APRS 1200baud Fill-in(狭域)デジピーターの解説
◎ 概要
Fill-in(狭域)デジピーターとは、WIDE(広域)デジピーターでカバー出来なかったエリアを補助する役割や
WIDE(広域)デジピーターを山岳地へ建てるまでもない低地のエリア拡張に用いるデジピーター設備である。
普通山岳デジピーターと違う点は、移動局側から見て1段目、I-Gate局側から見て2段目の中継設備となる点である。
まずは、その役割と動作について画像を見てイメージ頂きたい。
- The new WIDEn-N PARADIGM方式 ー 1~2年前 日本で主流の形式。
- STATE/SECTION/REGION PARADIGM方式 ー WIDE1-1のみに加え 現在主流の形式。
Fill-in(狭域)デジピーターの役割イメージ… (The new WIDEn-N PARADIGM方式の場合)
この例ではFill-inデジピーターも小高い山に設置している例として描いている。状況に応じてこれがビルの上等になる場合もあるだろう。
3つのゾーンを2つのデジピーターが繋いでいる例で、一番分かり易いと思われる。
注目したい点はデジパスで、今回は The new WIDEn-N PARADIGM方式 本来のあるべき姿を描いてみた。
デジパス「WIDE1-1,WIDE2-1」はこのような使い方をする為の設定内容である。
言い換えれば、この状況から少しでも外れるならば「WIDE1-1,WIDE2-1」という設定内容は適切ではないという事になる。
その点を多くの皆さんにご理解頂きたい。
I-Gateとなる側がHome(VHF)Symbolのインターネットを使わない局であっても、コミュニケーションとしては成立する。
この図で閲覧者に理解頂きたい点は以下である。
- Fill-inデジピーターは通常直接波でI-Gateへ到達不可な場所に構築される事がある点
対して、補間的にI-Gateへ直接届く場所へ設置される場合がある点も理解しておこう。 - I-Gateへ直接到達出来ない場所に設置される場合、専属担当となるWIDEデジピーターがある事。
そして、Fill-inデジピーターの設定すべきデジパスは専属担当のWIDEデジピーター局のコールサインとなる点。 - 対応汎用デジパスは WIDE1-1 のみに反応する事。(The new WIDEn-N PARADIGM方式の場合)
- 担当となるWIDEデジピーター(1局)があるか?又はI-Gate(1~2局)があるかという事 (受信するI-Gate局が多い場合、I-Gate側で制限が必要。)
電波輻輳となりうる要素があれば全て排除する事。
である。
Fill-inデジピーターはWIDEデジピーターに比べ、比較的静かな設備となる。それだけ必要な時以外中継を行わないからであるが、
拡散タイプのビーコンを扱うAPRS故に、デジピーター構築の場合はデジ経路が明らかになるよう手段を選ぶ必要がある。
設定担当者は状況を十二分に把握し、無意味な伝搬輻輳を誘発させないよう最大限注意して最適値を出す事。
Symbol(シンボル)に関しては以下のような決まり事があるので遵守頂きたい。
Symbol | Alternate table | Primary table | 説明 |
★ + 1 (数字) | 1 | # | The new WIDEn-N PARADIGM方式で WIDE1-1 のみしか反応しないFill-inデジピーター |
★ + S (英字) | S | # | STATE/SECTION/REGION PARADIGM方式にも対応するFill-inデジピーター |
※ 最近の運用方式では使用禁止となっているSymbolもあるので、よく調べて設定する事。
しかし!ここまで説明してきて何なのだが、
ビーコンを発信する移動体の局がデジパスを状況に応じて臨機応変に変更しない現状を懸念すると、
デジパス「WIDE1-1,WIDE2-1」という設定内容を普及させれば確実に輻輳状態を招く結果となる。
日本では既に The new WIDEn-N PARADIGM方式は使えないに等しい状況となりつつある。
そこで、一般には全国統一の汎用デジパス「WIDE1-1」はそのままで最低限1hopでの中継を許し、
デジピーターも山岳地においてはWIDE2-1への対応を止めて頂きたいと願う。
代わりに、メッセージ等のRF伝達に不備が無いよう地域(都道府県規模)に特化したデジパス「SSn-N」を
必要に応じて使用するよう呼びかけたい。
新しい日本国内での対応デジパス方式は、
『WIDE1-1 + SSn-N (都道府県規模)』で他エリア・他都道府県に迷惑をかけない電波の使い方をして頂きたいと願う。
Fill-inデジピーター局は汎用デジパスではなく、特定WIDEデジ局のコールを指定する
デジピーター局の設定をネット側からチェックしていると、時々罰当たりにも「WIDE1-1」をデジパスに設定して送出している所がある。
電波上を確認すると、他デジピーターが当該デジピーター局のビーコンを無意味に中継し、軽いループ現象のような事を起こしている。
APRSは従来のパケットとは違うので、デジピーター局自身のビーコンを遠くへ中継する意味は無い。
寧ろ中継する事で設置したデジ局のカバーエリアが曖昧(不明確)になったり他局へ混乱を与える要因となる。
Fill-inデジピーター局が広域(WIDE)デジピーターへ自局ビーコンを中継する場合は必ず、専属担当となる当該WIDE(広域)デジピーター局のコールサインを設定する事。
汎用デジパス(例:WIDE1-1)を設定する事は禁則事項である。
デジピーターが設定ミスで輻輳要因を作るような事は絶対してはならない!!
Fill-in(狭域)デジピーターの役割イメージ… (STATE/SECTION/REGION PARADIGM方式を交えた場合)
現在少しずつ広まってりつつある運用方法として STATE/SECTION/REGION PARADIGM方式がある。
電波のデジピート範囲を限定し伝搬する方法である。日頃から他県や他エリアに移動しない局であればこの設定で十分である。
本来デジピーターを設置する場合も、他中継設備に可能な限り干渉しない設置場所を考慮すべきだが、
やむを得ない場合の設置もあるかと思われる。
どうしてもカバーしたいエリアでありながら、他設備へ影響を与える場合デジパスにより中継範囲エリアを制限すれば良い。
しかしながら、この方法は応急処置的対策であり 設置場所を選ぶ義務を逃れられるものではない。
適切な電波伝搬を確保する為に電波が見えると言わんばかりの事前電測は必須であり、一段上のアマチュア努力は必要である。
またAPRSは特性上拡散し易い為、し過ぎない為の対策は何時如何なる時も考慮する必要がある。
長くなる為、 I-Gateカバーエリアを補間する目的での Fill-inデジピーター構築に関しては省略する。