夏だ！海だ！魅惑の合同演習！？

ヴァイス

――ふぁ……あふ……。
海辺の朝というのも良いものだな。

アナトリア

熱い日差し、涼やかな海風、
まるでビーチが
今日の行動演習を祝福してくれているようじゃないか。

ヴァイス

この合同演習も終わりが近い。
アナトリア、お前とはそろそろ決着をつけたいものだな。

アナトリア

フフ、ここまでは互いに
なかなか剣を交えることができなかったからねぇ。

マリカ

おぉ、あのヴァイスさんが
熱くなってるの、珍しいですねぇ……。

レオーネ

熱き友との戦いと、灼熱の日差し、
夏は戦士をアツくする季節なんだよ！

ポーラ

……熱くなりすぎて、
倒れないように注意するですよ？

アンナ

皆さんやる気が滾っているようで何よりです。
特に今日は、特別ゲストもご招待していますからね。

それでは、そろそろ演習の準備を始めましょうか。
王子、皆さん、よろしくお願いしますね！

アルティア

――さて、準備はできましたか？

今日の合同演習は、王国軍、帝国軍混成での
海岸地域での作戦を想定しています。

レオーネ

おぉ、揚陸艇だぁ！
アルティアさんカッコイイなぁ♪

イーリス

ふふふ、王子が相手だからか、
兵の皆さんもすごいやる気ですね！

？？？

わぁぁっ！　すっごーい！
本物の王国軍と帝国軍だー！

ヴァイス

おや、民間人の迷子か？

アンナ

いえいえ、実は近隣の村から
見学を希望する方々を招待したんです。

魔王決戦以降、少しずつ復興しているとはいっても、
まだまだ娯楽や息抜きも少ない状況ですからね。

ヴァイス

なるほど……。
つまり彼女らが今日のゲストということだな？

アンナ

ふふ、いえいえ、あの子たちはお客さまですから。
特別ゲストには模擬戦に加わってもらう予定なんです。

フーリ

んん？　あれ、あの子
ヴァイスさんのことじーっと見つめてませんか？

海辺の少女

…………！！
あっ、あれって……まさか本物のヴァイスさま！？

わっ、わわぁっ、どうしよ……目が合っちゃったよぉ！？
ヴァイスさまー！　がんばってー！！

ヴァイス

……う"ぁ、う"ぁいす、さま！？
えぇと、えっ、あっ、何？　どういうことだ！？

イーリス

あっ…… なるほど……。
あの子きっと、ヴァイスさんのファンなんですよ。

ヴァイス

ふぁ、ファン……？
つまりは、その、私の剣に惚れてくれたということか？

よし、ならば見ておけ少女よ。
我が剣技をもって、見事敵将の首頭を上げてくれよう！

海辺の少女

きゃーっ！　ヴァイスさまかっこいいー！！

フレイ

ははは、あの冷静沈着なヴァイスが、
あんなにやる気だしちゃって。

よぉし、それじゃあ王子！
模擬戦始めちゃおっか！

ボートは拠点へ向かわず、
撃破数に含まれません。

――ふぅ、そろそろ異界の門を開くタイミングですかねー。
王子さまー？　もういいですかー？

…………（こくり）

許可出ました！
ふっふっふ、久々の異世界召喚、ご堪能あれー。

――んもぉ～、だから！
私もご主人くんと一緒に、
おーこくって所に行ってみたかったんですってばぁ！

って、あれ？　あれれ？
ここはいったい……？　見覚えがないような……。

ご主人くーん！？　どこですか～！？

もう、慌てない慌てない。
今回は正式にご招待されているから、
ちゃんと一緒に連れて行くって言ったでしょ？

んっ……？
つまりここが、みんなが行ったっていう異世界？

ふっふっふ、ようやく来れましたぉ！
みんなで！　ご主人くんと一緒に！　私を置いて！
遊びに来てたっていう異世界なんですねぇ～！

えっと、あのぉ……遊びに来てたわけじゃぁ……。

うぅ……思い出したら悲しくなってきました……。

私だってご主人くんと異世界バカンスしたかったのにぃ！
砂浜でいちゃいちゃ！　海の家でぺろぺろ！
ぐんずほぐれつ無人島でらっぶらぶ！

ははっ、どちらかというと、
神殿前でパチパチ、山の麓でボコボコ。
超巨大な敵とガチバトル、だったけどな。

うぅ、関係ないもん……。
ひとりだけ関係ない世界に行っちゃったの
寂しかったんですからぁ～！

そういうわけで、八つ当たりします♪

…………！！

うわぁああ！？
どこからこのクロミコピー連れてきたんだ！？

――特別ゲストは彼女たちだったのか。
いや、それにしても、何か様子がおかしいが。

…………。

ふふ、まぁいい。
異世界の戦士たちが相手とあらば、
手加減をする必要もないだろう。

それに、クロミ殿の、
取り残された悲しみはよく分かる。
全身全霊で受け止めてやろうじゃないか。

クロミ

――ふぅ、すっきりしたぁ♪

スズ

あれだけ暴れればね……。
あのクロミコピーいったいどこから持ってきたの。

グリム

ふっふっふ、異世界召喚大成功ですー。

クロミ

あっ、キミが門を開いてくれたんですねぇ。
んぅ～、よしよし、なでなでしちゃいます♪

グリム

わっ……くすぐった――ひゃんっ！？

アンナ

――えぇと、お久しぶりですね？
今日は異世界合同演習に
ご協力いただき、ありがとうございます。

セレン

いやいや、クロミが「私も異世界行きたかった」と
駄々をこねているところだったからな、ちょうどよかった。

リン

それに、ちょうどいい季節で、
ちょうどいい場所みたいだし……。
ちょっとだけ、遊んでいってもいいよねぇ♪

アンナ

えぇ、この後には懇親会も予定しています。
共に世界を守るために戦った仲ですし、
ぜひ交友を深めていってくださいね。

クロミ

えっ、じゃあこのままバカンス？
やった♪　ビーチでバカンスですね♪

スズ

えぇっ、せめて後片付けしてから――
あっ、もう行っちゃった……。

アンナ

あらあら……。
ともあれ、これにて模擬戦は終了です。
王子、軍団の指揮、お疲れ様でした！

クロミ

――おぉ～、これが王国、
そして王国軍と帝国軍の皆さんと。

アナトリア

クロミ！　せっかく海に来たんだ、
一緒にビーチバレーに励まないか？

クロミ

わー！　しますしま～す♪
――って、んきゃぁぁぁ！？　何ですかその剛速球！？

セレン

ん、なんだご主人のことを聞きたいのか？
何を隠そう、ご主人は私が育てたんだ。

メーア

えええええっ！？
あの子ってセレンさんのお子さんだったんですかぁ！？

セレン

フッ……絆の深さじゃ親子すら超えるかもしれないな……。
何しろご主人のことで、私が知らないことは何も――

リン

あっ……また後方彼女面してるぅ……。

リーゼロッテ

んっ、リンと言ったか？
どうだ、特製かき氷はいらないか。

リン

かき氷……ひやひや、冷たい……。
わーい……あっまーい！

スズ

わぁっ、おっきいグリフィン！
翼もおっきいなぁ……。

クゥイル

ふふ、よかったら一緒に飛んでみますか？
スズさんの飛び方、ぜひ見てみたいです！

グリム

（ふっふー、召喚大成功です。
これで今後は、自由に召喚実験も認められ――）

アンナ

……無断の召喚実験は禁止ですよ？
ちゃんと申請はしてくださいね。

グリム

やーだー、申請めんどうですー。

ヴァイス

それから、喚ばれる相手の都合も考えるんだぞ？
もし取り込み中だったら大変だろう。

グリム

はっ……たしかに……。
じゃあちょっとだけ考慮しますねー。

ヴァイス

……やれやれ。
さて王子、私たちもバカンスに向かおうか。

――楽しい夏は、まだまだ続くんだからな。