ウンパスのGoTY2023

Last-modified: 2023-12-24 (日) 20:10:10

ウンパスのゲームアワード2023

■バッカニヤ

突然だが、「鋼鉄の咆哮」というゲームを御存じだろうか?
第二次世界大戦期の艦艇を中心に、自分で設計した艦船を操艦しながら戦うアクションゲームだ。
残念ながらシリーズとしては2009年の鋼鉄の咆哮ウォーシップガンナー2ポータブルで止まっており、いわゆる死んだシリーズの一つだ。
で、本題であるバッカニヤに話を移すと、本作を一言で表せば「ジェネリック鋼鉄の咆哮」である。

艦艇のデザインは帆船になっているが、「自分で設計した船を自分で動かして敵艦隊を蹴散らしていく」という基本路線は鋼鉄の咆哮と同じ路を歩んでいる。
設計の面では船体に応じたスロットに武器を載せていくスタイルで、鋼鉄の咆哮のHLGシステムより後退していたが、
操船の感覚やオートの砲撃を効率よく当てるために巧みな操船が必要なゲームデザインは鋼鉄の咆哮を大いに参考にしていると思われる。

あまり鋼鉄の咆哮の話ばかりするのも未練ではあるが、しかし本作は本作ならではの魅力が詰まっていたのも事実だ。
船長はかわいい人間の三姉妹だが、船員はすべて猫の獣人であり、猫は基本的に不死身だがプレイヤーの船が被弾すると猫が海に投げ出されてしまう。
投げ出された猫は悲しそうな声で「ニャーニャー」泣いていて不憫かわいいが、船員がいなくなると船員を配置している武器や機関の性能が落ちるのでプレイヤーとしても必死になって救助しなければならない。猫を救助しつつ、敵に砲撃を当てるために適切な位置取りを行い、さらなる被弾を防ぐために回避運動を取る。操船がいかに重要か、これでわかってもらえるだろうか。
また、この猫たちは一人一人(一匹一匹)にステータスだけでなく見た目や性格に個性があるため自然と愛着もわくようになっている。
そこのデザインが秀逸で、これは本作ならではの魅力の一つだった。

しかしながら2023年に新規IPのゲームという「そこまで予算がかけられない」事情がいくつか目につくのも事実だ。
艦船は基本的にバランス型、速力重視型、重装甲型の三種でゲームの進行状況にあわせて耐久やスロット数が増えた船体が売りに出されるものの、デザインはその三系統の延長戦でしかなく、また武装の種類もそれほど多いわけではない。
また基本的に海戦がメインなのでステージに代わり映えが少ないように見えるのも欠点だったかもしれない(これはどちらかというと海戦ゲーム全般の課題でもあるが……)。
やはり艦船や装備のデザインや種類は、もう少し増やしてほしかったのが正直な所だ。
しかし足りない予算の中でいいものを作ろうとする熱意は確かにあったと感じられたので、最終的に買ってよかったと思えるゲームだった。シナリオが意外と凝ってて惹きこまれるタイプだったし。
続編が出るならぜひ期待したいところである。

■ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム

自由の満漢全席

今年の期待作の大本命。ニンテンドースイッチのロンチタイトルとして6年前に発売された「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド(以降BoW)」の続編。
まずウンパスのBoW評に触れておくと、「ニンテンドースイッチをけん引する役目を十全に果たすどころかオープンワールドゲームの進化に対する明確なマイルストーンになった歴史的な大作」となるだろう。
BoWは並のオープンワールドゲームではバグの温床になるからやらない壁のぼりやパラセール、ビタロックの要素を盛り込みながら破綻することなく、それでいてプレイヤーの想像力があればどこまでも遊ぶことができる恐ろしい作品だった。
その正統続編となれば期待も大きいが、不安も大きくなる。これは昨年のモンハンライズサンブレイクでも述べたが、「メーカーが考えるゲームの面白さと、プレイヤーが好むゲームの面白さが一致するか」という話である。
それで結論から言うと、「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム(ToK)」はBoWの面白かったポイントをさらに拡大解釈し、より自由で想像力に任せた面白さを持った二度目の歴史的な大作となった。

本作で追加されたウルトラハンドによるクリエイティブ要素。これによってプレイヤーは広大なハイラルの大地を走る車も、ハイラルの空を飛ぶ翼も、強大な敵を撃ち倒す戦車も、何でも作れるようになったのだ。
このウルトラハンドとオープンワールドゲームとの相性が抜群によい。「自由度の高い世界を巡る旅」が根底にあるオープンワールドゲームを、自由に作成した乗り物で旅する体験は最高の快楽だといえた。
しかし本作のアイディアを他社が真似しようとしてもどこかで破綻をきたしていただろうことは想像に難くない。
そういう意味で本作は歴史に名を残す技術上のマイルストーンとして立派な一作であったと言える。

今年はこのゼルダToKといろんな意味で対になるオープンワールドゲームが出ただけに、このゼルダToKの成功は強烈な体験であった。

■世界樹の迷宮1~3HDリマスター

長き胎動の果て

ニンテンドーDS、3DSは携帯機でありながら二つの画面を持つハードであった。その二画面構成をフルに生かした3DダンジョンRPGが世界樹の迷宮シリーズであった。
同シリーズは上画面で一般的な3DダンジョンRPGの画面を、下画面で地図を表示し、プレイヤーは下画面で地図を書きながらダンジョンの攻略を進めていくという、かつてのWizシリーズがゲーム画面と(プレイヤーが自前で用意したw)方眼紙でやっていたことを一つのゲームとして束ねることに成功した快作であった。
しかし時は流れてDSも3DSも廃れて古いものになり、世はニンテンドースイッチに移り変わっていった。ニンテンドースイッチは知っての通り、携帯機と据置機の両方の性質を持つハードであるが、画面は一つしか持たないハードであった。
そんな中、世界樹の新作発表として「SQ、胎動」という動画が流れたのが2018年7月のことだった。
だが続報の一つもなく、シリーズファンの間でも「あの胎動は想像妊娠だったのかな」と冗談めいて流されていた頃、突如としてニンテンドースイッチとSTEAMを舞台としてDS時代の世界樹の迷宮のHDリマスターが発表されたのである。
新作でなかったことは残念だが、しかしてDS時代の三作は2023年にもなるとプレイすることが難しくなってきていたのもまた事実。ボウケンシャーは再び迷宮に挑めることに色めきたったのだった。

というわけで基本的に本作はDSで発売された世界樹の迷宮1~3のリマスター作品である。
旧作の辛口難易度はそのまま味わうこともできるし、逆に最近のユーザーに向けた難易度の低下版も選択することができる(当時の難易度が現在の最高難易度扱いなのはさすがに苦笑いしたが)。
しかしここで取り上げるのはニンテンドースイッチやPCに適応した新しい地図作成UIであろう。
従来、下画面という別画面で書いていた地図は画面を左右で割り、右半分に地図を書くスペースを確保することで一画面化に成功。これによって世界樹の迷宮は現在のハードで問題なく蘇ることができた。
こうなると「胎動止まり」だった新作が気になるところなのでアトラスが新情報を出してくるのをまた待ち続けることにしよう。待つ間は世界樹の迷宮のHDリマスターを遊び続ければいいのだから。

■ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON

10年ぶりの奇祭

ARMORED COREシリーズ(以降ACシリーズ)は10年前までは頻繁に出ていたIPだった。
しかし10年前のARMORED CORE VERDICT DAYを最後にシリーズの血脈はプツリと途絶え、その間に発売されたダークソウルシリーズは「ソウルライク」と呼ばれるほどの多くの亜種を生み出すほどの一大ヒット作になっていた。
会社こそ健在であったが、ACシリーズは確かに死んでいたのである。

そんな中、唐突に発表されたのが本作、AC6である。
遠い宇宙のかなたにある惑星ルビコンを舞台に、ACたちはいつもの楽しいドンパチを繰り広げるのである。
操作性は3までの系列からも4、5系列からも外れた独自のものになっているが、高速機動が可能な巨大ロボであるACを自在にビュンビュン動かすという一点において過去最高の操作性を誇っており、アセンも(本音を言うともう少し種類が欲しかったが)それなりに豊富で、難易度も過去作よりはるかに適切であったこともあってか、このかつては寒村の奇祭であったACが全世界的に広がっていくことになった。
プレイヤーだけでなく非プレイヤーもまきこんで生み出されていった無数の実在しないミームをXで見ていた者も多いだろう。
それだけの熱量があるよいアクションゲームとしてACは帰ってきてくれたのだ。

となると今後の課題としては「シリーズの復活」を掲げたAC6の、次のACであろう。
長らく途絶えていた(熱心なファンを抱える)IPが復活すると、その復活劇で話題になるが次回作以降、頻繁に作品が出るようになると逆に盛り下がっていくこともある。事実、メタルマックスはその轍を踏んでいった。
AC6を見る限りだと次のACのクオリティに不安はないが、「次の奇祭」が今回と同じだけの規模となるかはもはや我々古参のファンだけでなく、新参のファンがどれだけ定着してくれるかという話になるのだ。

■Star field

広大で不自由な宇宙

The Elder ScrollsシリーズやFalloutシリーズでオープンワールドゲームの第一人者であるベセスダが新たに立ち上げたオープンワールドゲームのIPが本作である。
Falloutシリーズで培った銃火器や拠点構築を主にしたオープンワールドゲームを、レイアウトから装備だけでなく内部の間取りまで自由に作ることができる宇宙船に乗りながら広大な宇宙を冒険できるのだ。個人的にはこの作品が今年の大本命になるのではないかと思っていた。
しかしながらいざプレイしてみると、確かに惑星内を探索し、拠点を構築することは楽しい。宇宙船を自分でデザインし、それに乗り込んで敵艦隊と艦隊戦を行うのもすごく楽しい。だが気付いてしまうのだ。この楽しさがそれぞれ独立したもので、一つのゲームになっていないことに。
Starfieldの前に発売されていたゼルダToKが一つのゲーム内で冒険と創作が両立できていただけにこのゲームデザインの独立性は余計に際立ってしまったように思う。
宇宙を舞台にしたゲームなら、宇宙船に乗って星々の海を渡り、星に侵入してからも宇宙船のまま大気圏内を飛行し、邪魔な原生生物を見れば爆撃の一つでもできるようにしてほしかった。現実のStarfieldでは「宇宙船に乗って星々の海を渡る」ことと「星に着陸した後は徒歩で探索」とが二つの独立したゲームになってしまっていたのである。(なお技術的な難しさもあるかもしれないが、No Man's skyという前例があるのでできないわけでもないし、ベセスダもそれくらい知っているはずだろう)

人によってはStarfield世界の住人が「お利口さんすぎる」こともマイナスポイントにあげられていたが、まぁ、ポストアポカリプス世界のFalloutのようなヒャッハーモヒカンがStarfieldの世界観にあうかと言われると、それはそれでNoなので個人的にはそこは別にいいだろって気がするがw

なんにせよ広大な宇宙を舞台にしたゲームなのだが、ゲーム性がイマイチ混ざり切っていないためにともすれば不満が目立ってしまいがちな本作だが、しかし個々の要素では非常に光るものを持っているのも事実だ。
せめて惑星内での移動を容易にするビークルの要素とか追加したDLCでも出してくれれば、(可能なら宇宙船で惑星内を飛行させてくれればw)大いに化ける可能性は秘めている。なのでStarfield2が出れば解決できるかもしれないが、それはおそらく10年近く後のことになるのだろうか……

総評

振り返ってみて、2023年は非常にゲームが豊作な年であったと思う。
今回の評論に含めなかったが、ストリートファイター6やバルダーズゲート3、スイカゲーム(これは発売自体はもっと前なのだがw)など、大粒小粒問わずによいゲームが発売されたり話題になった一年でした。
最近はFF14にも手を出してしまったので今10年分のFF14を数ヵ月で掻きこんでいるのでそろそろ飽食でゲボを吐きそうなのですが、ゲームは本当に楽しくて熱くなれるものです。ノー・ゲーム ノー・ライフです。
来年以降もイカよろの皆様と楽しいゲームを遊べたら幸いです。本年もお世話になりました。来年もよろしくお願いいたします。

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