ビグネロン M2

• 第二次世界大戦直後にナチスドイツに侵攻されたベルギーは連合軍からの援助物資によって戦後再軍備を果たしたが、
  それらは戦時の粗末なつくりのものが多く、使用弾薬やマガジンも統一されていない事から運用に支障をきたしていた。
  • もとより銃器開発の名門FN社を抱えるベルギーは、これらの問題を解決すべく国産サブマシンガンのコンペを行い、FN社の各種試作や実績あるステンの改良型を抑えて採用されたのは実務経験豊富なヴィニュロン元大佐の提出したもので、これがVigneron M1として採用された。
• M1の生産数は2万丁とも9万丁ともいわれるが正確な数は分かっておらず、多くがM2仕様に改良され刻印が打ち直されている。
  これが完成後なのか部品状態なのかもわかっていないが、その後もM2の製造は続けられ、数十万丁を超えるロングセラーとなった。
• M1とM2の違いはフロントサイトの両サイドにガードを設け、リアサイトもピープサイト(覗き穴)方式からノッチ(切り欠き)式に、ダストカバーがバネ式になるなどの小改良のみで基本設計は同一である。
• 動作機構はシンプルブローバック・オープンボルトで、銃身を除くほとんどのパーツがプレス成型、グリップフレームはプラスチック製である。
  使用弾薬は9mmパラベラムだが、マガジンはダブルカラム・シングルフィードで、ステンともMP38/40とも互換性がない独自のものとなっている。
• セレクターは左側面のトリガー横にあり親指で操作でき、フルオートモード時もトリガーを強く握りこまないとセミオートになる。またグリップセイフティが組み込まれており、ワイヤーなどでトリガーだけを引いても発砲しない。
• 第二世代サブマシンガンは量産性とコストダウンを主眼に置いたものが多いが、本銃は冷却フィンのついた300mmを超える長い銃身や、連射時に往復せず邪魔になりにくい独立式のチャージングハンドル、銃身先端にはトンプソンの軍用モデルではコストダウンのため廃止されたコンペンセイターなど比較的リッチな機能を備えている。
  • 一方でストックはワイヤー式のチープなもので、マガジンもフルロードすると給弾不良やスプリングの早期劣化を引き起こすため、28発程度に抑えることが推奨された。トリガーメカニズムも賛否が分かれるところである。
  • 変わったところでは銃身が簡単に交換可能なのだが、上下反対に取り付けることが出来るという不具合があり、この問題は最後まで解決されることがなかった。
• コンゴ動乱などで実戦を経験しその能力をいかんなく発揮したが、大量に投入されたこともあって鹵獲されたものも多く、現在流通するものもほとんどがその再鹵獲である。
  アルジェリアやルクセンブルク、ポルトガルなどでも採用されたが、一方でIRAなどのテロ組織の手にも渡り被害を発生させた。
  • 長くベルギー国防の任にありFN-FALより長命であったが、近年はP90などの最新鋭PDW等にその座を譲って徐々に退役している。

【過去ログ】