ミカヤの試作小説です。完成したらなろうに投稿予定。ではどうぞ↓
世界はかくも
力の無い者には残酷である
力の無い子供は更に力のある大人に
そして力ある大人は更に力の及ばぬ存在に
「ぎゃああああああああ!」
デシーモ
「クソッ、クソクソクソォッ!何だってこんな所に第十階級の魔物が居るんだ!」
馬車の外から僕を攫った冒険者達の悲鳴と激しい戦闘音が聞こえる
攫われて奴隷にすると馬車の外から話が聞こえた時はこの先の人生真っ暗だなと思っていたが人生真っ暗どころか人生が終了する事になるとは先ほどまで露ほども思っていなかった
村から出たことが無くそんな知識があるはずもない僕は第十階級とやらの魔物がどの程度強いのかは知らないが戦う術も身についていない僕に魔物が倒せるとは思えない
などと死の危機に瀕して変に冷静になった頭で考えていると戦闘に巻き込まれたのか馬車が弾き飛ばされ中に居た僕も放り出され近くの木に激突する
「ガフッ・・・」
戦いの経験すら無く痛みに慣れてない体に激痛が走る
(まだ死にたくなかったな・・・)
死に際にしては落ち着いてる心でそう考えていると現実逃避を自分でしているのか優しかった父さんの事とかを思い出す
そういえば死に際は過去の思い出/走馬灯を視ると父さんから聞いた事が・・・走馬灯?
・・・・・・・・・
そこまで考えてふと思い至る。走馬灯と言う自分の知らない言葉が何故自然と今思い浮かんだ?
自分は辺境の村育ちで王都の街の人間のように言葉を多く知っているわけではない
それこそ
少し考えてみると先ほどから知らない記憶がある事に気付く
意識を集中するとその記憶は紛れも無く自分の知らない自分の記憶
・・
それは前世の記憶だった
(何故今になって?!どうせ死ぬのに・・・この動ける体で、病院から動けなかった前世の自分の記憶なんて・・・!)
悔しいやら悲しいやら混乱しつつも周りに目を向けると先ほどまでは珍しくもなんとも無かった景色が随分と新鮮に映る
(せめてこの景色とかは最期の瞬間まで楽しむことに・・・)
「ガフゥッ!」
楽しむ間もなく戦闘音がしていた方向から僕を攫った冒険者の最後の1人が凄まじい速度で吹き飛ばされて来た
僕が先ほど馬車から吹き飛ばされた時とは別物の勢いで激突しそのまま事切れたようだ
まったく役に立たない、と自分を攫った冒険者を普段なら今世でも前世でも思わないような事をこの状況だからか考える
しかしせめて自分を殺す魔物の姿くらい見ておこうと魔物に目を向けようとして既に目の前に魔物の鼻先がある事に気付いた
そこには金色の美しい毛並みをもった九本の尾がある巨大な狐が居た
魔物を目の前にして恐怖が行き過ぎたのか息が苦しくなり体のあちこちが悲鳴を上げる
だがそんな中でも心だけが変に冷静になったのか僕の口から出てきた言葉は無様な悲鳴ではなく・・・
「綺麗だ・・・」
そんな言葉だった