Jatimatic

• タンペレーンアセパヤ(タンペレ銃器)社は元は競技用のスポーツライフルで有名なメーカーであったが、軍用銃のカスタマイズから次第に西側規格の軍用銃器や手榴弾などを手掛けるようになった。
  そんな中開発技師で取締役のヤリが開発したのがヤティマティックの原型となる拳銃で、ヤティマティックの名はヤリのイニシャルにオートマティック(automatic)を掛けたものである。
• 動作方式はシンプルブローバック・オープンボルトで、ボルトハウジングが銃身を覆うテレスコーピングボルトを採用している。
  また射撃時には銃身下部に折りたたまれているフォアグリップを垂直まで起こしコッキングするのだが、この時にボルトハウジングに刻まれた赤いFIREのマーキングが見えるようになり(人形が持つものは~ω~のような顔文字風になっている)発射可能を知らせる。ちなみにこのハウジングは排莢口のカバーを兼ねており、異物の侵入を防ぐ効果があるとされている。フォアグリップを畳んだ状態ではボルトがロックされ、落下時にも暴発しないようになっている。
  トリガーはプログレッシブで浅く引くとセミ、深く引くとフルオートになる。また前後のグリップやトリガー、ロワーレシーバーは樹脂製で軽く、寒冷なフィンランドの冬でも手などに張り付かないようになっている。アッパーレシーバーはプレス鋼板で補強用のリブがあり、フロントサイトもこのアッパーレシーバー上部にある。リアサイトはスクエアノッチで100mの固定であり、フロントサイトに比べて非常に背が低い。レシーバー後端のリアスリングスイベルはトップカバーのロックも兼ねており、先述のダストカバーを兼ねたボルトハウジングやセイフティを兼ねたフォアグリップ、フロントサイトの左右にあるガードはスリングスイベル等、各パーツは複数の役目を持たされているものが多く、総部品点数はわずか39で一般的なオープンボルトSMGと比べて半分前後である。
  マガジンはダブルスタックダブルフィードで純正でアルミ製の20発と40発ボックスマガジンがあるほか、カールグスタフ社のm/45のものもそのまま流用可能となっている。マガジンリリースはパドル式で、排莢口を除けば操作系はほぼアンビデクストラスとなっている。
• 本銃の最大の特徴はその独特のレシーバーとボルトのデザインにより銃口が斜め上を向いているように見える点だが、実際には前後のサイトの高さが揃うようにやや下向きに構えると銃口が水平になる。またストックもオプションのためスリングの長さを調節し両腕をまっすぐ伸ばして構えた時にテンションが最大になるようにすることで姿勢保持の助けとする。この状態で激発すると大質量のボルトハウジングが斜め下に向かって移動するためマズルジャンプを抑制し、また構えた時に銃口と手首がほぼ直線状に並ぶため反動を肩から腕全体で受け止めることができる。原理的にはVectorとほぼ同じだが、口径の違いもありはるかにシンプルかつ軽量にまとまっている。ただし実際の効果のほどは疑問が残るという点でも同様と言える。
• こうして完成した本銃は主に法執行機関や軍用車両の運転手や事務など後方勤務の軍人の護身用として売り込まれたが、独特の操作性や外見の奇抜さ、そして何より先発のMP5が市場を席捲しSMGの在り方を根本的に変えてしまったためセールスは振るわなかった。
  それどころ会社の倉庫から盗まれた本銃が犯罪に使用されるなどロシア系犯罪者集団に好まれたことでタンペレーンアセパヤ社は大きな非難を受け、多額の負債を抱えたまま倒産の憂き目にあうこととなる。その生産数は400丁前後と言われており、民間向けのセミオートモデルを含めてもかなり希少な銃だが、その視覚的特徴から知名度だけは高い。

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