FF12の漫画版。全5巻。
作者は当時新人だった天羽銀(あもう ぎん)で、氏の初連載作である。
ガンガンパワード2006年8月号~2009年4月号に連載された後、ガンガンONLINEに移籍し、2009年4月~6月の掲載をもって終了。
戦艦リヴァイアサン脱出までを描いているが、残念ながら、最後は完全にストーリーの途中で打ち切りとなっている。
ゲーム版のリアルなキャラグラフィックと比べると、線の少ないマンガ的な作画である。
アクションシーンで何が起こっているかわかりにくかったり、時折作画が崩れていたりと、やや洗練されていない部分が目立つのは欠点。
全体的にやりとりが簡潔で洋画のようなゲーム版と比べると、少年漫画らしい熱い展開やギャグが盛り込まれた明るい作風である。
その一方で、FF12の特徴である、権謀術数渦巻く重厚な政治劇としての一面も持ち味として入っている。
ゲーム版のストーリーを忠実になぞるような漫画化ではなく、大筋は同じながらも様々な改変がある。
ラスラとアーシェの馴れ初めや、ラスラが命を落とすナルビナの闘いの様子など、ゲームの内容を補完する本作独自のエピソードも多く盛り込まれている。
ゲームのようにレベルアップという形でわかりやすく成長を描けないぶん、未熟だったヴァンが少しづつ強くなっていく成長物語としての側面が強くある。
ラバナスタ王宮潜入の時点でヴァンがヴェインと対峙する場面があり、ヴァンの宿命の敵として序盤から意識されている。圧倒的な実力を持つヴェインに勇気を出して立ち向かうも及ばないヴァンの姿が描かれており、順当に連載が続いていれば、最終的にヴァンがヴェインに打ち勝つ結末との対比となるシーンだったのだろう。
ウォースラがいかに「裏切り」に至ったかを詳細に描いているのも特徴である。ビュエルバで別れた後、大砂海で再会するまでの間に翻意したことになっている。
解放軍内部の人心は一枚岩ではなく、戦火を拡大するよりヴェインと交渉して帝国の支配下で安穏な暮らしを確保しようとするグループや、ギースに内通して見返りを得ようとする下衆まで巣食っている状態。帝国と抗戦する立場のウォースラは内通者たちと対立するが、逆に裏切りものとして陥れられ孤立、解放軍の実態に諦観したウォースラが、接触してきたギースの誘いで懐柔されてしまうという流れになっている。
(ゲーム未プレイで読むという人は少ないだろうが)基本的には、ゲームをプレイしたことのある人向けであり、こうしたゲームとの違い・作者による「再解釈」をアレンジとして楽しむ内容である。
- ちなみに、アーシェのバルフレアへの恋慕は最初からはっきりと示されている。
パンネロのヴァンへの想いも強めに描かれており、ヴァンを心配して泣いたりとやや幼い感じ。
ちなみにバッガモナンのセリフは「ン」表記になっていない。
作者いわく、この漫画のポジションは「三国志で言うと演義」らしい。
最終回のリヴァイアサン脱出では、アーシェがベリアスを召喚して帝国兵を圧倒するも、副作用で右腕が異形化してちぎれるというショッキングかつ非常に続きが気になるところで終わっていた。
FF12というビッグタイトルに比して、この漫画版は今日ではマイナーな作品となっている。
特に5巻は発行部数も少ないのか、中古市場でもあまり出回らないようだ。
興味を持って読もうと思っても、全巻入手するのは今となってはハードルが高いかもしれない。
- 2000年代から営業している規模が大きめな漫画喫茶やネットカフェなら所蔵している場合がある。どんなものか読んでみたいなら、漫画喫茶などから探すのが手軽かも。