報告集・特設記事“前”

Last-modified: 2015-07-24 (金) 18:59:20

以下は特設記事“前半部”となります。
記事No.1~7をお探しの場合は、こちらへ、
記事No.8~10をお探しの場合はこちらへ、
記事No.11以降をお探しの場合はこちらへどうぞ

 

 
記事No.x:最初の時間犯罪と、その派生事象に関する詳細考察

最初の時間犯罪と、その派生事象に関する詳細考察

 

仮説提示・参考図作成・監修:10-00366-01:あんぐら2
文章編纂   :42-00537-01:吾妻 勲

 

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前提

前提:

A.“第○世界”という世界番号による世界の呼称について

現在、無名世界観における複数世界を呼称する際に一般化されたこの名称ですが、
状況によって“属する物理域であったり“当初発見された順序に基づく世界”であったりと、
揺らぎが生じている事が予測されています。

 

その為、黒天の羅針盤においては、
“各世界が、固定された物理域を移動する”モデルを仮定し、
従来の世界番号制に基づいた基幹技術が稼働する物理域を“第1~7物理域”と呼称、
それぞれの世界を“プロダクトネーム”によって呼称致します。

 

また、それらの世界は属する物理域の影響を受け、基幹技術の変動が起きているものと仮定されます。
(註1)

 

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物理域と基幹技術:

・第1物理域=対話
・第2物理域=歌
・第3物理域=微小機械
・第4物理域=精霊回路
・第5物理域=生体化学
・第6物理域=機械工学
・第7物理域=情報通信(のようなもの)

 

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プロダクトネーム:

・サイレントオデッセイ  →関連作品:不明。
・ダンスドール      →関連作品:不明。
・ハートオブハイドロゲン →関連作品:水素の心臓シリーズ。
・エレメンタルギアボルト →関連作品:幻世虚構・精霊機導弾
・ガンパレード      →関連作品:ガンパレード・マーチ
・ゴージャスタンゴ    →関連作品:式神の城、絢爛舞踏祭、海ラヴ
・アイドレス       →関連作品:電網適応アイドレス

 

(注:関連作品は、黒天の羅針盤の検証によって、確実性ありと認められた物を記載しています)

 

例.第5物理域ガンパレード、第6物理域絢爛世界、等。

 

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B.ワールドタイムゲート(以下、WTG)の基本構造について

WTGとは、無名世界観が有する世界間の情報補完機能を稼働させるものです。
黒天の羅針盤においては、これは各物理域を固定的に接続しているものとして仮定したモデルによって考察を進めます。

 

また、この記事においては、いくつかのWTGが出現しますが、
その内、構造が複雑なアポロニア、ウスタリ両WTGについて、
想定される基本的な構造を図示致します。

 

アポロニア・WTG
アポロニアWTG.jpg

ウスタリ・WTG
ウスタリWTG.jpg

 

これらのWTGは複数世界を結ぶ事が示唆されており、
世界移動者の動向を考察する上で重要なポイントとなる事が考えられます。

 

C.最初の時間犯罪について

黒天の羅針盤において“仮説・時間犯罪の起点について”という記事にて報告致しました、
“喜界島観測部隊”における時間犯罪を最初の時間犯罪として検証を進めます。

 

また、同記事において提示致しました現実における時系列について、
現実の時系列においては歴史改変が発生していない”事を、
同様に踏襲するものと致します。

 

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以上3点を前提として踏まえ、“最初の時間犯罪”を派生事象も含めて検証を行い、
どのような構造によって、一連の事態が形成されたのかを解題します。

 

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1.第1期(精霊機導弾事件)

/=1.第1期(精霊機導弾事件)=/

現実の時系列において、無名世界観にまつわる一般公開された最初の事例となるのが、
“精霊機導弾事件”に範を取った、
“幻世虚構・精霊機導弾”(1997年12月11日リリース)です。

 

そして、その“幻世虚構・精霊機導弾”の開発時期、
即ち“精霊機導弾事件”が進行していた時期と同時期に企画~開発が進められていたとされるのが、
“南の島のガンパレード”(1995年7月頃?企画開始~1996年7月開発開始)です。

 

現実での時系列は改ざんされておらず、
無名世界観での事象は現実の時系列に順じて発生しているとの公式回答(記事参照)
が存在する事から時期的に、

 

“精霊機導弾事件”(於、エレメンタルギアボルト)
“喜界島観測部隊”(於、ガンパレード)

 

この二つの事象は、ほぼ同時期、並列的に発生していたものであると考えられます。
また、これら事象の発生地点となった両世界は、
二重世界とも言われるように、世界間距離が極めて近いという事
を合わせて付記しておきます。

 

但し、現時点において“喜界島観測部隊”に関する公式資料は、
“ガンパレード・オーケストラ青の章”に引き継がれた物以外に関して公開されて居らず、
周辺事象の検証が困難である為、
当記事は“精霊機導弾事件”より周辺事象へのアプローチを行います。

 

/1-1.田神レポート/

“精霊機導弾事件”に関する公式資料の内、
まず着目するものが通称“田神レポート”と呼ばれる資料です。

 

これは、正しくは“第5世界への介入に関するレポート”と銘打たれ、
世界調査局の情報武官であったS.TAGAMIが“精霊機導弾事件”についての仔細を報告する物であり、
同事件終結後、ある期間を経て聖銃Np-16“セラフ”と共に完全なる青の下へ送還され、
後にユーリ・A・田神のセプテントリオン造反、ガンパレード事件へと繋がる切っ掛けとされます。

 

このレポートにおける問題となるのが、表題にもある“第5世界”の記述です。

 

S.TAGAMIが派遣された世界は、エレメンタルギアボルト(以下、EGB)であり、
レポートの内容も“精霊機導弾事件”の経緯を示す物となっています。

 

しかし、ガンパレード事件当時に一般的に認知されていた“第5世界”とは、
ガンパレードを指すとされており、EGBは“第4世界”とされていました。
この配置を是とするのであれば、レポートには“第4世界”と記述されなければなりません。

 

仮に、S.TAGAMIが“冒頭の一文のみガンパレードの事態を予見した”として考えた場合では、
他ならぬ介入を推し進めんとするセプテントリオンに属し、
他ならぬその計画の責任者であるユーリ・A・田神がこの記述を見ると、
この一文はただの既成事実としてしか映りようが無いものとなります。
文書としての整合性を失ってまで記す内容としては、意味が薄いと言わざるを得ません。

 

よって、このレポートは全編EGBで発生した精霊機導弾事件の顛末を記したものであり、
そこに一切の矛盾、誤植は無いものと仮定します。

 

即ち、S.TAGAMIの主観、或いはレポートが報告先へ到達した時点で、
EGBが第5世界に位置する=第5物理域EGBである事
を踏まえたレポートであった事が想定されます。
このレポートが報告、つまり誰かへ伝達する事が前提であり、
聖銃Np-16“セラフ”に添えられていた事を考慮すると、
セラフ”の返還先である完全なる青へ正確な報告を期する為に、
到達時点での情報を見越して記載した
と想定されます。

 

これにより、田神レポート到着時点(=精霊機導弾エンディング時点)では、
第4世界≠EGB=第5世界
、という図式が構築されます。

 

/1-2.聖銃の帰還機能とWTG/

次に田神レポートを考察する上で重要となるのが、
聖銃Np-16“セラフ”の帰還機能を用いて完全なる青の下へレポートを送付した、という手法です。

 

聖銃は、幾つかある基本機能の内、その一つとして“帰還機能”を持つとされます。
この機能は、聖銃“元々製造された場所=第7物理域(世界)”へ移動しようとする性質を指すものと考えられています。

 

故に、S.TAGAMIがこの機能を利用して完全なる青聖銃を届けるには、

 

1.情報補完機能が損なわれていないWTGの近辺に聖銃が存在する。
2.EGBから第7物理域へ繋がるWTGが確保されている。
3.完全なる青が存在する世界が、第7物理域に存在している。

 

以上の3点をクリアするタイミングである事が、必要条件として考えられます。

 

田神レポートから読みとられるWTGとしては、ウスタリ・WTGが挙げられますが、
これは第3、4、5、7物理域を結ぶWTGとされ、
条件1、2を満たし得るWTGである事が伺えます。

 

しかし、田神レポートにも記述されているように、
ウスタリ・WTGはレポート作成時点において異変(消失の前触れか)が確認されており、
WTG通過が不可能な状況に陥ったと見られます。

 

精霊機導弾事件時系列上のEGBにおいては、ウスタリ他、
サンカウ、ラーウ、アポロニア、バハネラ、の各WTGが存在した事が予見されていますが、
S.TAGAMIは同事件中、共和国に駐留していたとされ、WTGが存在した地理的状況を鑑みると、
S.TAGAMI自身がそれらを使用する事は叶わなかったとされます。

 

(例.ラーウWTG=第6物理域では、地球と月の間
   サンカウ・WTG=第5物理域では、地球衛星軌道上
   アポロニアWTG=第5物理域では富士山頂。第6物理域は通過していないと見られる。
   ウスタリ・WTG=小王国=第5物理域熊本。
   GT・式神世界とクロス中の1996年時点では奈良。第7物理域では京都。
   貫通型である為、各世界の物理域変動に伴うズレを考慮する必要がある。
   バハネラWTG=大阪…関西圏である事から、小王国近辺と思われる)


 

故に、S.TAGAMIはコールドスリープ処理による自己の凍結保存を施し、
聖銃Np-16“セラフ”の帰還機能が作動する事を見越してレポートを添付した、
という行動を取った事が、レポートの記述から伺えます。

 

ここまでの流れにおいて、今一度問題として浮上するのが、
“第4世界≠EGB=第5世界(田神レポート到達=精霊機導弾ED時点)”という図式です。

 

先に述べたように、聖銃の帰還機能は“第7物理域(世界)”に向けて移動を行うものであると考えられています。
よって田神レポートが予見する、EGBが第5物理域に差し掛かる時点で、
聖銃の帰還機能が作動、再活性したウスタリ・WTGによって第7物理域へと帰還した、
という順序が考えられます。

 

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ここで、従来の説である“EGB=第4→第5物理域(世界)”を検証すると、

 

ウスタリ・WTGは第3、4、5、7物理域を結ぶWTGである。”
聖銃の帰還機能は、第7物理域へ向けて移動する機能である”

 

…という2つの説から少なくとも聖銃の帰還機能は、
“精霊機導弾事件終了直後”から、それ程時間を置かずに作動していなければなりません。
第4→第5への物理域変動が起きても、ウスタリ・WTGの接続があり、
聖銃の帰還機能が作動する可能性が認められる為です。

 

しかし、実際には帰還機能が作動した結果である田神レポートの到達にはかなりの時間を経たとされ、
S.TAGAMIも、閉鎖されたEGBに300余年に渡って捕らわれたとされます。

 

また、芝村氏の公式回答によると、
EGBから世界移動したベルカインが拾われた、とされる世界が、
現実での時系列に順じて、第7→第5世界へと変遷を遂げています(註2)
これは、物理域が番号の小さい順に変遷すると考察する従来の検証とは一致しません。

 

加えて、ガンパレード事件以降、儀式魔術絢爛舞踏祭において否定されるまで、
第7世界現実とされた図式においても、
ベルカイン現実に漂着した”という事実が確認されていない事から、
従来の観点では世界番号とプロダクトネームが一致していない事を示す傍証となります。

 

故に、公式編纂資料において散見される世界番号表記の揺らぎを説明するに当たって、
従来検証が行われてきた“EGB=第4→第5物理域(世界)”説は、
起きた事象に対する説明が困難であると言えます。

 

/*/

その上で、聖銃の帰還機能が精霊機導弾事件直後、
“何故即座に作動しなかったか”、という点が問題となります。

 

前述のように、聖銃の帰還機能とは“第7物理域”へ向けて移動する機能であるとされます。
よって、EGBが第4や第5物理域であれば、F任務部隊が撤退出来た事実を勘案し、
精霊機導弾事件終結直後にレポートが送付される事も可能であったと考えられます。

 

しかし、実際にはレポートにも記述されているように、
EGBが第5物理域(世界)へ到達している時期を待つ必要があった事が示唆されています。

 

この不可解な状況を説明する仮説として、
当記事では前提とした“固定された物理域”と“その中を移動する各世界”に加え、
各世界が物理域を移動する順序を“第7→第6→…第1→第7→第6…”という、
“降順で移動する”モデルを提唱、以降の文章において、これを適用した考察を行います。

 

このモデルを踏まえ、聖銃の帰還機能が精霊機導弾事件終結後すぐに作動しなかった事例に対し、
EGBは精霊機導弾事件直後、第7物理域に存在した事を仮定します。

 

これをEGB世界“精霊機導弾事件”当時、
並びにガンパレード世界“喜界島観測部隊”の時点として、
“最初の時間犯罪”時系列の始点と定義致します。

 

時系列1.jpg

 

この状態であれば、聖銃は言わば“在るべき場所に存在している”状態となり、
帰還機能が動作しないと考えられます。

 

しかし、S.TAGAMIの置かれた場所はあくまで“第7物理域EGB”であり、
重世界である“第1物理域ガンパレード(第7側へ物理域シフト中)”において、
“南の島のガンパレード”を遂行中であると見られる完全なる青(=この時点のユーリ・A・田神
に聖銃“セラフ”を送付するには、
“第7物理域ガンパレード”へと物理域シフトを完了したタイミングで、
''第7物理域へ接続するWTGへ聖銃Np-16“セラフ”を送り込むのがベストであると考えられます。

 

しかし精霊機導弾事件後、大きくクローズアップされる問題となるのが、
事件の中心人物であり、EGB世界における巨大な可能性であったベルカインの“死=世界移動”です。
これは、精霊機導弾事件終局において、
ベルカインウスタリ・WTGの存在する宗教都市アルガロ付近へ落着する浮遊島に投げだされた、
との記述(註3)から、
この状況から間を置かず、ベルカインウスタリ・WTGを通過したと考えられます。

 

ベルカインが精霊機導弾事件後、他世界において小杉ヨーコという実子を設けたエピソードについて、
公式情報としてSSが公開されるなどの過去公開された情報から、
ベルカインの世界移動、及びその後の関連事象へ影響を及ぼした事については、
起こりえた事象であると確認されます。

 

よって第7世界にてある男がベルカインを拾った”という事象は、
精霊機導弾事件の終結直後、第7物理域ガンパレードにて、
完全なる青=A=ユーリ・A・田神ウスタリ・WTGよりベルカインを回収した
という構造であったと考えられます。

 

果たして、ベルカインという巨大な可能性を失ったEGB世界は、
小王国という一つの国家滅亡へと至り、
ウスタリ・WTG消失を始めとする急速な閉鎖状態へ向かった、とされます。

 

ここで、ウスタリ・WTGの構造が、
第3、第4、第5、第7物理域を接続するものである事を軸に考察を進めると、
第6物理域にウスタリ・WTGの接続が無い事が分かります。
即ち、EGBにおけるウスタリ・WTGの“消失”は、
一般論としては精霊機導弾事件期間にかけて、第7→第6へとEGBの物理域が変動した事による、
物理域変動影響の一環であると考えられます。

 

これはベルカインが精霊機導弾事件最終段階において使用した兵器・リフトラシールが、
後に第6物理域・ゴージャスタンゴ(式神世界)、月面上にて回収されようとした事例から、
リフトラシールは第6物理域上を漂流(サンカウ・WTGを通過したか)していたものと考えられ、
EGB世界の第7→第6物理域への移動を示唆する傍証となるものです。

 

時系列2.jpg
↓以下に変遷する↓
時系列3.jpg

 

しかし、WTGとは本来的に開放していない状態では待機状態にあるとされ、
“消失”という現象は“閉鎖”とは異なる意味合いで示される物であるとも考えられます。

 

また、このケースではS.TAGAMIが対応しきれなかったという状況、
重世界であるはずのガンパレード世界からも観測が不可能となった状況等を鑑みると、
ベルカインが世界移動した影響に伴い大きく世界軌道が変動した可能性等も合わせて考えられます。

 

ここで考えられるのが、ベルカイン自身がWTG保持者であった可能性です。
ベルカインは、時の“小王国”において、オード、スキカ、スルナカンという、
人種・文化の異なる多民族による社会を形成しようとし、
或いは機動歩兵という新型兵器の戦略的価値を大きく高め、
軍事構造を激変させたという歴史的に多大な影響を与えんとした人物です。
即ち、WTGが開放するだけの“可能性”には足ると考えられます。

 

また“ガンパレード・マーチ”の登場人物である“茜大介”は、
ベルカインの同一存在になれなかった”とされた他、
幻獣戦争における最大の反攻作戦とされる“茜作戦”を作戦参謀総長として立案、
“軍事的に”幻獣戦争の終結へと漕ぎ着けた、という歴史があったとされます。

 

よって、ベルカインは同一存在を形成し得るゲート所持者であったと仮定すると、
次のような観点が浮上します。


 

1.男子の本懐(2000年公開)までゲートには地名が冠せられ、動きが無いと思われていた。
S.TAGAMIを含む誰もが、ベルカインWTGに気付かない状況にあった。

 

2.WTGは、近隣に複数存在すると融合して一つになる性質がある。
→少なくともウスタリ・WTGはEGB世界、宗教都市アルガロに存在するとされ、仮にベルカインがゲート保持者になったとしても、その時点では見分けがつかなかった可能性がある。

 

3.世界移動者がゲートを保有していた場合、ゲートは消滅する。
ベルカインが移動した為にゲートによる補完を失った都市が壊滅した。or都市が崩壊する事によってゲートは失われた、といういずれの文脈でもゲート消失が説明可能である。

 

 

…以上3点を踏まえ、ベルカインがゲート保持者であったと考えると、次の流れが考えられます。

 

その場合、精霊機導弾事件の時期において小王国には、少なくともウスタリ・WTGと、
ベルカインの持つWTGが存在した事になります。

 

2.に示した通り、WTGは近隣に複数存在すると融合して一つになる性質を持つとされます。
これに基づくと、少なくとも精霊機導弾事件終局時、
ウスタリ・WTGベルカイン・WTG(仮称)は、融合して一つのWTGとなっていた
という事になります。

 

この状態で、ベルカインウスタリ・WTGを通過=ベルカイン・WTGの消失が発生します。

 

ベルカイン・WTGは、小王国という国家が軍事強国として堅固な国体を築き、
EGB世界において稀有(史上初?)な多民族・多文化国家を形成する、
ベルカインという可能性に対して開いていたと考えられます。

 

即ち、これが失われる事は小王国という国家の可能性が消失した事になり、
この時点から小王国は“歴史事象としての”滅亡へ至る事となります。

 

一方、田神レポートの記述によれば、S.TAGAMIは事件の事後処理として、
共和国が小王国へ侵攻する工作までを行い、その確認を以て任務の完了とする記述があります。
よって小王国の滅亡はS.TAGAMIが行っていた任務の範疇での行動”でもあった、と言えます。

 

レポートはその後、ウスタリ・WTGの異変とS.TAGAMIの帰還不能を告げています。
しかし、同地にてセプテントリオン側の工作を行っていた“F任務部隊”と呼称される部隊は、
撤退に成功しており、両者に何らかの隔たりがあると考えられます。

 

そこで考えられるのが、ウスタリ・WTGの消失とF任務部隊の撤退、
田神レポートの送付までの時間差と、それぞれが所在していたと見られる場所の差です。

 

即ち、小王国にてベルカインと接触、
精霊機導弾事件までの介入を行っていたセプテントリオンの部隊であるF任務部隊は、
小王国の近接地であるアルガロの地において、ウスタリ・WTGの動向を把握出来る状況にあり、
その変動をいち早く察知、撤退に移る事が出来たと考えられます。

 

一方、S.TAGAMIは、精霊機導弾事件中は共和国にあって工作活動を行い、
最終的に事件後、共和国を小王国へ侵攻させる工作までを以て、任務完了を宣言しています。
即ち、精霊機導弾事件終了後、一定の期間を置いて撤退行動へ移ったと考えられます。

 

ここで、ウスタリ・WTGベルカイン・WTG(仮称)の融合が問題となります。
S.TAGAMIは、精霊機導弾事件の計画として、共和国による小王国領の掌握、
もしくは破壊を画策していたと考えられます。

よって、共和国の小王国侵攻を以て任務完了とし、それに乗じてウスタリ・WTGを経由、
所定の世界へ脱出を図る計画であったと考えられます。

 

しかし、この事件はセプテントリオンの介入によって
ベルカインの可能性が開花、WTGを持つに至るという大変動を起こし、
最終的にはベルカインの死亡(世界移動)を以て、
ベルカイン・WTGと融合していたウスタリ・WTGが消失するという事態へ至ったと考えられます。

 

本来の計画では、帰還へ十分な時間を計画していたS.TAGAMIの目論見は、
これを原因に大きく外れ、結果として田神レポートという形での事態詳細の伝送、
及びS.TAGAMI自身は300余年に渡ってEGB世界へ閉ざされる結果を招いた、と考えられます。

 

このような現象を経て精霊機導弾事件は終結、EGBは第6物理域へと移動し、
焦点は次の舞台である第7物理域ガンパレードへと移行して行く事となります。

 

/*/

 
2.第2期(精霊機導弾事件後~“G”=ガンパレード事件)

/=2.第2期(精霊機導弾事件後~“G”=ガンパレード事件)=/

精霊機導弾事件を経て起こった事象としての内、
無名世界観内において、以後の事件へ大きな影響を与え得る、軸となる事象は、


 

A.ベルカインの世界移動
B.リフトラシールの漂流
C.聖銃Np-03a“天照”、Np-03b“月読”の移動
D.田神レポート、及び聖銃Np-16“セラフ”の帰着
E.S.TAGAMIの動向

 

(大よそ、発生した時系列順に列記)

 

…以上の5点であると考えられます。

 

また、精霊機導弾事件は実働分だけで2丁もの聖銃が投入された事例であり、
単一の組織から聖銃が供与された事例としては、
現在までの事例を俯瞰しても類を見ない、大規模な投入事例となっています。

 

聖銃による事象は、同じく聖銃を以て上書きする歴史改変でのみ改変可能である事、
聖銃移動体による破壊が小王国ほぼ全域に及んでおり、再改変は容易でない事、
(最低限、同時間軸に存在するS.TAGAMIを排除する必要性あり)
この2点を以て、精霊機導弾事件はほぼ固定化された事象であるとして、
上記5点を、精霊機導弾事件以降に影響を与え得る諸要素として定義します。

 

/2-1.“精霊機導弾事件”と“南の島のガンパレード”の接続/

 

以上の定義の内“幻世虚構 精霊機導弾”におけるエンディング、
即ち“田神レポート”の送付~完全なる青の受領に先んじる事象として、
A~Cの事象が発生した事と考えられます。

 

一方、第1物理域から第7物理域への移行時期にあるガンパレードにおいて、
ベルカインが“ある男”に拾われたという記録(註2)が公表されます。
ウスタリ・WTGの接続範囲から考えて、
ベルカインが拾われた時期はガンパレードが第7物理域に属していたであろう事は、
前述の定義に準じるものであります。

 

この時点では、ユーリ・A・田神が精霊機導弾事件とほぼ並行する形で、
“G”…南の島のガンパレード、或いは後のガンパレード事件へ至る事象を、
リアルタイムで進行させていたと考えられています(註4)

 

ここで問題となるのが、前提3として提示させて頂いた、
“最初の時間犯罪”に関する問題となります。

 

黒天の羅針盤においては、
これを“南の島のガンパレード”→“ガンパレード事件”へとすり替わる変遷である、
と提示させて頂きました。
時間犯罪の実行部分に関して参考記事の内容を簡略にまとめると、

 

“当初計画では南の島のガンパレードが、ガンパレード世界で予定された史実であった”
クーラ・ベルカルドの出現に伴い、竜計画の必要に駆られたセプテントリオンは、竜の製造拠点作成の為、九州本土を陥落寸前に追い込んだ”

 

…となります。

 

ここで、ガンパレード事件真の首謀者とも言えるクーラ・ベルカルドの存在が浮上します。

 

クーラ・ベルカルドとは、先の精霊機導弾事件において使用された聖銃・天照が、
聖銃移動体であったネルと、ベルカインの遺伝子から製造した不死のメンテナンサーであるとされます。
二つ名として風を追う者の王”、“偉大なる光の王”といった呼称を持ち、
男子の本懐であると同時に、

“複数の世界に同時に存在できる、本当の意味での神に近い存在”(石神堅臣氏談)
ともされる、S.TAGAMIと同等、或いはそれ以上の存在である事が示されています。

 

ガンパレード事件においては、EGB世界からの主戦派を束ねる存在として暗躍し、
EGB世界において強い影響力を持つシーナ(クローンとも)を旗印に、
幻獣(の一部?)を組織化してガンパレード世界へ侵攻したとされ、
銀環作戦等の資料において、その存在の片鱗をうかがい知る事が出来ます。

 

このように、ガンパレード事件において幻獣方の動向を一手に担っていた、
と言えるクーラ・ベルカルドですが、
問題はこの存在が“精霊機導弾事件の結末を前提としている”という点にあります。

 

前述の通り、クーラ・ベルカルドは聖銃・天照が、
ネルとベルカインの遺伝子から製造した存在とされます。
即ち、ここでの“不死のメンテナンサー”としてのクーラ・ベルカルドは、
聖銃・天照、ネル、ベルカインという3つの要素が一点に揃う“精霊機導弾事件”があって、
始めて存在が提起される事になります。

 

これは、逆説的に表現すると、
“精霊機導弾事件が確定、ベルカインが死亡(乃至、世界移動)する”という事象を以て、
クーラ・ベルカルドの存在が確定、
聖銃が持つ帰還機能の発露として第7物理域への帰還行動を開始する、となります。

 

これによって、ガンパレード世界において幻獣戦争が開始される下地が整う事となります。

 

/*/

一方、精霊機導弾事件の確定によってガンパレード事件に影響を及ぼすもう一つの要素が、
“聖銃・月読”の行方です。

 

月読はNp-03の片割れとして、精霊機導弾事件の顛末に関わり、
同事件末期にいずれかのWTGを通過、
最終的にサンカウ・WTGを通じてガンパレード世界へ漂着、
自己保存機能の発露として同地に存在した汎銀河大戦時の“RB(註5)の残骸を吸収した際に、
その“RB”内に存在した“何か(AZANTと目される)”を検知、
聖銃“本来の機能”の発動として、聖銃寄生体を中心に巨大な絶対物理防壁を展開し、
サンカウ・WTGを遮断すると共に、同WTGの可能性流出入を検知する状態に入ったのが、
ガンパレード事件における重要ファクター“黒い月”生成の顛末であるとされます。

 

ここで問題となるのが、“黒い月”が発現したとされる時期となります。

 

黒い月”は、ガンパレード世界1945年7月に発現したとされます。
これは“ガンパレード事件”の時期とされる同世界1999年と、54年の時差になります。
“南の島のガンパレード”が、どの時期に発生したか正式には定かではありませんが、
登場人物が“GPO青の章”に準じ、天文観測“部隊”という形で恐らく学兵と見られる事から、
ガンパレード世界において日本政府が学兵を採用した時期を鑑み、
時間軸としては“ガンパレード事件”に近いものであると仮定されます。

 

一見すると、奇妙な時系列となってしまう“精霊機導弾事件”と“南の島のガンパレード”について、ここで構造の整理を行います。

 

/*/

ここでまず対象となるのが“幻世虚構 精霊機導弾”において使用されている暦、
“クード歴”です。

 

正式には“クード標準歴”と呼ばれ、世界移動組織が伝統的に用いたとされる暦です。
しかし、世界を同じくする物語である“精霊機導弾ワールドガイダンス”に掲載された、
小説“群踏の肖像”においては“1996/6/14”という、
後に芝村氏の回答によって“この世界→第7世界のものである”とされる“日付”が掲載される等、
暦が統一されたものでない事から、
他世界に渡る事件の順序が正確に測り得ないものとなってしまっています。

 

よって、ここでは“発生した事象の繋がり”を元とした構造の整理を行います。

 

“精霊機導弾事件”と“南の島のガンパレード”を結び得るのが、
クーラ・ベルカルドによる西方世界侵攻”という、EGB世界における歴史事象となります。
これは、クード歴2766年に起きた事象であるとされます。

 

一方、ガンパレード世界においてこの歴史事象は、
黒い月の発現”及び“幻獣の侵攻開始”と置き換えられ、
同世界1945年7月に起きた事象であるとされます。

 

よって、これらの事象が同一であると仮定するならば、
“クード歴2766年=ガンパレード世界時間1945年”とする事が可能となります。

 

この一致するポイントから、演繹して他の歴史事象と比較を行います。

 

クーラ・ベルカルドの西方世界侵攻”:クード歴2766年
“精霊機導弾事件”         :クード歴2395年


 

この2つの歴史事象の時差は、およそ371年となり、
クーラ・ベルカルドから見て、ベルカインは371年前の人物となります。

 

これを、ガンパレード世界時間と当てはめます。

 

1945-371=1574

 

となり、ガンパレード世界においてベルカインが居た、
と考えられる時点は1574年という計算が成り立ちます。
(註6)

 

少なくとも“南の島のガンパレード(或いはガンパレード事件)”以前において、
ガンパレード世界は現実と似た歴史を辿っていたとされる事から、
現実の歴史を参考に1574年の事象を探ると、
日本において織田信長の活躍期である事が見て取られる他、
信長の弟にして芝村藩の藩祖、織田有楽斎長益(おだ・うらくさい・ながます)が、
尾張国知多郡に大草城を築城するといった事象で名前を記される頃とされます。

 

後のガンパレード世界においてセプテントリオンの出先機関となり、
大軍閥として世界の動向を担う芝村一族の祖となるルーツが、
この時点に集約していると言えます。

 

つまり、ユーリ・A・田神がこの時点に出向し、
何らかの操作を加えた結果がガンパレード世界における芝村一族(七家族)のルーツである、
という可能性が示唆される事となります。

 

以上の観点からの仮説として、黒天の羅針盤では、
“精霊機導弾事件後、ガンパレード世界1945年に黒い月が出現した”という事象について、
確認される歴史事象の順序を整理した結果、
単純同時系列上、問題無く発生し得る一連の事象であるとして、
これを定義として以降の考察に組み込む事が可能であるものとします。

 

/*/

かくして、Np-03b“月読”はサンカウ・WTGを通過、
黒い月”として“ガンパレード”に発現する事となりますが、
そこで問題となるのが、サンカウ・WTGの情報補完方向です。

 

サンカウ・WTGは、貫通型のWTGであると共に、
2つの情報補完方向を持つWTG(註7)とされます。

 

ここで、前項の精霊機導弾事件に関する考察から、
世界移動したベルカインが漂着した世界が“第7世界”とされた事から、
EGBが第6物理域へ、ガンパレードが“第7”物理域へ移動した言説が再度浮上します。
※再掲、図2
時系列2.jpg

 

即ち、Np-03b“月読”は、精霊機導弾事件後、
第6物理域へ移動したEGBより、帰還機能の発動によってサンカウ・WTGを通過、
“第7物理域ガンパレード”へ移動した事という考察が成り立ちます。

 

なお、別の可能性として挙げられるであろう、
サンカウ・WTGのもう一つの情報補完方向である、第7→第5物理域への移動”となりますが、
これは、前項において解説した“聖銃の帰還機能”から言って有り得ない事であり、
可能性としては否定されるものである事を付記致します。

 

かくして“第7物理域ガンパレード”1945年7月に“黒い月”が発現、
喜界島天文観測部隊が発足される状況=“南の島のガンパレード”が発生する状況へ至る事となります。

 

/2-2.“最初の時間犯罪”で何が起きたか/

 

参考質疑Q5を根拠に、現実の時系列に無名世界観からの干渉が無い事を前提とした上で、
ここまでの諸事象と、アルファ・システムが開発したゲームのタイトル、
そして筆者が身を置く現実の時系列と照らし合わせ整理すると、
以下のようになります。

 

 

・“群踏の肖像”~“精霊機導弾事件”…1996年前後。
・“南の島のガンパレード”…1996年7月開発開始。
・“幻世虚構 精霊機導弾”リリース…1997年12月11日。
・“高機動幻想ガンパレード・マーチ”リリース…2000年9月28日。

 

 

これを俯瞰すると、特に群踏の肖像”から“幻世虚構~”に至る期間が、
かなり狭い間隔で発生している事が確認されます。
現実には電源ゲームの開発プロジェクトが進行していた事を勘案すると、
これは非常に短いスパンにあったと言う事が出来るでしょう。

 

ここで浮上するのが、
“精霊機導弾事件前章”という題名を冠する“群踏の肖像と、
“幻世虚構 精霊機導弾”によって語られるエピソードの食い違いです。

 

群踏の肖像”、及びそれを元にしたと見られるアルファ・システム サーガP.106によると、
ベルカインがネルにペンダントを渡した際、シーナはその場に不在であった事が示唆されています。
一方“幻世虚構~”では、ベルカインの回想において、二人はその場に居た事が示唆されており、
微細な違いが発生している事が伺われます。

 

そしてこの差異が決定的なものとして表れるのが、2丁の聖銃Np-03“天照”と“月読”の行方です。

 

“精霊機導弾事件”において、聖銃移動体として選定されたのは、
ネルとシーナという二人の少女であり、この2名がそれぞれ“天照”と“月読”、
2丁の聖銃を使用した事は明確になっています。

 

しかし、この2名と2丁は“いずれがどちらの聖銃を使用したか”という問題について、
公式回答でも明確な物が示されておらず、
聖銃の色と名称が断片的に示されたに過ぎない状態となっていました。

 

これをまとめると、以下のようになります。

 

 

・Np-03a“天照”…日本の太陽神の名を冠したネルの聖銃。後にクーラ・ベルカルドを生む。
・Np-03b“月読”…日本の月神の名を冠したシーナ聖銃。後に黒い月の核となる。

 

(以上、アルファ・システム サーガ。主にP.111より)

 

・設定ではネルは蒼い聖銃
シーナは赤い聖銃

 

(以上、情報集積場「世界の謎」より、「天照」と「月読」の記事より。
同記事は“精霊機導弾ワールドガイダンス”の記述を参照、誤記でない事を確認済み)

 

>ネルとシーナ聖銃はどちらが天照でどちらが月読ですか?
(芝村氏回答)赤が太陽。青が月です。

 

(以上、精霊井戸端BBSより。括弧内は筆者による。現在ログ散逸の為、原典確認は不可能。
ウェブ上では同情報を扱う個人サイトを数件確認した為、確定情報として扱いました)

 

 

…以上を踏まえ、聖銃“Np-03”に関わる情報を再度整理します。

 

・Np-03a“天照”:色=赤:寄生体=シーナ(サーガではネル?)

・Np-03b“月読”:色=青:寄生体=ネル(サーガではシーナ?)

 

なお、資料はいずれも公式、乃至それに準ずるものであり、確度は高いものである事を前提とすると、
聖銃の寄生した人物が、資料によって食い違いを生じている=ある時点で何らかの改ざんが起こった、
と考える事が出来ます。

 

そして、これらの情報を示す一連の資料を時系列で整理すると、

 

 

精霊機導弾ワールドガイダンス(刊行:1997年12月)
・精霊機導弾BBS(初出不明。関連掲示板と共に、2002年に完全消去)
アルファ・システム サーガ(刊行:2004年1月26日)

 

 

以上のようになります。
これを俯瞰すると、精霊機導弾ワールドガイダンス、及び精霊機導弾BBSと、
アルファ・システム サーガの刊行時期には、
精霊機導弾BBS閉鎖から見てもおよそ2年の時間的隔たりが存在します。
問題は、アルファ・システム サーガが主張するのが、

 

天照はネルの聖銃クーラ・ベルカルドを生んだ”

月読シーナ聖銃黒い月の核になった”

 

という言説である事になります。
しかし、情報が提示された時期の近いワールドガイダンス及びBBSの情報だけを抽出すると、

 

“ネルの聖銃は青=月(月読)”

シーナの聖銃は赤=太陽(天照)”

 

これを“幻世虚構~”以後のシナリオが踏襲しているとすると、
“~サーガ”が語るクーラ・ベルカルドのルーツが歪んでいる事になります。

 

当記事は、この“クーラ・ベルカルドのルーツ改ざん”が、
“最初の時間犯罪”における改ざん事象であると共に、
アルファ・システム サーガ”に含まれるとされる改ざんの最重要目標が、
この項目に存在すると仮説を提示致します。

 

この観点に基づくと“クーラ・ベルカルド”を巡る事象に関して、幾つかの不可解な点が浮上します。

 

まず“最初の時間犯罪”は何故“クーラ・ベルカルド”に繋がる、
根本的な事象を抹消しなかったのかという点です。

 

クーラ・ベルカルド”は、ルーツ改ざんが試みられているように、
そのルーツが“ベルカインとネルの遺伝的実子”である、という事が判明しています。
つまり“最初の時間犯罪”に際して、実行者が本気でクーラ・ベルカルドの存在を否定するのなら、
ベルカイン、或いはネルの存在を抹消する等の方策によって可能である、という事が言えます。

 

それにも関わらず、実際の“最初の時間犯罪”では、
“ルーツ改ざん”という、存在抹消と比較すれば効果は限定的であり、
大変に回りくどいと言える方法が採用されています。

 

即ち“最初の時間犯罪”では、クーラ・ベルカルドの“ルーツ改ざん”が必要、
乃至その方法しか取れなかった、と考える事が出来ます。

 

理由の考察については後述(註8)としますが、
最善策を取る事が出来なかった故に、次善の策である“ルーツ改ざん”という方法によって、
クーラ・ベルカルド”という存在を掌握する行動に出たと考える事が出来ます。

 

しかし、この“クーラ・ベルカルドのルーツ”に関わる部分は、
結果として“時間犯罪によって改変可能な点”として残存する事になりました。
これは、再改変によって“最初の時間犯罪”が覆され得る可能性を内包する事となり、
“最初の時間犯罪”を行った側は、この点を防御する手段を講じる必要があったと考えられます。

 

即ち、この項において判明した“クーラ・ベルカルドのルーツ”に関わる欺瞞とは、
その防御工作の一環であると考えられ、そこから、その欺瞞を踏まえた状況から発生した
“ニーギ・ゴージャスブルーの誕生要因となった銀環作戦等は、
シーナによってクーラ・ベルカルドが語られる”という、クーラ・ベルカルドを巡る状況が、
一層複雑化させられる形での欺瞞が、その意図を問わずアルファシステムによって為された、
という構造になっていると考えられます。

 

よって、あらゆる状況を経て複雑化させる事が目論まれた、
クーラ・ベルカルドのルーツ”に関わる情報こそが、
“最初の時間犯罪”における最大の急所であったと考察が可能となります。

 

/*/

ここまでの状況、及び仮説を元に、
“精霊機導弾事件”から“ガンパレード事件”までの事象を整理します。

 

 

1.精霊機導弾事件(第7物理域EGB)~南の島のガンパレード(第7物理域ガンパレード)

時系列1.jpg

時系列2.jpg

時系列3.jpg
→“群踏の肖像”に描かれた事象を端緒として、一連の事件が勃発。
この事件段階では、ペンダントを渡す段階において、
ベルカインはネルと“だけ”出会い、その後は、第1項で示した展開に至り、
天照”はベルカインとユーザーであったネルの遺伝子からクーラ・ベルカルド(オリジナル、とします)を、
月読”は“南の島~”にて、黒い月として観測されます。

 

/*/

2.最初の時間犯罪→幻世虚構 精霊機導弾(第7物理域EGB)

クーラ・ベルカルド(オリジナル)は、
“不死のメンテナンサー”“ 男子の本懐”“風を追う者の王”“偉大なる光の王”
等の側面を持つとされます。

 

これらの内、注目されるのが“風を追う者の王”とされる部分となります。

 

風を追う者”とは、広義においては“男子の本懐”と同意として扱われ、
狭義においては“自力で世界から世界を渡り歩く異能者”とされます。
即ち、広義においてはWTGを利用する世界移動者を含みますが、
狭義においてはS.TAGAMIのような“特殊能力を持つ”者に限られる、と見る事が出来ます。

 

クーラ・ベルカルド(オリジナル)の尊称の一つとされる“風を追う者の王”が、
いずれの意味において用いられているかはともかくとして、
クーラ・ベルカルド(オリジナル)は“風を追う者”の王たる存在、と考えられます。

 

これに加えて、クーラ・ベルカルド(オリジナル)を巡る点として着目されるのが、
聖銃によって生み出された不死のメンテナンサー”という点です。

 

無名世界観において、聖銃は“ホーリーグレイル”と呼び習わされる事もあり、
“頂天のレムーリア”においては“瑠璃の王族”と呼ばれる数名の内に、
ホーリーグレイル”とされる人物(山梨良狼)の存在も確認されています。

 

瑠璃の王族”とは、血統的に絶技、それも時間移動に類する技術を高い水準で使用出来ると見られ、
”と呼ばれる、確率論や熱力学法則を意図的に操作出来る存在とも親和性が高い事、
そして“ホーリーグレイル”と呼び習わされる“聖銃”が歴史改変能力を有するとされる事から、
“先天的な歴史改変能力者”である可能性を示唆するものと言えます。

 

従って、クーラ・ベルカルド(オリジナル)は、
ホーリーグレイル”に類する存在であると考えられ“瑠璃の王族”と同様、
“先天的な歴史改変能力者”であると見る事が出来ます。
また、これは狭義の“風を追う者”と同義と見られますが、
その“王”とされる理由としては“ホーリーグレイル”の始原となり得る、
“最初の先天性歴史改変能力者”である可能性が考慮されるものとします。

 

故に、セプテントリオンは対抗措置として時間犯罪を敢行、
誕生が確定してしまったクーラ・ベルカルドの存在自体を掌握する措置として、
クーラ・ベルカルド(オリジナル)の誕生に至るルーツを改ざん、
現在周知されている、聖銃Np-03a“天照”によって造られた“不死のメンテナンサー”、
というルーツを周知せしめられたと考えられます。

 

これが“群踏の肖像”と“幻世虚構 精霊機導弾”で描かれた、
ベルカインとネル、シーナが出会う状況の食い違いであると考えられます。
即ち“割れた物は一つへ返る”としてベルカインがペンダントを割った場に、
ネルとシーナの二人が揃っていた事で、当初はネルのみがその役目を担い得た可能性から、
“双子のいずれかが”ベルカインウスタリ・WTGへ誘う可能性へすり替えたと言えます。

 

そして、既にサンカウ・WTGを通じて“ガンパレード”の“黒い月”となるのは、
Np-03b“月読”の因果として確立されており、
一方Np-03a“天照”はベルカインと結ばれる因果であった事から、
まず、ベルカインと再開を約す(=ペンダントの欠片を受け取る)人物を、
ネル一人であった所から、シーナを巻き込む形へと緩やかに因果を改変、
その後、聖銃ユーザーを逆転させ、“天照”をシーナへ、“月読”をネルにあてがう事で、
クーラ・ベルカルド(オリジナル)誕生のルーツを破壊したと考えられます。
ここに至り“精霊機導弾事件”における時間犯罪は成立、
“幻世虚構 精霊機導弾”の物語が形成される事となります。

 

この“最初の時間犯罪”は、課題(註8)(註9)を残したものの、
その主目的を達成した事で終結したと見られます。

 

なお、この“精霊機導弾事件”と、その時間犯罪案件である“幻世虚構 精霊機導弾”事件について、
記述の都合上、一本の時系列上に則る形として記述しておりますが、
実際には“精霊機導弾事件”によって“A”がNp-16“セラフ”及び“田神レポート”を受領し、
それを確認した“A”によって“幻世虚構 精霊機導弾”事件が引き起こされるという、
同一の事件上に二つの事件が“同時”に発生していた、と考えられます。

 

但し、明確な形で“未来のA”からの意思疎通が行われない以上、
“精霊機導弾事件”=“過去の事件”の“過去のAを含む”当事者達に、
未来から介入が行われている事の詳細を認識する術はありません。

 

田神レポートに記された「セプテントリオンの介入の兆候有り」という文言は、
即ちこの状況…“全ての情勢が把握出来ている筈の状況に、確認出来ない動向がある”の報告であり、
“セプテントリオン側で何か情勢に変化があったか”という問い掛けとも取る事が出来ます。
つまりこの文言こそが“同時系列上では把握出来ない何か=時間犯罪”の存在を裏打ちする物である、
と考えられます。

 

/*/

3.(第7物理域ガンパレード)~ガンパレード事件へ

“幻世虚構~”のシナリオによって“最初の時間犯罪”は大目標を達成、
クーラ・ベルカルド(オリジナル)は、
“聖銃・天照によって、ベルカインとネルの遺伝子から生まれた”というルーツを抹消され、
存在を否定された(註10)と考えられます。

 

但し、精霊機導弾事件の顛末は否定されず、
ベルカイン、Np-03a“天照”とシーナ、Np-03b“月読”とネルらの世界移動、
そしてEGB世界へS.TAGAMIが捕われる原因となった、EGB世界の閉鎖、
及び田神レポートの送付という“幻世虚構~”で描かれた事象が発生する事となります。

 

ベルカインと聖銃Np-03a“天照”(シーナ)は、
ウスタリ・WTGと見られる場所へ移動、聖銃の帰還機能に基づき、
同WTGによって“第7物理域”へ移動(S.TAGAMIのコールドスリープ手法か)したと見られます。
これによって、ベルカインは“EGB世界の時間軸”から外れ、
ユーリ・A・田神の存在する“第7物理域ガンパレード”へ到達したものと見られます。

 

この際、聖銃移動体であったシーナは、時間経過によって身体が崩壊、
ユーザーの記録として聖銃がDNAを保存していたと考えられます。

 

かくして、ユーリ・A・田神は“第7物理域ガンパレード”にて、
(再び)ベルカインを拾ったと見られます。
そしてこの際、同時に漂着したと見られるのがNp-03a“天照”です。

 

これは“儀式魔術・大絢爛舞踏祭”の終盤(2005/12/15 17:08)
ボーナストラックとして掲載された、
知恵者(=ユーリ・A・田神)がベルカインを拾った後の物語において、

>「構わんな。貴公の協力などなくても、あの機械は解析して見せる」

という発言から、あの機械=Np-03a“天照”であると見られます。
つまりベルカインはNp-03a“天照”と共に漂着、ユーリ・A・田神に保護され、
後にある女性(セプテントリオンのMLとされる)との間に、
一女・イアラ(後の小杉ヨーコ)を設けたとされます。

 

ここで更に、クーラ・ベルカルドが存在を否定されたという事態を示す傍証と考えられるのが、
小杉ヨーコクーラ・ベルカルドは(異母?)姉弟”とされる一方で、
“現在のクーラは中身が異なる”という註記がされる点です。
これは、本来ベルカインという実父を同じくするクーラとイアラであるにも関わらず、
クーラのルーツが破壊されている事によって、
ベルカインを父親に持つ”というルーツが消滅している、と考える事が出来ます。

 

/*/

これらの前提を踏まえて時代は再び“南の島~”及び“ガンパレード事件”の頃、
ガンパレード世界1990年代後半へと移ります。

 

この時は既に“最初の時間犯罪”を踏まえた結果として、
当記事が前提とする“南の島~”から“ガンパレード事件”への移行工作が、
ユーリ・A・田神によって開始されていると考えられます。

 

ここでの仮説として提示するのが“クーラ・ベルカルド(偽)”の存在です。

 

当記事が前提とする“最初の時間犯罪”は、
クーラ・ベルカルドによって侵攻を受けるガンパレード世界”において、
“竜という決戦兵器を製造する”、通称“竜計画”の研究及び製造プラントとして、
ガンパレード世界を構成するという目的を仮定しています。

 

即ち、最も重要なのは侵攻者=外敵の存在であり、
更に言うなれば、その外敵が“兵器開発者の都合に合わせて動く”という条件があれば、
兵器開発計画はスムーズに進むものと考えられます。

 

これは幻獣戦争という、ガンパレード世界においては死活問題となる戦争において、
辺境とは言え事実上の最前線と位置づけられる“喜界島”を“わざと”放棄させ、
“敵”を本土九州まで上陸させた挙句、人類側主力を壊滅させ、
学兵と九州放棄という最悪の手段とシナリオへ至らせる…という、
“死活問題たる戦争への勝利”という目標に対して最悪と言って良い展開へ、
“敢えて”仕向けている状況があると推測される事から得られる視点となります。

 

先に述べた通り、ユーリ・A・田神ベルカインとNp-03a“天照”を手にしており、
実際に行ったかどうかは定かではないにしても、
クーラ・ベルカルドを生み出す要素を手中に収めた”事になったと考えられます。
但し、現段階ではユーリ・A・田神が、
クーラ・ベルカルドの存在をほのめかしているだけ”という可能性も否定出来ず、
そうであっても現在の状況を作り出す事は必ずしも不可能ではないと考えられる為、
クーラ・ベルカルド(偽)という存在が確定的に存在する”という明言までは行いません。

 

問題は“クーラ・ベルカルドという作り出された脅威”によって、
ガンパレード世界において“竜計画”が推進される土壌が育成された、
という一連の事件構造を仮定可能であるという事になります。
そして、セプテントリオンの“竜計画”総責任者であったユーリ・A・田神は、
その“クーラ・ベルカルド”のルーツとなり得る要素を押さえており、
竜計画”の推進に極めて大きなアドバンテージを有していたと言えます。

 

これは、セプテントリオンが“クーラ・ベルカルド”に対する切り札として、
竜計画”を承認していたとする状況を勘案すると、
ユーリ・A・田神はこの計画を開始した当初から、
セプテントリオンに対してもアドバンテージを保有していたという可能性も考えられます。

 

/*/

これらの状況を踏まえ、状況は“竜計画”を軸とした、
“ガンパレード事件”のシナリオへと移行を開始します。
※再掲、図3
時系列3.jpg

 

状況は、ガンパレード世界1574年頃
ユーリ・A・田神ベルカインを“第7世界”=“第7物理域ガンパレード”で拾い、
一女イアラをもうけ、天照の解析に成功した事から推移すると考えられます。

 

前述の事から“最初の時間犯罪”の結果、
天照が聖銃ユーザーの記録として保存していたDNAは“シーナ”の物であり、
これが後に、ガンパレード事件を踏まえて公開された“ニーギ流転抄”において、
幻獣軍の女神として祀り上げられるのが“シーナ”である原因と考えられます。

 

これはアルファ・システム サーガ等が指し示す資料に基づくのであれば、
天照のユーザーであり、クーラ・ベルカルドの母親となるのは“ネル”であり、
女神とするならば“ネル”の方が簡単かつ効果的であるにも関わらず、
黒い月”の核となり、簡単には触れられない所にある筈の“シーナ”が祀り上げられている、
という奇妙な問題の解と言えます。

 

果たして、後の芝村一族の源流が構築されたと考えられる1574年頃より、
世界の構造が移ろう幾らかの時間が経過します。
時系列4.jpg

時系列5.jpg

 

なお、この図に基づくとゴージャスタンゴ(以下、GT)世界が逆順に動いているように見えますが、
これは見かけ上の動向であり、実際にはGT世界は最も世界速度が速いとされる事から、
他世界の速度を越えて動いた結果、
所定のタイミングで切り取ると見かけ上逆順に動いているように見えると推測されるものです。

 

そして“ガンパレード世界1574年”以降“同世界1945年以前”
この期間に発生したと考えられるのが、GT・式神世界とEGB世界の接触であり、
クーラ・ベルカルド”による“蜘蛛神族・日和子”の殺害です。

 

資料によると、日和子が殺害されたのは“式神世界ではない”とされますが、
これはこのワールドクロスにより、EGB世界と接触していた事が原因と考えられます。

 

日和子は後の事件においてクローン再生、セプテントリオンによって利用された、
という事が判明している事からこの時点においてセプテントリオンが、
彼女のDNAサンプルを取得する機会があった事を示唆するものとなります。

 

そして、前出の図において示されているように、
この時点において、ガンパレード世界の物理域は“第6物理域”、
EGB世界(及びGT・式神世界)は“第5物理域”へと移ろっています。
ここで、第1項にて示した“田神レポート”の示唆する状況である、
“第5物理域EGB世界”という状況が揃う事となります。
即ち、これがS.TAGAMIの見越した“田神レポート”が、
完全なる青ユーリ・A・田神へ到達するタイミングであると考えられます。
時系列6.jpg

 

これによって、ユーリ・A・田神はNp-16“セラフ”と共に“田神レポート”を回収、
セプテントリオンからの離反を画策する事となります。

 

かくして時は再び流れ、ユーリ・A・田神による“田神レポート”受領から幾らかの時間を経て、
“ガンパレード世界”と“GT・式神世界”が接触を開始します。
このワールドクロスが発生したタイミングは、アルファ・システム サーガが示す資料に基づくと、
ガンパレード&GT・式神世界(ワールドクロス中)1798年頃、
ヴァンシスカの悪魔”(2000年頃公開)によって描かれた時期であると推測されます。

 

同作品は、公開時期がGPMリリース前後とされる事から、
ガンパレード事件に至る状況が推移していたと考えられる、
1996年~2000年の中核時期からはやや逸脱しており、
公開形態も“物語”の形式を取っている=原作ゲームは終了しているか行われていない事、
舞台が革命期フランスとなっている事などから、
ガンパレード事件との直接的な関係性はやや薄いものと考えられます。

 

しかし、この作品も“原作”の一つと言え、一次資料に近いものとして扱える事に加え、
同地において革命を主導した“革命政府”がセプテントリオンの影響下にある事、
ガンパレード・GT式神両世界のワールドクロス現象を示唆している事、
ふみこ・オゼット・ヴァンシュタインが物理移動に類する世界移動を行った記録等から、
同時期に行われていたセプテントリオンの介入を裏打ちする資料であり、
ユーリ・A・田神がワールドクロスを利用した世界移動を行った“時期”について、
傍証的に利用する事が出来るものであると考えられます。

 

これにより“第6物理域ガンパレード世界”1798年頃を軸とする時期に、
“ワールドクロスを利用した”“GT・式神世界”への世界移動が可能であり、
ユーリ・A・田神がセプテントリオンに対抗する行動を開始した時期であると推察されます。
時系列7.jpg

 

この後、ユーリ・A・田神は更に“GT世界”の世界速度を利用し、
セプテントリオンが本拠地としていた“我々の世界(=アイドレス?)”と称される、
第7世界”へと移動したと考えられます。

 

“最初の時間犯罪”前後において、
“ガンパレード世界”の歴史事象を既に把握している事から考えると、
同世界における歴史事象はフランス革命期以降、大きく変動する要素が無いと言えます。
竜計画”についても、もう一人の責任者である“ルイ”の存在がある事から、
ユーリ・A・田神の不在によって“ガンパレード事件”へ至るシナリオが崩れる可能性は低いと言えます。
よって、この時期にユーリ・A・田神が“ガンパレード世界”を離れたとしても、
後の趨勢には影響を与えず“南の島~”から“ガンパレード事件”へと移行するシナリオが、
問題無く進行して行ったと考えられます。

 

かくして、更に時を経た“第5物理域ガンパレード”において、
“喜界島天文観測部隊”は歴史から抹消され“ガンパレード事件”へ至るシナリオが確定、
その後、セプテントリオンを離反したユーリ・A・田神は、
“第7物理域アイドレス(?)”へと移動、これら事件の経緯を元に、
アルファ・システムにて“ガンパレード・マーチ(+OVERS.Ver0.89)”を開発するに至る、
と考えられます。(註11)

 

/*/

以上が“最初の時間犯罪”から“ガンパレード事件”の流れを、
事件の中心となった事象を軸に整理したものとなります。

 

即ち、黒天の羅針盤から提示する“最初の時間犯罪”の焦点とは、
クーラ・ベルカルド(オリジナル)”とされる人物のルーツ改ざんであり、
アルファ・システム サーガに記載された無名世界観における歴史事象を編纂した人物は、
この事実を隠匿する目的を持って意図的に、
誤ったクーラ・ベルカルドのルーツを編纂したと推定致します。

 

かくして、これらの事象を内包しながら“G=ガンパレード事件”は進行し、
次なる歴史事象へと派生していく事となります。

 

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3.第3期(ガンパレード事件後~海ラヴ事件)

/=3.第3期(ガンパレード事件後~海ラヴ事件)=/

 

精霊機導弾事件以降、ガンパレード・マーチリリースまでの間、
無名世界観上では幾つかの動向について、その片鱗と見られる物語が散見されます。

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  1. 水素の心臓(1998年頃初出)
    1. ひまわりフロントライン
    2. ダーリン&ヴァルキリー
    3. ダーリン&エクソダス
    4. 魔導の決め手
    5. 軍神物語
    6. 植物学者カホルの発見

(他、各種年表等が付随)

 
  1. ゴージャスタンゴ・ストーリー(1999年掲載)
    1. Lavender Blue Sky
    2. サイレントオデッセイ
    3. Romantic.DARK SUMMER
       
  2. 海ラヴ(1999年5月~12月)
     

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おおよそここまでの物語群が、大きな契機となる“ガンパレード事件”と同時期、
乃至やや遅れて(註4)に進行していた各事象を観測したものであると考えられます。

 

また、これら作品群には無名世界観における“プロダクトネーム”が冠せられており、
それぞれハートオブハイドロゲン(以下、HOH)世界、
及びGT世界を舞台としたものである事を示唆するシナリオであると付記致します。

 

但し、これらはいずれも“物語”として観測されたものであり、
例えば、かつて“初代・芝村裕吏”とされるユーリ・A・田神が、
世界調査局(中央世界にあったとされる)に所属していた間に見聞きした事象であったり、
或いは同人がGT世界へ移動した際に見聞きした事象であった、という可能性が想定されます。

 

ただ、いずれにせよ“水素の心臓”と“ゴージャスタンゴ・ストーリー”の両者は、
“物語”…即ち、公開された場所に記された部分までは、
“既に起こった”(改変され、無かった事にされている可能性も含む)
事象となっていると考えられ、一定の資料的価値は認められるものの、
時間犯罪を伴う特殊な介入を行わない限りにおいて、歴史事象としての価値は低いと考えられます。

 

これらの物語群にあって、特殊性を持つ項目と見られるのが海ラヴです。

 

これは、現実1999年5月~12月に掛けて、
“ネットRPG”という触れ込みで開催された読者参加型小説企画であり、
実際に複数名のプレイヤーを募り、ゲームマスター側からの出題に対し、
プレイヤー側が行動宣言をメール等によって行い、その結果が小説として公開される、
という形式を取っていたとされます。

 

これは、物語として公開されるに留まった水素の心臓ゴージャスタンゴ・ストーリーと比較して異質であり、
プレイヤーキャラクターの一部にセプテントリオン関係者が居る事、
史実とされた物語の一部がプレイヤーの行動によって改変された事等から、
当時、無名世界観の上でゲームの形を借りた“介入”が行われ、
リアルタイムに準ずる形で状況が変動していた事件であったと見る事が出来ます。

 

よって現実の時系列上において、ガンパレード事件“後”のシナリオとして描かれ、
プレイヤーによる介入の可能性が見られるこの事件を、当記事では“海ラヴ事件”として取り上げ、
検証を行います。

 

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/3-1.海ラヴ事件の発生した世界/

海ラヴ事件”の舞台は、GT世界群の一つにおいて、
幻想大陸“ファンタジア”復活の余波によって半ば海中に没した、
2049年、核戦争後の日本とされ、GT・式神世界との関連も示唆されています(註12)

 

事件内容としては、労働一号かれん・ちゃん(プロダクション・0)
及び彼女が内包する超大規模非核EMP<嵐の王ラヴ>、
もしくは無限増殖・無限自己進化遺伝子<ラヴ>を中心として起きた一連の群像劇…と、
その影で行動するセプテントリオンの動向を描いた物となっています。

 

ここで、ユーリ・A・田神がセプテントリオンに離反する行動を開始したと見られる時点の図を、
もう一度確認します。
時系列7.jpg

 

“GT・式神世界”は、何度か触れているように世界速度が極めて早く、
特定のタイミングで切り取って観測をしたと仮定すると、
他の世界が物理域を移動する方向とは逆方向に進んでいるように観測される事が予見されています。

 

よって、上記の図ではユーリ・A・田神が“GT・式神世界”を経由して、
直接的に“第7物理域アイドレス(?)”へ移動したかのように見受けられますが、
これは便宜的に図示したものであり、実際には…
“第6→第5→第4→…第1→第7物理域GT・式神世界”という流れにおいて、
移ろう物理域を移動した後に“第7物理域アイドレス(?)”へクロス移動した、
という状況であると推測されるものです。

 

海ラヴ事件”とは、ユーリ・A・田神がこの“移ろい行くGT・式神世界”に身を置き、
“第7物理域”へと移動するまでの間に起こった事案であると推察されます。

 

この状況を示し得る要素の一つが“ハンターキラーウィッチ”の存在です。
“攻撃型魔法少女”と記述されるこの存在は、高機動杖を駆り、
同世界においてはレトロ・ライフと呼ばれるバイオデバイスや魔法、
銃や手榴弾等の近代兵器に至るあらゆる戦力を駆使して戦う強力な戦闘員と言えます。

 

後の“電網適応アイドレス”においては、
ハンターキラウィッチ”という類似(同一?)の存在が確認されており、
これらはいずれも“魔法”を軸とした戦術を行使する存在として描かれています。
これは、同世界が非核EMP“ラヴ”によって文明が衰退した、とされる事と併せて、
物理域が低物理域方向へ移動している状況を表す物と考えられます。

 

一方、海ラヴ事件の一節において、主な舞台となった時点から20年後の未来、
とされる情景が描写され、宇宙においてセプテントリオンとの決戦が繰り広げられる、
という物語の断片が記述されました。
これは、MEIDEAのような大気圏突破能力を搭載する航空機の存在などから、
同世界は20年を経て、高物理域方向へ移動すると予見するものと考えられます。

 

この相反する情勢を説明し得るのが、無名世界観の円環(螺旋?)構造において、
“第1物理域”から“第7物理域”へと移動する際の物理域変動です。

 

これは、前述した“GT・式神世界”が移動すると考えられる経路と一致し、
且つ“海ラヴ事件”において記述された、
低物理域と高物理域が交錯する不可解な世界情勢を説明し得る根拠となります。

 

即ち“海ラブ事件”が発生した時期(現実1999年5月~12月)を鑑みるに、
ガンパレード事件(企画名:G)終了後、ユーリ・A・田神が“GT・式神世界”を経由し、
“第7物理域アイドレス(?)”へ移動しようとした時期に同事件は発生したものと考えられます。

 

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また、同事件は登場人物(NPC含む)の関連する事象から、3点の年代が語られています。

 

 

U-1.山形テル若年期
→ハンターキラーウィッチ全盛期。ファンタジアとの会戦。
山形テル(輝?)、山形省三との馴れ初め。ウミネコハイツ建設までの経緯。
ウミネコハイツの建築年代より、海ラヴ事件より50年以上前と見られる。

 

U-2.海ラヴ事件期(物語:ゲームの中心)
→事件中核期。DKを筆頭にセプテントリオンの大規模介入(2チーム)。
2048~49年。

 

U-3.海ラヴ事件より20年後の未来
→宇宙空間において、セプテントリオンとの決戦。
但し、ここで描かれた事象は海ラヴ事件により発生した時間犯罪にて消失の模様。

 

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これらの時期において、発生した事象を整理します。

 

U-1の時期は、海ラヴにおいて示唆された各種情報から、
GT・式神世界1999年頃と推察されます。
この時期は、ファンタジアとの戦闘が激化していた時期である事が示唆されています。

 

ファンタジアは“幻想大陸”と“神のヤオト体”という2つの存在(これらが同一である可能性あり)
が観測が為されていますが、ここで着目するのは“神のヤオト体”とされる、
人類と戦闘を繰り広げていたと見られる存在です。

 

これはヤオトと呼ばれる“かのもの”の影響を受けたとされる存在の中でも、
極めて凶悪な部類に入ると考えられ、或いは“かのもの”そのものと言える可能性があります。
そこで考えられるのが、ファンタジアが“かのもの”の同一存在か、
非常に近しいものであるという可能性です。

 

ユーリ・A・田神がセプテントリオンに対する離反を開始した頃とは、
田神レポート”の作成、及びユーリ・A・田神が同レポートを受領した以降の事となります。
即ち、EGB世界における“変容風被曝実験”=“アルスマグナ”が実行に移された事、
その後“精霊の雪”とも呼ばれるリューン光が観測されたという描写が存在する事などから、
EGB世界において“かのもの”の再活性が開始された事が予見されます。

 

よって、ファンタジアは“GT・式神世界”が“EGB世界”の付近を通過、
もしくはワールドクロス等によって、再活性化した“かのもの”の影響を強く受けたか、
そのものが伝播した事によって生じた現象、或いは存在であったと考えられます。

 

田神レポートの受領時点では“EGB世界”は“第5物理域内”にあったと予想される事は、
先の項にて解説した通りであり、
“GT・式神世界”は、以降“低物理域方向”へ向かうと予測されます。
この後発生する、いわゆる“文明の後退”現象はこれに付随するものであると考えられます。

 

一方、U-3の時期は、宇宙空間における高物理域での戦闘行動が見られる事や、
セプテントリオンの本拠地と目される施設が登場する事から、
“我々の世界”を名乗る“第7物理域アイドレス(?)”と接触する未来である、
と考えられます。

 

よって、ゲームの形式を取った“介入ポイント”であるU-2の時点は、
“第5物理域EGB”付近(=U-1)から“第7物理域アイドレス(?)”付近(=U-3)
の間に存在すると考えられます。

 

但し“海ラヴ事件”がゲーム=介入の形式を取っている為、
何らかのWTGの影響によって他世界技術が稼働可能となっている可能性
(例.セカンダリー(サイボーグのような存在)である番手蔵太が本来の力を取り戻す、等)
…が考えられる為、この項において仮定を進めるのはここまでとします。

 

ここでの結論として“海ラヴ事件”は、
ユーリ・A・田神がセプテントリオンを離反する際”、
“経由したGT・式神世界が第7物理域アイドレス(?)へ移動する間に起こった”、
という仮説を提示するものとなります。

 

/3-2.丁字倖也と未来予測者“プランナー”/

 

海ラヴ事件”におけるプレイヤーキャラクターの内、
セプテントリオンのフットワーカーとして、
直接的な関係を持つ“丁字倖也KIDK”に関わる情報は、重要度が高いと言えます。

 

海ラヴ事件”においては、過去から現在の事象に至るまで、
類を見ない規模でセプテントリオン直接的介入が行われています。
特に、上級認証コードを持つと見られる要員が、

 

 

KI丁字倖也。セプテントリオンの幹部候補生、というような立ち位置か)
DK(倖也・父。但し、直接的関係は不明)
DL(倖也・姉。但し、直接的関係は不明)
QOKIのパートナー。詳細不明)

 

 

と、少なく見積もって4人が直接投入されている事が見受けられます。
セプテントリオンが常時2人態勢で行動する事を含めても2チームが投入されている事になり、
かなり大規模な行動であった事が伺われます。

 

その目的は“ラヴ・かれん”及び戦略級戦闘機“MEIDEA”を回収する、
というものであったと見られます。

 

しかし、文明の後退した辺境世界において、
見捨てられた戦略級戦闘機と忘れられたパイロットを回収するという、
一見すると極めて重要性も難易度も低い目標に対し、
異常な規模での戦力投入が行われたにも関わらず、
セプテントリオンが狂言回しに終始したような構図となり、
挙句の果てに、現地責任者と目される幹部DKの誅殺、
及び上級認証コード“DK”が部下であるKIに引き継がれる、
といった内部抗争劇へと発展、終息するという不可解な構造に辿り着きます。

 

また“丁字倖也DK”は、MEIDEAが“本来持っていた機能を損なっていない”にも関わらず、
それをセプテントリオン本部に対して“価値無し”と報告、
海ラヴ事件以降、該当世界を“聖域”として保全、如何なる介入をも禁止する措置を取るに至ります。
元・DKの行動から推察される任務内容を考慮すれば、完全な任務違反に加え、
独断による世界の采配を内包する行為となり、裏切りと見なされる可能性すら含むと言えます。

 

この措置は身内であるセプテントリオンに対しても断行される物であり、
後にMEIDEAを再生、量産しようとしたセプテントリオン幹部“AR”が、
DKにより排除され、再びMEIDEAの実用性を否定する結論をセプテントリオン本部が得る、
という物語が記されている事から、極めて強固に該当世界の保護を行っていると見られます。

 

この“丁字倖也DK”の正確な意図は不明ですが、
後に“MEIDEA”の呼称を与えられた戦闘機がわんわん帝國の主力戦闘機や、
ガンパレード・オーケストラ青の章にて“はくちょう”=“白天”=“MEIDEA”、
として登場(註13)している事などから、
丁字倖也DK”による保護が、何らかの影響を与えている、
もしくは、何らかの影響を受けている事が考えられます。

 

/*/

もう一点セプテントリオンに関連して大きな情報となっているのが、
プランナー”の存在を公開した事です。

 

水槽に浮かぶ巨大な脳として描写され、セプテントリオンの“史実”を立案し、
““未来予測者””や“未来を決定する計算者”と称される存在とされます。

 

この““未来予測者””と呼ばれる存在は、極めて高い精度で未来を予測、決定するとされ、
プランナーの他に““””や“α”と呼ばれる存在が予見されるに過ぎません。
この内、“”は“玖珂英太郎”に繋がる名前(註14)として幾つかの情報が公開されており、

 

 

“式神の城 七夜月幻想曲 どかんQ&A 218より:
Q:“”って何ですか?
A:世界を、魔術的な秩序の観点から立て直そうとする者で、未来のほとんどを予見する能力者。感情らしい感情を持たない恐るべき魔術師、ですね。”

 

 

“式神の城 七夜月幻想曲 どかんQ&A 219より:
A:“”の計画=太陽神の復活です。今の衰えた太陽のかわりに、新しい主神をすえて、新しい魔術的秩序を立てようとしています。そういう意味では、娘の事しか考えてないAとも、本質的な営利企業であるセプテントリオンとも違います。 ”

 

 

“式神の城 七夜月幻想曲 どかんQ&A 221より:
A:魔術的な神話体系の再構築の為ですね。(以下省略)”

 

 

…といった性質の存在であり、目的を持つとされます。
この“”、α、プランナーが三者三様の存在であるのか、一致する存在を指すのかは不明ですが、
”の行動原理に関する情報は、“未来予測者”という存在の一端を示すものであると考えられます。

 

この“未来予測者”という存在と対比的に扱われるのが、ガンパレード世界における““絢爛舞踏””や、
絢爛世界における“RB”パイロットや“シールドシップ”乗りと言えます。

 

彼らは、卓越した戦闘センスや経験、直感によってあらゆる状況を想定し、
行動する事が出来る為、それが先鋭化すると数手先=“ごく短期の未来”を予測する事が出来る、
という評価が為されます。

 

また、D・A・ルグウェールを嚆矢とする、論理的に情報を積み重ねる事で未来予測を試みる、
世界構造研究者”と呼ばれるタイプのプレイヤーの存在もこれに並ぶと考えられます。

 

しかし、ここで言う““未来予測者””の像とはいずれも一致しません。
彼らはいずれも“現在”という状況から得られる情報を最大限に活用し、
そこからの推定によって受動的に未来を描き出しているのであり、
“未来のほとんどを予見する”、“未来を決定する”と言われるような、
能動的に未来を読み解き、構築するという存在とは決定的な隔たりがあると見られます。

 

霧島零香、或いはレイカ・グリーンの名で知られる時間捜査官を擁する、
歴史保全警察の存在が一定の規模を持つ公的組織であると公開された事からも読み取られるように、
時間犯罪が“ある程度の組織力を以て取り締まる対象となる”程度に常態化している現在の無名世界観は、
“未来”はおろか“現在”の事象においてさえ、
“リアルタイムに事象が書き換えられる”可能性があると言えます。
それらを踏まえて揺らぐ未来を“確定的に見通す”という事は、
一切の可能性が固定されていない、混沌それ自体を見通すに近しい行動であると言う事が出来ます。

 

それは即ち“予測した未来が現実のものとなる=予測それ自体が未来を決定する”能力と言え、
“全ては、予定調和の輪の中にいる。”という言葉とも一致する事が見て取られます。

/*/

海ラヴ事件”には、先の項において時点U-3とした“未来”となる時点が語られます。

 

これは、大幹部となった丁字倖也を擁するセプテントリオンと、
かれんや、次元接続リングの開発者である徳庵清次郎を擁するウミネコハイツの生存者が、
最終決戦を行う、という場面を描いたと見られる物です。

 

しかし、この“あり得た未来=U-3時点”は、
次元接続リングを通して“海ラヴ事件当時=U-2時点”と接続、
二つの時系列の徳庵清次郎を入れ替える事による歴史改変の発生によって書き換えられ、
前述したDKの誅殺から、海ラヴ世界の保護へと至る事となります。

 

問題は、この事件の“何処までが予定調和であったか”という事になります。

 

海ラヴ”は、ネットワークRPGの触れ込み通り、複数人のプレイヤーを招集し、
行動宣言と実行処理を経て物語が進行する形式を採用したとされます。
即ち、幾つかの局面においてはプレイヤーの行動が物語に反映され、
(物語上の)リアルタイムで影響を与えていたと考えられます。

 

その一方で、数名のNPCや枠外での暗闘のように、プレイヤーが関与出来ず、
物語の意向に沿わざるを得ない部分もあったと言えます。
これは徳庵清次郎(を演じるプレイヤー)が、物語のSF的展開に付いていけず、
サポートBBS等で徳河舞蔵(を演じるプレイヤー)と慰め合った(註15)
という事例が報告されている事から、
ゲームの流れにプレイヤーが“付いていけない=流されざるを得ない状況”があった事を示すと言えます。

 

これを踏まえると、状況を提示し、行動を選択させる出題者は、
プレイヤーに悟られない意図を物語の中に忍ばせ、その目的を達成する為に、
プレイヤーの行動にバイアスを掛ける事も不可能ではない、と言えます。
なお、バイアスとはご都合主義的な物では無く、プレイヤーと同じルールの上で、
プレイヤー、或いはゲームマスターとして許される範囲において展開されるものであり、
不正や不合理とは無縁のものである事を、念の為補足させて頂きます。

 

この仮定が意味する所は、究極的には“海ラヴ事件の顛末そのもの”が、
セプテントリオン、乃至“プランナー”にとって予定調和であった、
という可能性を否定出来ないという点にあります。

 

この可能性を示すのが、前述の“あり得た未来=U-3”となります。
繰り返しとなりますが“海ラヴ”はゲームマスターからの出題に対し、
プレイヤーによる行動宣言が“リアルタイムに”反映されるゲームとしての側面を持っていました。
即ち海ラヴ世界2049年が、ゲーム開催期間中における“リアルタイム”であり、
“あり得た未来”は、未来予測によって“不確定な未来を確定させた”ものであると考えられます。(註16)

 

この視点を成立させる証拠となり得るのが、
海ラヴ事件リアルタイム時点=U-2”と、
“あり得た未来=U-3”を次元接続リングによって接続させた、という事象となります。

 

作中、人工知能““シヴァ””の発言等から“あり得た未来=U-3”は、
海ラヴ事件=U-2”よりおよそ20年後の未来であると見られています。
次元接続リングは、理論上未来や過去に接続する事が可能と言われていますが、
一方で異次元や世界の環から弾き出されるといった事故リスクが懸念されており、
また、作中において時間の環を越える事が困難と見られている発言(註17)等から、
次元接続リングを使用して時間を越える、完全不確定の遠い未来と接続する事は、
例えて言うならバラバラの部品を納めた箱を振って完成品の精緻な腕時計が出て来るように、
本来的に極めて困難であり、異常な確率論を越えた結果であると考えられます。

 

プランナー”の能力は、この“不確定な未来”を“予測”する事が出来るものと考えられます。

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ここで海ラヴ事件の顛末を簡略に俯瞰すると、

 

 
  1. ウミネコハイツを中心にしたギャグ調の展開(U-2)
  2. MEIDEAを中心とした物語の転回・複雑化(U-2)
  3. 山形テル(輝?)の回想(U-1)
  4. “あり得た未来”の現出(U-3)
  5. “あり得た未来”の原因解読と、回避への画策(U-2)
  6. “あり得た未来”とウミネコハイツの接続、歴史改変、ギャグへの回帰(U-2)
     

 

…このような顛末となります。
ポイントはゲーム後半、物語としてU-3の事象が提示された事で、
海ラヴ”というゲームは“展開を誤ると悲劇的未来へ向かう”とプレイヤーが認識を共有し、
その回避を画策する方向で歩調を合わせ、最終的には未来の悲劇を回避する為に、
徳庵清次郎”というPCを未来から呼び寄せる(現在の徳庵清次郎は消失)事で、
U-3の事象に繋がる鍵となる事象を回避、U-3の事象を消失させるという歴史改変に至ります。

 

言い換えると“海ラヴ事件”の後半は、U-3の事象が描かれた事に端を発し、
U-3の事象があった事でゲームとして“成功”出来たと言えます。

 

そして先に仮定した“プランナー”の能力は、
“異常な確率を越えた未来の事象”を実現可能なものへ引き寄せると考えられます。

 

即ち、U-3に描かれた“あり得た未来”とは、
無限の可能性=混沌の中から“プランナー”によって選択された未来であり、
海ラヴ事件”において発生した事象の一切は“プランナー”が“企画=プランニング”した、
“予定調和”=“プランナーが望む未来に繋がる現在”であったと推測されます。

 

かくして“海ラヴ事件”は些細なギャグシナリオとして終息、幾つかの派生的影響を踏まえつつ、
セプテントリオンが“悪の組織”として終焉を迎えるであろう未来が修正された、
という結果に至ります。

 

そして、前述したようにPCの一人である“丁字倖也DK”が、
同世界の番人となる形で、介入ポイントとしての“海ラヴ事件”を封鎖
セプテントリオン関係者であっても介入を許さない領域として保全する事で、
以後、簡単に“介入”が許されない時系列が確保された形となります。

 

プランナー”が何を企図しているかは真に定かではありませんが、
物語の状況からセプテントリオンに与している可能性は高いと言え、
この事件によってセプテントリオンが敗北する可能性のある歴史を一つ改変し、
且つその起点となる時系列を封鎖した
、という結果は大きいでしょう。

 

/*/

この顛末の一切が“プランナー”の企画通りであったかはともかく、
ここで問題として挙げられるのがプランナー”が行う未来予知の異質性です。

 

周辺事象を勘案すると、少なくとも“U-3”の事象は、
介入ポイントから見て“無限の可能性=混沌”の向う側にあった未来の一つであると見られ、
作為無しに“U-2”の時点から観測して“U-3”の未来を予知する事は、
基本的に不可能であるといって良いでしょう。

 

そこで、その不可能な予知を可能にすると考えられる要素となるのが“時間移動”です。

 

これは、個々人の資質による技術と言える“(短期)未来予知”が、
“予知の対象となる事象=A”に対し、
“それに影響を及ぼし得る事象(群)=B1、B2...Bn”の、
可能な限り正確なシミュレートを可能な限り集積させる事で、
その誤差を極小化させようとするシミュレート技術であると言えるのに対し、
時間移動を用いた予知は、何らかの技法によって直接的に同時間軸の未来方向へ移動し、
その事象を観測すると考える事が出来ます。

 

シミュレート技術は、現在の状況から導き出す仮説や仮定であり、
そのシミュレートが外れる可能性を常に有します。

 

一方、時間移動を用いた予知は、現在から(主観上の)未来へ時間移動し、
(主観上の現在となった)未来を観測後、(主観上の過去となった)現在へ再度時間移動する、
という手順を踏むものと言う事が出来ます。

 

これは言い換えれば“未来方向から現在へ向かう時間犯罪”と言え、
“予知”を行った存在が“現在”という時点に存在する限り、
“予知された未来”=“既に観測された事象(≒過去)”となり、
“予知された未来”の鍵となる事象を改変する=時間犯罪以外において、
その未来が変動する事はあり得ない事になります。

 

これを“現在”という限定された時間軸上の事象として見ると、
全ての物事はある一点の未来へ向けた“予定調和”となり、
“予知能力者”が観測した未来へ向けて、あらゆる可能性が収斂していくものと考えられます。

 

つまり、本質的に“混沌の中で揺らぐ可能性”に過ぎなかったU-3の事象を、
プランナー”が予知能力(≒未来への時間移動)によって観測、確定させる事で、
“予定調和の未来”として次元接続リングによる過去と未来の接続を可能とした、
という一連の流れが考えられます。

 

これが単なるシミュレート技術ではない事を裏打ちするのが、
“未来の徳庵教授”による“時間移動”と言える現象です。

 

未来が混沌の果てにある状態であれば、
“未来”という時間軸に“徳庵教授”という人物が存在する確率は、
極めて単純化した暴論において“存在する”か“存在しない”の50%であると言えます。
(実際にはこの確率が無限に連なる事で未来に至る為、存在確率は無限に0へと近づきます)

 

しかし、それを越えて“未来の徳庵教授”が“存在する未来”を引き当て、
それを“実体”として引き寄せたという事は、
その“未来”が確実に起こるという蓋然性を既に得ていたと言える事になります。

 

以上の仮定から“プランナー”とはある種の“時間移動者”であり、
少なくとも“未来の観測を可能とする”だけの時間移動能力を持つと考えられます。

 

時間移動能力は、無名世界観では極めて特殊な能力とされます。
現時点でほぼ確定的に“未来の観測までを可能とする”レベルの能力を持つとされるのは、
歴史保安警察に所属する“レイカ・グリーン”及び、
芝村未来伊勢薙乃と名乗った事も)”の2名とされます。

 

しかし、この両名は歴史保安警察所属者であり、
一方の“プランナー”は、セプテントリオンの所属と見られる上、
海ラヴ事件”のようにある未来を予知し、その改変を仕向けたというのは、
ある種の時間犯罪に相当すると考えられ、歴史保安警察が取り締まる対象となります。

 

即ち、現在判明している時間移動能力を持つこの両名が、
プランナー”である可能性は極めて低いと考えられます。

 

また、視点を少し広げて、この両名以外において、時間移動能力を持つと考えられるのが、
時間警察(=歴史保安警察)を構成するとされる”のオーマと、
前の項において触れた“瑠璃の王族”です。

 

現在“”のオーマは、複数名が確認されておりますが、
その内、歴史保安警察所属者(時間犯罪を取り締まる側)と、
セプテントリオン関係者(プランナーは彼らの上位に位置すると考えられる)を除くと、
所属が明確になっていないのは“自由なる風の人”のみとなります。

 

“橙にして檜扇”のオーマネームと、聖銃“Np-05ゼウス”を持ち、
最強の聖銃ユーザーともされる彼女は、而して芝村未来を“我々を導く真王”と名指した事から、
自らを“真王に導かれる存在”としている事が判明しています。
よって、少なくとも時間犯罪を取り締まる組織に属する芝村未来に“導かれる”とした彼女も、
プランナー”である可能性は極めて低いと考えられます。

 

瑠璃の王族”については、その全員に詳細な言及が及んでいないものの、
後述する“魔王”と目される存在に対し、
王位継承に際してその“花嫁候補”を差し出す必要があるとされ、
少なくとも“魔王”そのものとは切り離された存在である事が伺われます。

 

かくして、現時点で存在や素性が判明しており“時間移動能力”に関わりがあると思われる存在に、
プランナー”と見られる存在は居ないという事が言えます。

 

ここで、素性や存在が不詳な人物として浮上するのが“芝村未来の実父”とされる人物です。
“電子の巫女王”の夫にして“魔王”と目されるこの存在は、
芝村未来が“遺伝的に時間移動能力を持った”直接的な原因とされます。

 

即ち、父親は“遺伝的な資質として時間移動能力を持つ”存在であると考えられます。
この存在が“プランナー”であるかは定かではありませんが、
現在の所その詳細が公表されていない時間移動者の一人であり、
その娘たる芝村未来が“~真王”と名指されている事などから、
オーマの“王統”と呼べるものに属する存在であり、
時間移動者である事から“プランナー”足り得る存在である事が考えられます。

 

また“瑠璃の王族”に関わる“魔王”が、
芝村未来の実父”である“魔王”と同一であるかについては厳密な回答こそ無いものの、
芝村氏の回答より“魔王なんて一人しかいない”という、公式の回答が得られています。
即ち“魔王”と目される存在は“複数存在するものではない”と考えられ、
魔王”と“瑠璃の王族”は主客の関係性が記述されている事から、
瑠璃の王族”に“魔王”とされる人物はひとまず存在しない、という事が考えられます。

 

なお、レイカ・グリーンに逮捕されたと思しき、囚人惑星に収監された犯罪者も、
歴史保安警察に逮捕されたという性質上、時間犯罪者であると考えられますが、
逮捕されている以上“プランナー”という存在足り得ないと考えられます。

 

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かくして“海ラヴ事件”におけるセプテントリオンは、
プランナー”という“時間移動者”によって歴史改変を行いながら、
“全ての時代と世界を管理する”時代へとまい進している途上であったと考えられます。

 

その後、“海ラヴ事件”はギャグへの回帰によって歴史改変を完了し、
ユーリ・A・田神は該当世界を経て“第7物理域アイドレス(?)”へ移動、
彼の手によってゲーム“ガンパレード・マーチ(+OVERS.Ver.0.89)”が完成するに至り、
世界の移ろいと共に、状況は次の段階へと移行していく事となります。

 

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