスに出入りしながら、
敵であることを公言する、面白い男だったが。

……いや、余を見限ったとでも言いたいのだろうな。

変化も衰退も進歩もない、
安寧と停滞の時代を望む余のあり方と――

――無謀なる破滅に突き進みながらも、
それを理解できぬ、夢しか見られぬ人類のあり方。

そのどちらが、より世界を長く存続させるのか、
どちらが世界にとって価値ある未来なのか、
あの男の中で、ようやく結論が出たということだろう。

……その結論こそが間違いであると、
突きつけてやらねばなるまいな。

？？？

――はい、ディアス様。

ディアス

王国の、王子。
愚かな創造神の被造物め、
せっかく成長の機会を与えてやっていたというのに……。

英雄たらんとする者が、余に挑むのだという。
だからこそ、余も最上の力を取り戻し、
オリュンポスが頂で待つつもりだったが――

――どれ、少しだけその力を味わってみるとしよう。
王子よ、あの日からどれだけ、お前が力を磨いたのかを。

ルキファよ、魔王城へ向かうぞ。
憎き三女神の力、少々形は異なるが、
この手に取り戻すとしよう。

ルキファ

――はい、ディアス様。