パリティについて

Last-modified: 2020-12-17 (木) 15:19:35

パリティについて

 

キューブパズルの世界では、「このまま普通に回すだけでは絶対に解けない」状態をパリティと呼んでいます。
たとえば3x3x3で下図のような状態だと、キューブを分解しない限り6面完成はできません。
この状態を「真のパリティ」と呼ぶことにします。
4x4x4で同様の状態になった場合、3x3x3用の手順では絶対に解けませんが4x4x4特有の手順を使えば解くことができます。
この状態を「仮のパリティ」と呼ぶことにします。

Word_6.png
 

このwikiで扱うパリティは全て「仮のパリティ」です。
「仮のパリティ」が発生する原因としては、以下のものが挙げられます。

  • キューブを別のキューブに見立てて解いている (4x4x4を3x3x3に見立てる)
  • 状態が変化しても外見が変化しないor見えないパーツがある(3x3x3 Rhombohedron Cube*1Void Cube*2)
  • 同じ見た目のパーツが2コ以上ある (Trio-Cube*3)
  • 変形したときに特殊なパーツの移動が起こる。 (Helicopter Cube)
 

パリティが発生した時は、どのパーツが原因になっているのかを見極め、問題のパーツの向きや移動を正しく修正することで解消することができます。この「見極め」作業やパリティ解消手順を考える過程は、それなりに洞察力と知識を必要とします。非常に楽しく頭を使うことができ、キューブパズルの醍醐味の一つと言えるでしょう。

 

ごく稀にですが、何かの拍子にパーツがひっくり返るなどして「真のパリティ」が発生していることがあります。
当然直せません。私はこれで1週間くらい無駄にしたことがあります。(小声)
どう考えてもこの状態はあり得ないと思ったら、一度組み直してみるのも良いでしょう。

 
 
 

ちなみに

3x3x3では、センターの位置と向き、コーナーの位置と向き、エッジの位置と向きについてそれぞれパリティが発生し得ます。

 

下図のような状態が、3x3x3ではパリティとなります。

  • センター1個の90度回転(完成状態では、センターの回転量の合計は180の倍数になる)
  • センターの4点ループ交換(センターのみの移動の際、x,y,z軸の回転量の合計は180の倍数になる)
  • センター同士の2点交換(センターの互いの位置関係は保たれる)
  • エッジ1個の反転(エッジパーツの位置が全て正しい時、反転しているエッジの数は偶数)
  • コーナー1個の回転(コーナーパーツの位置が全て正しい時、コーナーの回転量の合計は360の倍数になる)
  • エッジorコーナーの2点交換(キューブを完成させるために必要なエッジとコーナーの2点交換の数は必ず偶数になる)
    Word_3.jpg
     

解説もどき

3x3x3のパリティについて順を追って解説します。上から順番に読んで下さい。
色々と飛躍する部分があるので各自脳内補完してください。
正確さは保障できません。

はじめに

パーツの位置と向きが全て揃っている状態を「完成状態」と呼びます。
同種のパーツ2個の位置を互いに入れ替えることを「互換」と呼びます。

命題1.センター同士の位置関係は保たれる

ルービックキューブの構造から自明です。

命題2.ある状態からキューブを完成させるとき、コーナーとエッジで合わせて偶数回の互換が行われる

どこかの面を90度回転させた時の事を考えてみましょう。
コーナーは A→B→C→D→A のように4点ループの交換が行われます。
エッジも  a→b→c→d→a のように4点ループの交換が行われます。

 

4点ループの交換は3回の互換でできています。
たとえばA→B→C→D→Aのループは、AとBの互換+BとDの互換+BとCの互換 に等しくなります。*4

Parity_1.png

よって、1回の90度回転はコーナーとエッジで合計3+3=6回の互換を行っていることになります。
キューブを崩す動作は全て90度回転の組み合わせとして表現できるため*5、キューブがどれだけ崩れても常に完成状態から6n回の互換が行われています。
6n=偶数なので、ある状態からキューブを完成させるとき、コーナーとエッジで合わせて偶数回の互換が行われる必要がある事が分かります。

 

命題2から、以下の2つの法則が導けます。

  • 法則1:コーナーとセンターが完成している時、エッジに残っている互換の数は偶数。
  • 法則2:エッジとセンターが完成している時、コーナーに残っている互換の数は偶数。
 

ちなみに
エッジまたはコーナーの2点交換のみが残る状況とは、あと1回の互換で全てのパーツが揃う時です。
あと1回ということは、奇数回の互換が残っていることになります。
しかし先ほど見たように、3x3x3では常に偶数回の互換が行われます。
よってこのような状況は存在し得ず、エッジまたはコーナーの2点交換のみが残ることは有り得ない、ということが分かります。

 

命題3.キューブが完成状態の時、センターの回転量の合計は180の倍数になる

完成状態のキューブを一旦崩して再び完成状態に戻すことを考えます。
命題2から、キューブの崩れ方には以下の2通りがあることが分かります。(センターは固定)

  • パターン1:コーナーの偶数回互換+エッジの偶数回互換
  • パターン2:コーナーの奇数回互換+エッジの奇数回互換
 

「完成状態のキューブ」は、エッジとコーナーでそれぞれ0回の互換が行われています。
0回の互換は偶数回互換であり、奇数回互換ではありません。よって、完成状態はパターン1にのみ含まれます。

 

パターン1は、「偶数回の90度回転が行われている状態」と言い換えることができます。
ある面を90度回転させると、エッジとコーナーでそれぞれ3回(奇数回)の互換が行われるからです。エッジとコーナーの互換回数が偶数になるためには、90度回転は偶数回でなければなりません。

 

センターの回転は面の回転に従うので、パターン1ではセンターが90度×偶数(=180の倍数)だけ回転しています。そして、完成状態はパターン1にのみ含まれます。
よって、キューブが完成状態の時、センターの回転量の合計は180の倍数になる事が分かります。
また逆に、T-permなどパターン2に含まれる状態では、センターの回転量は180n+90度になります。

 

命題4.センターのみの移動の際、x,y,z軸の回転量の合計は180の倍数になる

完成状態からスライスムーブを行った後、コーナーに合わせてエッジを再び完成させる時のことを考えます。
このとき、以下の2点が明らかになります。

  • 90度のスライスムーブには奇数回の互換(エッジの4点ループ)が伴う。
  • 180度のスライスムーブには偶数回の互換(エッジの2x2交換)が伴う。
 

命題2の法則1より、コーナーの完成状態を保ちつつエッジを移動させる場合、エッジは偶数回の互換しか行えません。
よって、90度のスライスムーブを奇数回行った状態から、コーナーに合わせてエッジを再び完成させる事は不可能です。
従って、コーナーとエッジが完成可能ならば90度のスライスムーブは偶数回行われています。

 

よって、センターのみの移動の際、x,y,z軸の回転量の合計は180の倍数になる事が分かります。
有名なVoid Cubeのパリティは、センターが見えないためにx,y,z軸の回転量が正しくないまま解けてしまうことによって起こるのです。

 

命題5.正規状態に対して反転しているエッジの数は偶数

U,D,R,L系統の回転を使ってエッジを正しい位置に戻した時、向きが正しくなるエッジの状態を「正規状態」と呼ぶことにします。(右図はイメージ)

Parity_3.png

そうでないエッジの状態を「非正規状態」と呼びます。
U,D,R,Lを回している限り、各エッジの状態は保たれます。
FまたはBに巻き込まれた正規状態のエッジは非正規状態となり、非正規状態だったエッジは正規状態となります。

 

FまたはBに巻き込まれる正規状態のエッジの数には0~4の5パターンがあり、それぞれ+4,+2,0,-2,-4個のエッジが正規状態に変わります。

完成状態では偶数個のエッジ全てが正規状態であり、それが回転によって常に偶数個増減することから、正規状態のエッジは常に偶数個であることが分かります。
よって正規状態でないエッジの数も常に偶数個であり、1エッジの反転というものは存在し得ないことがわかります。

 

命題6.コーナーの正規状態に対する回転量の合計は360の倍数になる

Parity_4.png

コーナーパーツに存在するU面またはD面の色が、U面かD面を向いている状態を「正規状態」と呼ぶことにします。

 

コーナーパーツは、正規状態から時計回りに120度または240度回転することができます。

 

UまたはDの回転を行っても正規状態に影響するコーナーの回転は起こらないので、回転量は0度です。
R,L,F,Bいずれかの回転を行うと、2つのコーナーが120度、別の2つのコーナーが240度、4つ合計で720度回転します。720=360×2なので、正規状態に対するコーナーの回転量の合計は常に360の倍数になります。
完成状態では全てのコーナーが正規状態なので、3x3x3では回転量の和が完成状態に対して360度の倍数にならないコーナーの回転(例えばコーナー1つの120度回転)は起こらない事が分かります。

 
 



Tag: 知識・理論


*1 コーナーの一部は回転によって見た目が変化しない。
*2 センターが見えない。
*3 1面しか見えないエッジは1色につき2つあるが、それぞれ互いの見分けがつかない。
*4 互換の順番は入れ替え不可能です。
*5 90度のスライスムーブは、隣接する面の90度回転x2と解釈します。