バレンタインアドベンチャー

「あれと、これとぉーっ……なあキュウマくん、うちのオタクくんたち、これ喜んでくれるかなぁ？」
「わぁっ、予算オーバーっす、アキハ先輩……あ、こっちのボール型チョコはどうすか、たくさん入ってるっすよ！」
地元青年消防団所属のアキハゴンゲン、名門スポーツ校に通う１年生リリーフのキュウマ。
共に「火消し」だからだろうか、学園の違う２人だがよく同じ悩みを共有したりする。
そして、そんな顔の広い２人だから、このバレンタインでチョコレートを配る相手は学内外に山ほど居るのだ。
値段と質の両立を求め様々な店を渡り歩いた次に、背伸びしてやってきたのは渋谷の高級チョコレート店。
数多くの友人知人の顔を思い浮かべながら、あれでもないこれでもないと楽しそうに頭をひねる。
友人たちの笑顔を思い浮かべ、次々にチョコを選ぶアキハに対し、吟味熟考を続けるキュウマ。
アキハの軽いフットワークと行動力に、キュウマの気遣いと後輩力があれば鬼に金棒に違いない。
そうして見つけた逸品を、日頃の御礼として、友情として敬意としてたくさん配って回ることだろう。
だが、そんな２人へのお返しがホワイトデーに押し寄せて、大炎上の火事場にならないことを今は祈ろう。