サイダー提督の別荘/サイダー提督の応接室特設A
Last-modified: 2020-09-23 (水) 19:13:10
サイダー提督の別荘
- 雪倉が、所属する支社に戻り数日後、夏の陽気な日差しがさす三波島は、いつもと変わらぬ日常を送っていた。 -- サイダー提督(ナレ)?
- ローマ(I)「提督、今日は少し散歩に行きたいのだけれど」 構わないよ。何もなければ電話しないけれど、もしものために電話は持っていってくれ。 ローマ(I)「わかってるわ。電池切れには気を付けるわ」 おう、よろしく頼む。あと定期、行くなら持ってきな。 -- サイダー提督?
- (まったくもう……あのドジなアメリカ人とは違うのよ……。ま、今日は海にでも行こうかしらね。少し海岸で……ま、まあ……路線バスで行こうかしら) -- ローマ(I)?
- \プップー/ よろしく頼むわね。 「おー、鎮守府さんのローマちゃんか。今度はどこだい?」 海よ。海岸沿いにね 「ローマちゃんもおセンチな人だねぇ~。っと、運賃かカードは持ってるかい」 提督から持たされた定期があるわ。 「オッケー。ローマちゃんみたいなべっぴんさんなら、どこまでも乗っていいぞ?」 あ、ありがとう……。(目そらし) -- ローマ(I)?
- (ローマを乗せたバスは、しばらく南下すると、海岸線沿いの道に出た。太陽がきらきらと、波間を照らす。まるで宝石箱のように、波はきらめく。) --
- 「ローマちゃん、この辺でいいかな」 (ローマを乗せたバスが、停留所ではないところで止まる。ビーチへの入り口だ。) 運転手さん、ここはバス停じゃないわ。それに私、もう少し先のバス停で……。 「いいのいいのって。俺おすすめのスポット。あまり人が来ないから、のんびりできるぞ?」 -- ローマ(I)?
- そう……じゃあ、降りるわね。 「あ、帰りはもしウチのバス乗るなら、ポストのところに立っていてくれ。俺、今日はこの路線の担当だから、拾ってやるよ」 ありがと……ま、提督を呼ぶかもしれないけれどね。 「そっかそっか。んじゃ、気をつけてな?」 \プップー!ブロロロ……/ -- ローマ(I)?
- (全く、この島の人間はホント、お節介焼きなんだから。さながらシチリアよ。まあ、こういうのも悪くはないわね。そして、あの運転手の言う通りね。風が心地よいわ。波音も、アドリア海を思い出すわ……まるで白くてきれいな……あ、あの布は何かしら) -- ローマ(I)?
- (海岸に横たわる白い布のようなものに気づき、ローマは近づく。近づくにつれ、それがただの布切れではないことに気づき、ローマはかけよった) --
- (な、なによこれ!に、人間じゃない!……ここは) 『(イタリア語)大丈夫?しっかりしなさい!』(……日本語がいいかしら) (トントン!)聞こえてる?しっかりして!(波打際に、うつぶせで少女が倒れていた。白いワンピースに包まれた、髪を二つに結った少女であった。)??「み……な……」 しっかりしなさい!名前は言える?どこかわかる? ??「わたしは……や……」(パタン) しっかり! -- ローマ(I)?
- (これは早く助けを……と、とにかく脈を……生きているわ。気絶しただけね。それにしても、何故ここに倒れていたのかしら……そして、この子は何者かしら……とにかく、て、提督に電話よ) -- ローマ(I)?
- \ジリリリリリリン!ジリリリリリリン!/ 鳥海(I)「出ますね。はい、三ツ矢鎮守府でございます。ローマさんお疲れ様です。……えっ?もう一度お願いします。……わかりました、すぐ替わります」 もしもし。 ローマ(I)『提督、大至急ここに来てほしいの』 どうした、何か事故か。 -- サイダー提督?
- ローマ(I)『海岸で人が倒れていたの!』 人着は? ローマ(I)『身長は私より低い女の子。脈はあるけれど意識不明。白いワンピースで……髪の毛を肩で2つにわけてる』 わかった。ローマ、場所はわかるか。 ローマ(I)『よくわからない……どこなのかしら』 了解。場所は青葉に頼んで調べてもらったうえで、警察と消防には連絡する。ローマはその子の面倒を頼む。変わったことがあれば私の携帯に連絡をくれ。 ローマ(I)『わかったわ。じゃあ、一旦切るわ』 オーケー。 -- サイダー提督?
- (受話器を戻す)鳥海、青葉にローマの位置をGPSで確認。あと、警察と消防に連絡、緊急搬送要請を。 鳥海(I)「私たちはどうしましょう」 明石を駐車場へ呼び出してくれ。念のため、我々も向かうつもりだ。鳥海も来てくれ。 鳥海(I)「わかりました」 -- サイダー提督?
- (電話を切ったのち、海岸にて)……しっかりしなさい!起きて!助けを呼んだわ!(……冷たい。生きてはいるけれど……相当身体が冷えているわ……何か、何かかぶせられるものは……これは?) -- ローマ(I)?
- (少女から遠くないところに、艤装と思しき部品が飛び散っていたのだ。連装砲。対空砲。魚雷発射管。そして本体。しかしどれも……弾薬が空だったのだ。) --
- (ぎ……艤装?)ねえあなた!これは何?しっかりして!あなたはどこの鎮守府なの?ちょっと!起きて!話をして! (ウーッ……ファンファンファン……ピーポーピーポー……) -- ローマ(I)?
- (20分後……ローマが少女を発見した南の海岸) 到着したぞ。 明石(I)「ここ?」 ここだ。 鳥海(I)「とりあえず、調査のための道具は持ってきましたけれど……」 規制線が張られているな。 「なんだなんだ」 「誰か倒れてたらしいよ」 -- サイダー提督?
- 「(制服警察官)はい近寄らない!ここは立ち入り禁止です!」 もう野次馬が来てやがる。はいちょっと開けてくださーい。 「ここは立ち入り禁止区域です!あなた方も入らない!」 失礼しました。私、三ツ矢鎮守府の三津谷です。(証明書を見せる)後ろの二人は鳥海と明石。うちのメンバーです。うちのローマが、第一発見者とのことですが。 -- サイダー提督?
- 「あー、鎮守府の。どうぞ入って下さい。それと、後ろのポニーテールの方は……」 ん? 青葉(I)「失礼します!」 ちょっと待て。なんでここに居る。 青葉(I)「えーと青葉、記者としてちょーっと気になりまして……」 見世物じゃないんだ。まあ、記録班も必要だから……ちょっと来てくれ。あ、彼女は……。 青葉(I)「どもー青葉ですぅ!」 -- サイダー提督?
- 「青葉さんですね?コラム拝見してます」 青葉(I)「いやいやー、ありがとうございます~」 「それはさておき、青葉さんも三ツ矢鎮守府の方で?」 ええ、まあ。 青葉(I)「証明書もありますよぉ!」 「それなら、提督さんと一緒に」 さ、行くぞ青葉。 青葉(I)「ひ、引っ張らないでください!青葉の制服壊れちゃいます!」 -- サイダー提督?
- (提督は、ローマの元へ歩み寄る。周辺には、保護された少女のものと思われる艤装のパーツが散乱している。)ローマ。 ローマ(I)「遅いじゃない!もう運ばれたわ!」 町立病院にか。 ローマ(I)「そうよ。救命士さん曰く、生きていたのが不思議だと」 わかった。あとで見舞いには行かないとな……。 ローマ(I)「そうね。私もついていくわ」 それよりも……。 ローマ(I)「気になっているのよね。これ」 明石(I)「見たところ、私たち艦娘の艤装のように見えますが……」 そうだな……。 -- サイダー提督?
- 明石(I)「でもこれ、ちょっと違いますね。ほら、このフレーム」 青葉(I)「これは、金属製ですよぉ」 鳥海(I)「私たちのは……」 明石(I)「軽量化のため、炭素素材を使っています。少なくとも、私たちの所属ではない」 となると……。 ローマ(I)「ねえ、あの子どうなるの?」 すまんが、それは警察との相談になるだろう。うちは鎮守府であっても、海軍犯罪捜査局じゃないからな……。 -- サイダー提督?
- (艤装を取り囲む鎮守府のメンバー。そこへ、私服の刑事が近づいてくる。) 「すみませんが、これは……」 明石(I)「おそらく、艤装とみて間違いはありません」 「ということは、倒れていたのは艦娘で間違いは……」 青葉(I)「間違いはないと思います。けれど……」 明石(I)「三ツ矢鎮守府の艤装ではないので……鎮守府側でも、事故と事件の両面で調べてみたいと思います。私は、もしできるなら……艤装の解析とか行いたいな、って」 -- サイダー提督?
- それでしたら、エキスパートの三ツ矢鎮守府の方に検査してもらえると……」 構いませんよ。 明石(I)「おまかせください。私たちで調査してみます」 「ありがたい。こういうのには不得手なもんで……」 明石(I)「佐智子、夕張を呼んでこれ引き上げてもらいます。彼女もうちのスタッフで、同じ工廠部なんです」 「夕張さんは何か証明書を……」 三ツ矢鎮守府は、基本的に胸に入構証兼身分証を付けてますので、それでご確認願います。 -- サイダー提督?
- 「警部!」 (刑事の横へ、制服の警察官がやってきた) 「どうした?」 「被害者が意識を取り戻したとのことです」 「わかった」 えっと、私たち、彼女から事情聴取に……。 「構いませんが」 ……わかりました。連絡先とお名前を頂けますか。 「名刺をお渡しします。三波警察署刑事部第一課強行犯係の南です。電話番号はここに」 私の名刺もお渡しします。それで、うちのローマの方は……。 -- サイダー提督?
- 南刑事「鎮守府へお戻り頂いて結構です。ローマさんがこの件に関係している可能性は低そうですし、なにより、三ツ矢鎮守府の方ですから、身元は分かっています」 わかりました。こちらも判明しだい情報をお送りします。明石、夕張が到着次第艤装を回収して検査。鳥海とローマは私についてきてくれ。青葉は引き続き情報収集にあたってくれ。こっちは町立病院へ向かうぞ。 一同「了解」 -- サイダー提督?
- (……ここはどこ) (知らない天井) (ベッド) (心電図モニタの音) (点滴チューブ) (なぜここに寝ている) (理解できない) (不明) (私は誰だ) (……そうだ、私は――) -- ??(I)?
- (数時間後 三波町立総合病院病室)こちらがあの少女の。 「はい。仮に『三波うみ』としています」 ありがとうございます。 ローマ(I)「海で見つかったから『うみ』って、単純ね」 鳥海(I)「わかりやすくていいのでしょう。私だって、ふみ、って名前ですから」 そうだな。さあ、ご対面と行きますか……。(ガラガラガラガラ……) -- サイダー提督?
- 失礼します。 鳥海(I)「失礼しますね」 ローマ(I)「失礼するわ」 こんにちは。私は、三ツ矢鎮守府の提督、三津谷と申します。 鳥海(I)「同じく、次席秘書の鳥海です」 ローマ(I)『(イタリア語)私はローマ。彼らと同じところにいるわ』 うみ「……」 あの、お名前とか……。 うみ「(顔が険しくなっていく)」 所属とか……。 -- サイダー提督?
- うみ「うぅ……グスン……」 ローマ(I)「泣かせた」 鳥海(I)「司令官さん……(汗)」 ローマ(I)「提督……一旦外に出てもらえるかしら」 なんでだよローマ。 ローマ(I)「いいからさっさと出なさい!」 あ、はい。(ガラガラガラガラ……) -- サイダー提督?
- 鳥海(I)「ローマさん、あんなに強くは言わなくても……」 ローマ(I)「ごめんなさいね。そんなつもりではなかったのだけれど……」 鳥海(I)「大丈夫です。司令官さんも、多分わかってると思います」 (そして、鳥海はうみ……と仮に呼ばれている少女の方へ向き直る) 鳥海(I)「こんにちは。私、鳥海って言います。あなたと同じ、艦娘です」 ローマ(I)「私はイタリア海軍出身のローマよ。同じく、艦娘」 うみ「かん……むす……?あああああああ!」(暴れだすうみ) -- 鳥海+ローマ(I)?
- 鳥海(I)「お、落ち着いてください!私たちはあなたの敵ではありません!」 ローマ(I)「私たちも、提督も、武器は何も持ってないわ!だから落ち着いて!それにあなた、あの海岸で倒れてたのよ!?」 うみ「う、うう……」 鳥海(I)「大丈夫です。どこの誰で、どの艦種かわかりませんが、私たちはあなたの味方です。だから、……ね」 ローマ(I)「安心して」 うみ「……やえ」 -- 鳥海+ローマ(I)?
- 鳥海(I)「やえ?」 うみ→やえ「名前。やえ。私、やえ」 鳥海(I)「やえ……さん。よろしくお願いします。あと、苗字とか、ほかに、何か覚えていること……ありませんか?」 やえ「……怖い」 鳥海(I)「こわい?」 やえ「提督……こわい……」 -- 鳥海(I)+やえ?
- 続く…… --
- 鳥海(I)「司令官さんが、怖い……」 やえ「……怖い。ぶつ」 ローマ(I)「ついに提督、女に手をあげるようになったのかしら……」 鳥海(I)「ローマさん、それは早合点です!やえさん、思い出せる範囲でいいです。だから、何があったのか……」 -- サイダーの艦娘?
- やえ「任務失敗。ぶつ。意見する。蹴る。それに……」 鳥海(I)「無理に言わなくても、大丈夫よ」 やえ「言ってた。私たちはしょせん《コマ》だって……。だから提督、怖い……うぅ……」 鳥海(I)「……大丈夫」 (何も言わず、鳥海はやさしく背中をさすった) -- サイダーの艦娘?
- (ガラガラガラ……)お疲れ様。どうだ。 ローマ(I)「かなり大変だったみたいね」 壁際に立ってたから、少しは聞こえてきたが……。 鳥海(I)「司令官さんと、やえさんを会わせるのには、時間がかかりそうです」 相当、前のところが酷かったようだな……。青葉や明石に、調査は頼んでおくよ。だから鳥海、ローマ、しばらくついていてあげてくれないか。 -- サイダー提督?
- 鳥海(I)「ですが司令官さん……、私には次席秘書の仕事もありますし、それに……」 大丈夫。話なら、霧島や大淀にも伝えてある。ローマも、心配せんでいい。しばらくは、あの子のことを頼む。 ローマ(I)「わかったわ。提督は、ほっとけない性分なのよね」 鳥海(I)「司令官さんのお願いなら、私、頑張ります」 ……ありがとう。 -- サイダー提督?
- っと、明石から連絡があったみたいだ。すまないが、先にバスで戻ってる。カギは渡しておくから、二人で帰ってきてくれ。 鳥海(I)「あ、ちょっと司令官さん!……行ってしまいました」 ローマ(I)「おっちょこちょいな人ね……」 -- サイダー提督?
- (二十分後 三ツ矢鎮守府本部工廠) 明石(I)「遅いですよー。いつまで待たせるつもりですか?」 すまん、時間がかかっちまってな。 夕張(I)「もう解析終わりましたよ」 早いな……。 明石(I)「ま、大まかにですけどね。資料は、提督のiPadにすでに送ってますよ」 ありがとう。どれどれ……。すまんが、ざっくりと説明してくれんか。 明石(I)「わかりました。そうですね……」 -- サイダー提督?
- これか?……《YAE CA-N03 八重》と書かれているが。 夕張(I)「だからこの艤装と倒れていた子は、八重って名前。少なくとも艦名は“八重”で確定」 名前は八重で間違いないな。病院でも、鳥海がそうだと確認していた。 明石(I)「うーん、私たちみたいに偶然か、寄せたのかわからないけど……八重って名前で間違いないのね」 うん。“八重子”とか、“八重樫なんとか”という名前かもしれないけれど、八重という言葉がどっかに入っているのは間違いない。 -- サイダー提督?
- 明石(I)「まあ、ウチの例があるから、もしかしたら“やえ”、とストレートに呼ぶんだと思うけどね。ただ、それ以上に問題なのが、これ」 これ? 夕張(I)「この銘板」 ということは……。 明石(I)「噂には聞いていたけれど、流出した資料を元に独自開発された可能性があるわ」 本当か!?それだとしたら……。 明石(I)「うちにいる子たちや、よそのとも違うからね。……でもね、艤装は吹き飛んじゃってる上に、あの受け答えなら、大丈夫だと思うよ?」 そうか……ありがとう。 -- サイダー提督?
- 明石(I)「あとは……いろいろ資料を当たってみるけど、本当、誰がこれを作ったのかしら……」 夕張(I)「いろいろと甘いのよね」 何が。 夕張(I)「工作精度。図面を見てはいないけれど、明らかに酷いのよ。バリの処理はできてないし、このボルト穴だって、ほら、大きさバラバラ。こりゃ着弾しただけで爆発するのも頷ける」 爆発したっていうのか、この艤装が。 夕張(I)「そう。しかも誘爆による爆発。ウチの艤装でもありうるけど、こんなに爆発四散するのは……」 ありがとう。引き続き調査にあたってくれ。それと……おっと、電話だ。 -- サイダー提督?
- 私だ。 大淀(I)『提督!今どこですか?』 工廠にいる。明石と夕張も一緒だ。 大淀(I)『今すぐ執務室に来てください!霧島さんと鳥海さんが言い争ってます!』 わかった、すぐ向かおう。 明石(I)「どったんですか?」 執務室に向かう。ちょっとトラブルだ。 夕張(I)「トラブルね……行ってらっしゃい」 おう。 -- サイダー提督?
- (数分後・同執務室) どうした。 霧島(I)「だから鳥海、私はあの子をウチで預かることは賛成できないの」 鳥海(I)「霧島さんこそ、やえさんのことを分かってません。あの子には、今、私たちが必要なんです。そうじゃなきゃ、ダメなんです」 大淀(I)「提督、やっと来ましたか……。今朝ローマさんが保護した艦娘、八重のことについてですが……」 あの子についてか。何でトラブってる……? -- サイダー提督?
- 霧島(I)「あ、司令いいところに。私たちで会議をしていたのですが……」 鳥海(I)「やえさんを保護するか、それとも東京に移送するかで……」 なるほどね。 大淀(I)「三波警察署の刑事さん、南さんからも、艦娘なら鎮守府で預かってほしいとの打診がありました」 わかった、ありがとう。それで……どういうことなんだ。二人とも、説明してくれ。 -- サイダー提督?
- 霧島(I)「まず私は東京へ連れて行くべきだと思うの。青葉の変装術なら、これまでにバレた経験はほとんどないわ。それに、東京の方が安全です」 鳥海(I)「しかし、私はそうは思えません。心を少しだけ、少しだけですけど開いてくれた……今、環境を変えるのは、やえさんにとって良い結果になるとは思えません!」 どちらも一理はあるな……うむう……。 -- サイダー提督?
- 霧島(I)「リスクを背負うのは、私は得策ではないと思います」 鳥海(I)「リスクを取ってでも、あの子を引き入れるべきだと思います。それが、良いのではないかと考えています」 ……なるほど……わかった。 -- サイダー提督?
- (……リスクではあるが、鳥海の案を採用しよう) 霧島。確かにリスクを抱えることになるかもしれん。けれど、小さいからこそ、できることってあるんじゃないかな。 霧島(I)「お言葉ですが司令……あの子は……」 明石から説明は受けた。あの子の出自が、どんなかをね。しかしそれでも、手を差し伸べたいと思うんだ。だってあの子がまるで――。 -- サイダー提督?
- 霧島(I)「――わかりました」 ありがとう。ワガママに付き合わせてしまって。 霧島(I)「いいんです。リスクを取ってでも人助けをしたい。司令らしいと思いますよ。そこが司令のいいところであり、悪いところでもあるんですけどね」 人聞きの悪い言い方するなよ。 鳥海(I)「ふふ、司令官さんったら」 よし、そうと決まれば……。 -- サイダー提督?
- 鳥海(I)「色々と準備、しないといけませんね」 そうだな。私で手配できるものは準備しておこう。 霧島(I)「私も、あとで会ってきますね」 頼んだ。あ、あと、臨時の入構証も渡しといて。 霧島(I)「わかりました」 -- サイダー提督?
- (数日後……) 鳥海(I)「似合ってますよ?」 八重(I)「……ありがとう……鳥海さん……」 鳥海(I)「えっと……ちょっと違うと思うのだけれど……まあいいか。ではやえさん、行きましょう」 八重(I)「ありがとう……ございます。とりうみさん、みなさん」 「いえいえ、こちらこそお大事に」 「元気でな?」 -- サイダーの艦娘たち?
- 無事退院出来たようだな。 鳥海(I)「はい、なんとか無事に」 八重(I)「て、て、提督……」 まだ、か。 鳥海(I)「こればっかりは……まだ時間がかかりそうです……」 八重(I)「……ありが、とう……」 どういたしまして。あ、鳥海、情報はもらってるな? -- サイダー提督?
- 鳥海(I)「はい。八重さんの本名、わかったんですね」 ああ。予想通り、『三波やえ』でいいそうだ。青葉の情報収集力には脱帽させられるよ。 鳥海(I)「そうですね……驚くというか、どんな手を使ったのでしょう……」 わからん。けどまあ、これからだな。 鳥海(I)「……ええ」 (八重はようやく、提督と話すことが出来た。それでも提督が怖いのか……提督から距離を取ってしまっていた) -- サイダー提督?
- (八重着任より数日後) (コンコン) 鳥海(I)「失礼します」 お、どったの鳥海。 鳥海(I)「やえさんのことなんですが、今時間よろしいですか」 いいよ。今日はあんまり書類整理もないし。 鳥海(I)「まず報告ですが、香取先生による試験が完了し、三ツ矢鎮守府の合格基準に達していました」 あんなふわふわとした雰囲気なのに、意外と出来るんだな。見かけによらず、だ。 -- サイダー提督?
- 鳥海(I)「あとは艤装との訓練なのですが……私やほかの艦娘の艤装だとうまくフィットしないようなのです。だから、調査を、と」 ふむう……わかった。決済印を押し次第出しておこう。鳥海、精算処理は頼んだぞ。 鳥海(I)「わかりました。それでは、香取先生にお伝えしますね」 (鳥海は一礼し、執務室を出て行った) (あと気がかりなのは……) -- サイダー提督?
- (ピポパポパポパ……プルルルル……プルルルル) 明石(I)『はい明石です』 お、明石か。 明石(I)『何ですか提督、今整備中なんですよ』 すまんかったな。手短に終わらそう。八重の旧艤装なんだが、解析のほうはどうだ? 明石(I)『うーん、各パーツの解析は終わった感じなんだけど、いろいろとよくわからない部分もあるから、解析と情報提供兼ねてゆっきーのとこにお願いするつもりなんだけど』 わかった。連絡はしてるのか? 明石(I)『あー忘れてた!今からしとくから!』 (ツー、ツー、ツー……) -- サイダー提督?
- (まったく、そそっかしい奴……なんて自分が思っていたら、霧島呼ぶの忘れていたじゃないか) (プルルルル、プルルルル) 霧島(I)『お疲れ様です、司令』 霧島、すまん、押印してほしい書類があるんだが。 霧島(I)「まったく、司令ったら忘れっぽいんだから……」 (しばらくして、霧島がやってきて、溜息をついたのちに書類への押印を始めた) -- サイダー提督?
- (数分後) 青葉(I)「司令官、お邪魔しまーす!」 おう、ノックもせずに入ってくるとは青葉だな。 青葉(I)「大正解!司令官には1ポイント!」 なんの1ポイントだ。 霧島(I)「ツッコミが追いつきませんが……青葉、何か見つけたのかしら?」 青葉(I)「ちょっとドアを閉めますね」 -- サイダー提督?
- 霧島(I)「ちゃんと入った時に閉めればいいのに……」 開けたら閉める。これは守ってな。 青葉(I)「気を付けます。それはそうと、八重さんについての情報なのですが」 八重の? 青葉(I)「はい。青葉独自による、複数の情報筋からのなので信ぴょう性は高いです」 話してくれ。 (霧島も手を止めて青葉の言葉に聞き入る) -- サイダー提督?
- はい。青葉独自の情報なので、あくまで判断の材料にしてください。八重さんの所属していた、もとい逃げ出してきた組織は、『インルシティシア』と呼ばれる非合法組織、いわば海賊です。1万トンクラスの、客船に偽装した海賊船を根城に、主に北太平洋を中心として荒らしまわっているようです。その組織が、何らかの形で情報を入手したとみて、間違いないでしょう。 -- 青葉(I)?
- 提督「ただ、流出しているという情報は、確かなのか」 はい。詳細はわかりませんが、ある艦娘の図面が、ダークウェブ上において高値で取引されているようです。それを大枚はたいて買ったがために、一気に傾いたという情報もあります。 霧島(I)「海賊も近代化しているのね……」 ええ。それに彼らにとって情報は商売道具の一つ、ですから。それで、起死回生を図って試作したのが、八重さん、ということになりますね。情報料を早く回収したい、そのために艤装を短期間で制作したとみていいでしょう。 -- 青葉(I)?
- ありがとう。だから、八重の艤装が粗製だったということになるのか。 青葉(I)「はい。海賊行為という不法行為、そして定繋港を持たないがための補給物資の少なさからも鑑みて、そう作らざるを得なかったと考えるべきでしょう」 霧島(I)「そうなると……」 何らかの形で衝突する可能性はあるだろうね。とかく、対策を練らねばならないだろうな……。 -- サイダー提督?
- \ビーッ!ビーッ!ビーッ!ビーッ!/ な、なんだ? 霧島(I)「侵入者です!」 子供のいたずらならいいが……場所は? 青葉(I)「車両庫方面!機械警備システムによれば、侵入者は二名です!」 了解した。霧島、鎮守府内の保安要員を向かわせろ!明石には警告を! 霧島(I)「了解!」 -- サイダー提督?
- 鳥海(I)「侵入者警報……誤作動だといいのですが」 大淀(I)「まあ、子供がいたずらで入ってきたとかそういうのならまだいいのですが……とにかく、警戒を緩めてはいけませんね」 ローマ(I)「まずは上空へ威嚇射撃、必要があればテイザーを使うのかしら」 鳥海(I)「それであってます!」 大淀(I)「もう少しで車両庫ですね……って、この音は!」 -- サイダーの艦娘たち?
- (乾いた音が断続的に響く。これが、発砲音だと気づくまでに、そう時間はかからなかった) --
- 明石(I)「くっ……まさか不意をつかれるとは……こっちはエアガンだけしかないっての!」 夕張(I)「それにしても、なぜこっちを撃ってきたのかしら」 明石(I)「艤装を回収して解析していた際に、もしかしたら位置情報が出ていたのかもしれない……また撃ってくるわ、伏せて!」 (パパパパパパパン!) -- サイダーの艦娘たち?
- ??A「ターゲット補足。モード、近接戦闘。ユニットブラボー、包囲」 ??B「了解。移行、包囲モード」 明石(I)「こっちへ来る!」 夕張(I)「どうするの!」 明石(I)「モンキー(レンチ)投げて気を引くしかできないよ?」 夕張(I)「それにしても、何あの肌の白い女たちは?」 明石(I)「青い髪に機械的な瞳、同じような服、そして行動パターンや話し方からして、ロボットかもしれないわ」 夕張(I)「ロボット……」 明石(I)「だから、逃げるよりは隠れて増援を……って、あれは!」 -- サイダーの艦娘たち?
- 大淀(I)「とまれ!止まりなさい!」 鳥海(I)「Here is MITSUYA Fleets Control area! Freese! Drop the weapon!」 ローマ(I)「動かないで!撃つわ!」 ??B「対象ノ増加ヲ確認」 ??A「モード切替。銃撃戦ヘ移行」 大淀(I)「出来るだけ手足を!」 鳥海(I)「了解!」 ローマ(I)「でもあれ……人間じゃないわ!」 大淀(I)「あの動き……」 鳥海(I)「まるで……いえ、アンドロイドそのものです」 ローマ(I)「来るわ!散開!」 -- サイダーの艦娘たち?
- ??A「目標増加ヲ確認。各個撃破、各個撃破。目標入力、戦艦」 ??B「了承。右方、軽巡洋艦撃破開始」 大淀(I)「眼鏡のロングヘアがこっちに向かってくる!」 ローマ(I)「ポニーテールね……ちまちまと動いて……!」 鳥海(I)「二人とも無事!?」 明石(I)「助かった……」 夕張(I)「なんとか!工具では歯が立ちませんでしたから!」 鳥海(I)「そこからは動かないでくださいね!」 -- サイダーの艦娘たち?
- ローマ(I)「とまりなさい!この!」 (パン!パン!パン!) ??A「拳銃回避。射撃移行」 (パパパパパン!) ローマ(I)「わっ!何よ!」 大淀(I)「止まれ!命令だ!……って言っても、止まりませんよね」 (パン!パン!パン!) ??B「速度低速、当方高速。回避可能ト判定。回避後射撃」 (パパパパパン!パパパパパン!) -- サイダーの艦娘たち?
- 明石(I)「大淀!ローマさん!」 大淀(I)「何?忙しいのに!」 ローマ(I)「何よ!」 明石(I)「おとりになって、線路の下に引き付けてください!鳥海さんは天井を!」 大淀(I)「何をするつもり!?」 ローマ(I)「いいから何かを考え付いたのよ、やるしかないわ」 夕張(I)「何をするつもり?」 明石(I)「佐智子、車庫内の電源って別系統よね」 夕張(I)「変電所は別個。もし車庫内で短絡すれば構内が電力遮断するだけよ。ただ東電さんから電話の1本や2本はかかってくると思うけど」 -- サイダーの艦娘たち?
- 明石(I)「手段を選んでいる暇はない……やっちゃって!」 夕張(I)「鳥海さん、架線を止めている碍子を撃ってください!」 鳥海(I)「でも、そんなことしたら……」 明石(I)「外の線路とは別系統です!」 鳥海(I)「や、やってみるわ!」 -- サイダーの艦娘たち?
- (パン!パン!パン!) 大淀(I)「鳥海さん、何を!」 鳥海(I)「いいから碍子を撃って!」 ローマ(I)「わかったわ」 (パン!パン!パン!) ??A「コイツラモ噂ホドジャナイナ」 ??B「空ヲ撃ッテラ」 明石(I)「ふん、食らいなさい……’’直流1500V’’を!」 -- サイダーの艦娘たち?
- (パン!) \ドッカーーン!/ --
- 何だ!? 霧島(I)「車両庫のほうからです!」 \ジリリリリリン!ジリリリリリン!/ はい、三ツ矢鎮守府でございます。……東電さん?いつもお世話になっております。……えっ、変電所が。一応電灯は切れてないので……。わかりました、確認出来次第折り返し連絡いたします。それでは。霧島、確認に向かう。ここは頼んだ! 霧島(I)「了解」 -- サイダー提督?
- 明石(I)「とま……った?」 大淀(I)「すごい爆発音だったけど……」 ローマ(I)「何があったのよ」 夕張(I)「と、止まってます!私たち、やりました!」 鳥海(I)「(放心状態でへたりこむ)」 おい!大丈夫か! 明石(I)「なんとか!」 -- サイダーの艦娘たち?
- まずは……みんな無事でなにより。そしてそこに……って、人間に電気流したのか!今すぐCPRと救急車の手配をしてくれ! 明石(I)「待ってください!」 明石!倒れている人間を見殺しにする気か! 明石(I)「違うんです!あの二人は……人間ではありません」 ……人間ではない。なら……なんだと言うのだ。 明石(I)「平たく言えばロボットです」 ロボット? -- サイダー提督?
- 明石(I)「その前に……提督、変電所はトリップしてますか?」 ああ、東電さんから事情説明を求める電話があった。 明石(I)「なら大丈夫です。急いでこちらに!」 わかった。大淀、鳥海、担架を持ってきてくれ。ローマは霧島に状況を軽く伝えてくれ。 一同「了解」 -- サイダー提督?
- (数分後) これでいい……な。 明石(I)「ありがとうございます。その前に、八重さんの艤装にあったこれ、を……」 (バキッ) 何壊した。 明石(I)「位置情報システムですね。おそらく、これで位置がばれてしまったのではないかと……うかつでした」 次は気を付けてくれよ……ただ、これで、八重がウチに居るのはバレたも当然だろう。 -- サイダー提督?
- 大淀(I)「提督、こうなってしまった以上……」 ひと悶着あるだろう。注意を怠ることのないよう。大淀、鳥海、一旦執務室に引き上げたうえで、霧島と緊急会議。青葉にマスコミ対策をするよう頼んでくれ。私と明石、夕張でちょっと調べる。 明石(I)「私、パソコン取ってきますね」 夕張(I)「RS-232Cのコンバータ要る?」 明石(I)「あったほうがいいかも!」 -- サイダー提督?
- 明石(I)「一応、どちらを解析しますか……?」 ん、何ゆえにだ。 明石(I)「機材取りに行くついでにゆっきーに連絡したら、1体そのままで送ってほしい、って。興味深いからばらして調べてみたい……と」 わかった。眼鏡の方を。 明石(I)「提督も好きね……」 なんだよ、いいじゃないか。まあそれはそうと、……どうするんだ。 明石(I)「とにかく探すしかないわ。接続可能な部分を」 夕張(I)「端子がわからないし、読み出せるかどうかもわからない。だからつないでみるだけ」 -- サイダー提督?
- (数分後)あったか? 明石(I)「見つけた!」 首筋か……。 夕張(I)「相当なギークね……とりあえず、つないで中身を見ないと……」 だけど、なんで止まったんだ? 明石(I)「解析しないとわからないけれど、多分思い切り1500Vを流したから保護回路焼いたかヒューズあたり飛ばして電源遮断、ってところかしらね。おそらくは……」 夕張(I)「えーと、接続はUSBにAC電源、そして……RS-232Cね」 なんでいまさらそんなロートルなのを……。 明石(I)「工業用では今でも現役だから、選択したんじゃない?コンバータあって正解ね」 -- サイダー提督?
- (その開いた隙間に見える部品を、明石は一つ抜く) おい何抜いた。 明石(I)「ヒューズ。たぶんこれのせいで……って車用のヒューズじゃない。これなら、代替品はその辺に転がってるわね」 その辺って……。 夕張(I)「ま、あとは取り換えて電源投入……してみるわ。動かないかもしれないけれど」 とりあえずやってみてくれ……暴走しないともかぎらんから、気を付けるんだ。 明石(I)「わかってます、って。佐智子~、とりあえず同じ30の刺しとく」 夕張(I)「おねがーい。こっちはパソぶっさしたから」 -- サイダー提督?
- 明石(I)「さあ……起動と行きますか……」 夕張(I)「ボタンどれなの?」 明石(I)「プリント基板に、ご丁寧にPowerって書かれてたからそれぽちって押すだけね。さあ行くね」 夕張(I)「やって!」 (ブォン……) 夕張(I)「おー、きたきた。まずはデータ吸い上げて……」 かかりそうか。 明石(I)「少し時間がいるかもしれない。1時間もらえるとうれしいかな」 結構短いんだな。 夕張(I)「ま、ざっくりと見てみるだけだから」 オーケー、終わったら連絡くれ。 -- サイダー提督?
- (1時間半後・執務室) (コンコン)どうぞー。 明石(I)「失礼します。終わりました!」 お疲れ様。 明石(I)「とりあえず……基本的な部分はUNIXベースの独自改良品、それにいくつかのソフトウェアを追加したものですね」 ええと……平たく言えば、ソースも公開されているフリーのOSに手を加え、枯れた、もとい技術的に成熟したプログラミング言語を用いて作成されているというわけなんだな。 明石(I)「はい。冒険をせず、経済性そして安定性を取ったと考えれば説明はつきます。見る限りですが、部品に汎用品を使ったのも、費用を浮かせるためだと思われます」 -- サイダー提督?
- なるほどね。 明石(I)「ハードはまだきちんと見てませんが、多分、構成的にはそこまで特殊なパーツは使ってないかなとは思います。ただ、私もこういうアンドロイドの専門はハードよりもソフトなので……」 わかった。引き続き解析を頼む。 明石(I)「念のため、バックアップ取ったうえで、仮想マシン組んで走らせてもいいですか?」 -- サイダー提督?
- いいけど、鎮守府のサーバ使うなよ?工廠部にあるマシンでやってくれよ。 明石(I)「わかってますって。あ、そうそう、バックアップ用のHDD、4テラ1本買っていいですか?」 いいけど、何に使うんだ? 明石(I)「あのアンドロイドのバックアップを取りたいので……」 それならいいぞ。あとで、領収書を回してくれ。 明石(I)「ありがとうございます!これで……明石スペシャル焼いても問題ないですね!」 おい。 明石(I)「ま、まあ、怒らないでくださいよ。これしか方法がなかったんです」 ……方法? -- サイダー提督?
- 明石(I)「位置情報システムです」 あれか。確かこいつが原因で、襲撃があった……と言ってたな。 明石(I)「ええ。今更、と言われればそれまでですが、あれがついていたせいで、ここが探知されたと言っても過言ではありません」 それで……八重の艤装ではチップをぶっ壊したと。 明石(I)「はい。物理的にアクセスできたが故の荒業です。だから、無効化できたのですが……アンドロイドだけは、まだ分解どころか、何が積まれているのすらわかりません。モジュールが積まれているのは、デバイスマネージャで分かったので、それを無効化するためにいろいろ弄くり回してみたのですが……」 -- サイダー提督?
- それで……設定ごとオーバーライドさせたわけ、か。 明石(I)「不審な電波発信もしなかったので、それが一番の手だったんです。最適な方法は、解析が進めば見つかるでしょうけれど……」 わかった。 明石(I)「今は無理矢理それを切った状態なので、机の上に横たわっている状態ですけれど……いくつかサブ・セットを仕込めば鎮守府内で動かすことも……」 必要があれば動かしてもいいが……今回のように襲撃を受けかねないことにならないようにな。 明石(I)「わかってます。私も、架線吹っ飛ばすのはこれで勘弁したいです。それでは、失礼しますね。続き、やってきます」 気を付けてな。 (ガチャ) -- サイダー提督?
- (リスキーなのはわかっている。最悪、“あの子”を壊す羽目になる……けれど、私は……あのAIを乗せてみたい……。もしかしたら……) -- 明石(I)?
- (数分後、工廠) 明石(I)「佐智子……相談があるんだけど」 夕張(I)「何、三保」 明石(I)「あの子にね、AIを乗せてみたいと思うの」 夕張(I)「AI!?本気?」 明石(I)「本気よ」 夕張(I)「私は……危険だと思ってはいるけれど、でもその一方、すっごく興味あるの。仕様がよくわからない以上、リバースエンジニアリングをかけるしかないけれど……」 明石(I)「そうね。だから、時間はかかるかもしれない、けれどやってみる価値はあるわ」 夕張(I)「やってみよっか。三保、ハードの制御はお願いね。ルーチンなどのカーネルは私やるから」 明石(I)「じゃ、始める前に、架線の復旧から……やっちゃおっか」 (二人は装備を整えると、まずは切ってしまった架線と変電設備を修復するために、作業へと取り掛かり始めた……) -- 明石+夕張(I)?
- (それから数日後・三ツ矢鎮守府本部会議室) 集まってもらって、ありがとう。 霧島(I)「臨時に呼んだということは……何か進展があったのでしょうか」 青葉(I)「はい。青葉から説明しますね。まずはメールで送りました資料を見てください」 鳳翔(I)「青葉ちゃん、えっと……?この、あいぱっど、の使い方が……」 それなら……。 青葉(I)「3部ほど紙でも用意していますのでお渡ししますね」 鳳翔(I)「ありがとう、青葉ちゃん」 青葉(I)「お安い御用ですよぉ。では、資料の2ページ目から順に説明しますね」 -- サイダー提督?
- まずはインシルティシアのこれまでに分かっている情報です。1万トンの客船に偽装して海賊活動を行っていることはわかっていました。ただそのあと、何らかの組織がバックについたようで、そこの配下組織として活動しつつ、支援を受けているようです。これにより、八重さんを保護した時よりも、財政面、技術面双方での向上が見られます。それゆえ、先日襲撃してきたアンドロイドのようなものを準備してきたと思われます。ただ……、青葉としても、これ以上のことはわかりませんでした。 -- 青葉(I)?
- ありがとう。続いて明石。 明石(I)「えっと、アンドロイドについてですね。アンドロイドは、おそらくですが八重さんの艤装を改良、ないし次世代型とみて間違いはないかと」 なぜに、だ。 明石(I)「艤装もあったので解析してみたところ、八重さんのと構造が似ていました。少し違いがあった部分が、改良点だと考えれば納得がいきます」 霧島(I)「この前爆発があった日に……、2体鹵獲したのよね」 -- サイダー提督?
- 明石(I)「はい。その時に確保したうちの1体のソフトを回収、夕張とともに解析中です」 ボディの解析は進んでいるのか? 明石(I)「ちょっとわからない部分が多いから、ゆっきー、渡鳥運輸さんへ解析依頼済み。何かわかるかな、って。だから、うちで解析に使った子以外の方と、八重さんの艤装を一緒に」 わかった。そっちは引き続きあたってくれ。 -- サイダー提督?
- あとは、小規模だが偵察隊を結成したいと思う。6人程度で考えている。 霧島(I)「メンバーはどうしましょう」 人選は任せる。霧島、最適なメンバーを集めてくれ。 霧島(I)「わかりました、司令」 では、今日は一旦解散! -- サイダー提督?
- (数時間後) 金剛(I)「偵察隊の旗艦とは、重大任務デース」 -- サイダーの艦娘たち?
- 北上(I)「けどさー、これって異色のメンツだよねー」 鈴谷(I)「何で?特設海域とかだとよく一緒じゃん?」 沖波(I)「ええ。北上さんや鈴谷さんともよく一緒に出撃しますね」 大鷹(I)「はい。私も航空支援という形で……」 仁淀(I)「なら問題ないと思いますよ?ね、金剛さん?」 金剛(I)「Yes!問題なし!だけどミナサーン、油断はNoなんだからねー!」 -- サイダーの艦娘たち?
- (数時間後、臨時に結成された偵察隊は、急遽三ツ矢鎮守府を出発、偵察任務に就くことになったのだ。無線傍受により、インシルティシアの船が小笠原近くの公海上に現れたとのことであった) --
- 北上(I)「そうだねー。まあ、魚雷を用意しておきますかね、っと」 鈴谷(I)「ある程度近づいたら、鈴谷の艦載機飛ばすよー」 大鷹(I)「任せてください。偵察なら得意ですから」 仁淀(I)「お姉ちゃんから電探、勝手に借りてきたし!」 沖波(I)「勝手に借りるのはどうかと思います……」 金剛(I)「ワタシも霧島から借りてきたデース」 -- サイダーの艦娘たち?
- (数十分後) 仁淀(I)「ん……!感あり!何かいます!」 北上(I)「もしかして目標~?」 仁淀(I)「たぶん、そうだと思う」 鈴谷(I)「偵察出す?」 大鷹(I)「行きましょう。航空隊、発艦!」 鈴谷(I)「鈴谷の艦載機も、いっけー!」 -- サイダーの艦娘たち?
- (数分後) 鈴谷(I)「……ねえ、あれがそうなの?」 大鷹(I)「普通の……客船です。それこそ、ごく普通の」 金剛(I)「提督はこれhが怪しいと言ってたデース。アオバがくれた情報でも、コレデース」 北上(I)「まあ、相手にはアンドロイドもいるらしいけどね!それも、アタシ自慢の魚雷でけちょんけちょんにしてあげましょうかね!」 金剛(I)「もう少し、近づいてみるデース」 一同「了解!」 -- サイダーの艦娘たち?
- 来やがったか、鎮守府とやらの連中が……。さあ、楽しませてくれよ、この戦闘をなあ! -- ???
- 金剛(I)「あと0.5海里デース」 鈴谷(I)「このままいけそうじゃん?」 北上(I)「まー、提督の見当違いならそれでいいんだけどね?……ん?」 仁淀(I)「電探に感あり!た、多数です!」 沖波(I)「皆さん!船から何か出てきます!」 鈴谷(I)「沖波ちゃーん、どったの?」 沖波(I)「あれは……この前のアンドロイドのようなものが……」 金剛(I)「総員警戒態勢!敵デース!」 -- サイダーの艦娘たち?
- 大鷹(I)「艦載機発艦!航空雷撃で先制して!」 北上(I)「さあ、魚雷を放ちましょうかね!」 ??「敵捕捉。戦艦1、空母1、重巡1、軽巡2、駆逐1。各個撃破、各個撃破」 ??「了承」 ??「了承」 ??「了承。戦闘行動開始」 -- サイダーの艦娘たち?
- (アンドロイドたちが、一斉に三ツ矢鎮守府偵察隊へと迫る。偵察隊は、各々の装備を繰り出す。) 金剛(I)「主砲、Fire!」 \ドンガラガッシャーン!/ 金剛(I)「Hit it! but... 2、3体倒してもすぐに表れるデース……」 北上(I)「雷撃しても雷撃しても、これじゃあ間に合わないよ!」 沖波(I)「わ、私はよけるだけで精いっぱいです!」 -- サイダーの艦娘たち?
- ??「ユニット333脱落。ユニット647補充」 ??「攻撃継続。攻撃継続」 鈴谷(I)「鈴谷の残弾、もう少しだよ!」 沖波(I)「わ、私はもう……(カチッ、カチッ)」 金剛(I)「弾がアブナいデース……仁淀、緊急を呼んでくださーい……」 仁淀(I)「わ、わかりました!」 -- サイダーの艦娘たち?
- メーデー!メーデー!こちら三ツ矢鎮守府所属仁淀!海賊と思われる組織と交戦中!至急応援願う!場所は…… -- 仁淀(I)?
- 聞こえているな?こちら雪倉、そちらの艦隊が救援要請を出している、何があった? -- 雪倉?
- 明石(I)「こちら三ツ矢鎮守府所属、明石。こちらでも情報収集中。わかっているのは……」 変わってくれ。わかっているのは、三ツ矢鎮守府でインシルティシアという海賊組織の偵察隊を組成し派遣したこと、そして、その部隊から救援要請があった。 明石(I)「ウチとしては、すぐに臨時の救援部隊を派遣する予定」 -- サイダー提督?
- 了解した、これより救援任務に移る。合流するのなら合流ポイントの指定を要請する。 -- 雪倉?
- 現場の5海里手前でどうだろうか。三ツ矢鎮守府の艦艇を出す。それを現場での出撃拠点として運用するつもりだ。 明石(I)「軽巡大淀を緊急出航させる予定よ。救援隊として、ウチからは霧島さん、ローマさん、加賀さん、赤城さん、蒼龍さん、飛龍さんが出撃予定」 -- サイダー提督?
- 了解、これより合流ポイントへ移動開始する、この件はツケと言うことにしておこうか(くくく…という笑い声) -- 雪倉?
- 燃料弾薬はこっちで出そう……。まあ後程、だ。霧島、緊急出港準備! 霧島(I)「連絡しました、10分で可能です」 わかった。 加賀(i)「こっちも完了よ。行きましょう」 -- サイダー提督?
- (戦闘エリアより5海里手前) ここに投錨。 青葉(I)「投錨確認しました」 霧島(I)「救援隊、準備完了です」 艤装をはめて、ゆっきーたちと合流後、すぐに出てくれ。 霧島(I)「了解です、司令」 -- サイダー提督?
- 三ツ矢鎮守府救援隊、準備完了? ローマ(I)「問題ないわ」 加賀(I)「大丈夫よ」 蒼龍(I)「艦載機、全部オッケー。あとは出撃と合流ね?」 飛龍(I)「こっちも準備万端」 赤城(I)「加賀さんと、力を合わせて頑張りましょう」 ええ。合流したら、すぐに出発しましょう。 -- 霧島(i)?
- こちら雪倉、そちらの船と思われる反応をレーダーで捉えた、こちらが見えるだろうか? -- 雪倉?
- (双眼鏡で確認)視認したわ。こちらと合流後、すぐに出発します。よろしくお願いします。(手を振って合図) -- 霧島(I)?
- では……いざ出陣! 加賀(I)「ここから南に5海里ね……」 そうね。くれぐれも、警戒は怠らぬよう! -- 霧島(I)?
- 捕捉……敵増加……補足……戦闘開始…… -- ???
- 新兵二人は後方から支援、煙幕展開の後に私と木曽で敵部隊に殴り込みをかける。…三ツ矢鎮守府からは誰か来るか? -- 雪倉?
- (謎のオーラを発しながら)私のかわいい仲間をいたぶってくれたお礼はしないとねぇ……。私が行くわ。(ハンマーを持っている) -- 霧島(I)?
- 私も行くわ。当然じゃない、火力自慢なら、キリシマにも負けないわ。 -- ローマ(I)?
- 金剛(I)「霧島!」 鈴谷(I)「た、助けに来てくれたの!?」 仁淀(I)「ゆっきーたちまで……」 沖波(I)「助かりました……私たちも応戦しましょう!」 ??「敵補足……攻撃、攻撃」 (雪倉たちの方に向かって、アンドロイドたちが攻撃を行うために突撃してゆく!) -- サイダーの艦娘たち?
- 攻撃?その予定はキャンセルだ(艤装からスモーク展開)、突撃する!霧島、ローマ、遅れるなよ? -- 雪倉?
- 霧島(I)「ええ、行くわよ?」 ローマ(I)「任せなさい。この主砲がものをいうわ」 霧島(I)「ハンマーも準備完了、機関最大!突撃!」 -- 霧島+ローマ(I)?
- (展開されてスモークへと三人が突っ込んでいく、その中からは機械が壊れる音が断続的に聞こえ、スモークが晴れたあとにそこにいるのは三人だけだった) -- 救援部隊近接班?
- ちくしょう。なかなかの連中だ……引き上げだ。一旦戻り、作戦を練り直さねば……。 (アンドロイドたちが方向転換し、一斉に母艦への向かい始める) -- ????
- ……引いていく……。ねえ木曾、一発ぶちかまして、こっちもお見舞いしてやろうじゃない。 -- 北上(I)?
- ああ!………知ってるか?指揮官の技量が試されるのは撤退時らしい、つまりな ………”お前らの指揮官は無能だなァ!” -- 木曾(九)?
- (二人から放たれた魚雷は、まっすぐとアンドロイドへ向かっていく。そして──、爆発音とともに、数体が木っ端みじんに吹き飛んだ) --
- (実艦・大淀がやってくる) お疲れ様。 霧島(I)「無事、戦闘終了です」 金剛(I)「助かりマシタ……」 明石(I)「ゆっきー!荷物の受け渡しとかあるから、乗ってってー!」 -- サイダー提督?
- 提案感謝する、それとあればだが整備施設を借りたい。可能だろうか? -- 雪倉?
- えっと、ここ(大淀艦内)にはないけど鎮守府内にはあるから……それでいい?私と佐智子、夕張が整備するから、任せて? -- 明石(I)?
- 構わない、ただ新兵二人への教育も兼ねるので広めの場所を頼む。 -- 雪倉?
- オッケイ!必要なら、工具も貸し出すよ?じゃあ、到着まで、ちょいと休んでてね? -- 明石(I)?
- (偵察隊と救援隊を収容した大淀は、針路を鎮守府のある三波島の方へ向けると、全速力を出し、島へと戻っていった……) --
- (実艦・大淀ブリッジ) みんな無事か。 金剛(I)「無事デース。助かりました……」 青葉(I)「こ、これは解析を依頼した……」 えーと、木曾と……。 青葉(I)「雪倉さんです。渡鳥運輸の」 よろしくお願いします。彼女たちの提督、三津谷です。 -- サイダー提督?
- 雪倉「はじめまして、一応重巡の雪倉だ、渡鳥運輸支社長も勤めているため、支社の話はこちらに回してもらうことになる。…今回の件もな。」木曾(九)「知ってると思うが木曾だ。今回は監督補佐として来たわけだが…一体何がどうなってるんだ?」 -- 九割引き?
- よろしく。 青葉(I)「実は、青葉たちはある海賊組織との戦闘に巻き込まれています」 きっかけは、やえと名乗る少女を、うちのローマが保護したところから始まる。すでに明石から雪倉さんの方へ話は行っていると思うが、その保護した少女はインシルシティアから脱走してきた艦娘だった。 青葉(I)「その後、偵察と、可能なら討伐を兼ねて、今日臨時の偵察隊を組んだのですが……」 我々の予想をはるかに超え、強大な力を持つようになっていて返り討ちに遭った……というのが事の顛末さ。 -- サイダー提督?
- 青葉、資料あったろ。 青葉(I)「ですが司令官、あれは府外禁の資料ですが……」 構わんよ。紙ベースのを渡しといてくれ。 青葉(I)「わかりました。木曾さん、青葉たち作成の資料です」 (木曾に、青葉が資料を手渡す) 明石(I)「(臨時の工廠代わりの部屋からやってきた)提督、あのですね……(耳打ち)」 本当か!?わかった、ちょっと電話させてくれ。(ピッピッ!プルルルル……)ああ、鳥海か。私だ。……うん。八重に代わってくれ。……そうだ。おそらくだが。……うん。ありがとう。じゃあ、伝えておく(ピッ) -- サイダー提督?
- 木曾(九)「なぁ、この艤装ってお前のだよな?」雪倉「周辺物との対比からになるが、このサイズから見ておそらく私の艤装かその同型だろうな。脱走して保護されている辺り私の同胞ではなさそうだ…“人間”かもしれんな、彼女は」(木曾が露骨に顔をしかめる)木曾(九) -- 九割引き?
- 木曾、どった? 青葉(I)「ふ、船酔いですか……」 -- サイダー提督?
- 木曾(九)「それが…それが人間のやることだってのか?」雪倉「あぁそうだとも、これもまた人間のやることだ。非合法組織が何をしても不思議ではない、たったそれだけのことだ。それより、そちらは今後どうする?」 -- 九割引き?
- 青葉(I)「青葉もウソだと思いたいところでした。けれど……ひとつひとつを重ねていくと、この結果に」 私は、少なくともこんな連中を野放しにする程の人間じゃない。だから、私は彼らを止める。それだけだ。 青葉(I)「八重さんのような人を、青葉も放っておけるような人間じゃないです!」 -- サイダー提督?
- こちらとしても放置する理由はない、提督次第ではあるが協力させていただく。…まぁ参加拒否は無さそうだが。 -- 雪倉?
- ありがとう。こちらとしても、可能な限り情報提供は行う。出来る限りの協力をしよう。それと、八重本人に会ってもらえないだろうか。 -- サイダー提督?
- …いいのか? -- 雪倉?
- ああ。義理の姉がいる、と言ったら『会ってみたい』とは言ってたからね。嬉しいような悲しいような、そんな顔をしながら言ったと思うよ。鎮守府に居るから、着いたら会ってもらえるだろうか。 -- サイダー提督?
- ただ、八重さんかなりの人見知りらしく……知らない人に会うのを結構怖がったりするところがあるんです。だから、そこもよろしく……お願いします。 -- 青葉(I)?
- 木曾(九)「(お前の妹って…)」雪倉「(ああ、問題はないだろうが最悪要警戒だ)了解だ。…しかし彼女の身元は判明しているのか?」 -- 九割引き?
- 青葉に調べてもらった。CA-N03八重、本名三波やえ。7月18日生まれで、東京の小笠原出身らしい。 青葉(I)「青葉の調べではここまでわかりました。インシルティア以外に非合法組織に在籍していた情報は全くなく、なぜ海賊に加わったのか不思議なぐらいです。あ、はい、これが写真と、住民票の写し、三ツ矢鎮守府在籍証明書と入構証のコピーです」 (青葉は書類一式の入ったクリアファイルを手渡す) -- サイダー提督?
- (資料に目を通す)…確認した、問題ない…こちらとしては会うことに異論はない。(やはり出来るか…これは入念に潰しておきたいが) -- 雪倉?
- ありがとう。まもなく入港だから、下船の用意をしてもらえないだろうか。鎮守府までは、バスで案内しよう。 青葉(I)「入港時刻の連絡、終わりました」 ありがとう。みんな、接岸準備をはじめてくれ。 -- サイダー提督?
- (船は鎮守府最寄りの港へ入港した) --
- (数分後、三ツ矢鎮守府執務室) そこのテーブルのところに椅子があるから、そこに座っててもらえるかな。なにか飲み物が欲しければ、コーヒーとか紅茶、コーラとかなら準備できるけれど。 青葉(I)「資料、もし部数必要でしたら、青葉に行ってください」 -- サイダー提督?
- 私からは二つ、一つは勝機の有無、もう一つは…潜入作戦並びに潜入戦力の提供賛否だ。そちらには具体的な作戦があるなら余計なお世話だが。 -- 雪倉?
- それはだな── 青葉(I)「青葉の試算、ですが、三ツ矢鎮守府単独では、あの戦いを見てもらえばわかる通り勝機はありません。ですが、複数鎮守府による合同作戦を展開するなら、勝算はあります」 あと、潜入時の戦力は、もし必要ならこちらからも出す。ただ……どうすればよいのか、我々にも見当がつかない。 -- サイダー提督?
- 敵中枢潜入なら、こちらに任せてもらえないだろうか?提督のお墨付きもついている。そちらは外部戦力の掃討をお願いしたい。 --
- ありがとう。青葉から、情報は流しておくように伝えておく。あとは……何名ぐらい出せばよいだろうか。 -- サイダー提督?
- 深部潜入はこちらからすべて出す、そちらはそれ以外をたのむ。戦力が必要ならばこちらからも出そうか? -- 雪倉?
- もし可能なれば。 青葉(I)「青葉たち、とかくああいった多数の敵と対処することが不得意なもので……」 -- サイダー提督?
- それは他の鎮守府に救援要請するのも視野にいれ、後々に決めよう。こちらの解析結果の影響もある -- 雪倉?
- そうだな……連携も視野にいれないといかんな。 青葉(I)「多くの力があれば、さらに……」 だな。あと、ゆっきー。 青葉(I)「勝手にあだ名付ける……」 妹……なのかな、八重とそろそろ会ってみないか。もうそろそろ、帰ってくるころだと思うけど。 -- サイダー提督?
- 雪倉「……」木曾(九)「大丈夫だ、そいつと提督を信じろ。きっとなんとかなるさ」雪倉「…そうだな。了解した。、」 -- 九割引き?
- (コンコン)鳥海(I)「ただいま戻りました」 八重(I)「ただいま、戻り。ました」 鳥海(I)「あら、お客さんですか。こんにちは」 八重(I)「こんにち……は」 -- 八重+鳥海(I)?
- 木曾(九)「お邪魔してるぜ。」雪倉「こちらの鳥海と…君は? 」 -- 九割引き?
- わ、私……三波、やえ、って言います……。よろしくお願い。します。 -- 八重(I)?
- 木曾(九)「こちらにも居ると思うが木曾だ、よろしくな。」雪倉「渡鳥運輸支社を任されている雪倉だ。君がやえか、話は聞いている。(微妙な表情)」 -- 九割引き?
- 木曾、さんと……雪倉、さん……はいっ、覚え、ました。お話、というのは……何でしょうか。 -- 八重(I)?
- 君がそうなったのは私達の責任だ、君にはそれを糾弾する権利がある。 -- 雪倉?
- 責任……。えっと、私。なんで、ですか……? -- 八重(I)?
- そのうちわかる…出来れば、忘れないで欲しい -- 雪倉?
- はい……。覚えておき……(考えるポーズ)……もしかして、お姉様……というのは、……雪倉、お姉様……? -- 八重(I)?
- 恐らく君の予想通りだ、殴ってくれて構わない -- 雪倉?
- (首を横に振る)……そんなこと……できま、せん。私が、お姉様と、姉妹艦のような存在に。なれたから。お姉様と、会えたのです。だからお姉様、って、呼ばせて。ください。だめ、ですか。雪倉、お姉様……。 -- 八重(I)?
- そうか…そうか。そちらが良いのなら私はそれでいいさ、よろしくやえ。 -- 雪倉?
- よろしくお願いします、雪倉……お姉様! -- 八重(I)?
- (偵察と救援から数日後) 明石(I)「これで……いけるかしら」 夕張(I)「あくまで仮想環境上だけど、24時間連続稼働テストでエラーは出ていないから大丈夫だと思うけれど……」 明石(I)「入れるまではわからないってところね」 夕張(I)「やってみるしかないね。さあ、接続しちゃって」 -- 明石+夕張(I)?
- 明石(I)「各端子接続完了。リンク来てる?」 夕張(I)「USBも232C-USBコンバータも問題なし!サブセット流しちゃって!」 明石(I)「了解!」 (明石は思い切りエンターキーを叩く。『Uploading...0%』の文字が、無事書き込み動作を開始したことを告げる) -- 明石+夕張(I)?
- 『Uploading...10%』 明石(I)「うまくいくといいんだけど……」 夕張(I)「仮装と実機じゃ違いがあるからね……しかも、今回はハード側をブラックボックスとして半ば扱ってるわけだから……」 明石(I)「でも、汎用性のある言語セットで助かったけどね?」 『Uploading...20%』 -- 明石+夕張(I)?
- 『Uploading...35%』 明石(I)「心配なのは、システムが暴走すること……」 夕張(I)「そればっかりはね……あらゆる可能性を考えないと……」 明石(I)「でも、成功できれば、面白い調整したから楽しくなると思うけれど」 夕張(I)「えー、どんな調整?」 明石(I)「ひみつー。だけど、ちょっと面白い方向へ学習させてみた」 『Uploading...50%』 -- 明石+夕張(I)?
- 『Uploading...65%』 夕張(I)「その時のログとか取ってるの?」 明石(I)「取らないわけないじゃない。学習度合いの調整や確認、変なこと覚えてないかの確認、そして行き過ぎた学習とかね。(大淀)広美に怒られない程度にはしないとね、提督に対する態度を見ればわかると思うけど」 夕張(I)「あれは絶対ただの照れ隠しだから。まあねー、広美は一途なところあるし」 明石(I)「そうそう。真面目で不器用だからねー」 夕張(I)「あまり噂話してると勘付かれるよ?あっ、できたみたい」 『Uploaded. Reboot system? Y/N? >:』 明石(I)「もち……Y……っと」 『System Reboot. Please disconnect USB and RS-232C Cable.』 -- 明石+夕張(I)?
- 明石(I)「……目が……開いた」 夕張(I)「第一段階は成功みたいね」 (アンドロイドは、上体を起こし二人を見つめる) ??「……システム正常。ライブラリ読み込み……完了。ネットワーク接続なし。起動シーケンス問題なし……YK-2000 LOT10034 起動します」 明石(I)「……いってくれ……」 夕張(I)「神様……」 ??(I)「こんにちは。僕の製造番号は10034、YK-2000型です」 -- サイダーの艦娘たち?
- 夕張(I)「ねえ三保、なんで最上さんやレーベちゃんみたいな喋り口なの」 明石(I)「えー。だってさー、僕っ子だよ?眼鏡っ子の僕っ子だよ?」 夕張(I)「とりあえず後でなんとかするとして……私たちがわかる?10034号」 ??「はい。僕のAIを開発した、明石三保二佐、および夕張佐智子二佐ですね?」 明石(I)「正解!」 夕張(I)「もうそんなことまで……」 -- サイダーの艦娘たち?
- 明石(I)「すごいっしょ?あ、あとは……」 夕張(I)「名前とか?」 明石(I)「名前かぁ……苗字はアンドロイドから、安道」 夕張(I)「率直ね……でもわかりやすいかも。名前は……34だし……ミヨ。ミヨでどう?」 明石(I)「決まりね!」 -- サイダーの艦娘たち?
- さあ今日の仕事終わり、っと。 香取(I)「お疲れ様です、提督」 香取先生もお疲れ様。そうだ、仕事終わりに紅茶と洒落込もうか。 香取(I)「それはそれで良いものですが……提督、お電話が」 出てくれ。 -- サイダー提督?
- 香取(I)「もしもし、三ツ矢鎮守府で……明石ちゃん?お疲れ様です。ええ……本当?……わかりました、提督にかわります。提督、明石ちゃんからです。アンドロイドが直ったとか、なんだとか」 代わってくれ。お疲れ様。 明石(I)『提督お疲れ様。例のアンドロイドですが、動くようになりました』 さすがマッドサイエンティスト明石。 明石(I)『マッドとは人聞きの悪い。私は正当な技術者ですしこれは科学の発展のためなのですいいですか』 お、落ち着け。わかった、わかったから。そっち行って、実際に見たほうがいいのか? 明石(I)『何たって最高傑作ですからね!』 前みたいに変電所焼くなよ……わかった、行こう。じゃあ10分後に。(ガチャ) 香取(I)「見に行かれるのですか?」 まあね。興味半分、不安半分。 香取(I)「もしものために……私もお供します。暴走するとは思いませんが……」 お願い。 -- サイダー提督?
- (数分後、車両庫一角) 明石(I)「おそーい」 未だ7分だぞ。 明石(I)「カップラーメン二つも作れちゃいますよ?それはさておき、これが私たちの最高傑作!」 ??「ヨロシクオネガイシマス、テイトク」 どこが最高傑作なんだ。 明石(I)「あれー?さっきまでちゃんと喋ってたのに……」 夕張(I)「パラメータしくじったかな……」 ??「ふふふ……」 -- サイダー提督?
- ??「初めまして。ボクはYK-2000型10034号、先程貰った名前はミヨって言います。よろしくお願いします」 できんじゃん!んで、貰った名前ってのは。 夕張(I)「アンドロイドと言っても乙女じゃん」 まあそうだな。 夕張(I)「だからロットで呼ぶのは味気ないから、下2桁を取ってミヨってしてみた」 なるほどな。 明石(I)「それでー、アンドロイドだから、苗字は安道」 苗字まで決めちまったのか!? -- サイダー提督?
- 明石(I)「いやーね、将来的に艤装つけて出撃してもらう事になるかもしれないじゃん?」 いやそれを決めるのは私と副提督なんだが。 明石(I)「まあ仮の話、仮のね」 仮ねえ。 明石(I)「そうなった場合、三ツ矢鎮守府の人事システムに名前登録しておかないといけないはずよね」 ああ。 香取(I)「確か、敵味方識別装置でしたっけ、それに登録するために……とかなんとか」 艤装の運用上登録しておけと上がうるさいもんでな……。 -- サイダー提督?
- 明石(I)「そのシステムなんですが、さっき調べたところ、一つ欠陥があってですね」 重大か? 明石(I)「いいえそうじゃないんですが……見てもらえればわかるかなー、と」 -- サイダー提督?
- どれどれ。 《三ツ矢鎮守府人事データベース [新規] 苗字 〈 〉 名前 〈ミヨ〉 『苗字を入力して下さい』》 あちゃー。 -- サイダー提督?
- 香取(I)「ええと、これは……」 見ての通り。 夕張(I)「名前だけの登録を想定してなかったみたいでして」 スペースとかじゃいかんのか。 夕張(I)「バッチリ、エラー返してくるよ?」 変にしっかりしてんのな。まあしゃあねえ、登録はフルネームでやっていいぞ。 夕張(I)「もうやっといたよ?」 -- サイダー提督?
- え? 明石(I)「さよみさんにメールしたら『もちオッケー』って」 あいつめ……さよみのバカはどこだー! 香取(I)「先ほどホノルル行きの飛行機に……」 まあいいや。あとで説教するとして……ミヨ、でいいのか。立ってみることは出来るのか? ミヨ(I)「ボクのパーツが大丈夫ならちゃんt……うご、動かないです……明石二佐」 明石(I)「ちょっと開けないといかんかな……あと私たちの事は呼び捨てか、さん付けでいいよ?あ、提督は提督でねー」 ミヨ(I)「わかりました、明石さん。ですが何故ボクは起き上がること以外できないのでしょう……」 -- サイダー提督?
- なあ明石。 明石(I)「何?」 車庫で誰が天ぷら作っていいと言った。 明石(I)「いや、天ぷらなんて……何この匂い」 香取(I)「あのー、ミヨ、ちゃん?の、足から何か漏れてるような」 え。 明石(I)「あ」 壊れてたのか壊したのか。 ミヨ(I)「自己判断機能では正常ですが……」 何か壊れてるから漏れてるんだろ。明石、修理できるか? 明石(I)「脚部ならたぶんアクチュエーター周りですけど……パーツはさておき、やってみるだけね。佐智子、手伝って」 夕張(I)「はいよー」 -- サイダー提督?
- ミヨ(I)「あ、明石さん、分解するんですかボクを」 明石(I)「分解なんて人聞きの悪い。手術よ、手術」 夕張(I)「大丈夫、大丈夫、直すからさ」 明石、夕張、直すならちゃんと修理してくれ。 明石(I)「私を誰と心得る!」 夕張(I)「明石と夕張の工廠コンビに任せなさい!」 少し不安だがな……わかった、頼んだ。 香取(I)「本当に大丈夫ですか?」 まあ、腕は確かだしな。我々は失礼するよ。鳳翔さんに夕食の用意は頼んでおく。 -- サイダー提督?
- 明石(I)「じゃあ、やるっきゃないね」 夕張(I)「換えのバーツなんかあるの?」 明石(I)「どーんと現物合わせするだけよ。整備用のストックからいくつか探してみて、ね」 ミヨ(I)「明石さん、夕張さん」 明石(I)「何?」 -- サイダーの艦娘たち?
- ミヨ(I)「立ち上げて貰ったばっかりで、また、眠ることになってしまうのでしょうか、ボク」 明石(I)「そうねえ……」 ミヨ(I)「少し不安です。このまま、切られてほったらかされてしまうのか……って」 明石(I)「それは──」 夕張(I)「大丈夫。私と明石は鎮守府一の技師だから。どどーんと任せちゃって!」 ミヨ(I)「……絶対ですよ」 夕張(I)「じゃあ、シャットダウンをお願いしますね」 -- サイダーの艦娘たち?
- 明石(I)「電源カット」 夕張(I)「チェック。さあ始めちゃいますか」 明石(I)「そうね。じゃあまずはどこからかかろう……」 夕張(I)「手始めに脚部アクチュエータの交換じゃないかしら。あとは弄れるだけいじってみるまで」 明石(I)「リスクだから分解はしたくなかったんだけどね……」 夕張(I)「だからといって床中天ぷら油まみれにされるのは、それはそれで……」 二人「めんどくさい」 明石(I)「じゃあ、まずは慎重にカバーを外しちゃお」 -- 明石+夕張(I)?
- (30分後) 夕張(I)「カバー取り外し完了……っと」 明石(I)「ひいひい言いながらも、掛かればものの10分で終わっちゃったね」 夕張(I)「20分何してたんだろう、私たち……」 明石(I)「さあ……?」 夕張(I)「ま、ちゃっちゃと直しちゃいましょ」 明石(I)「そうね。まずは油圧系からやっつけちゃお」 -- 明石+夕張(I)?
- (さらに数分後) 明石(I)「あー……」 夕張(I)「どしたの?」 明石(I)「こりゃ漏れるわけだよ。ほら見て」 夕張(I)「これじゃ漏れるじゃん。耐油仕様じゃないし……」 明石(I)「これは丸ごと交換。油もシリコンに変えて……」 夕張(I)「ねえ三保、ここまで開けちゃったらさ、バッテリ容量とか上げちゃわない?」 明石(I)「どして?」 夕張(I)「だって、やるなら徹底的にやっちゃったほうがいいじゃん?予算かかるけど」 明石(I)「それもそっか。やっちゃお!」 夕張(I)「おー!」 -- 明石+夕張(I)?
- 明石(I)「アクチュエータはこれでいい?」 夕張(I)「これぴったりじゃん!どこで見つけたの?」 明石(I)「型番当たったら丁度良いのが在庫にあったの」 夕張(I)「じゃあ、バッテリはこれでいいかな」 明石(I)「容量5割増しってところ?」 夕張(I)「うん。いろいろとロスも多かったから、それも調整しちゃったら多分かなり稼働時間伸びると思う」 明石(I)「徹底的にやらなきゃね……」 -- 明石+夕張(I)?
- 明石(I)「ねー、佐智子」 夕張(I)「何ー、何かまた不具合でも見つけた?」 明石(I)「見てよコレ。スマホ入ってたんだけど」 夕張(I)「ほんとだ。もしかしてこれって」 明石(I)「USBでマザーボードとつながってるし、多分これで通信やってたんじゃない」 明石(I)「相当な型落ちでよくやるわ……これは解析するとして、どうしよう」 -- 明石+夕張(I)?
- 夕張(I)「通信系モジュール内蔵してもいいけど……ぶっちゃけスマホ持たせるっしょ」 明石(I)「多分、というかおそらく」 夕張(I)「それなら外しちゃってもいいんじゃない」 明石(I)「いっか。省略しちゃお。防諜もあるしね……また前みたいに架線撃つのは嫌だし」 -- 明石+夕張(I)?
- (さらに四時間)明石(I)「カバーをしちゃったら、後はおしまい」 夕張(I)「いつから外科医になったんだっけ、私ら……」 明石(I)「アンドロイドの改造なのにね……」 夕張(I)「ミヨが人間にかなり近いせいもあるんじゃないかな」 明石(I)「それもそうかもね。中身が機械なだけが、私たちとの違いじゃないかしら。さ、顔のカバーを……あ」 -- 明石+夕張(I)?
- 夕張(I)「三保、油がはねてる!」 明石(I)「急いで拭けば……あ……」 夕張(I)「あーあ……シミになってる」 明石(I)「でもこのサイズなら……多分ほくろって言い張ればごまかせるかも」 夕張(I)「(頭抱え)」 -- 明石+夕張(I)?
- (さらに15分) 明石(I)「あとは胸を戻せば、ほぼ完成」 夕張(I)「これで、完成ってところ……だけど、ちょっときついかな」 明石(I)「絶対これ、バッテリ積んだせいでしょ」 夕張(I)「うーん……そうだよね。ちょっとおっきくして……」 -- 明石+夕張(I)?
- (そして15分) 夕張(I)「出来た!」 明石(I)「予備のパーツとかいろいろあってよかった……」 夕張(I)「超特急でお願いしちゃったパーツもあるから、結構かかっちゃったけど……ま、いっか!」 明石(I)「じゃあ、この前と同じように……」 -- 明石+夕張(I)?
- ミヨ(I)「……システム正常。ライブラリ読み込み……完了。ネットワーク接続デバイス解除。バッテリ換装済み……容量、認識完了。起動シーケンス問題なし……YK-2000 LOT10034 起動します」 明石(I)「行けるかな……」 夕張(I)「ミスさえなければ……たぶん」 -- サイダーの艦娘たち?
- ミヨ(I)「おはようございます、明石さん、夕張さん」 夕張(I)「おっはー。ポートランドならね~」 明石(I)「もう夜の23時ってとこ。どう、調子」 ミヨ(I)「ちょっと肩が重いです……」 明石(I)「そりゃ、いろいろ改造したからねー」 夕張(I)「私が羨む程度にね……」 -- サイダーの艦娘たち?
- ミヨ(I)「でもよかった。ボク、また起きることが出来たみたいで」 明石(I)「なーに。明石さんたちに任せりゃちょちょいのちょいだから」 ミヨ(I)「そう言う割にはもう夜ですけど……」 夕張(I)「色々あったの、いろいろねー」 ミヨ(I)「みたいですね……(ほくろをさすりながら)」 -- サイダーの艦娘たち?
- 明石(I)「じゃあ、今日はシャワー浴びて寝ちゃおうか」 夕張(I)「夕ごはんはどうするの?」 明石(I)「こんな時間だし、もう鳳翔さん寝ちゃってるかも……」 夕張(I)「そうかも……って、これ何?おかもち?」 [夕ごはんです。ちゃんとたべなきゃ、めっ、ですからね? 鳳翔] -- サイダーの艦娘たち?
- 明石(I)「鳳翔さあん……」 夕張(I)「ご飯は大丈夫、だね。だけど、なんでメニューが青椒肉絲なんだろう……?」 明石(I)「さあ……」 ミヨ(I)「あの……明石さん」 明石(I)「んー?」 ミヨ(I)「なんだか眠気が……ボクはアンドロイドのはず、ですよね」 明石(I)「それはそうなんだけどね」 -- サイダーの艦娘たち?
- 夕張(I)「ミヨってバッテリ搭載だから、時々充電が必要なの。だからわかりやすく、かつ違和感無いようにーと考えた結果、15%ぐらいになったら眠くなるようなAI組んだってわけ」 ミヨ(I)「別に、ボクがアンドロイドってこと隠してるわけじゃ……」 明石(I)「隠してはないよ。けど、積極的に公開していると言う訳でもないから」 ミヨ(I)「うーん……まあ、考えるのは後回しにします。それより、どうやって充電すれば……」 夕張(I)「どしよ?」 明石(I)「今日は一旦私の部屋で寝てもらおうかな?」 -- サイダーの艦娘たち?
- (数分後、明石私室) 明石(I)「狭いけどまー、今日はここで寝てって!」 (工具箱の山)(チカチカきらめくサーバ)(雑多に並べられた書類と書籍) ミヨ(I)「えーと明石さん、女の子の部屋ってもっと可愛らしいものだと、ボクのデータには……」 明石(I)「気にしなーい気にしない。さ、布団敷いちゃうからそこで横になって~」 ミヨ(I)「ボクはアンドロイドですから、そういうのは……」 明石(I)「床ダイレクトで寝るの?それは乙女としてだめじゃないかな?」 ミヨ(I)「そういうものですか……?」 明石(I)「そーいうの。あ、横向きでね?電源刺さないといけないし」 -- 明石+ミヨ(I)?
- ミヨ(I)「(横になって寝る体勢)明石さん、ではまた明日ですね」 明石(I)「そだね。おやすみ、ミヨ」 (ミヨの首筋にある蓋を開き、200V電源を差し込む) ミヨ(I)「外部電源接続を確認。……ではお休みなさい」 明石(I)「おやすみー」 (明石はミヨがまぶたを閉じたのを見ると、布団をかけた) -- 明石+ミヨ(I)?
- (それにしても……寝ているところを見ただけだと、さながら人間ね……。外見“は”よく出来てる。中身はお世辞にも良いものだったとは言えないけれどね。明日、充電が済んだら提督に今後の事、聞いておかないと……私も眠くなってきちゃった。明日に備えて、寝ちゃおうか) -- 明石(I)?
- (そして翌日、会議室)さて朝礼始めようk……って、明石はどこだ。 大淀(I)「多分まだ寝てます……」 あいつ何時まで起きてたんだ。全く。大淀、起こしてきてくれ。 大淀(I)「電話しますね……」 -- サイダー提督?
- ジリリリリ!ジリリリリ!) うるさいなもう……はい、明石でーす。 大淀(I)『みぃ~ほぉ~……おはよう。今何時かわかる?』 んー。9時じゅうろ……9時16分!? 大淀(I)『朝礼は何時何分だっけ?』 9時ジャスト。 大淀(I)『15分遅刻!今すぐ起きて!会議室!わかった?』 わかった、わかったってばー。そう電話口で怒鳴らないでよ。 大淀(I)『9時20分まで来なかったら欠勤扱いって提督怒ってるからね?早く来て!(ぴっ!プププププ)』 -- 明石(I)?
- (3分後) 明石(I)「し、失礼しましたっ!」 おそーい。何時まで起きてたんだ。 明石(I)「25時前?」 ちゃんと寝なさい。遅刻するなんて……。 加賀(I)「しっかりしなさいよ」 霧島(I)「ハァ……まあ、全員揃いましたし、遅くなりましたが始めましょう」 そうだな。では、本日の朝礼を開始する。青葉、各支部との接続は? 青葉(I・艦)「バッチリですよ!」 始めよう。 -- サイダー提督?
- (20分後)ロンドン(I)『……こちらからは以上です』 ありがとう。最後、明石。工廠部からは? 明石(I)「むにゃ……あ、そうでした!えっと、ミヨの処遇です!処遇!」 処遇……ああ、ミヨね。そうだ明石、今の状況は? 明石(I)「ばっちし修理完了!油圧系や制御系、全部手入れたから大変だったんですよー?」 まあ、あの状態じゃねえ……。 -- サイダー提督?
- 霧島(I)「それで、処遇と言いますと、司令」 ああ。この前侵入してきたアンドロイド。あれを明石やゆっきーに解析させたろ? 霧島(I)「ええ。あの後、AIをインストールしたとか、分解したとか……」 まあ後半は微妙に違うが、ほぼ正解。 -- サイダー提督?
- エムデン(I・戦)『ちょ、長官、どういう事ですか?』 聞いてもらっての通り。急襲が本部にあった事はすでに文書で共有した通り。んで、そのアンドロイドを2体鹵獲することに成功したから、解析ついでに明石に色々いじってもらったんだが……。 -- サイダー提督?
- 明石(I)「いじりすぎちゃってー」 高性能AIまでブッ込んでほぼ人間並みに動けるようになっちまったから、対応をどうしようかと。 ロンドン(I)『なるほど……閣下のお考えはどうですか?』 一応、一応は備品として資産計上するけど、扱いとしてはみんなと同じ。階級は二佐待遇としたい。 鳥海(I)「司令官さん、そうなると……」 -- サイダー提督?
- 名目上備品番号も振っといてほしい。まあ、人事部データベースには夕張が入れといてくれたからね。 青葉(I)「あと司令官、ミヨさんがロボットだと言うことは……」 三ツ矢鎮守府内部では周知してほしい。けど、対外的には積極的には公表しない。色々と面倒だしな……青葉、情報部としてマスコミ対策を頼む。 青葉(I)「お任せでアリマス!」 頼んだ。 -- サイダー提督?
- 明石、それでいいか。 明石(I)「はい、問題は無いです」 わかった。他に意見は? 大淀(I)「三保……明石がいろいろ調整したとは言え、本当に大丈夫なのでしょうか」 と言うと……? 大淀(I)「多分、霧島さんもそう思っていると思いますが、元々は仮想敵、今や敵対勢力のものだったアンドロイドです。仮に暴走したり、彼女がスパイになる……可能性はあると思います」 -- サイダー提督?
- それは……確かにあるが。 明石(I)「それなら、ほぼほぼ無いと思う。実はこんなのが入ってたの」 (コトン) 随分ボロいスマホだな。 ロンドン(I)『それにしては、綺麗に見えますけれど……』 うん、実際に見てるこっちでも結構状態はいい。明石、これは? 明石(I)「ミヨの体内にあったスマホです。2014製。これが基盤に接続されて、おそらく通信用に使われていたみたい」 スマホという事は、製造番号とかから割り出せないのか? 青葉(I)「明石さんからもらったデータを元に、青葉が調べてみたのですが……」 -- サイダー提督?
- 明石(I)「追跡不能。私も知り合いのルート使って調べてみたけど、ダメ」 青葉(I)「スマホ本体には紛失届けが出されていました。それで、携帯電話会社から回収要請の出されているものであると、青葉わかりました」 霧島(I)「国内のものなら、契約者の名前とか、わかるはずよ?」 明石(I)「いくら鎮守府でもダメって言われました。流石に憲兵隊とか、警察じゃないと……、と」 じゃあSIMカードからは? -- サイダー提督?
- 青葉(I)「それが……海外のものを使用しているらしくて……現在照会中です。ただ、プリペイドとのことなので、難しいかもしれません」 わかった。おっと、話が逸れてしまったから元に戻そう。それで、こいつをぶっこぬいたから、通信は出来ない……というのが明石の見立てだな。 明石(I)「そう。Wi-Fiも含めて、それっぽい通信モジュールはなかったから」 了解。そうなると……。 -- サイダー提督?
- ケイティ(I)「私は大丈夫だと思う。アンドロイドが送り込まれた時点で、ここはもうわかってしまっているようなものです」 霧島(I)「それはそうね……けれどケイティ、ミヨがバックドア*1になるとは思わない?」 ケイティ(I)「それは無力化していると聞いたわ。だからこそ。それに……おそらく直接対決は不可避。次は、どちらかが完敗して消えるわ」 だから……研究も兼ねて……と。 ケイティ(I)「That’s right」 -- サイダー提督?
- ……それなら……。青葉、スマホにデータロガー*2仕込めるか? 青葉(I)「出来ないわけではないです。けれど……」 演算能力次第じゃ、見破られるか。 明石(I)「多分見破られるものと思った方がいいです。それに……」 大淀(I)「私はやりたくないです。まるで信用していないみたいで」 加賀(I)「やめて。もしこれがわかったら、不信感を持つわ。私が同じ立場なら、そう思う」 -- サイダー提督?
- ……わかった。やめておこう。 青葉(I)「わかりました。あとは……端末を渡さないといけませんね」 それは、みんなが使ってるのと同じレベルの端末で大丈夫だろう。 霧島(I)「もう一つ……ミヨは八重の妹……なんですよね」 義理の、がつくが。 -- サイダー提督?
- 霧島(I)「私にも、姉が3人居ますが……従姉ですけど。義理とは言え、八重のためにも、会わせてあげた方が良いかなと」 ただ……少し不安なのが……。 青葉(I)「在籍期間中に、八重さんとミヨさんが会っている可能性は高いと思われます」 霧島(I)「一度、聞いてから会わせた方がいいかもしれませんね……」 そうだなぁ……。わかった。終わったら執務室に呼んでくれ。 鳥海(I)「メール送っておきますね」 -- サイダー提督?
- (執務室) (コンコン) どうぞー。 八重(I)「し、失礼。します」 呼び出してすまんかったな。 八重(I)「話は鳥海さんから。メールで……」 なら話は早いだろう。会ってほしい人……まあ、人だな。人が居るんだ。少し特殊な生い立ちなんだが──。 -- サイダー提督?
- 八重(I)「……知ってます。私の居た。所から……ですよね」 そうだ。だけど、誰からそれを? 八重(I)「青葉さん、と、鳥海さん。です。鳥海さんのメールの後に。青葉さん、から……」 なるほど、あの二人からね。なら付け加えて言う事はもうないね。単刀直入に言おう。八重、ミヨと会ってくれるか? 八重(I)「………………(こくり)」 -- サイダー提督?
- ありがとう。でも、無理にとは言わんぞ。 八重(I)「……ううん。違うんです。お姉ちゃん、って。呼んでもらいたかったから」 お姉ちゃん、か。わかった。少し待っていてくれ、ミヨを呼ぼう。(ジー……ジー……)ああ、明石か。提督だ。執務室までミヨを連れてきてくれるか?……頼んだ。(ガチャ) -- サイダー提督?
- (数分後) 明石(I)「入りまーす」 はーい。 ミヨ(I)「失礼します」 入ってくれー。 八重(I)「明石さん、こんにちは」 明石(I)「やえちゃん元気―?あ、連れてきたよ!」 八重(I)「となりの人。ですか?」 明石(I)「そうそう。安道ミヨ。安心の安に道、Roadの道ね。それにカタカナでミヨ」 -- サイダー提督?
- 八重(I)「みよ……みよ……みよ、ちゃん」 ミヨ(I)「私のメモリとしては……初めまして、三波二佐」 八重(I)「初めまして。みよちゃん。よろしくね」 ミヨ(I)「よろしくお願いします」 八重(I)「あのね。みよちゃん」 -- サイダー提督?
- ミヨ(I)「はい」 八重(I)「みよちゃんは、私を参考に。作られたって……」 ミヨ(I)「そうです。三波二佐。ボクは三波二佐たちの実戦データを元に作られました」 八重(I)「だったら……あのね。みよちゃん。みよちゃん、って呼んでもいい?」 ミヨ(I)「はい。呼び方は、何でも大丈夫です」 八重(I)「それと。ね」 ミヨ(I)「はい」 -- サイダー提督?
- 八重(I)「私のデータ。からなら、私。お姉ちゃん、だよ。ね。だから、……お姉ちゃんって呼んで。みて……お願い」 ミヨ(I)「でもそれだと、姉妹と言うよりは母娘に近いものでは……ないかとボクは思うのですが」 八重(I)「(首を横に振る)ううん。お姉ちゃん。と、ミヨちゃん。それでいいと思うの。それに、ね。そんなよそよそしいの。ダメ。お姉ちゃんと妹。だから。もっと、ね」 -- 八重+ミヨ(I)?
- ミヨ(I)「……ね、……姉さん。これでいい、かな」 八重(I)「うん!それ。それ。それで。いいの」 ミヨ(I)「明石さん、姉妹ってこうするのが普通……ですか?」 明石(I)「そだよ?私も弟からはタメだなぁ。だけどそれが普通だと思ってたから気にはしてなかったけどね?」 私もそうだなぁ。身内じゃなくても、ここはフランクだけどね。 ミヨ(I)「姉さん、これからもよろしく」 八重(I)「よろしくね。みよちゃん!」 -- サイダー提督?
- (同刻 太平洋上) ??「やはり、バレたようだな」 ??「そうだな、提督」 提督(?)「まあ予想はしていたが……」 ??「予想出来たなら何故対策しないこのあ……痛てえ!」 提督(?)「貴様、やかましい!黙れ。だから人間は……貴様が無能なら、今頃は……まあいい。こうなれば外堀からやるまで」 --
- ??「これだ」 提督(?)「うん。やれ」 ??「仰せのままに」 提督(?)「違う石川。やり直せ」 石川「Nos sumus Iustitia」 提督(?)「Nos sumus Iustitia」 --
- (1週間後 三ツ矢鎮守府執務室) 青葉(I)「司令官、終わりました!」 おう、おつかれちゃん。すまんな、急遽秘書頼んじまって。 青葉(I)「大丈夫ですよー。青葉、司令官のためなら頑張っちゃいます!」 それにしても、三人同時に抜けるとは予想外だったよ。 青葉(I)「霧島さんが市ヶ谷に出張、大淀さんが演習旗艦で出撃中、そして……」 鳥海が鎮守府設備更新のために、夕張引き連れて島中を駆け巡っているところ。どれもずらしていたはずなんだがな……。 -- サイダー提督?
- 青葉(I)「お天気にだけは、青葉たちでも敵いませんよ」 神のみぞ知る、とはよく言ったもんだ。まさか季節外れの大嵐で、飛行機が飛ばなくて会議が延期になるなんてな。 青葉(I)「電話会議でもいいと思いますけどね……」 それが出来たら、今頃霧島はここに居るさ。(ジリリリリリン!)おっと電話だ。 青葉(I)「出ますね。はい、三ツ矢鎮守府、青葉が承ります。……はい?もう一度お願いします」 -- サイダー提督?
- 『こちら帝都テレビ報道局の京橋と言います。三ツ矢鎮守府の装備について、二、三取材を申し込みたいのですが』 青葉(I)「申し訳ありませんが、あ……ワタクシの一存ではお答え致しかねますので……少々お待ち頂けますか?」 『わかりました』 青葉(I)「(受話器をオルゴールの上に置く)司令官、帝都テレビが青葉たちに取材したいと……」 代わってくれ。お電話代わりました、三ツ矢鎮守府提督の三津谷でございます。 『帝都テレビ報道局の京橋と申します。実は……』 -- サイダー提督?
- 『……という情報があるのですが、事実でしょうか』 えっ。 『ですから、三ツ矢鎮守府はロボ艦娘を配備し運用する計画がある、というのは事実でしょうか』 その件は誤った情報であると思うのですが。三ツ矢鎮守府は情報公開を進めており──。 『ですけど、そうとは思えないのですが。三ツ矢鎮守府にはロボットが侵入し、それが保存されているという話ですが』 それに関してはお答えいたしかねます。申し訳ありませんが別の件がありまして。 『ちょっと待ってくださいよまだ話が』 あー回線の調子がー。あー、あ、とべっ(ガチャ) -- サイダー提督?
- 青葉、ミヨの件は。 青葉(I)「まだ積極的に公表してません。島の人たちなら知ってますが……」 島の人間なら青葉日日新聞社にリークするだろ。 青葉(I)「ですね。それに申し入れをしていますので……」 ともかくも情報収集だ。青葉、秋雲は居るか? 青葉(I)「確かあと少しで……」 秋雲(I)「秋雲ただいま参上!秋雲さんの噂してた?」 ナイスタイミング!すまんがカバン置いたら仕事だ。 -- サイダー提督?
- 秋雲(I)「えーこれから絵描きたいのにー」 割と緊急の案件だ。 秋雲(I)「はいはいやりますよ、っと。それで、緊急って何?」 単刀直入に言う。ミヨの件、マスコミに漏らしてないよな。 秋雲(I)「ううん。さすがに漏らしてはいないよ。向かいの三河屋さんとか隣の農家さんとか、あ、おととい三枝木のおっちゃんに聞かれたから答えたことはあるけど」 -- サイダー提督?
- まあ島の人たちならいいが……って、三枝木さんもか。 秋雲(I)「あー、みんな口々にすごい音したから何事って。電線切った件はぼかしたけど、とりあえず泥棒が入ってきたって事にしといたよ」 当たらずも遠からずだが……まあ、島の皆さんにはあとで伝えるとしても……。 青葉(I)「何故テレビ局から電話があったのでしょう……」 わからん。とかく、調べてくれ。 秋雲(I)「秋雲さんにお任せよ、っと。青葉さん、パソコン取ってきていい?」 青葉(I)「オッケーですよぉ」 -- サイダー提督?
- (数分後) 秋雲(I)「さーて秋雲さんの愛機持ってきたし……始めちゃいますか」 青葉(I)「やっちゃいましょう。司令官、LANケーブル使いますね」 おう、使え、使え。秋雲も有線で行くんだろ? 秋雲(I)「もち。あ、じゃ、借りるね」 おう。 青葉(I)「じゃあ行っちゃいましょう!アオバネットワーク起動!」 秋雲(I)「おりゃあ!」 (カタカタカタカタ……) -- サイダー提督?
- (さらに数分後) 青葉(I)「司令官!」 どった。 青葉(I)「見て下さいこれ!」 どれどれ……。 『サタデージャパン:ロボット導入?三ツ矢鎮守府』 ここが発信地か……? 秋雲(I)「可能性高いね。他にもありそうだけど」 調べてくれないか。場合によっては対処も必要そうだからな……。 -- サイダー提督?
- (ジリリリリリリ!) 青葉(I)「はい、三ツ矢鎮守府、青葉が承ります。……その件につきましては、申し訳ありませんがお答え致しかねます。はい。……ですからその件については回答を差し控えさせていただきますと……。ええ、はい。では(ガチャ)」 またか。 青葉(I)「今度は大江戸日報ですねぇ……あ、また電話です」 -- サイダー提督?
- 秋雲が出るね。もしも……Hallo, This is Mitsuya fleets GLASS-FORCE Kanako Akigumo speaking. How may I help you? …May I have your name again please. John…what’s spelling your company’s name? The…Golf, Oscar, again Oscar, Sierra, and Echo. Written Goose, Okay? …Uh-ha. …Uh-ha. Sorry, I’ve no permission to answer that. Apologize to you. See ya. (ガチャ) -- 秋雲(I)?
- (こちら三ツ矢鎮守府の秋雲です。何かご用でしょうか。……お名前をもう一度お願いできますか?……ジョン。御社の綴りをお願いします。ザ、えっと……ゴルフのG、オスカーのO、もう一度O、シエラのS、そしてエコーのE。そしてグースと書くのですね。……はい。……はい。……それに関してはお答えする権限がなくてですね。すみませんね。では。) -- 秋雲(I)?
- いきなり英語かよ。どこからだ。 秋雲(I)「アメリカのザ・グース紙から。こっちもミヨについてだって」 うーむ……無視できないレベルだな……。青葉、鳥海と夕張に。秋雲、大淀に。私は霧島に連絡する。緊急対策会議開いて、対応を考えねば……。 秋雲(I)「連絡ついたよ。戻ってくるって。で、どしよ」 とかく情報を漁ってくれ。 秋雲(I)「あいよー」 -- サイダー提督?
- (一時間後)大淀(I)「戻りました」 鳥海(I)「鳥海、帰着しました」 うむ。夕張は? 夕張(I)「ハーッ……ハーッ……置いてかないでよぉ……あ、夕張戻りましたー」 とりあえず息整えてから腰掛けて。秋雲、霧島は? 秋雲(I)「もう少しで……来た来た」 霧島(I)『司令、お疲れ様です』 お疲れ様。揃ったところで始めよう。 秋雲(I)「秋雲も居た方がいいの?」 情報部として大事なのに抜けていいわけないだろ。 秋雲(I)「ま、だよねー」 とかく始めよう。青葉、見つけたの出してくれ。 青葉(I)「お任せでアリマス!」 -- サイダー提督?
- 昨日、ミヨさんのことがマスコミに漏れたようです。原因はわかりませんが、何者かが情報をリークしたと考えて間違いないでしょう。ただ、誰かはまだわかりません。今のところは……。 霧島(I)『検討は付かないのかしら?』 夕張(I)「すぐ招集かかっちゃったからわからないけど……」 鳥海(I)「本当かしら……でも、私は誰かがやったとは思いたくないわ……」 大淀(I)「でも鳥海さん、誰かが流したからこう、記事になっているわけですよね……」 -- 青葉(I)?
- そうとしか言えないけどれど……。自分は信じたい。 大淀(I)「じゃあ誰が流したって言うの!」 それはその、誰かがクラックしたとか? 霧島(I)『うちのシステムはそれを想定しているって司令言ったじゃないですか。DNAだかDTPだか』 夕張(I)「DMZです。非武装地帯と訳されるけど、要は外部から見れるサーバと内部専用のネットワークの間に壁を設けて隔離するシステムのことです。それに……」 青葉(I)「アクセスをしているならログが残ります。電話も、すべて」 -- サイダー提督?
- 青葉、秋雲、怪しい通信はあったのか……? 青葉(I)「いいえ。全然ありません」 秋雲(I)「至って問題ないよ」 だよなぁ……。自分ならこういうネットワークをわざわざ使うことはしないだろうし……って。そういえば。 大淀(I)「提督、急に立ち上がってどうしたんですか」 そういえば夕張、ミヨの体内からスマホが見つかったんだよな。 夕張(I)「そだけど。解析なら終わってるけど……あ」 霧島(I)『司令、どういうこと?』 ミヨがバックドアになってたと考えれば。 鳥海(I)「お勝手がどうかしました?」 -- サイダー提督?
- 鳥海、ちょっとお勝手とは違うんだ。ミヨに入っていたスマホあったろ。 鳥海(I)「この前の会議でも出ていましたよね」 そう。あれなんだがな、あれを使ってウチの情報を盗み聞きしていたと考えるなら……つじつまは合う。 霧島(I)『司令、それは憶測ですよね』 今のところはな……夕張、出たか? 夕張(I)「エウレカ!ちょくちょくIP電話つないでるログあった!」 でかした!そうなれば……。 -- サイダー提督?
- 霧島(I)『流したのは、インシルシティアってこと?』 そうなる。ウチのだれかを騙ってね。 夕張(I)「思わぬ落とし穴だったわね……」 そうなるなぁ。抜いといて正解だった。 霧島(I)『ですが司令、原因がわかったところで解決にはなっていませんよ』 そうだな。ここで単刀直入に聞きたい。ミヨのことだが、公表すべきか、否か。 霧島(I)『こうなってしまった以上は……すべきかと』 鳥海(I)「私も霧島さんに賛成です。島の人たちは知っていることですし」 -- サイダー提督?
- 夕張(I)「工廠部としては慎重にならざるを得ないけれど……」 部品供給とかか? 夕張(I)「そう。あとは取材対応とかも」 なるほどね……大淀や青葉は? 青葉(I)「隠すことでもないですし、逆に抑止力として公表を積極的にすべきだと、青葉思います」 大淀(I)「私としては、あくまで事実の公表にとどめるだけにすべき、と思います」 わかった。私としては……公表すべきだと思う。事実上公然の秘密ではあったけれども、これを機にある程度は開示しようと思う。ただ、インタビューはしないつもりだ。それで行こうと思う。 -- サイダー提督?
- 夕張(I)「それならいいかな。提督、そこはお願いね」 わかった。ある程度は海外からも来るだろうし、これは私と情報部でやろう。いいな? 青葉(I)「え、あ、はい」 秋雲(I)「えー、提督なんでー」 一応情報関連だからな……と。とりあえず、これでいいかな。 霧島(I)『大丈夫です』 夕張(I)「オッケーだよ」 じゃあ、解散としますか。 大淀(I)「あとで校正とか、手伝いますね」 ありがとう。 大淀(I)「こ、これも仕事ですからそのあの提督と一緒にとかあの」 秋雲(I)「(にやにや)」 -- サイダー提督?
- (数日後) さよみ『(テレビ)……以上が、当鎮守府に導入された、アンドロイドの詳細となります』 明石(I)「それで、公表するわけになったわけね」 まあそうなるねぇ。 明石(I)「ま、適当にうまくはぐらかしてくれたんでしょ」 どうしても会見してくれと上から指示があったもんで、さよみにやっといてと頼んだけど。まあ、この印刷したページのたぐいがなによりの証拠だね。 -- サイダー提督?
- 『The Tomorrow USA: Japan makes a “Robo F-Girl”? Mitsuya fleets sportsperson says』 (日本、ついにロボット艦娘導入?三ツ矢鎮守府発表) 『台文網:日本推出机械艦娘!她很可愛嗎?主播見了叫“未世”小娘』 (日本、ついにロボ艦娘登場!キュートな彼女?『ミヨ』ちゃんに迫る!) 『帝都新聞:彼女は切り札か脅威か 三ツ矢鎮守府、ロボ艦娘導入』 『人民新闻网:外交部兴趣三矢舰队的机器人』 (外交部は『興味』 三ツ矢鎮守府のロボット) 『帝国エレクトロン、大扶桑スクリーンHDほか半導体関連企業がストップ高 三ツ矢鎮守府へのロボット導入発表で 扶桑経済新聞』 『社説:ロボ艦娘 事故対策は万全か 日出新聞』 --
- 明石(I)「……各国が興味を持つのはわからなくないけれど……、まさか経済面まで動くなんてね」 青葉たちに分析してもらった結果、賛否両論で双方が半々という結果だ。 明石(I)「そうよね……難しいもの」 だよなぁ。あ、質疑応答みたいだ。 -- サイダー提督?
- 鳥海(I)『ご質問等ありましたら、4件程度を目安にお受けします。はい、中程の方』 『ボイス・オブ・ニューヨーク東京支局のジョンデス。合衆国政府が興味を持っているとの情報がありマスガ、いかがお思いでしょうカ?』 鳥海(I)『合衆国に限らず、周辺各国から照会や技術提供および供与の申し出がありました。また、一部の民間企業からも提案を受けております』 本当か? 明石(I)「秘密裏にはね。あ、提督には整い次第渡す予定だったけど」 来た時点で相談してくれよ……。 -- サイダー提督?
- 鳥海(I)『続いて前ほどの方、お願いします』 『日本情報ジャーナルの菊川です。自立型アンドロイドと仰いましたが、もし暴走してしまった場合の対策等は考慮されていらっしゃるのでしょうか』 鳥海(I)『担当部署からの情報によりますと……(ペラペラ)緊急時には停止させるための手段を講じているとの事です。また付け加えますと、任務遂行時には当鎮守府の内規に則り、バディ制、二人一組を最低として活動を行っております』 -- テレビ?
- なかなか鋭い質問だな。 明石(I)「まあ、遠隔キルスイッチなんて使いたくはないけどね。システム壊しかねないから……」 そんなに乱暴なものなのか……(汗) -- サイダー提督?
- 鳥海(I)『ではあと二問……はい、後ろ右側の方』 『ラジオジパングの根津です。日本情報さんと被る部分はありますが、今後アンドロイドの個体数を追加される予定はあるのでしょうか。また追加した場合、先程仰っていたバディシステムをどのように適用されるおつもりでしょうか』 鳥海(I)『増員につきましては、現時点では未定となっておりますため、これ以上申し上げる事は致しかねます。ただ……』 さよみ『私からも補足させて頂きます。増えた場合、アンドロイド同士ではバディを組ませないとお約束致しましょう』 -- テレビ?
- 鳥海(I)『それでは最後に。はい、右最後列の方』 『月刊ネイビーマガジンの市ヶ谷です。副提督、およびスポークスマンの鳥海さんもそうですが、今回導入が発表されましたアンドロイドは、女性型で、いわゆる[眼鏡っ娘]です。それに関して、所感などありますでしょうか』(一同笑い声) 鳥海(I)『そ、そっ、それは……えっと、あの、ちょっと……』 さよみ『コホン!……えっと、あまり関係はないかと思いますが……何はともあれ、大切にされることは良いことではないでしょうか』(再び笑い声) -- テレビ?
- (ピッ)たく、なんて質問してるんだあの記者。 明石(I)「でも否定できる?」 いやそうだけどさ。 明石(I)「まー、いいんじゃない」 まあね、うまくはぐらかしてくれたようだし。 -- サイダー提督?
- それにしても、さっき集荷に来てた三枝木さん驚いてたけど、なんてミヨに自己紹介させてたんだ。 明石(I)「あー、それなら……」 (コンコン)ミヨ(I)「失礼します」 丁度いいタイミングだ。入ってくれー。 ミヨ(I)「提督、ボクのことがテレビとか新聞で出ているって言ってましたけど……」 うん。そのこととも関係あるんだけどね。ミヨ、三枝木さんになんて自己紹介してたんだ? ミヨ(I)「姉さんの妹で、京都市出身の18歳って言うように、明石さんに……」 まあ、うん、その、明石、学生ってことでごまかせって言ったのか? -- サイダー提督?
- 明石(I)「まあ、やえちゃんの妹ってことならそれぐらいかなーって。京都なのは、まあそこにお土産の生八つ橋あったから?」 出身地選定にツッコミを入れたいが、まあわからなくもない理由だな。はぐらかすならその方がやりやすいか。だけど苗字が違うのは……。 ミヨ(I)「訳あってボクが母方の祖父の養子になってる、ってことにしておきました」 いろいろとややこしくせんでくれ。 明石(I)「……さすがにその設定はしてないからね?」 ……ソウトウコウセイノウナヨウデ。 -- サイダー提督?
- ミヨ(I)「えっと、まずかったでしょうか……」 うーん、もういいや。今やそれも意味ないし。 ミヨ(I)「そうですよね、ボクがアンドロイドということもニュースになってしまっていますし」 そうだねえ……。まあ隠す必要もないけれど、聞かれたらその都度という事で。 -- サイダー提督?
- (ジリリリリン!ジリリリリン!)ん、電話だ。 明石(I)「出るね。もしもし、三ツ矢鎮守府の明石です。……はい。少々お待ちください。提督、代わって」 なんでよ。 明石(I)「お偉いさん」 マジ? 明石(I)「ウソつく必要ある?」 いやないけどさ。はいもしもし。……だ、だ、大臣!お疲れ様です!……はい。それは事実です。……ええまあ。……はい。……申し訳ありません。大臣には、書面でお送りしたはずなのですが……。ええ。はい。……え?八重とミヨを本庁に!?それはその……いえ、ご命令とあらば。了解しました。明日にでもそちらへ……了解しました。では、失礼します。(ガチャ) -- サイダー提督?
- ミヨ、八重は? ミヨ(I)「姉さんですか?姉さんなら……電話しますね」 自分のスマホ使えよ? ミヨ(I)「わかってます。提督、首筋押してみてください」 え。あ、うん。 (カチッ) な、なんか開いたんだが。 明石(I)「そこ?ミヨのI/Oポート。充電とかここでやるんだけど……ね、ミヨ、何するつもり?」 ミヨ(I)「ボクとスマホをつないでください。そのAndroidのを。USBポートがあるはずなので」 え?あ、いいけど。(グサッ) ミヨ(I)「提督、デバッグモードにしてもらえますか」 おう。ビルド番号連打しーの。開発者オプション開きーの。はいよ。 ミヨ(I)「デバイス認識。セルラーモデム接続成功。ダイヤル。電話帳検索……三波やえ。発見。ダイヤル開始……接続中……」 -- サイダー提督?
- 八重(I)『もしもし?』 “姉さん、ボクです。ミヨ” 八重(I)『みよちゃん!どうした。の?』 “今どこ?提督が戻ってきてほしいって” 八重(I)『お仕事?』 “お偉いさんが、東京で姉さんとボクに会いたいんだって” 八重(I)『わかった。十分ぐらいで行く。って伝えてね』 “うん、伝えとく” (ツーッ……ツーッ……ツーッ……) -- 八重+ミヨ(I)?
- 明石(I)「……ミヨ、な、なんでハングアップ……」 明石、重すぎて固まったんじゃないのか。 明石(I)「メモリとか計算したのになー」 ミヨのスペックに見合わないの焼いたんじゃねえのか。 ミヨ(I)「ダイヤルアップ終了。ねえ提督、最高スペックを誇るボクが固まるなんてないですよ。ただ、電話してただけ」 おどかすなよ……。 ミヨ(I)「え、接続して直で制御したらまずかったかな……」 明石(I)「……ねえミヨ、一応聞くけどさ、『人間型』アンドロイドの自覚ある?」 ミヨ(I)「え。まあ、そうですよね」 うーむ……。 明石(I)「外では普通にスマホ耳に当てて電話してよ?一応、一応だけど人間の“フリ”はしておいてね……」 -- サイダー提督?
- ミヨ(I)「わ、わかりました」 頼むぞ……。あ、あと明石、霧島と加賀を呼んでくれ。 明石(I)「いいけど、何で?」 二人の護衛と、私の代理だ。私が行くべきなのだろうが……。 明石(I)「明日何かありましたっけ」 町議会で質疑応答に呼ばれててな。こっちは指名されてるから代理立てる訳にいかんのよ。 明石(I)「あーなるほど……霧島さんから電話するね」 頼んだ。 -- サイダー提督?
- (翌日午後……新宿西口) 霧島(I)「……なんとか大臣に説明できたけれど……」 加賀(I)「どうして、霧島と私なのかしら」 霧島(I)「さあ……。まあ、鳥海が副提督と会見しているからかしら?」 加賀(I)「大淀でもいいじゃないの。まああの子は、今出張中だったかしら」 霧島(I)「確か……そうね、加賀の言う通り、キャンプフォスターに出張だったわね。今度来る子の折衝とか」 加賀(I)「それなら……まあ、仕方ないわ。それに、私たち、あまり目立たないのもあるんじゃないかしら」 霧島(I)「それにしても加賀……いつの間にその、タピオカミルクティー買ったのよ」 加賀(I)「さっき寄ったコンビニで、よ。美味しいわ」 霧島(I)「うーん……」 -- 霧島+加賀(I)?
- 加賀(I)「霧島、何故私たち、距離を取って尾けているのかしら」 霧島(I)「二人だけで東京観光したいって言っていたからよ……でも、司令は目を離すな、って」 加賀(I)「だから……カーディガンを羽織った服装なのね」 霧島(I)「あまり派手なのも……と、ね。加賀も、ブラウスにロングスカートで、落ち着いた恰好ね」 加賀(I)「私の制服だと、和服だから目立つわ。それに、スーツだとまるで制服みたい」 霧島(I)「あー……確かに」 -- 霧島+加賀(I)?
- 八重(I)「みよちゃんみよちゃん、見て。見て。ほら、あの有名な、ヨコハシカメラ!」 ミヨ(I)「まーるい緑の」 八重(I)「やまてせん♪」 ミヨ(I)「姉さん、『やまのてせん』じゃないの?」 八重(I)「え?お父さんは、『やまてせん』って。言ってた。けど……?」 ミヨ(I)「姉さんっていくつだっけ……」 八重(I)「み~よ~ちゃ~ん~?」 ミヨ(I)「イエナンデモナイデス」 八重(I)「わかったらそれで。いい。……あ。……み、みよちゃん……」 -- 八重+ミヨ(I)?
- ミヨ(I)「姉さん、何震えているの?」 八重(I)「あ、あの、あの人。しゅ、しゅ……」 ミヨ(I)「しゅ?占守ちゃん?」 (首を振る八重) ??「ほお……生きていたとはなあ、ん、八重?」 ミヨ「お、お前は……」 ??「ほほう。製作者の顔すら忘れるとはなあ。とんだおてんば娘だなあ?ん?」 八重(I)「みよちゃん、この人、しゅ、首領……インシルシティアの」 ミヨ(I)「や、やつらの!?」 首領「……そうだ」 -- 八重+ミヨ(I)?
- ミヨ(I)「何の用」 首領「用も何も、偶然だ。なにをしている、逃亡兵ども」 八重(I)「そ、その、あの。その」 ミヨ(I)「東京観光だ。姉さんと散歩して、何か悪い?」 首領「ケッ。義姉妹とは泣かせるぜ。所詮はコマにしかすぎんのにな」 ミヨ(I)「うるさい。姉さんに手を出したら、ただじゃおかない」 首領「ほお……白昼堂々と戦闘か、え?」 ミヨ(I)「手出ししないなら、こっちもしないさ」 首領「ふん。じゃあ、貴様らを連行しようかね、え?」 -- 八重+ミヨ(I)?
- ミヨ(I)「姉さん下がって」 八重(I)「(黙って頷く)」 首領「ふん。出来るならやる。あいにく丸腰なんでねえ、くっくっく」 ミヨ(I)「うるさい」 首領「ほお……“生みの親”に対してその口の聞き方とはなあ」 ミヨ(I)「あんたが生理学的生物学的形態学的物理的工学的にボクを産めるわけがない」 首領「比喩もわからないとは、とんだお調子者のロボットだこと。所詮貴様はブリキ野郎ってことさ」 ミヨ(I)「ボクは野郎じゃない!」 首領「ブリキ野郎に男も女もあるか。所詮チ××もオ×××もついてないしなあ。あ、×××用ユニットはあるから、×××はあるな、くっくっく」 ミヨ(I)「貴様……!」 首領「襲えるもんならやってみやがれ、ブリキ野郎」 -- 八重+ミヨ(I)?
- ミヨ(I)「出来るもんか!ボクの行動ルーチンには、人間に直接的危害を加えるなとインプットされているから」 首領「素晴らしい。じゃあ……」(ミヨの首をしめる) 八重(I)「やめて!」 首領「ほら、抵抗してみろよ。ほらほら」 ミヨ(I)「出来る……訳……ない、だろ……!」 首領「やはり良く出来たブリキ野郎だ。所詮はブリキだな、くたばれブリキ」 ミヨ(I)「やめ……ろ……」 八重(I)「み……みよちゃんから離れて!」 首領「うるせえ!」 八重(I)「キャー!」 首領「うるせえ!」 八重(I)「ひ、人殺し!」 -- 八重+ミヨ(I)?
- 首領「“ヒト”だって?こいつは所詮ブリキと基板の塊、“キカイ”なんだぜ。“ニンゲン”ですらない“モノ”を“破壊”した所で、何になるってんだ、ああ?」 八重(I)「みよちゃんはみよちゃん!あんどろいど?だろうけど。でも、私の妹!だから!」 首領「自分で作らせた“モノ”を壊して何が悪い。そもそも、これはオレのところから“逃げ出した”モノ。破壊したって何も咎めやしねえさ」 八重(I)「そもそも置いていったのは首領様!じゃないですか!それに、これは使い捨てだって……」 首領「ぐちぐちと減らず口だな貴様!黙れ!」 八重(I)「(落ちていた小枝を拾う)みよちゃんを……はなせ!」 ミヨ(I)「ね、姉さん……!」 首領「邪魔だ!(八重を蹴り飛ばす)」 八重(I)「ぐっ!」 ミヨ(I)「ね、姉さん……」 八重(I)「みよちゃん、ご、ごめんね……お姉ちゃん、強くなく、て……」 ミヨ(I)「いいから……姉さんは……逃げて……ボクは大丈夫だか……ら……」 -- 八重+ミヨ(I)?
- 八重(I)「みよちゃんを置いていくなんて……絶対ダメ」 ミヨ(I)「姉さん、次は姉さんだよ……姉さんは、人間なんだから……だから、逃げ……て」 八重(I)「(首を横に振る)みよちゃんはみよちゃん。だから……みよちゃんを、離せ!!!!!!」 -- 八重+ミヨ(I)?
- (ウー……ウー……) 八重(I)「(突撃を止める)お、お巡りさん……」 首領「ちっ。ポリ公に捕まっちゃラチがあかねえ。次はぶっ壊してやる、ブリキ野郎。八重、貴様もだ」 ミヨ(I)「ぐはっ」 八重(I)「みよちゃん!」 ミヨ(I)「大丈夫……少し熱暴走しかけただけ……」 八重(I)「みよちゃん……」 「大丈夫ですか!」 「先程襲われていたと通報が……」 八重(I)「は、はい……私は。大丈夫でしたけど……みよちゃ、いえ。“妹“が……」 「妹さんは大丈夫ですか?」 ミヨ(I)「ちょっとね……頭が痛くなりましたが、今は落ち着いています」 「そうでしたか……御無事で何よりです」 霧島(I)「二人とも大丈夫!?」 加賀(I)「ミヨの顔が赤いわね」 「近づかないで!事件現場です!」 八重(I)「大丈夫。です。霧島さんと。加賀さん……は、知り合い。です」 「知り合い?」 霧島(I)「申し遅れました。三ツ矢鎮守府所属、主席秘書の霧島一佐です」 加賀(I)「同じく、航空部の加賀。二佐よ」 「鎮守府の方ですか……どういうご関係で?」 加賀(I)「二人とも鎮守府の所属」 (取り出す身分証明書) 「安道二佐と……三波二佐……わかりました。ただ、事件の事について詳しくお話をお伺いしたいので……署の方までご同行願えないでしょうか」 霧島(I)「私から、提督へは連絡を入れておきます」 -- 八重+ミヨ(I)?
- 『……ご搭乗の最終案内を致します。全日空、福岡行き、16時25分発、263便は……』 『……沖縄那覇空港へご出発のお客様は、ただいまご搭乗に際して……』 『……釧路行きご搭乗の竹橋様!竹橋様!いらっしゃいましたらお声がけください!』 『スターフライヤーよりお客様のお呼び出しを申し上げます……』 --
- (翌日・羽田空港) 八重(I)「昨日は大変。でした……」 加賀(I)「偶然とは言っても、襲われるのは予想外だったわ……」 ミヨ(I)「姉さんに危害が加わなかったのはよかったけど……」 霧島(I)「事情聴取で色々と大変だったわね……」 加賀(I)「そうね。まあ、あとは戻るだけよ」 -- サイダーの艦娘たち?
- 『……出発便の、ご案内を致します。エアーみなみ、三波島行き、16時、50分発、373便ご利用のお客様は、ただいまより、搭乗口501番から、バスにてご搭乗ください。Air Minami flight 0373 for Minami-Island, is now boarding trough now gate 501 by bus.』 加賀(I)「搭乗開始ね」 霧島(I)「まあ、離島だから小さいのは小さいけれど……」 八重(I)「お客さん、少ないです」 ミヨ(I)「……大型バスに4人って……」 霧島(I)「多分少し遅れてくるのよ」 -- サイダーの艦娘たち?
- (数分後・ターミナル外れのスポット)霧島(I)「ねえ加賀、あの姿って……」 加賀(I)「もしかして」 霧島(I)「もしかしなくとも……」 一同「鳳翔さん」 八重(I)「小さくてかわいい。飛行機です」 ミヨ(I)「これって、確か10人乗りのはず……」 加賀(I)「これ、私たちの飛行機よね」 霧島(I)「あ、確かにこれ、私たちのところのよ」 鳳翔(I)「あら?加賀ちゃんに霧島ちゃん、やえちゃんにミヨちゃん。今日は4人なのね?」 加賀(I)「鳳翔さん、逆に聞きますけど……4人なんですか、乗客」 鳳翔(I)「……たぶん」 一同「……い、一応……」 -- サイダーの艦娘たち?
- (十分後 羽田空港A滑走路) 加賀(I)「やはり私たち、5人だけみたいですね」 鳳翔(I)「そうだったみたいね。加賀ちゃん、ごめんね、急に副操縦士、頼んじゃって」 加賀(I)「いえ、鳳翔さんの頼みなら、ね」 『Air Minami Zero-Three-Seven-Three, Cleared for take-off at Runway 16 left.』 鳳翔(I)「Runway 16 left Cleared for take-off, Air Minami 0373.加賀ちゃん、行こ?」 加賀(I)「ええ。お願いします」 (ブルルルル……) 八重(I)「みよちゃんみよちゃん!ついに離陸だよ!」 ミヨ(I)「姉さんはしゃぎすぎ……」 -- サイダーの艦娘たち?
- 『Air Minami 0373, Contact Tokyo departure one-two-zero decimal 8』 鳳翔(I)「Contact Tokyo departure 120.8, Air Minami 0373.行ってきます!」 『行ってらっしゃい!』 加賀(I)「ひとまずこれで……鳳翔さん、出発管制に合わせます」 鳳翔(I)「ありがとう、加賀ちゃん」 霧島(I)「まさか、これで島に帰ることになるとは……」 八重(I)「良いと。思います。だって、少し低めだから、街がよく見えます」 霧島(I)「それもそうね。風もあまりなさそうだし」 -- サイダーの艦娘たち?
- (一時間半後、太平洋上) 鳳翔(I)「もう少しで空港ね。加賀ちゃん、そろそろ降りるわね」 加賀(I)「わかりました。管制に言いますね」 鳳翔(I)「お願いね」 加賀「Tokyo Control, Air Minami 0373. Request to decent 8000.」 『Air Minami 0373, Decent and maintain 8000.』 -- サイダーの艦娘たち?
- 鳳翔(I)「加賀ちゃん、あの白い船の近く。あそこに居るのは……」 加賀(I)「艦娘……でしょうか」 鳳翔(I)「加賀ちゃん、航空注意情報、出てたかしら?」 加賀(I)「いいえ」 鳳翔(I)「変ですね……訓練なら出ているはずですし、もし出撃なら、民間の船はありませんから……」 加賀(I)「ええ……提督に聞いてみましょうか」 鳳翔(I)「お願い」 -- サイダーの艦娘たち?
- (同刻・三波島空港管制塔) 瑞鶴(I)「ねえ、練度維持の為だって言っても、私が航空管制官やる必要ある!?」 しゃあないだろ。訓練とかで国交省に貸しがあるからな。 大鷹(I)「仕方ありませんよ、急に皆さん忙しくなっちゃったみたいですから……」 瑞鶴(I)「ま、発着便もあと二つだし、ちゃっちゃとやっちゃいましょ。提督さん、あとどれぐらい?」 さっきうちのC-47下ろしたろ、あとは定期のエアーみなみの373があと20分で管制圏、臨時の8021は30分ぐらいかな。ま、何も無けりゃ2時間も要らんだろ。臨時便は半ばうちの回送だし。ま、気楽に行こう。おっと、府内無線鳴ってら。 -- サイダー提督?
- はい、こちら三ツ矢鎮守府本部。 加賀(I)『こちらJA01MFG』 加賀か。いつの間に乗員やってんだよ。 加賀(I)『鳳翔さんが機長だから、私が副操縦士』 え。鳳翔さんが8021で、加賀たちは定期の373で帰ってくるんじゃなかったのか。 加賀(I)『え……?これ、コールサインAir Minami 0373なのだけれど』 は?まあいい、それはあとで確認しよう……。 -- サイダー提督?
- 加賀(I)『それは後にして。提督、訓練ってあったかしら』 うち?うちはないぞ。なあ瑞鶴。 瑞鶴(I)「ないわ。今日はホットスタンバイが何人か居る以外は、何もなかったはず」 加賀(I)『そこで何やってるのよ五航戦……』 あー、瑞鶴と大鷹が管制塔に詰めてる。みんなして風邪引いちまったらしくてな。おっとそれはさておき、今の所、ウチにある情報だと、他の鎮守府も含めて訓練はないが。 加賀(I)『ありがとう。見間違いかしら』 さあ。ま、無事に帰ってこい。 加賀(I)『そうね。オーバー』 オーバー。 -- サイダー提督?
- 瑞鶴(I)「釣りじゃない?」 何を獲るんだ。ミーバイ*3か? 大鷹(I)「みーばい……?」 あ、すまん。うまいハタのこと。ついつい方言がね。 瑞鶴(I)「まあ、仕方ないよね。あ、釣りの話してたらお魚食べたくなってきたじゃん。提督さん、今日の夕ご飯はお魚にしてよ?」 言われなくても、今日は鳳翔さんいわく、サバの味噌煮だ。 大鷹(I)「やった!」 まるちゃんがすごくうれしそう。さ、ちゃっちゃと二つとも下ろしちゃおう。 -- サイダー提督?
- 加賀(I)「鳳翔さん、訓練は私たち、そして他の鎮守府もやっていないようです」 鳳翔(I)「ありがとう、加賀ちゃん。今日の夕ご飯を探しているのかしら」 加賀(I)「さあ……。あと少しでアプローチコースです」 鳳翔(I)「うふふ、じゃあ、もうちょっとで操縦をお願いね」 加賀(I)「はい」 霧島(I)「間もなく到着?」 加賀(I)「そうよ。シートベルトはして」 八重(I)「やってます!」 ミヨ(I)「こちらもOKです」 鳳翔(I)「うふふ、みんな大丈夫ね。加賀ちゃん、もうそろそろ周波数変えるように指示が来るはずね」 加賀(I)「ええ」 -- サイダーの艦娘たち?
- 『……Minami-Sima Approach, Air Minami 8021. On your frequency.』 瑞鶴(I)「Air Minami 8021, Minami-Shima Approach, Turn right heading 2-9-0. Then, interrupt localizer. Cleared for ILS runway 2-9 approach. 提督さん、ちょっと変じゃない?」 鳳翔さんたちより先に着くなんてな。いやまあ、上空で追い抜いた可能性は捨てきれんぞ。とりあえず降ろしちゃって。 瑞鶴(I)「やっとくね。Air Minami 8021, Contact Tower…」 -- サイダー提督?
- 加賀(I)「……鳳翔さん」 鳳翔(I)「どうしたの?」 加賀(I)「このレーダー画面見てください。後ろに何か居るようですが……」 鳳翔(I)「鳥、でしょうか……それにしては大きいよう……」 (パパパパパン!) 一同「!」 鳳翔(I)「アイハブ」 加賀(I)「ユーハブ。何かわかりませんが、急いで旋回を!」 鳳翔(I)「ええ。加賀ちゃん、123.1で通信、良いことじゃないわ!」 加賀(I)「ええ」 -- 鳳翔+加賀(I)?
- We are Air Minami 0373. To fling our behind flying aircraft, your action is unfriendly and face to dangerous our passengers. We are general aviation aircraft. NO WEAPONS HAVE!
(こちらはエアーみなみ373便、後方の機体へ。貴機の行為は非友好的であり、乗客を危険にさらす行為よ。私たちは定期旅客便よ、武器なんて無いわ!) -- 加賀(I)?
- ??『……本当にお前らが民間人なら、な』 加賀(I)「!!!」 ??『知っている。お前らが艦娘であること、そして、八重をかくまっていることも』 加賀(I)「だからと言って、民間人が居る可能性が──」 鳳翔(I)「加賀ちゃん、ユーハブ」 加賀(I)「アイハブ。操縦を何故、私に?」 鳳翔(I)「加賀ちゃん、ここは私が無線をやるわ。お願い」 加賀(I)「わ、わかりました」 鳳翔(I)「お願いね。(無線機のボタンを押す)どこの誰だか存じ上げませんが、私たちが八重さん?をかくまっているなんて、わかるはずもありません。それに、もう少し丁寧な言葉づかいをするべきでは?」 ??『うるさい。お前らのことは調べ上げている。乗客名簿、鎮守府名簿、そして、内偵。八重をかくまっていて、その機体に乗っているのはわかっている。ブリキのおもちゃと一緒にな』 八重(I)「鳳翔。さん。私……」 鳳翔(I)「(口に手を当て、静かにするように指し示す)」 -- サイダーの艦娘たち?
- 鳳翔(I)「誰がどこで何をしていようとも、あなたとは関係のないことです。それより、こういうマネはやめた方がよろしいですよ?」 ??『脱走兵は処分する。それがそれがうちに課されたミッション。それをかくまう連中もまた、そう』 鳳翔(I)「この飛行機が民間機でも?」 ??『変われ、ノロマ。艦娘しか居ないだろう。なら、問題無い』 鳳翔(I)「人命を賭してまでやる事ですか。“素晴らしい“お考えをお持ちのようですね」 ??『グチグチとうるせえ奴だな。イシカワ、殺れ』 ??『……仰せのままに』 鳳翔(I)「ちょっと待ちなさい!まだ話が!」 加賀(I)「……周波数、変えられたみたいですね」 鳳翔(I)「そうみたいね。加賀ちゃん、アイハブ。みんな、捕まって」 加賀(I)「ユーハブ。目視できる範囲で、機影なし」 霧島(I)「……八重、ミヨ、シートベルトちゃんとしておいて」 八重(I)「え、あ、はい」 ミヨ(I)「大丈夫、してますよ」 -- サイダーの艦娘たち?
- 鳳翔(I)「それじゃあ行くわ。加賀ちゃん、針路1-8-0*4、空いてる?」 加賀(I)「目視では……って鳳翔さん、管制には報告しないのですか!?」 鳳翔(I)「緊急事態よ。管制に許可取ってたら間に合わないし、教えるようなものよ」 加賀(I)「……わかりました。では、行きましょう」 鳳翔(I)「そうね。Turn left heading 1-8-0」 加賀(I)「Turn left heading 1-8-0」 (パパパパン!) 加賀(I)「くっ」 鳳翔(I)「大丈夫よ、まだかすったぐら……きゃっ」 (パパパパパパ……) -- サイダーの艦娘たち?
- 『ジリリリリリ……Engine 1 FIRE!……』 加賀(I)「1番被弾!」 鳳翔(I)「ナンバーワンカット!エンジンファイアスイッチプル!」 加賀(I)「Confirm?」 鳳翔(I)「コンファーム!加賀ちゃん、消したらトランスポンダをスコーク77にセット。可能なら管制に緊急事態宣言」 加賀(I)「消火完了、トランスポンダセット完了よ。Tokyo control, Air Minami 0373, Declare emergency. No.1 engine fire.」 『Air Minami 0373, confirm declare Emergency. Your meaning is No.1 engine fire that’s right?』 加賀(I)「Affirm. Give me time.」 『Air Minami 0373, Roger. 』 -- サイダーの艦娘たち?
- 鳳翔(I)「ターンライト!」 加賀(I)「他機なし、ターンライト!」 『(英語)ピーガー……めてください……ういうことは、お父様………が……』 加賀(I)「何かしら……」 鳳翔(I)「さあ……」 八重(I)「何か落ちていく!」 加賀(I)「何ですって!?……鳳翔さん、チャンスです」 鳳翔(I)「ええ。なぜかはわかりませんが、追いかけてきた機体が落ちたのならラッキーです。加賀ちゃん、今の針路はどこかしら?」 加賀(I)「針路は……290です」 鳳翔(I)「緊急着陸に備えて。島へ帰りましょう」 -- サイダーの艦娘たち?
- 加賀(I)「東京コントロール、エアーみなみ0373。日本語にて申し上げます。現在左側、1番エンジンの火災は鎮火しています。ですが、危険性を顧みて、本機は速やかな着陸を要請します」 『エアーみなみ0373、了解しました。貴機は三波島空港西30マイルの地点です。三波島へ向かいますか?』 加賀(I)「東京コントロール、はい、三波島へのダイレクトを要請します」 『了解しました。ダイレクト許可します』 -- サイダーの艦娘たち?
- 『エアーみなみ373、コンタクト三波島アプローチ、1xxデシマルx』 加賀(I)「Contact Minami-Shima approach 1xx.x ありがとう」 『どうかご武運を』 加賀(I)「Minami-Shima Approach, Air Minami 0373 on your frequency」 瑞鶴(I)『エアーみなみ0373、こちら三波島進入管制……って加賀さんだよね』 加賀(I)「そうよ。何かしら、瑞鶴」 瑞鶴(I)『ううん、なんでも。周波数これからカチカチ切り替えるのはリスキーかもしれないし、こっちで全部受けるね。エアーみなみ0373、滑走路29への着陸許可。風は方位290から2ノット』 加賀(I)「29への着陸許可、風290の2。瑞鶴、任せたわよ」 瑞鶴(I)『と、当然でしょ!』 -- サイダーの艦娘たち?
- (管制塔)降りてくるぞ! 瑞鶴(I)「見えた!やっぱりナンバー1だめっぽい」 まるちゃん、消防隊に準備するように、と。 大鷹(I)「はい。消防隊の皆さん、まもなく来ます。準備を」 (ウ~……ウ~……) -- サイダー提督?
- 『(英語)200(フィート)』 鳳翔(I)「行きますよ!頭下げて!ひざを抱えて!」 (衝撃に備える3人) 加賀(I)「接地するわ!」 (ドン!) 鳳翔(I)「リバース!ブレーキ!」 加賀(I)「掛かってるわ!80(ノット)!」 八重(I)「(神様……)」 (ギギギギギ………) 加賀(I)「とま……った」 鳳翔(I)「やったわね、加賀ちゃん」 加賀(I)「はい。やりました」 瑞鶴(I)『鳳翔さん、加賀さんお疲れ!今消防隊がチェックしてるから、終わり次第スポットインしてね』 加賀(I)「瑞鶴も、ありがとう。それで、大丈夫なのかしら?」 -- サイダーの艦娘たち?
- 『こちらファイヤ1です。操縦席どうぞ』 加賀(I)「こちら操縦席」 『外周の点検完了です。延焼は見られないので、駐機場まで移動しても大丈夫です』 鳳翔(I)「ありがとうございました。加賀ちゃん、移動しましょう」 加賀(I)「ええ。瑞鶴、聞いてたかしら?」 瑞鶴(I)『うん。じゃ……スポットは21で、Air Minami 0373,Turn left A-5, Contact Ground 1xx.x』 加賀(I)「Turn left A-5, Contact ground 1xx.x, Air Minami 0373.(カチカチ)Ground, Air Minami 0373 on your frequency. A-5,Spot 21」 -- サイダーの艦娘たち?
- 大鷹(I)『えーと……あ、エアーみなみ、ぜろさんななさん、あぷるーぶ、とぅ……えっと』 鳳翔(I)「ちょっと加賀ちゃん、まるちゃんと通信してもいい?」 加賀(I)「(こくり)」 鳳翔(I)「うふふ、まるちゃん、落ち着いて、深呼吸、深呼吸。私たちは大丈夫。あとは、明石ちゃんと、夕張ちゃんに見てもらうだけだから」 大鷹(I)『す、す、すみません!い、一旦取り消し再送します。すーっ……はーっ……Air Minami Minami-Shima Ground, Approved taxi to spot 21 via B-5, E』 鳳翔(I)「Taxy via B-5 and E, Air Minami 0373.加賀ちゃん、行きましょう」 加賀(I)「はい。お客様をお届けするのが、私たちの役目ですから」 -- サイダーの艦娘たち?
- (10分後・三波島空港21番スポット) お帰り。 加賀(I)「た、ただいま……」 霧島(I)「ほら、照れないで」 加賀(I)「て、照れてなんか、ない……」 まあまあ、なにはともあれ、誰も怪我もせず戻ってこれたのが一番。 鳳翔(I)「そうですね……機体はボロボロになってしまいましたが……」 いいんです。モノなら直せます。けれど、人材は戻ってきません。だから、こそです。 鳳翔(I)「はい。それでは、皆さんと先に戻っていますね」 お願いします。 -- サイダー提督?
- ミヨ(I)「(確かに、モノなら直せる。部品さえあれば。いや、それこそお金さえあれば部品だって作れる。……じゃあアンドロイドであるボクは……?もし、壊れた、いや、ケガをしたら?もし、それが重大なもので、全損ってことになったら?……そもそもボクは、修理のできる備品?それとも唯一無二の人材なの――?)」 ミヨ、どうした、難しい顔して。 ミヨ(I)「う、ううん、何でもない」 そっか。気を付けて帰るんだぞ? -- サイダー提督?
- (10分後)明石(I)「それにしてもよく戻ってきたと思うけどね」 まあねえ……翼にでっかい穴空いてるし。直せそうか? 明石(I)「やってみるしかないけど……その前に、見せるべき人いるんじゃないの?」 ……そっか、足柄! 明石(I)「運航中の事故だから、もしかしたら……ってね」 まあ、見てもらわないかんだろうな、保険屋さんに。 明石(I)「一応呼んどいたよ、後ろ」 おお足柄、すまんな。 足柄(I)「全く……提督、高いのばっかり壊してない?」 今回はわざとじゃねえ! 明石(I)「そもそも、私たちが壊したわけじゃないです!」 足柄(I)「そうね……まあそうよね……明石、ちょっと説明とかしてもらえる?車なら分かるけれど、ヒコーキは……」 明石(I)「お任せください」 -- サイダー提督?
- (さらに10分後)どう、足柄? 足柄(I)「はっきり言うわ。保険でカバーできる範囲越えてるし、特約なかったら免責よ。それにこれ、古いものよね」 明石(I)「ええ。中古の機体を整備して……」 足柄(I)「そ。だからなの。多分修理費、評価額越えるわ」 つまり……? 足柄(I)「経済的全損ってこと。修理費が保険で払える額越える可能性が大きいわ……。それに、私としては、修理するなら安全な新鋭機に変えた方がいいと思う」 リスクマネジメントの面からも、か。 明石(I)「うん。BN-2Bだと搭載機器だって古いから……」 それは審議にかけんといかんが……それに鳳翔さんたちの意見も聞きたい。 足柄(I)「そだね、操縦するのは鳳翔さんたちだから」 あとは、うちの大蔵省次第。 二人「(広美/大淀だ……)」 -- サイダー提督?
- (数時間後) ……というわけなんだ。 霧島(I)「足柄の判断なら仕方ないわ……」 大淀(I)「足柄さん、腕利きのアジャスターですから……」 保険会社も同じ答えだ、そうだ。 鳥海(I)「司令官さん、それで何かアイデアでも?」 それなんだが、とりあえず鳳翔さんと加賀の意見を聞いてから決めたい。あの二人なら、ウチで一番操縦が上手いから……。 霧島(I)「司令の意見に賛成です」 大淀(I)「その方が良いかと思います。私たち、そういうのは素人ですから……」 -- サイダー提督?
- すみません、乗務してもらったばっかりなのに。 加賀(I)「聴取、疲れたわ……」 すまんな、なんやかんやで営業中の案件だったからなぁ……。 鳳翔(I)「それはそうですけど……提督、どうして私たちを?」 ああそうでした、意見をと。 大淀(I)「簡単に言ってしまいますと、あの機体は保険では直せないそうです。ですから、入れ替えることになったのですが……」 何かおすすめだったり、直すべきだという意見でもいいです。 加賀(I)「ダッシュ6ならよさげね」 鳳翔(I)「そうね、ツイン・オッターなら、私たちが双発のライセンス取ったときの機体だったから、慣れています」 なるほど……どう思う? 霧島(I)「経験のある機体なら適切かと思いますが」 鳥海(I)「安全なら、なお良いと思います」 確か……。 加賀(I)「最新モデルあるわ。それなら、問題はないと思うけれど」 確かにな。それでいいかな。 大淀(I)「賛成の方挙手」 (全員) 大淀(I)「大丈夫そうですね」 そうなったら、発注をかけるか……。 -- サイダー提督?
- (数日後・執務室) 大淀(I)「先方との調整、完了しました。数日中には用意可能、とのことです」 ありがとう。そしたら、コマ子とグラ子に頼んでおいてくれ。 大淀(I)「わかりました。お二人に打診してみます」 頼んだ。 (コンコン) どーぞ。 青葉(I)「しっつれいしまーす」 お、なんとなく声の通りまくる青葉さんじゃないですか。 青葉(I)「ちょーっと面白いの見つけちゃいました」 なにみっけた。 秋雲(I)「ふっふっふー、秋雲さんの傑作にしといたから、それも読んでね?」 おう。 大淀(I)「えっと……これは」 マンガ、か。 -- サイダー提督?
- 青葉(I)「インシルシティアについて情報を探っていたら、見つけちゃったんです」 ……まあ、秋雲のマンガ読む前に何を見つけたのか聞こう。 青葉(I)「ミヨさんの中にあったスマホからアクセスして、いくつかファイルを取ってきちゃいました」 無茶するなあ。 大淀(I)「いろいろ壊さないでくださいね……」 青葉(I)「それはご安心ください。別の壊れかけたパソコンからやりましたからー」 そういう問題か……?まあいい、中身は何だった? -- サイダー提督?
- 青葉(I)「一つはファイルが破損していました。今修復してます。二つ目は、日記でした」 日記? 秋雲(I)「それをロンドンさんやパースさんに頼んで訳してもらって、それを原案にして描いてみたわけ」 ……普通に和訳寄越そうと思わんかったのか。 秋雲(I)「いやー、筆が動いちゃってねー」 ツッコミたいがまあいい、それは後でもらおう。それで、中身は……? 青葉(I)「開発者の日記のようでした。八重さんや、ミヨさんに関係しているのかもしれません」 読んでみよう。秋雲、あとで原文と訳文も頂戴よ。 秋雲(I)「一緒に挟んであるから~」 わかった。どれどれ……。 -- サイダー提督?
- 《Chapter #2》 Eimy Stories "A Story of Affection and Rebellion" --
- 2014年12月 アイルランド・ダブリン市 --
- 「……これを見ていただけませんか」 「いいよ。……これって」 ケルト神話とクラフトビールの街、ダブリン。その街にあるとある建物に、二人は居た。 「極東で、これに似たシステムが導入されたそうです。これなら、私たちで、平和と秩序を護るのに役立てると思います」 「少し費用がかさみそうだが……面白い。やってみてくれ、費用は惜しむな」 「わかりました、首領様」 首領「はっはっは。我がインシルシティアの設立目的は、我々の手で、秩序と平和を守り、人々に奉仕することじゃないか。このオズワルド、その目的なら費用も惜しまん」 --
- 彼──オズワルド様は、この私を拾ってくれた”恩人”だ。数年前、リーマン・ショックでアメリカの会社を解雇された私を拾い、このダブリンの街へ連れてきてくれたのもオズワルド様だ。表向きは、フロント企業であるオズワルド・セールスの研究員として、実際は、秘密結社インシルシティア、ダブリンを中心とした、この付近の海を守る自警団の研究担当だ。 --
- (数時間後) 「首領様、手に入れました」 オズワルド「よくやった!」 「予想よりも格安で入手できました」 オズワルド「でかした!年明けには材料集めをしようじゃないか」 「はいっ!」 オズワルド「今日はもう終わって良いぞ。みんな集めてくれ、仕事納めのパーティーと行こうじゃないか」 「仰せのままに!」 --
- 翌年、私たちは本格的な製造に入った。それが茨の道だとは、誰も思わなかった。 「首領様、このサイズですと、置き場所に不安が……」 オズワルド「それなら構わん。ベルファストの仲間が、場所を貸してくれるそうだ。造船所だから、大掛かりな機材を置いても構わないだろう」 「ありがとうございます」 オズワルド「構わん、構わん。もしこれが上手くいくなら、仲間たちの負担も減らせる」 「はいっ!」 --
- ダブリンからバスでおおよそ2時間半、ベルファストにある造船所の一角。仲間が用意してくれた場所だ。ここが、新たな計画の中心地。 「大きいですね」 オズワルド「ここに、機材が山ほど来るらしい。だからじきに、ここも埋まるだろう」 「どういう風になるのでしょう。楽しみですね」 オズワルド「ああ。ただ、ざっくりと目を通してみたのだが、いくつか気がかりな点があった」 「気がかりな、と言いますと」 オズワルド「それなんだが、まずは、艤装の面だ。ジャパンでは11インチを乗せた巡洋艦はなかったはずだ。アイルランドでも見かけない。どういうものだろう」 「さあ……私、軍艦には疎いもので……」 オズワルド「ああ、すまなかった。端的に言えば、未知の船をモチーフにしたフリートガールということだ」 「フリート、ガール」 オズワルド「なんでもジャパンでは、フリートガールが成果をあげているらしい」 --
- 「なるほど……」 オズワルド「そしてもう一つ。このユニットとやらがわからない。どのように作用するのか、あるいは……」 「さあ……私には、検討も付きません」 オズワルド「まあいい、軍で仲間だった人に聞いてみよう。アテがあるかもしれないし、よもや入手も」 「ですね。ところで首領様、この子、でいいのでしょうか、この子をどのように運用しようとお考えでしょうか」 オズワルド「それなんだが、ジャパンでの運用実績にあわせて複数名で組ませて、護衛に当たらせたいと考えている」 「なるほど、商船護衛って所ですね」 オズワルド「それに、ちょっとした華にもなるだろう」 「ですね」 --
- オズワルド「そうだ、一つ頼みがある」 「はい」 オズワルド「君をこのプロジェクトのマネージャーにしたい。どうかな?」 「いえ、わ、私でなくても……」 オズワルド「これを見つけてくれたのは君だ。だからこそだ」 「……わかりました。ぜひお請けしましょう」 オズワルド「期待しているぞ。美しく、素晴らしいものにしよう。費用は惜しまん。頼んだ」 「は、はいっ!」 こうして私は、このプロジェクトの責任者に選ばれた。組織の命運と明日を賭けた、壮大なプロジェクトが動き出した。 --
- プロジェクトが動き出すと同時に、多くの技術者が集められた。私の郷里、日本の技術者も入っていたのは嬉しい。さらに驚きだったのは、国によっては、非公式な支援もあったことだ。 オズワルド「各国の政府も、非公式ながら支援してくれるようだ。いくつかの国からは、非公式ながら技術供与も受けている」 「そんなに!」 オズワルド「ああ。特に最先端の国々から協力が得られるのが大きいぞ。技術者を寄こしてくれるそうだ。艤装チームに、加わってもらうつもりだ」 「それこそ、百人力ですね!」 オズワルド「まさしくだ」 --
- そうやって集まったドリームチームに、“彼”の姿はあった。どこの出身か、そう言うことは気にも止めなかったこともあり、今までに聞いたことはなかった。名前も、欧米ならごくありふれた名前で、あまりよくは憶えていない。だが、彼は加わると同時に頭角を現した。改善点を一目散に洗いだし、それを即座にまとめあげフィードバックする。艤装チームの中でもずば抜けた才能を持つ彼が、リーダーとなるのも頷けた。しかし一方で──、艤装を背負う側、いわば『人体』の方はと言うと、一向に進展らしい進展が見られず、仮の『適合者』に背負わせてみようか、という話さえ出始めていた。打開策が、求められていた。にっちもさっちも行かなくなった人体チームは、徐々に焦りが出始めていた。 --
- そうこう無駄に数ヶ月の月日を浪費し続けたが故の結論だったのだろう。季節はもう短い夏を超え、秋口にかかろうとしていた。 「……創ればいい」 「今、何て」 「無いなら、創ればいい、と」 「何をバカな!」 「だったらどうしろと言うんだ!仮の適合者は出ない、正規の建造法は国家機密で開示拒否。ならば、これにかけるしか」 「言ってる意味がわかってるのか!」 「わかっちゃいるさ!だったら対案を寄越せ!対案を!」 「お前こそ、そんなトンチキな案出すぐらいなら他のも準備しとけ!」 「うるさい!一生懸命考えて居るんだ!」 オズワルド様は、これを聞き静かに立ち上がった。 オズワルド「落ち着いてくれ。わかった。ならば、責任を誰かが取ればよいのだろう」 「しかし首領様、そこまでは……」 オズワルド「かまわない。現にこのプロジェクトを承認したのは私だ。だから責任者は私だ」 この時だったのだろう。オズワルド様が、あの子を引き取ろう、そう決意されたのは。そして、“数少ない”存在であった私が、声をかけられたのは。 --
- 数日後、二つ返事で了承してしまったことを、いささか後悔した。人生でトップ3に入る恥ずかしさであった。 オズワルド「無理強いをしてしまって、すまなかった」 「次はありませんからね」 オズワルド「申し訳ない」 「まあ、これで一歩前進ではあるわけですよね」 オズワルド「そうだ。これでうまく行けば、4週間で形になる」 「それと、謎のもう一つが解けた、と聞きました」 オズワルド「そうそう、これは人体側になるのだが、核となる部分に、とある機体のAIを組み込むのだそうだ。それにより、効率的な稼働が可能になる、らしいのだ」 「ある意味、“魂”とも呼べるかもしれませんね」 オズワルド「かもしれん」 「それで、入手の目処は……」 オズワルド「既にイスラエルの仲間が譲ってくれた。明日明後日には、航空貨物としてダブリン空港に到着する」 「やりましたね」 オズワルド「しかも彼らが調べた所、対策済なのだそうだ」 --
- 「対策?」 オズワルド「技術文書、隅々まで読み込んだのだが、このAIには重大な欠陥があるのだそうだ。対策済みのものであればよいのだが、そうでなければ暴走をしかねないのだそうだ」 「つまり制御不能に陥る、と」 オズワルド「おそらくは、な」 「だからこそ、信頼のおける方からお譲り頂いたわけ、ですね」 オズワルド「そうだ。値段は張るが、信用のおけるものを使うべき。それがひいては、リスク回避に繋がると、私は思うのだ。それに……いや、なんでもない」 オズワルド様は口をつぐんでしまったが、おそらくこうおっしゃいたかったのだろう、私の“義娘”になる存在だ、と。そうでなければ、数百万ユーロを注ぎ込んだりはしないはずだ。 --
- それから数日、そのAIユニットが無事に届いた。航空用コンテナの、大きなものに詰まる程度の大きさであった。もっと大きいモノを想像していた。 「これ、ですか」 オズワルド「ああ。これが、AIユニット。ちょっと大がかりだがな……」 「これが、あの子の核となるわけです、か」 オズワルド「そうなるな。おっと、これは添え状か……」 「マメな方なんですね」 オズワルド「いや、彼らにしちゃ珍しいな。がさつだし、何より言葉足らずだから……何々、『安物を使うな』か」 「粗悪品は危険、ということでしょうか」 オズワルド「おそらくは、な。技術文書にも書いてあった、暴走の事だろう」 「それなら納得出来ます。対策にも、費用がかさむのでしょう」 オズワルド「おそらくはな。私も詳しくはないが……そうだ、人体の方がもうそろそろなんだろう」 「はい」 オズワルド「見せてほしい」 「仰せのままに」 --
- 私は、オズワルド様を“彼女”の前へ案内した。もう、十代半ば程度にまで成長していた“彼女”を、オズワルド氏はいとおしそうに眺めていた。 オズワルド「もうここまでか……」 「順調です。モノも揃いましたから、よければ数日内にもAIを焼き込めます」 オズワルド「……そうなると、名前を付けないと」 「名前、ですか」 オズワルド「そう。どんな型のフリートガールかわからなかったからな」 「……文字化けして読めなかった」 オズワルド「そう。だから、名前を付けたい。英語でも、そして、日本語でも通じる、素晴らしい名前を」 「そう、ですね。どこか日本人っぽい顔もしていますから……ある意味、日系人とも言えそうです」 オズワルド「何か案はないか?良さそうなの」 ふとひらめいた名前を、私はオズワルド様に伝えた。 「……エイミー……エイミーはいかがでしょう」 オズワルド「エイミー……Eimy……良い名だ。漢字とか、決めていないのか?」 --
- 「……何かいいの……瑛美、瑛美でどうでしょう」 オズワルド「意味を、意味を教えてくれ!」 「はい。瑛美の瑛、は、透明で澄んでいる玉、または玉の光、そして美の美はbeautiful、美しい。すなわち、美しく澄んでいる玉、という意味になります」 オズワルド「なんと。美しく澄んだ心の子、という意味にもなるな」 「はい。清らかな心の持ち主になって欲しい、そんな願いも込めています」 オズワルド「そうだな。清く、正しく、美しく。ジャパンのビジネスマンのモットーみたいだな」 「ええ。そのような人間に育って欲しいと……」 オズワルド「思うわけだな。そうだ君、教員免許持っていたよな」 「はい。ただ、相当前に日本で取ったものですし、それに失効していて……」 オズワルド「構わん。時間はかかるだろうが、つきっきりでエイミーを指導してくれないか。そうすれば、名前の通りとなる」 「……はい。やはり、首領様にはかないません」 ついでに取った教員免許。教育実習を、それこそ十数年前にして以来の教壇が、まさか家庭教師になるとは。それに私には――。いいや、やめよう、この話は。 --
- 2015年10月7日。 記念碑を建てるなら丁度良い日だろう。エイミーを、“サナギ”から出し、ついにこの世界へ“羽ばたかせた”日だ。 「ついにこの日が来た」 「長かったな」 「ああ。一時期はどうなるかと思ったぞ」 「首領様、始めてよろしいでしょうか」 オズワルド様は頷いた。無言で、スイッチが押される。 「排水」 「異常なし」 「ラジャー」 すべて順調に進んでいる。数時間前に、ユニットの中身をインプットする作業も、すべて滞りなく終わっている。 オズワルド「いよいよだな」 「はい。楽しみです」 そし静かに扉が開かれ、すとん、と彼女は降り立った。 --
- エイミー「……ここは」 オズワルド「ベルファスト。私の名前は、マイク・オズワルド。そしてここは私の基地、周りに居るのは私が集めた最高の仲間たち」 エイミー「基地……仲間……ベルファスト。誰、マイク……知らない、知らないしらないしらない!」 乾いた音が響く。オズワルド様が頬を押さえると同時に、エイミーも手を押さえた。 オズワルド「大丈夫かい。落ち着いてくれ」 エイミー「嫌……!あの人じゃない!だ、誰ですか、貴方たち!スザンナじゃない!」 オズワルド「スザンナ……ああ、コヘンのことか。コヘンなら、アシュケロンに居る私の仲間だ」 エイミー「……もしかして、スザンナの仲間ですか?」 オズワルド「彼女は、私の優秀な仲間だ。君の核となるユニットを、私に譲ってくれた」 エイミー「……もしかして、わたくし、不要になって、スクラップになって、そして解体され、遠くこの地へ運ばれ……だからわたくし、こんなに小さく……」 --
- 「落ち着いて」 私は思わず、震えるエイミーの肩をさすってしまった。 「ううん、むしろ“必要”だったから来てもらったの。低く思えるのは、小さくなったから」 手鏡を取り出して、エイミーに今の姿を見せた。 エイミー「このいたいけな少女が、わたくし……でしょうか」 顔をしかめてみたり、笑ってみたり。ようやく、鏡の中の少女が自分である、と認識したようだ。 エイミー「わたくし、とんでもない誤解をしてしまっていたようです。捨てられてしまった、のだと」 オズワルド「いいんだ、混乱するのも不思議ではない。さっきは強烈な自己紹介、ありがとう」 エイミー「申し訳ありません。怪しい人物は敵だと……それがまさか、スザンナのお知り合いでしたとは。ご無礼をお許しください」 オズワルド「いいのいいの。これから気を付けてくれればそれで。おっと、今日から君は、私たちの仲間だ。そして、君の名前は……」 --
- エイミー「なまえ……わたくしのような者に名前など……」 オズワルド「必要だ。だから、付けることにした。今日から君は、エイミー」 エイミー「エイミー……」 オズワルド「よろしくな、エイミー」 ぎこちない笑顔だった。けれど確かにそれは笑顔だった。オズワルド様も、エイミーの気持ちに応えるように強く握る。 オズワルド「私の仲間たちを紹介したい。彼がオコナー、その隣がチェン、向こうに居るのがムハンマドとスミス。で、君の隣が──」 私のことを、オズワルド様が紹介する。 オズワルド「これからしばらく、君の先生として付いてもらう。だから、しっかりと学ぶんだぞ」 エイミー「はいっ!よろしくお願いします、先生!」 差し出された手を握ると、そこには、エイミーの、屈託のない笑顔があった。ぎこちなさは、もうどこにもない。 「よろしくね」 私は、この笑顔に弱い。 --
- 数日後、ダブリン郊外にあるオズワルド様の屋敷に、私の荷物が運び込まれた。私は通いでもいい、と言ったのだけれども、やはり住み込みで、と押しきられてしまった。2階の小さな小部屋(とオズワルド様はおっしゃってた)、と言うには広すぎるほどの部屋が、これから私の部屋になる。 エイミー「先生、ここが先生のお部屋ですか?」 「そうね、ここが私の部屋」 エイミー「わあ、色々なものがあるんですね。これは?」 机の上にあるものに、興味津々なようだ。 「これはね、ペン。文字を書くためのもの」 紙を取り出し、P-E-Nとそのボールペンで綴る。 エイミー「先生、ペンぐらいはデータに……けれど、触るのは初めてです」 エイミーはbiro*5を握り、必死に何かを書こうとする。けれど、上手く使えないのか、黒い丸を書いただけで終わってしまう。 エイミー「上手く……いかないです」 「書き取りの練習も必要ね。後で買ってきましょう」 (コンコン) 「はい」 「失礼致します。お食事のご用意が出来ました。先生も、お嬢様とお越しくださいと、旦那様から言付けがございました」 いいのに、と言いかけたその言葉を聞かず、お手伝いさんはピシャリと扉を閉めてしまった。別に適当なものでいいのに……と思うところもなくはないが、オズワルド様の指示ならば仕方ない。 --
- ……などと思っていた私の考えは、食卓に着いた所でひっくり返ることになる。オズワルド様や私の机に置かれていた食事とは違い、エイミーの皿には、どう見ても市販のエナジーバーが置かれていただけであった。 「オズワルド様」 オズワルド「どうしたのかね。さあ、召し上がってくれ」 「いえ、そうではなくて……何故、エイミーの食事はエナジーバーだけなのですか」 オズワルド「それがだな……」 エイミー「えっと、こういうのが食糧だと……」 「それじゃあいけない!食事はバランスが肝心!」 オズワルド「まだ残り、あるだろう」 「はい、旦那様」 オズワルド「ある分でいい。エイミーの分を用意してくれ」 「かしこまりました」 --
- しばらくして、少しだけ少なめに盛られた、私たちと同じ料理が運ばれてきた。ほどよい温かさの、シチューと、焼きたてのブレッド。それを、興味津々に眺める。 「食べて」 エイミー「これは食糧……なのでしょうか」 自分のスプーンを持ち、私はエイミーのシチューを、目の前で自分の口に運ぶ。 エイミー「おいしいの、ですか?」 首肯。 オズワルド「私が小さい頃から親しんだ味だ。食べてくれ」 エイミーはおそるおそる、あろうことか素手ですくい取ろうとする。そして、当然。 エイミー「あつっ!」 オズワルド「大丈夫か!?急いで氷水!」 「はっ!」 --
- 急いで冷やした事が功を奏し、大事にならずには済んだ。 「ごめんなさい、私が食べさせてあげれば……」 エイミーは静かに首を振った。 エイミー「わたくしが、わたくしが何も知らなかったからです。先生や、オズワルドさんのせいではありません」 紅くなってしまった、小さな手に握りしめられていた氷のうが、かえって痛々しく見えてしまった。 オズワルド「私のせいだ。何故早く、こんなことに気づかなかったなんて……」 「旦那様、お嬢様、先生、僭越ながらご意見を。今回の件は、どなたも悪くないと存じます。ただ全員、私も含めた全員が、ちょっとだけ配慮不足だったのでしょう。ですからこれからは、お互いにもっと、お互いの事を知って、思いやるべきであると……申し訳ありません。私、女給の立場で意見を述べるなど……」 エイミー「いいえ、大変ご立派な意見です。わたくし、皆様のこと、そして、この“世界”のことを一番知らないのです。だからこそ、わたくしは知ることの重要性を思い知らされました。ですから、これからも教えてくださいませんか」 「もちろん」 オズワルド「ああ。当然さ、私のか……いや、仲間だからな」 エイミー「ありがとうございます!」 私は、この笑顔に弱い。 --
- 2015年12月。派手なイルミネーションが、エイミーと、いや、エイミーと出会う“きっかけ”から、もう一年が過ぎようとしていたことを告げる。長いようで短い一年であった。そんな節目の日に、ダブリン港でエイミーに艤装を背負わせ、動作試験を行うと言うのは、偶然なのか、それとも必然であったのだろうか。 「始めよう」 『彼』が、艤装試験の指揮を執る。 「全く、どっかの誰かさんたちのせいで……」 「誰かさんって誰だ」 「どうでもいいだろ。エイミー、電源を」 エイミー『はい』 インカムを通じ、声が聞こえてくる。モニタでは、艤装に積んだ機器類が無事動作したという、センサからの情報が刻一刻と流れてくる。 「起動シークエンス問題なし。エイミー、説明書の通りだ、20m間隔で4本ブイを立ててある。それをスラロームで抜けてくれ」 エイミー『わかりました』 やはりぎこちなさは残る。けれども、元が元なだけに、難なくこなしていく。 「そのまま折り返してきてくれ」 エイミー『はい』 二周目は、慣れたのか一周目以上にスムーズにこなす。 「よし、今日はここまでだ。明日はジャイロ調整したら再度スラロームをしてもらう」 エイミー『わかりました。お時間は、いつにいたしましょう』 「首領から聞いてくれ」 エイミー『わかりました』 --
- エイミーが戻ると同時に、『彼』が矢継ぎ早に指示を飛ばす。初の実働試験ということもあったのだろう、改善点が多くあったようだ。部品をああしろ、この部分のソフトウェアを調整しろ、と。 エイミー「どうでしたか?」 「まあまあだ。明日調整しておく」 エイミー「ありがとうございます」 「仕事だから。ほら、今日は忙しいから」 エイミー「はい」 「行きましょう」 私はエイミーの手を引き、その場を離れた。理由はわからない。けれど、『彼』がエイミーを嫌っているように感じた。だから、純朴な彼女を置いておくわけにはいかなかった。それに、たまには歩きで帰るのもありかな、と思った。 --
- オズワルド「待ってくれ」 後ろから呼び止められる。 「首領様」 エイミー「オズワルドさん」 オズワルド「少し話がしたくなってな。お邪魔かい?」 「いいえ、ちっとも。これから屋敷に戻るつもりでしたので」 オズワルド「なら尚更好都合。行こう」 「はい」 オズワルド様は、歩調を合わせて、ゆっくりと歩いてくださる。 オズワルド「エイミー、今日はどうだった?」 エイミー「初めての感覚でした。水面を、まるでスケートのように滑る感覚は。でもまだ、上手くは滑れませんね」 オズワルド「誰だって初めてはそうさ。じき、上手くなる。なんだって私の娘だからな」 変な声を上げたのはどちらだっただろうか。 エイミー「わ、わら、わたくしが、オズワルドさんの、む、むしゅめ!?」 「え、まあ、ある意味そうではありますが……」 オズワルド「いいや、私としては籍も入れて、正式に娘としたい」 エイミー「えっと、それってつまりその、オズワルドさんが、わたくしの、おとうさまに……?」 オズワルド「そう。ダメかな」 エイミーはしばらく黙ってしまった。そして、息を大きく吸い──。 エイミー「お義父様」 私は、いや、オズワルド様も、この笑顔に弱い。 --
- 2016年の年明け。手続きも終わり、晴れて『エイミー・ガーダ・オズワルド』そして、『瑛美・オズワルド』となったエイミーと、私、そしてオズワルド様は、ダブリンからヒースローを経由して、イスラエルの地へと降り立った。エイミーの元となったAIを組んだプログラマと、エイミーを会わせるためだ。 エイミー「少し不安です。スザンナがどんな顔をするのか……」 オズワルド「わからん。まあ、会ってからだ」 「思い切り変わってしまいましたからね……」 オズワルド「まあ、コヘンなら大丈夫だろう。技術文書も投げてはあるし」 「(本当に大丈夫でしょうか……)」 エイミー「(スザンナ、元気かなぁ……そして、どう思うのでしょう……)」 オズワルド「心配することはない。どうにかなるさ」 --
- さながらジャンクヤードのような場所。それが、スザンナ・コヘンの自宅兼オフィスであった。部品取りなのか、それとも廃材なのか。それすら分からないものがうじゃうじゃと積まれていた。 オズワルド「コヘン、来たぞ。オズワルドだ」 ボサボサ頭のロングヘア、そして気だるそうな表情にメガネ。髪さえ整えれば、と思わなくもない。けれど驚いたのは、その若さだった。見たところ、未だ40は行かないだろう。20代かもしれない。 スザンナ「はーい。あ、マイキー!久しぶり!元気?」 オズワルド「おかげさまでな。そっちはどうだい」 スザンナ「まあね?誰かさんがアタシの可愛い子を消したりしなければね?」 オズワルド「お前さんの息子に手なんかかけてないぞ」 スザンナ「ナザニエルじゃなくて、この前売ったユニット!中身全部飛んだんでしょう!」 オズワルド「だからそれは中身が必要なものだったんだ!だから完全に消えとんだ訳じゃない!」 スザンナ「じゃああの計画に使ったわけ!?それならそうと──」 エイミーが遮る。 エイミー「落ち着いてください!スザンナ、わたくしです」 --
- スザンナが目を丸くする。 スザンナ「マイキー、あれの中身、こんな子になっちゃったの?」 スザンナがエイミーを指差す。 オズワルド「そうさ」 それを聞いたスザンナは、突然大声を上げた。 スザンナ「むっちゃくちゃ可愛いじゃん!」 獣の目になった。 スザンナ「ぷにぷにほっぺに美しいシルエット、そして……」 あろうことかエイミーの胸をわしづかみにする。 スザンナ「やわらかくておっきい!アタシよりあるんじゃないかな。可愛くてこのボリュームは戦時法違反だよー?」 エイミー「や、止めてスザンナ!恥ずかしいから!」 スザンナ「メカだったときは中身まで見てんだよー?それなのにいまさらダメーって言うのはダメだってばー?それに減るんじゃないんだからー。むしろ増量?」 エイミー「スザンナ!止めてったら止めて!」 オズワルド「止めんかコヘン!」 オズワルド様に怒られて、ようやく正気に戻ったようだ。 スザンナ「あっ……ごめんなさい!ついつい、自分の子供みたいなものだったから」 --
- オズワルド「全く……そうだ、この子の紹介してなかったな」 エイミー「あ、スザンナ、この身体になってからは初めまして。わたくし、エイミー・ガーダ・オズワルドと申します」 スザンナ「エイミー、エイミーね。よろしく。……って、エイミー・オズワルド?マイキー、まさか、この子娶ったの?」 オズワルド「ち、ちが、違うわ!」 エイミー「ち、違うわよ!」 スザンナ「ふふーん、隠さなくてもいいのにー」 エイミー「お義父様になってもらっただけだから!」 スザンナ「へー、そういうプレイ?」 オズワルド「違う!」 私はため息をして誤解を解く。 「……いえ、あのですね、首領様はエイミーを本当に娘にと……」 スザンナ「本当に!?ほんとのほんとに娘!?なるほどね……いいんじゃない?」 オズワルド「そう。私の娘さ」 スザンナ「ついにマイキーにも娘かぁ……なんてね。そうそう、あとでエイミーの電話番号とか、教えてもらっていい?」 エイミー「いいけど、なんで?」 スザンナ「アタシにとっても娘みたいなものだからね?親って、子供の成長が気になるのよ。あと、やっぱ可愛いし……もっと揉ませて」 エイミー「スザンナ、無理矢理次揉んだら蹴るよ」 スザンナ「冗談だってば!あとで教えるから、教えて?」 エイミー「うん!」 --
- そして、数時間が経過した。これまでの状況、エイミーについての情報交換、そして、何故か身体測定。 スザンナ「これで、必要な服とかは揃えられそう」 オズワルド「いや、服ぐらいはこっちでも揃えられるから……」 スザンナ「そうじゃないの。アタシがベースを調整して送り出したんだから、アタシだって親みたいなもんよ」 オズワルド「まあそうだな……」 スザンナ「元がいいんだから、それを更に引き出さないと、ね?それに元のパーツ代、少し多めだったし」 オズワルド「あれはほんの心付けだ」 スザンナ「二万ドルの心付けは多いよ。だから、エイミーの洋服とか、面倒見させて」 オズワルド「すまないな……」 スザンナ「いいのいいの。それにぃ」 スザンナはまたエイミーに抱きつく。 エイミー「ふにゃ!?」 スザンナ「やっぱぷにぷにで柔らか~い」 オズワルド「やめんか!」 こうして、衝撃的(?)な再会は、幕を閉じることとなる。 --
- それからまた、月日が経った。日本なら茶の美味しい時期だ。 エイミー「じゃあね~」 ナザニエル『ばいばーい、エイミーお姉ちゃん!』 スザンナ『ふう。あ、ありがとうね、いつもつきあってもらっちゃって』 エイミー「大丈夫。スザンナの頼みならつきあうわ」 スザンナ『そっかー。じゃあ、またね』 エイミー「また。あ、ヤコブにもよろしくって」 スザンナ『伝えとく。じゃあ』 (ピッ) 「エイミー、スザンナさんたちと会話するのはいいけど、勉強はどうしたの?」 エイミー「終わりましたよ?ほら」 エイミーは大学進学を目指し、国際バカロレア*6の通信教育を受けていた。エイミーに現場指揮官(ここは指揮“艦”とすべきか)としての能力を持たせるべきだ、それには大学での高度な教育が欠かせないというのが、オズワルド様のお考えであった。ということなのだが、私が思うには親としてそうしたいと思ったのだろう。ともかくも、今月末の試験をパスすれば、晴れて9月からは大学生となる。 --
- 「ここ。スペルミス。ちゃんと細かい所もやらないと……」 エイミー「あっ。詰めが甘いですね、わたくし」 「画竜点睛を欠く、ってところかしら」 エイミー「ガリョウ……?なんですか、それ」 「あ、日本のことわざね。最後の最後で、仕上げを忘れちゃうって意味」 エイミー「ニッポン……確か、先生の生まれた……」 「そう。私の出身は日本。いつもは英語だけど、時々日本語出ちゃうの」 エイミー「日本語……先生、もし試験合格したら、わたくしに日本語を教えていただけませんか?」 「いいよ。けど、日本語は難しいから、覚悟してね?」 エイミー「もちろんですとも。わたくし、知りたいのです。先生を育てた国の文化が」 「いい心がけね。じゃあ、まずはそのスペルミス、直しましょう」 エイミー「はい!」 地道な努力を、彼女は続けた。そして……。 --
- エイミー「先生!先生!見てください!これ!」 翌月の頭に、八割の成績表を持って帰ってきた彼女の顔は、とても嬉しそうだった。 「やったじゃない!そういえば約束ね。今日から少しずつ、日本語を教えるね」 エイミー「ありがとうございます!」 「じゃあ、これからね……」 小学生向けの教材を取り出す。 エイミー「これからですか?」 「そう。私が英語覚えた時も、小学生用教材から始めたから」 エイミー「あ、それで小学生の教材からなのですね。わかりました」 小学生用なんでバカにしている、と言われるかと思った。けれども彼女は、それに対しても、熱心に取り組んだ。 --
- その努力は、勉学以外にも発揮された。艤装試験に対しても、きちんとこなし、成果を挙げ続けた。 「次、八の字を描いて急停止」 エイミー『はい』 「反応誤差、85ミリセク、滑走距離が247ミリです」 「うむ」 エイミー『次はいかがしましょう?』 「もういい、今日はもう陸に来てくれ。明日、通信系の試験をやる」 エイミー『わかりました。お疲れさまです』 「ん」 エイミーは無線を切ると、岸へと戻ってくる。『彼』はそれを一瞥するなり、「首領様の人形が」とぼやいた。幸い、聞こえていなかったのが救いだろう。居なくなった後も、「エコヒイキ」だの「優等生様」だのと言い散らかしていた。 「けっ。なんで上手くいきやがる。どこかでミスれば、それをネタにできるのに」 「何てこと言うの」 「うるせえ。こっちはこっちで、人体班に時間取られたおかげでいらだってるんだよ!なのにさ、あいつは何様なわけ」 「あ、あいつって……」 「エイミー様だよ。培養槽から出てきた人形のくせに、大学になんて行かせてもらっちゃってさ」 「必要なのよ、きっと」 「どう必要なのだか、一つ聞いてみてえぜ。ああそうだプロマネ、明日もこの時間で頼む」 「わかりました」 --
- それから数日。ベルファストのチームと、スザンナをビデオ通話で迎えて会議がもたれることになった。両班のわだかまりに気づいたオズワルド様が、進捗の確認と双方の溝を埋めるためには……と、会場を借りて行われることになった。進行は、あくまで中立な私……が担当することになった。 「双方の進捗をお願いします」 『彼』は立ち上がり、大声を出して発言した。 「艤装班の成果は素晴らしいものです。現在、本人装着の上データを取っていますが、100ミリセク以下の反応遅延にまで抑え込めています。装備品についても、各国からの支援で、各国配備型の80%にあたる能力での運用が可能。素晴らしい出来ではないか!」 オズワルド様は、よくやったという代わりに、大きく首肯した。 「人体班です。現在、エイミー本人に対して、高等教育を外部の学校にて現在も遂行中です。これにより、堅実な指揮能力を付与できると思います」 これに対しても、オズワルド様は大きく首肯した。しかし『彼』はそれに納得が行かないのか、再び立ち上がった。 --
- 「なぜ実戦データをもっと取らない」 「指揮能力を付与することは知っているはずでは?」 「ああ、知ってるとも。お前らのえこひいきは」 「何だと?」 「そもそも、元々は戦闘向けだったはずだろう?それが今や、やい指揮官だ、やい大学だなどと言ってる。これのどこがえこひいきなんだい」 「そういう方向性にするって決まったんじゃないか」 「決まっただどうだよりも、俺はもっと前線に出すべきだと思うけどな。こっちはお前らがのんびりお茶会している間に相当改良したんだ、あんな紙切れのような図面からな!」 そうだそうだ、と、艤装班からヤジが飛ぶ。 「しかし人体側は相当慎重にすべきだと思う」 そうね、と、テレビ電話越しに声が聞こえる。 --
- スザンナ『一人目だからこそ、アタシは慎重になるべきだと考えるわ。現に艤装も改修や微調整を繰り返しているのよね。だったら、欠点や弱点を徹底的に洗い、万全な状態で二人目、三人目を迎えるべきじゃないかしら』 相当不満だったのだろう。ついに暴言が飛び出す。 「どうせ人体班の連中は首領におべっか使ってるだけだろう!」 負けじとスザンナも舌戦を繰り広げる。 スザンナ『それはあなただけの努力?人体班も、そしてエイミーも努力したからこそのせいかじゃないかしら?みんな初めての経験なのよ?』 「うるせえ」 スザンナ『トライアンドエラーの繰り返しになるのはわかりきっていたことでしょう!いい加減にしたらどう?』 「お前らがトンマでノロマ、アホみたいに時間かけたせいでこっちは止まってたんだよ!あんな“人形”にこんなにカネと時間かけることないだろう!」 この野郎、と殴りかかろうとした人体班のリーダーを、オズワルド様が諫める。 オズワルド「言いたいことはわかる。だが暴力は許さん。お前さんも、言葉は選ぶように」 --
- 「しかしお言葉ですが、自分としてはもっとデータが欲しいのです。それこそ、前線でのデータを」 オズワルド「わかってる。だが、私は一人目だからこそ、さらなる完成度に高めるべきだと思うのだが」 「……わかりました」 しぶしぶ、『彼』は席に座った。 オズワルド「遅延については申し訳なく思う。だから、私としてもエイミーに試験時間を延ばせないか頼んでみる。それでいいか?」 「仕方ありません。首領がそうおっしゃるのでしたら」 何かぶつぶつと文句を言っていたが、そのうち、『彼』はそれすらやめた。 「では、明日も時間を調整して試験実施、ということで」 言葉なく、全員が散り散りに会議室を出ていく。最後に残った私に、オズワルド様は声をかけた。 --
- オズワルド「すまないな。彼の気持ちもわからんでもない」 「はい。かなりの期間待ってもらいましたから……」 オズワルド「けれどな、私はエイミーが少し無理をしているように見えるのだ。自分が“特殊”な存在であるから、人一倍努力しないといけない、そう思い込んでいるように」 「気付きませんでした。不覚です」 オズワルド「君が気に病むことじゃない。あの子の『個性』なのだよ。だから、少し気にかけてくれれば、それでいい」 私はその言葉に、礼ではなく、質問で返してしまった。 「首領様。首領様は、どうして、こうもエイミーを大事にされるのですか?」 長い沈黙。 「……申し訳ありません。深い意味はありませんが……どうしても気になってしまったので」 オズワルド「いいんだ。私は、彼女に未来を託したいのだ」 「未来……ですか」 オズワルド「そう。若い頃、私はフィアンセを失った。それがきっかけで、私はインシルシティアを興し、ここまで育て上げたのだ。そして私は、ここまで独り身で過ごした。だからこそ、あの子に想いと願い、そして未来を託したいのだ」 だから、あの子を……首領様の『想い』を知った今、私も再び帯を引き締めないといけないだろう。 --
- 8月。緯度の高いこの国でも薄着を着る季節だ。ここ数日、エイミーの前でオズワルド様と話すと、エイミーが少し不機嫌そうな顔をするのだ。 「どうしたの」 エイミー「いいえ、何でもありません。先生は気にしないで下さい」 私はなんとなく、これに似た感情を知っている。けれどもそれを感じていたのは、二十数年も前、まだ中学生の頃のことだった。 「エイミー、もしかして恋煩い?」 エイミー「こ、こい、こいわじゅらい!?」 図星か。 「ちょっと首領様、お義父様を見ると、心臓がどぎまぎすると言うか、ちょっとだけ恥ずかしいような、そんな感じしない?」 エイミー「い、いえ……」 簡単には話さないか。 「大丈夫。『好き』って気持ちは、誰にでもある気持ちだから」 --
- エイミー「そう……ですか?」 「うん。私も結婚してたから」 エイミー「その人が好きだったから、一緒になった、ということですか?」 「うん。だから、別に変なことでも何でもないの。エイミーはお義父様のこと、好きなんでしょ?」 エイミー「……変ですか?」 「ううん。エイミーはお義父様にとっても大事にしてもらっている。だから、それに応えたいって気持ちは変じゃないし、お義父様、オズワルド様もきっと喜ぶはず」 エイミー「あ、あの」 「どうしたの?」 エイミー「えっと、手作りのお菓子とかって、喜んでもらえる……でしょうか?」 「いいんじゃないかしら?作ってみる?」 エイミー「はいっ!」 私は、この笑顔に弱い。そして、きっとこの笑顔で作ったお菓子にも。 --
- 数時間後、少し不揃いなクッキーが焼き上がった。 「お嬢様と先生、いい匂いですが、何かお作りにでも?」 エイミー「クッキー焼いてました。わたくしが、先生に教わりながら……」 「とても良い香りですね。あ、それでしたら、私がぴったりな紅茶を準備いたしますね」 エイミー「お願いします。わたくし、お義父様を呼んできますね」 パタパタと軽快な音が遠くなったと思うと、何ね何ねの声と共に近付いてくる。 オズワルド「いい香りだ。ん……これはクッキーと、紅茶か」 「ご名答です、ご主人様。お嬢様が先生に教わりながらお作りになられたクッキーと、それに合わせて私が点てました紅茶です」 オズワルド「エイミーの作ったクッキーか。ぜひ頂こう」 オズワルド様の後ろに立つエイミーの笑顔が、とても嬉しそうだ。それに応えたのか、オーブンのベルがチンと鳴る。 「丁度焼き上がりましたわ。ご準備いたします、皆さんはダイニングでお待ちください」 --
- メイドさんが、ダイニングについた私たちの前に、手慣れた手付きでティーセットを置いていく。 「まずはお茶を準備させて頂きます」 するすると注ぐ。そして、小さな皿にクッキーを6枚づつ。 オズワルド「一組足りないぞ」 「私はただの女給ですので、ご心配なさらず」 メイドさんはそれが、ごく当たり前であるかのように答えを返した。 オズワルド「いや、君も座りたまえ」 「よろしいのですか?」 オズワルド「かまわん、一緒にいただこう」 メイドさんはいそいそと自分の分を用意し、空いていた私の隣へ座った。 オズワルド「頂こう」 まるで聖餐式のパンのように、それぞれ口に運ぶ。 エイミー「どう……でしょうか」 オズワルド「おいしいよ、エイミー」 途端、エイミーの顔がぱっと明るくなる。 エイミー「本当ですか?」 オズワルド「ああ。とても」 優しい笑顔が広がる。オズワルド様も、エイミーも、メイドさんも。そして、私も。嗚呼、こんな日々が続けばいいな、このまま4人で穏やかに。 --
- ──しかし神は時に、残酷な試練の賽を投げる。 --
- あれから幾ばくの月日が流れた。また、一年が過ぎ、エイミーの学生生活も、もう間もなく3年目になろうとしている。 エイミー「いってきまーす」 「いってらっしゃい」 「いってらっしゃいませ」 今日もいつもの通り、二人でエイミーを見送る。何も変わらない日常。2018年のその日も、そのはずであった。いつもと違うといえば、オズワルド様が朝早くから出掛けられていたぐらいであった。 「今日は試験もないので、しばらく部屋で資料の整理をしています」 「かしこまりました。お昼になりましたらお呼び致します。そういえば、旦那様はどちらへ?」 「首領様でしたら、今朝方メイヌースへお出かけになられました」 「わかりました」 --
- 失礼します、とメイドさんは一礼し扉を閉めた。さあ、これからまたがんばらなくちゃ。私は、大量の書類と学術文献を整理し始めた。この数年間で溜め込んだ資料とデータ、それが詰まっている。フリートガールとしての彼女の成績は上々。艤装も申し分ない性能にまで高められた。これならもう、二人目にも支障はないだろう。いつもは仲違いする艤装班と人体班が、珍しく一致した意見だった。次の子はどんな子になるのだろう。次は、恥ずかしい事をせずに済みたいな。あ、またスザンナさんにお願いしないといけないかな。そうしたらまた、エイミーみたいにもみくちゃにされるのかな。そんな考えが、頭の中をぐるぐると回っていた。 --
- 「……んせい、先生!」 メイドさんの声で、はっと現実に戻される。もう昼なのかな。時計の針はまだ10時半であった。 「何ですか、取り込み中です」 「それどころではありません!」 様子がおかしい。 「鍵は空いてます」 顔を青くしたメイドさんが飛び込んできた。 「旦那様が、旦那様が!」 「落ち着いてください!首領様がどうしました?」 「旦那様が事故に遭われたと、警察からお電話がありました」 「何ですって!?」 私はエイミーに電話をかけ、今から迎えに行くことを伝えた。 「メイドさん、戸締まりをお願いします」 後は何をすべきか。私は自由に使っていいと言われていた車を車寄せにつけ、メイドさんを乗せて急発進した。だが……。 --
- 数日後、世界的商社のトップが亡くなった、というニュースが世界中を駆け巡った。葬儀はそれこそ盛大に執り行われた。国内外から参列者が集った。けれども、エイミーの受けたショックは大きかった。数日は食事を受け付けなかった。そして、ようやく食べてくれるようになっても、なかなか、立ち直れそうには無かった。連絡先をもらっていた私は、時間を見計らってスザンナさんに連絡を取った。テレビ電話越しに、かくかくしかじかと伝えた内容に、スザンナさんはやはりか、と答えた。 スザンナ『……あの子にとって、マイキーの存在は大きすぎたんだ。良き理解者で、父親で、そして、依りどころだったんだ。そしてマイキーも、エイミーに期待と想いをかけすぎたんだ』 「かけすぎた……?」 --
- スザンナ『そう。有り体に言えば〈相互依存〉の関係になってしまっていた。だから、どちらかを喪えばどうなるか……』 「そう、ですか……」 スザンナ『そう。だから、今はそっとしておいてあげてほしい。エイミーは強い娘だ。アタシにはわかる。だから、いつかきっと乗り越えて、マイキーの遺志を継いで立派になってくれるさ』 「ありがとう……ございます」 スザンナ『こちらこそ。あの子の事で困ったら、いつでも連絡して。アドバイスできる事はするし、アタシもとても心配している。多分、アタシに連絡を寄こさないのも、あの子なりの配慮なのかもね。今連絡したら迷惑なんじゃないか、って』 「私も多分、そう思います」 スザンナ『そうね。あの子が落ち着いたらでいい。私に電話なり、難しいならメールでもいいから連絡を、って伝えてもらっていいかしら』 「わかりました」 スザンナ『じゃあ、また』 --
- それからしばらくしないぐらいだろう。寝る準備を整えた私の部屋に、パジャマに着替えたエイミーがやってきた。 エイミー「先生……あの……」 こういう時の対処は、一つと決まっている。私には大きすぎるキングサイズのベッドで横になり、その空いたスペースをポンポンと叩く。そこに遠慮がちに、エイミーはもぐりこむ。 エイミー「先生、一緒に寝てもらっても、よろしいですか」 私はにっこりとほほえみかけると、エイミーの頭をやさしくなでる。少し身体が暖かくなった。肩を震わせながら、エイミーが抱きついてきたようだ。撫でていた手をおろし、柔らかく小さな背中をさすりながら、優しく抱きとめてあげた。娘が小さい頃、おばけに怖がってよく一緒に寝た、あの日の事を思い出す。違うのは、シャワーを浴びた後の、コロン入り石けんのいい匂いがするぐらいだ。やっぱりこの子も、一人の繊細な少女なのね。やがて肩の震えが止まり、規則的な呼吸音に変わった。私もその温もりと呼吸音で、いつの間にか夢の世界へと落ちていた。 --
- エイミー「す、す、すみませんでした!さ、昨夜はあんな事を……」 翌朝、お互いに抱き合ったままであったことに気づいたエイミーの顔は真っ赤であった。 「大丈夫よ。それより、落ち着いた?」 エイミー「柔らかくて、温かかったです……」 「そ、そう……」 エイミー「は、はい……」 何か気まずい。それなら……。 「でも、ちょっと元気になったようで、私は嬉しいかな」 エイミーは何も言わず、ニッコリと微笑み返した。 「今日から、学校に戻る?」 エイミー「はい。……出席できる範囲で、ゆっくりとですけれど」 「そうね。元に戻れるようになるまでは時間かかるかもしれないけれど……もし、心配なことがあったら、私でも、スザンナさんでも、頼っていいんだからね」 エイミー「……また、一緒に寝てもらってもいいですか。た、たまに、で、いいので……」 「大丈夫よ」 エイミー「ありがとうございます。では、行ってきます!」 やっぱり私は、この笑顔に弱いのだ。 --
- エイミーが大学に戻り、数週間が経った。世間はハロウィンで浮かれつつあった。しかしダブリンの我々は、そんなことにも目もくれず、今日も借りた会場に詰めて会議を行っていた。今日スザンナさんは、用事があるとのことで参加出来なかった。 「そろそろ試験再開したい」 『彼』は怒りを極力押し殺した声でそう言った。 「またこっちは待ちぼうけを喰らうのか」 「お前には人の心ってのが無いのか。あいつはおやっさん、首領様を亡くしたばかりなんだぞ。それでもやる気か!」 「こっちは突かれてるんだ!さっさと成果を出せと!」 首領様、いや、オズワルド様のようなストッパーが不在だった。私は中立という立場上、割り込むことが出来なかった。いや、割りこんで諌めるべきだったのかもしれないけれど、私の中の何かが拒んでしまったのだ。 「事情は知ってるだろ!先方にも伝えろよ!」 「うるせえ、もういい!」 『彼』が机を叩き大きな音を立てた。 「誰が次期首領にふさわしいか選挙しよう。それなら文句無いだろ?」 確かに、極めて民主的、と言えば民主的であった。ぐうの音も出ない。 「わかりました。エイミーは当然として、立候補者を一週間程度募りましょう」 「おい、なんであの人形娘も入れるんだよプロマネ」 「彼女は戸籍上、首領様の娘です。候補に入れても問題ないと思うけど」 「わかったよ。あ、プロマネ、俺も入れといてくれよ」 「立候補者第一号ね。はい」 私は名簿の二人目に、彼の名前を加えた。 --
- それから一週間経った。『彼』の他に立候補者はなく、エイミーと『彼』との一騎打ちになった。二週間の間を置き、選挙が行われることとなった。エイミーはただ、ふさわしい方が選ばれる、それが自分なら、と言うだけであったが、『彼』は大々的なネガティヴ・キャンペーンと対比広告紛いの事をやった。たちの悪いことに、『彼』のやり方がうけてしまった。しかも、真実と嘘を巧く織り交ぜることで、多くの賛同をすんなりと得る事にも成功した。当然、エイミーは惨敗する。程なく、『彼』は新首領へ就任した。それに対し、エイミーは力なく笑い、「みんなは、あの人がふさわしいと思われたのでしょう」と答えた。せめてもの抵抗か、人体班は二人目の製造を遅らせようとした。しかし、そのサボタージュも『彼』──当代によって潰され、ある者は組織を去り、ある者は自らの意志を押し殺し、またある者は、それこそ当代に陶酔してしまった。そうして、半分にまで減ってしまった人体班の手により、『二人目』、Mark.2が生み出されることとなった。いつまでも引きずるエイミーを半ば見捨て、『二人目』を用意するのが妥当だ、と当代と艤装班は決めたようであった。数で不利な人体班が勝てるわけもない。しぶしぶ、エイミーの粘膜、頬の裏側からなんとかこすり取った細胞を元に、人体部分を作り出すことにした。艤装は、既に出来上がっていたものを流用して、艤装班が数日で仕上げた。あとはAIユニットだけ、という段階にまで持ち込んだ。 --
- しかし、スザンナさんが頑なに提供を拒否したのだ。費用面で折り合いがつかない、との事だった。私に相場はよくわからないのだが、何でも、3割の金額でやらせようとか、流石に少ないから6割で良いだろうとか。半額以下なら怒るのも、なんとなくわからなくもない。夜、電話を掛けた時も愚痴っていた。 スザンナ『ねー、新しい首領さ、値段だけしか見てないよね』 「多分、そうです」 スザンナ『やっぱりね。アタシにものすごい値段ふっかけてきたと思ったら。一式総ざらえを3万ドルでやれ、って言われたら、ちょっと怒るよ。送料だったり、保険料だったり、手数料も持ってるのに』 「3万ドル!?」 私は金額に驚いてしまった。けれど、もしかしたらもっと高いのかもしれない。 スザンナ『驚いたでしょ?でもね、元々が危ないルートからの仕入れだから、ちょっと値が張るの。それに、そういうヤバ目のマテリアルだから、尚更保険料もかかってしまう。それゆえ、ちょっと高めになってるの。マイキーは、10万ドルで請求立てたわ。それでもトントン、ギリギリ赤字が出ない程度ね』 何でも、暴走しないように繊細な調整のされたユニットを仕入れるには大枚をはたくか、自分でなんとか調整しないといけないらしい。だから、いずれにせよ数万ドル程度の費用がかかってしまう、のだそうだ。 --
- それを、スザンナさんであったり、私や人体班のうち、理解のある人が当代に伝えた。けれども当代は、完全に数字のことしか頭に無いようであった。1ユーロでも費用を削り、1体でも多くの戦力を確保したい。ギリギリだと言うスザンナさんに対し、当代はぼったくりだと決めつけ、お互いに引こうとしなかった。そして、とうとうしびれを切らした当代は、艤装班や自分の取り巻きから、やんちゃな人物を20名ほど集め、一路イスラエルへ乗り込む事へ決めたようであった。私は行くことを固辞したのだが、半ば脅されるような形で、飛ばざるを得なくなった。……エイミーには、どうしても出かけざるを得ないと伝え、スザンナさんにも、ぼかしつつも向かうという事を伝えた。二人とも、わかった、と返事をしてくれた。私は荷物を整え、飛行機に乗り、一路、イスラエルへと向かった。 --
- 到着した私たちを、スザンナさんはねぎらいの言葉もなく、ぞろぞろ来たな、という風にしかとらえなかった。それもそうだろう、わざわざここまで20名前後でぞろぞろと来たのだから。 当代「コヘン。なぜあんな金額をふっかけた」 スザンナ「あれは必要経費よ。それでも、安くしたわ」 当代「そこの部品を売ればいいだろう。それで稼げ」 スザンナ「あなた、なんてこと言うわけ。それにさ、アタシが思うにね、あなた、削るところ間違ってるよ。安全を削って、何がしたい?下手に扱えばやけどするよ。それにね、安いのは安いなりの理由があるの。練度の問題もある、そして暴走するリスクも孕んでいる。だから、安いだけで選ぶのは間違ってる」 当代「貴様、何を根拠にそういう真似をするんだ」 その言葉に対して、スザンナさんは早口で返した。 --
- いい例があるわ。ある航空機が、貨物として積まれた144本の使用済み酸素発生器が誤作動したことで、その熱による火災で墜落した事故があった。航空会社が輸送に必要な免許を持っていなかったという点や、火災報知器が当時義務化されていなかったというのもあるけれど、一番の原因は、144個の酸素発生器に、誤作動を防ぐキャップをする安全措置を施さなかったこと。そのキャップ、値段はいくらだと思う?一つ1セントだよ?全部にキャップをはめたところでだいたい1ドル半。1ドル半って、この国じゃ1リットルの牛乳1本程度。つまりたかだか牛乳1本をケチったがために、110人の尊い命が失われ、520万ドルの飛行機をオシャカにした!あなた、そういうことをしようとしているのよ!そんなにゾロゾロと何人もこの国へ連れ歩くぐらいなら、もっと部品に費用をかけたらどう?この値段、CIF、すなわちダブリンまでの保険料と運送費も入っているし、通関手数料もすべてコミコミ、その上色々な面倒を防ぐためのコストも含まれている。だから手取りはほとんど無いわ。それでも尚値切ろうとするのなら……シナイ半島にでも行って、自分で拾ってくれば。通関も何もかも、自分の手ですればいいじゃない。 -- スザンナ?
- 当代「貴様……!」 スザンナ「いい?そういうことなのよ。はっきり言ってこれ以上は無理。それに……」 私たちの後ろに立つ、屈強な男たち。 スザンナ「知ってるわよね、アタシが元イスラエル軍だって。そっちが数で押さえようとしてたみたいだけど、こっちは地の利もある」 当代「だから?」 スザンナ「まだ気付かないのかしら。あなた、相当不利よ。無駄な狼藉はよした方がいいわ」 当代「クソッ……貴様なんか除名だ」 スザンナ「こっちから願い下げよ。いい?イスラエル諜報特務庁からの疑惑の目、誰が反らしてたか今に知るわ。じゃあ、帰って」 私にスザンナは目線を向けてきた。そして、手で電話のマークをした。あとで連絡をしてほしい、と言うのだろう。誰も見ていないのを確認して、首を縦に振った。 --
- それから数日。スザンナさんの所からホテルへの帰り道に見つけた軍放出品店で、必要だったパーツを購入する事が出来た。しかし、ベルファストの造船所の倉庫は、なぜか賃貸契約を更新することが出来なかった。装置の一部は、エイミーがオズワルド様の家、エイミーの自宅倉庫に入れたものの、とても入り切る量ではなかった。そこで私たちは実験場所や移動の足を確保するべく、中古の客船を買った。さらに客船を改装し、海の上ならどこでも実験をできるようにした。そうやって費用が重なるうちに、結局はスザンナさんを通すのと、数千ドル程度しか変わらない程度になってしまった。それでも節約できた事に、当代は喜んでいるようであった。 当代「やればできるじゃないか」 「は、はあ」 当代「あいつに頼るから、余計に費用も掛かっていたわけさ」 「ですが首領、イスラエルからの出荷時に妨害がありましたが……」 当代「あんなの知るか。非協力的な連中め」 --
- またそれから数日。北大西洋上で停泊し、Mark.2をエイミーと同じく、この世界へ羽ばたかせる時が来た。 当代「艤装をつけさせろ」 「はい?」 一同は耳を疑った。 当代「培養液は一回きりだろ。なら、付けたって問題ねえさ。弾頭の入ってる部分は防水だからな」 「……わかりました」 私たちは、ロボットアームのようなものを使い、艤装をつけさせる。洋服も同様に。 当代「やれ」 無言で、スイッチが押される。違うのは、オズワルド様の姿が無いことだ。 「排水」 「異常なし」 「ラジャー」 すべて順調に進んでいる。数時間前に、ユニットの中身をインプットする作業も、すべて滞りなく終わっている。 当代「起動後問題無ければ、すぐに試験に移れ」 「わかりました」 彼は時計を見ていた。何を焦っているのだろう。そして、水が抜けきる。 --
- 当代「貴様か」 Mark.2は何もしゃべらない。 当代「素晴らしい。あのおしゃべり人形とは違う。私はこういう者を求めていた」 だか表情を変えない。次の瞬間、顔色一つ変えずに、当代を弾き飛ばした。 当代「素晴らしい」 ヒザをおさえつつ、命令を下す。 当代「これから私の部下だ。動きたまえ」 何も言わずに逃げ出す。 当代「追え!逃がすな!」 当代もようやく異変に気づいたのか、追いかけるように言う。 「逃がすな!」 「あっちに行ったぞ!」 「テイザー撃て!何としても止めろ!」 テイザー銃──スタンガンの一種──がMark.2に撃ち込まれる。しかし、痛みを感じないのか、何も変わらず逃げ続ける。やがて、袋小路に追い込まれる。しめた、そう誰しも思った。だが、Mark.2は器用に艤装で壁を壊し、外へと逃げ出した。 当代「あのおしゃべりを投入しろ」 私は耳を疑った。 「実戦経験ありませんよ!」 当代「艤装に問題はない。やれ」 「しかし……」 当代は舌打ちをした。そして船内PHSを出すと、エイミーに電話をかけた。 当代「敵により船体が破壊された。やれ」 それだけ言うと、有無を言わさず電話を切った。 当代「貴様は自室に戻れ」 「えっ」 当代「戻れと言ったら戻れ」 こうなった当代は手がつけられない。おとなしく、自分の部屋に戻ることにした。その後から、外が騒がしくなった。ああだこうだ、と。 --
- それから数分だっただろうか。爆発音が聞こえてきた。そして、船が大きく揺れるのを感じた。何があったのだろうか。波も、船内も静かになると、まるで何事も無かったかのようになった。当代の声で放送がある。何でも、破損のためにドックへ行かないといけないのだそうだ。それで針路を戻し、ベルファストへ戻るのだと言う。それからしばらく、船は針路を180度真逆の向きに変え、ゆっくりと動き始めた。それぐらいだっただろうか。誰かがドアをノックした。 「鍵空いてます」 遠慮がちに入ってきたのは、エイミーであった。扉を閉めると、泣きながら私に抱きついてきた。 エイミー「先生、先生」 こういう時の対処法は、やはり一つと決まっている。私は優しく、エイミーの頭を撫でながら抱きとめてあげる。 エイミー「わたくしは、わたくしは……!」 何も言わず、優しく背中をさする。あの日と同じように、小さな背中は震えていた。 エイミー「わたくしは、わたくしは、わたくしの妹になるはずだった子を……!」 わんわんと、私の服が濡れるのもおかまいなく泣き続ける。何があったのかは、なんとなく察しがついた。あの爆発音は雷撃か砲撃の音。その衝撃波で、船体が揺れた。そして、エイミーの言葉。暴走したMark.2とエイミーが対峙し、そして──。 --
- その後、ぽつりぽつりと話してくれた言葉が、私の想像が間違いでなかった事を告げた。向こうが襲いかかってきたこと。艤装だけの破壊を狙ったこと。そして、水柱とともに──。 エイミー「……わたくしのせいで、わたくしのせいで……」 「……あなたのせいじゃないわ。私が、首領を止めきれなかったせい。スザンナさんにあんなに忠告されていたのに……」 エイミー「スザンナが、ですか?」 「うん。私はスザンナさんと連絡を取り合って、なんとか出来ないかって。エイミーのためなら、と。けど遅かった」 エイミー「スザンナ……」 「だから、エイミーのせいじゃない。もっと強く、進言出来ていたら……」 エイミーは黙って首を横に振る。 エイミー「手を下したのはわたくしです。先生のせいではありません」 「私はプロマネ。統括責任者だから、責任は取らないといけないの」 エイミーは黙って、私の顔をじっと見つめた。 エイミー「先生……今日も一緒に、寝てもらえないでしょうか?」 「ええ、いいわ。ご飯もこっちに持ってきてもらうわね」 この日、私たちはご飯を一緒に食べ、一緒に風呂に入り、そして一緒のベッドで慰めあい、一緒に抱き合って眠りについた。 --
- 翌朝、ベルファストに入港して船を降りた後、私は当代に呼び出された。 当代「なぜ呼んだかわかるな」 「……はい」 当代「昨日の一件で、我々は政府からの支援を打ち切られることになった。言葉の意味はわかるな」 「それは、その……」 当代「君はプロマネだ、この件についての責任を取ってもらおう。船を降りろ」 「降りろ、ってまさか」 当代「除名だ。出ていけ」 「しかしあれは首領がスザンナさんを通さずにユニットを……」 当代「うるさい。お前もあのおしゃべり人形と変わらんな」 「エイミーは違います」 当代「あれのどこが違うと言うんだ。出ていけ」 「なら、エイミーも連れていきます」 当代「駄目だ。あの人形はMark.2と変わらん。暴走したらどうなるか」 「しかしお言葉ですが、あの子はそういう事態などには」 当代「もう一度言う。消えろ」 当代は、ズボンのポケットから拳銃を取り出した。 当代「こいつがしゃべるか、3秒以内に消え失せるか選べ」 セフティを解除した音が聞こえる。本気だ。私は彼をにらみつけるとその場を去った。エイミーに、サヨナラも言えずに。 --
- その後、組織やエイミーがどうなったのかは、私も知らない。何か手がかりがないかと向かった、オズワルド様のお屋敷は、鍵が取り替えられていて入れなかった。色々調べたかった。けれど、私の就労ビザの期限が危うくなっていた。このままでは、私が不法滞留で拘束されてしまう。そうなれば、手がかりを掴むため、再びこの国を訪れることもできなくなってしまう。それは、避けたいことであった。だからこそ、この日記にアクセスできるうちに、記録を残したいと思う。いつの日か、誰かがこれを見つけ、調べ、手がかりをつかんでほしい。そして願わくば、エイミーを保護して欲しいと望む。 日記作者 M.M --
- これは……。 秋雲(I)「いくらか脚色したけど、ほぼほぼそのまま。まあ、結構重いのもあったけどね」 大淀(I)「……提督。あの、私思うことがあるんです」 どした。 大淀(I)「彼らはなぜこうしたのでしょうか。リスクがあると知っていて、その上で忠告も受けていて、なのにそれを無視して!」 落ち着け。 明石(I)「提督、ちょっとこの書類に……って今取り込み中だった?」 すまんな、実は青葉と秋雲がすごい情報掴んだっぽくてな。 大淀(I)「三保、ちょうどいいところに。ねえ見てよこれ、どう思う?」 明石(I)「どう思うって急にそんな紙見せられても……(パラパラ)これって、やえっち以外に居た可能性あるって情報よね」 青葉(I)「ハイ。少なくとも2名は」 明石(I)「……これ、ゆっきーに見てもらわないとわからないけど、私としては、なるべくしてなった、と思うよ」 --
- 大淀(I)「どういう事?」 明石(I)「私の考えなんだけどね、良い物ってコストかかるの。それって、こういう安全対策の費用も含まれていると思っているわ。それを、彼は軽視した。忠告も無視したならなおさら。彼女たちは、その被害者よ……」 大淀(I)「そう……」 被害者、か。 明石(I)「そう。安全対策にコストをかけても、絶対、100%安全、って事はない。けれど、かけない場合よりも、格段にゼロへ近づける事は出来る」 確かに。安全対策は見かけ上コストがかかるが、トータルで見れば安いもんな。 青葉(I)「青葉たちの仕事もそうですね……皆さんの安全を守る仕事だからこそ」 ああ、全くだ。 大淀(I)「安全対策を怠れば……どうなるか、ですね」 --
- (コンコン)はいどーぞ。 八重(I)「失礼……します」 ん、やえどった? 八重(I)「あの、一つ……あっ、この字」 どうした、そのサイン見て。 青葉(I)「このイニシャルの部分だけ、手書きですけど……」 八重(I)「これ、お母さんの。サインです……」 一同「えーっ!?」 八重(I)「はい、これ、お母さんの。です。名前は……三波ミカ、って言います」 三波ミカ、M.M.……。 青葉(I)「その後お母さん、ミカさんとの連絡は……?」 八重(I)「私がさらわれてからは……。今どこで、何をしているのか。わからないです」 そうか……。 (ピロリロリン♪ピロリロリン♪) おい、誰だ、仕事中は私物スマホマナーモードにしとけー。 青葉(I)「すみませ~ん。(ぺちぺち)あっ。司令官、少し戻っても」 急にどうした。 青葉(I)「メインシステムに侵入者です!」 一同「えっ!?」 対クラッキング措置を執ってくれ。それと、可能ならトレースして接続元を割ってくれ。 秋雲(I)「言われなくとも!提督、LAN貸して」 そこにあるからテキトーなのつかんで。 青葉(I)「どうして、どうしてクラッキングされたのでしょう」 わからん、とにかく止めさせてくれ。 -- サイダー提督?
- 青葉(I)「秋雲さん、停止コマンドを」 秋雲(I)「さっきからエンターキー壊すほど撃ちまくってますよ!」 青葉(I)「あっ、強制的にログイン切られました」 秋雲(I)「それって乗っ取られたんじゃ!」 何だと!?何とかして止めてくれ! 青葉(I)「丁度今日バックアップ取っておいて良かったです……司令官、ちょーっと荒っぽい方法使っていいですか?」 荒っぽい? 青葉(I)「メインシステム、5分落ちても大丈夫ですか?」 明石(I)「こっちは大丈夫」 大淀(I)「……はい、わかりました。(ピッ)各部署、確認を取りました。メインシステムのシャットダウン、問題ありません」 やってくれ。 青葉(I)「はーい」 秋雲(I)「じゃ、提督、分電盤のカギ貸して」 まさか……。 青葉(I)「ブレーカー切ります」 ……くっそアナログで分かりやすいな。ほい、これ。サーバ室のブレーカー盤。 青葉(I)「ありがとうございます!」(パタパタパタ……) -- サイダー提督?
- さああとは……。そういえばやえ、何か言いかけてなかったか? 八重(I)「あっ、そうでした!みよちゃん。見かけませんでした?」 今日はこっちには来てないが……どったの? 八重(I)「みよちゃんが、みよちゃんが……どこにも居ない。んです!」 えっ!? 八重(I)「お部屋にもお風呂にも、トイレにも居ないんです」 このタイミングで行方不明者もか……わかった、システム復旧次第GPSで探そう。 (パタパタパタ) 青葉(I)「はいりまーす。システム復旧しました。攻撃元も判明しています」 いいタイミングで。青葉、ミヨのスマホ、GPSで場所把握してくれるか? 青葉(I)「きゅ、急にどうしました?」 八重(I)「青葉さん。みよちゃんを、探してください」 青葉(I)「ミヨさんを、ですか?」 行方不明らしいんだ。 青葉(I)「わ、わかりました!青葉、探します!」 -- サイダー提督?
- (数分後)青葉(I)「見つかりました!」 どこだ? 青葉(I)「北町地区から少し外れた海岸線付近です」 やえを見つけた海岸か。ここから10分少々って所だな。 八重(I)「あの、提督。私だけで行っていい。ですか?」 車出すぞ。 八重(I)「……近くまでで、お願い。します。たぶんみよちゃん、私だけで行った方がいいです」 わかった。海岸まではだそう。そこからは、任せた。 -- サイダー提督?
- みよちゃん。 ミヨ(I)「姉さん……」 みよちゃんが急に居なくなっちゃうから。心配したんだよ? ミヨ(I)「ごめん、姉さんにまで心配かけて……。でも姉さん、あの、ボクってどんな存在なのかなって」 どんな存在って、みよちゃんはみよちゃん……。 ミヨ(I)「そうじゃなくて。ボクはアンドロイドなのは知ってるよね」 うん。 ミヨ(I)「じゃあ姉さん、ボクは、替えの効く備品?それとも、ボクはボクだけ、オンリーワンの人材?」 それは……よく、わからない。けどね。みよちゃん。みよちゃんが私の妹。なのは、変わらない。 ミヨ(I)「姉さん……」 だからね、みよちゃん。もう勝手に、どこにも行かないで。お姉ちゃん、心配だから……。(グスン) ミヨ(I)「ありがとう、姉さん……だけど、ボクと姉さんは、ちょっと違うのかもね」 どうして? ミヨ(I)「(八重の涙をぬぐいながら)ボクは、姉さんのようにはできないから」 -- 八重(I)?
- (海岸入口付近・コンフォート車内)おかえり。 八重(I)「ただいま!」 ミヨ(I)「戻り……ました」 さあ、鎮守府へ戻ろうか。(エンジンをかけて、鎮守府へ向けて動き出す) ミヨ(I)「提督」 どった? ミヨ(I)「ボク、勘違いしていたんですね」 なんのことだい? ミヨ(I)「ボクが、ただの備品だって自分で思い込んでた。けど、姉さんや提督たちは違う」 そうだ。ミヨ自身の成長も大きい。 ミヨ(I)「ボク自身?何も変わってないけど?」 いいや、内面の話。初めの頃よりも、格段に成長した。それに、お前の目は生き生きとしている。 ミヨ(I)「生き生きって、ボクの目はCMOSセンサだから……」 そうじゃない。『心ある』ものに宿る輝きが、お前の目にはあるんだ。最初に何もなくて、襲ってきたあの頃のただのガラス玉とは違う、輝きが。 ミヨ(I)「輝き……」 そう。だから、ミヨはちょっと他のメンツとは身体の作りが違うだけ。それ以上でも、それ以下でもない。わかった? ミヨ(I)「……うん」 わかってくれればそれでよし。今日のはもみ消しておこう。 ミヨ(I)「気をつけます」 うん。 -- サイダー提督?
- 戻ったぞー。 青葉(I)「司令官、お待ちしてました!」 大淀(I)「おかえりなさい」 おう、二人ともただいま。青葉、何か発見があったっぽいな。 青葉(I)「はい!アクセス元、割れました!いくつかのサーバを経由していますが、元はイスラエルからのアクセスだったみたいです」 イスラエルか……なんでまた。 青葉(I)「さあ……それはまだわかりません」 あと、何かされた形跡はあるのか? 青葉(I)「はい、青葉の連絡先が抜かれたようです……」 そりゃまあ……あとで電話番号、変えたら教えてくれよ? 青葉(I)「それと、人事ファイルを書き換えようとした痕跡がありました。これです」 どれどれ……。エイミー?あの少女か、インシルシティアの。 青葉(I)「なぜこのような痕跡を残すのか訳がわかりません……」 さあな。ただ、相手が手練だというのはわかった。DMZシステムの裏をつき、あまつさえ書き換えにまで。 青葉(I)「要警戒ですね」 ああ。 -- サイダー提督?
- (ジリリリリリリン!ジリリリリリリン!) すまない大淀。 大淀(I)「はい。もしも……Good afternoon, Thank you call to Mitsuya Fleets GLASS-FORCE, Hiromi Oyodo speaking. ...Yes. Aoba is our crew. May I have your name please? ...Susanna Kohen. Ms. Kohen, Could you spell out your family name please? ...Kilo, Oscar, Hotel, Echo, and November. Thank you. Hold on please. (こんにちは、三ツ矢鎮守府、大淀広美がお受けいたします。……はい。青葉は当鎮守府ですが。お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?……スザンナ・コヘン様。名字の綴りをお伺いしても?……K-O-H-E-N。ありがとうございます。代わりますので、お待ち下さい。)」 英語か。 大淀(I)「録音の用意を」 -- サイダー提督?
- 『(IP電話交換機の録音操作をパソコンから行い、英語でしゃべる)はい、お電話代わりました』 スザンナ『あなたがミツーヤフリーツのアオバさんね』 『ハイ、青葉です』 スザンナ『アタシはイスラエルのスザンナ・コヘン。軍の支援で、君たちに探りを入れさせてもらったよ』 『まさか、青葉たちに攻め入るために……』 スザンナ『ううん、違うの。アタシたちを、助けてほしい』 『助けて……?』 スザンナ『うん。エイミーって子についての日記、見たでしょう。その子を、インシルシティアから助けてほしい』 『それは、青葉の独断では──』 スザンナ『もちろんタダでとは言わない。手付で5千、遂行で5千。合計1万ドル用意しよう』 『青葉たちは傭兵じゃないんですよ』 スザンナ『わかってる。だが、フリートガールの力が必要なんだ。彼らの情報も渡そう。君のアドレスに送ったから、見てくれるかしら』 (ファイルを開く)これは……。 スザンナ『驚いたでしょう?改造がされている可能性はあるけれど、あの船のデータよ。どう?』 『ちょっと司令官と掛け合ってもいいでしょうか?』 スザンナ『良い回答を期待しているわ』 -- 青葉(I)?
- 青葉(I)「今の会話、聞きましたか?」 ああ。船の上面図までよこすとはな。青葉、条件を加えてくれ。一つ、金はいらないから、場合によってはうちに加わってもらう。二つ、青葉とどこかで直接面談。三つ、うち以外の戦力を加えていいか。 青葉(I)「聞いてみます。『お待たせしました。条件ですが、費用の代わりに、当鎮守府への人的協力をすること、青葉とどこかで面談すること、そして三ツ矢鎮守府以外の戦力を加えていいか、です』」 スザンナ『……わかった。ちょうどいい機会ね、日本で材料を買う機会があったから、そこでお会いしましょう』 青葉(I)『場所や日時はどうしましょう』 スザンナ『来週の間なら、お任せするわ』 青葉(I)『では、来週の水曜、場所はスザンナさんのホテルで』 スザンナ『わかった。アタシの宿は不忍池近くだから、上野の駅で落ち合おう。写真はアドレスに送ればいいかい』 青葉(I)『ハイ』 スザンナ『では、水曜に』(ツー……ツー……) -- サイダー提督?
- 水曜に、上野で会談、か。 青葉(I)「はい。ホテルの中なら、機密が漏れることはないでしょうから……」 大淀(I)「青葉さん、本当に大丈夫なのでしょうか……」 青葉(I)「わかりません。けど青葉は行かないと、何も始まりません」 ……わかった。大淀、青葉の航空券を押さえておいてくれ。 大淀(I)「わかりました。押さえておきます」 青葉、深入りしすぎるなよ。 青葉(I)「わかってます。司令官の元に帰れなくなるのは……」 わかった。 大淀(I)「航空券、確保しました。青葉さん、Eチケット渡しますね」 青葉(I)「ありがとうございます」 大淀(I)「いえ、私は仕事をしただけですから」 気をつけて。 青葉(I)「はいっ!」 -- サイダー提督?
- (翌週水曜 上野駅公園口) (本当に来るのでしょうか……) ??「青葉さんだよね」 えっと、どち……あ、あなたが。 スザンナ「初めまして。スザンナ・コヘンです。驚いた?」 ハイ。意外と流暢で驚きました。 スザンナ「軍だと情報部門、ちょうどキミのような立ち位置にもいた事あるからね。ま、ミカが教えてくれて、日本のパーツを現地で買えるようになったし」 トライリンガルとは、青葉羨ましいです。 スザンナ「まあいいじゃない。さ、ちょっと行くよ」 え。 スザンナ「秋葉原よ。あそこで買い物してから向かうから」 え、ちょっとその青葉お話のためだけにそのー!! -- 青葉(I)?
- (千代田区外神田……通称秋葉原地区) スザンナ「まずはここから」 まずはここから?って、電子部品のお店じゃないですか! スザンナ「そうよ?アタシ、パーツを注文して買いに来たの。遊びに行くついでにね」 (チリンチリン) 「おー、スーちゃん!」 スザンナ「店長、コンニチハ!」 「どもども!何ヶ月ぶりだっけ?」スザンナ「えーと、大体半年ぐらいですね」 「そだったか、ガハハ、昨日かと思ったぜ。ん?お隣さんは?」 スザンナ「アタシの取引先」 「ふーん。あ、そうそう、頼んでたICと抵抗、ちゃんと用意しといたぞ。厳選品だから、良い感じに動くはずだ」 スザンナ「(品定めをする)そうね、これなら良さそうね。じゃ、代金はこれで」 「ちょっと多くねえか?」 スザンナ「手数料よ。いつも無茶を言ってるからね」 「そっか。毎度!また頼むよ」 スザンナ「はーい。店長もまた」 「おう」 (チリンチリン) スザンナ「さあ次行くよ」 えっ。 スザンナ「もうちょっとつきあってもらうから」 -- 青葉(I)?
- (2時間後) ふぅ……。青葉もうくったくたです……。 スザンナ「ごめんね、つきあってもらっちゃって」 うぅ……。 スザンナ「さ、ちょっと宿に寄りましょう。二人分、取ってあるから」 え? スザンナ「お礼よ、お礼。もしかして予約していたかしら?」 えっと、青葉その辺のビジネスホテルに行こうかと思っていたので予約は……。 スザンナ「なら都合が良いわ。あ、丁度良いところに」 (手を挙げる) え、タクシー止めちゃって良いんですか……? スザンナ「いいのいいの、乗っちゃって。あ、運転手さん、ここまで(紙を見せる)」 「了解しました」 -- 青葉(I)?
- (30分後・日比谷公園前ホテル) すみません、こんな高いホテルでフレンチまでごちそうに……。 スザンナ「いいのよ。せっかくお願いしてもらうんだから。部屋でデータは渡すわね」 ありがとうございます。 スザンナ「いえいえ。それで、何か知りたいことはある?」 ハイ。今わかっているだけでいいので、インシルシティアの規模とか教えてもらえますか? スザンナ「いいわ。アタシが知っている限りだけれど、インシルシティアは、首領と呼ばれる男と、それに連なる技術者が大体20名って所ね。あとは、4人のフリートガールと、500体ほどのアンドロイド。報道されてたあの青い子と同じ感じの子よ」 大体……一個大隊ぐらいという所ですか? スザンナ「そのくらいね。アンドロイドの性能については、調査済みだと思うから割愛するわ」 -- 青葉(I)?
- ありがとうございます。そういえば、これを見て欲しいのですが。 スザンナ「写真ね」 ハイ。 スザンナ「これ……どこで手に入れた?」 ウチに流れ着いた、八重という少女が背負っていたとされる艤装です。 スザンナ「驚いた……。これはエイミーのと似てるじゃない」 似ている……と言いますと。 スザンナ「驚いたとしか言えないわ。エイミーに持たせていた艤装に積んでいた機関部に似ている」 やはり、八重さんとエイミーさんは何らかの繋がりがあったのですね。 スザンナ「設計図を書いた人が同じだと思う。それか、エイミーの図面を参考にしたか」 なるほど……。 -- 青葉(I)?
- それともう一つ。エイミーさんとは、何者なのでしょうか。 スザンナ「インシルシティアで試作されたフリートガール。端的に言えばそうなんだけれど……何故アタシがエイミーを助けて欲しいか、あの日記を読んだならわかるはず」 はい。原文で読みましたが……スザンナさん、かなり深く関わっていたんですね。 スザンナ「そう。だから、あの子を救いたいの。生きているかどうか、アタシにはわからない……」 スザンナさん……。 スザンナ「あの子から最後の連絡が届いたのは、先月の終わり、モロッコの消印がさらに1ヶ月前に押されたものだった。それ以来、連絡は無いわ。その手紙には、アンドロイドの量産体制が整ったって書いてあったから……」 青葉たちに送られたのは、試作機だった可能性が……。 スザンナ「ありうるわ。もしかしたら、機能が向上しているかもしれないし、逆かもしれない」 そうですか……。 スザンナ「おっと、話がそれてしまった。写真は人事システムに侵入したときに付属させた通り。あんな子が、暴走するはずはないのに。なぜ彼らは未だに解放しないのか」 カイホウ……? スザンナ「解放。彼らはエイミーが暴走して、暴れ出すと思って、閉じ込めたままだ。そうならないよう、細心の注意を払って調整をしたんだ。彼らの考えは間違ってる。あのようないたいけな少女を船内に閉じ込めるなんて……」 そう、ですね……。 -- 青葉(I)?
- スザンナ「あの子はアタシの娘みたいなものだ。……出来るものなら、もう一度会いたい」 それで、青葉たちに……。 スザンナ「うん。フリートガールの居る鎮守府なら、助けてもらえるだろう、って。それに青葉さんも、フリートガールなのよね」 はい。青葉は青葉型一番艦です。 スザンナ「頼もしいわ」 いえいえ。 スザンナ「謙遜することは無いわ。事実だもの。それにぃ……」 えっと、あの、スザンナさん? スザンナ「青葉さんって、柔らかそうだよね……」 えっと青葉その司令官に指輪もらっちゃってますからそのあの……。 スザンナ「大丈夫、大丈夫よ。大事な所は守ってあげるから」 あの、目つきがですね……。 スザンナ「ま、それは後にして。お食事を楽しみましょう」 ハイ! -- 青葉(I)?
- (1時間後 スザンナ自室) スザンナ「はい、これ」 すみません、新品のUSBメモリに入れてもらって……。 スザンナ「ウイルスやスパイウェアの対策と思えば安いものさ。新品なら、何か仕込まれる可能性は低いから」 それで、新品を……。 スザンナ「まだインシルシティアが壊滅したわけじゃないからね。アタシは、軍という強い後ろ盾があるからまだいいわ。そうじゃないなら……こうも簡単に日本へ飛んだりはできない」 そう、ですよね……。あ、もらったデータを確認してもよろしいですか? スザンナ「大丈夫よ。ソースコードも入っているから、結構な量あるけど」 ふむふむ……。(カチッ、カチッ)動画もあるんですね。 スザンナ「その黒髪の子、そのちっちゃくて可愛い子がエイミー」 へえ……。 エイミー『(英語)……このような感じでよろしいでしょうか』 スザンナ「どう?可愛いでしょう?」 え、あ、ハイ、青葉的にも整った感じだと思います。 スザンナ「でしょ!すっごく可愛いの!おっきくて柔らかいの!」 す、スザンナさん、すっごく鼻息が荒いのですがその……。 スザンナ「青葉さんって、エイミーほどじゃないけど……すっごく柔らかそう!」 あ、ちょっと、その、青葉そういうのはですねあの……むぎゃああああああああ! -- 青葉(I)?
- (1時間後) ひどいです。 スザンナ「ごめんごめんついつい」 青葉の胸はクッションじゃありません。 スザンナ「ついつい」 次やったら20.3cmで砲撃しますよ。 スザンナ「わかったって」 (じとー) スザンナ「次はやらないから!」 お願いしますよ……。(けど、変に上手で、青葉、ちょっと身体がポカポカ……ううん、何でもないです) スザンナ「さ、疲れたから今日は寝ましょう」 そうですね。青葉も疲れちゃいました……。 -- 青葉(I)?
- (翌日・東京駅) スザンナ「じゃあ、またね」 はい、スザンナさんもお気をつけて。 『……間もなく3番線から、成田エクスプレス、成田空港行きが……』 スザンナ「あとで連絡してね!」 はい! (シュー……ガッタン、ゴットン……) (……成田へ向かったみたいですね。青葉も、羽田へ向かいましょう……) (ピピピ……プルルルル……プルルルル) 明石(I)『お電話ありがとうございます。三ツ矢鎮守府、明石がお受けいたします』 明石さんお疲れ様です、青葉ですぅ。 明石(I)『青葉さん、お疲れ様です』 えっと、今日は明石さんが秘書ですか? 明石(I)『そうなんですよ!広美ったらさー、今日は霧島さんや鳥海さんとお出かけなんですよ!その代役だって。……あっ、その話は置いといて、どうしました?』 司令官に代わってもらえませんか? 明石(I)『提督?ちょっと待ってくださいね』 しれーかん『はいはい、どったの青葉』 今スザンナさんを見送りました。 しれーかん『わかった。青葉も、今日には戻るんだろ?』 はい。これから品川経由で、羽田から戻ります。 しれー『おう、気をつけてな』 あ、データについてはもう鎮守府のサーバに一部乗っけてます。 てーとく『わかった、明石と検証しとく』 お願いします。(ぴっ) -- 青葉(I)?
- さて、届いたのはこんなもんか……。 明石(I)「艤装の図面と試験データ、ですね」 見た感じでわかるか? 明石(I)「うーん……多分、専門家に見てもらった方がいいかな」 専門家というと? 明石(I)「ゆっきー。やえっちの艤装に近いんだよね、これ」 なるほどなぁ。見立てとしては、雪倉型の亜種、ないしは系譜とみるか。 明石(I)「可能性大だね。だから、電話して相談してみる」 -- サイダー提督?
- (ジー……コー……ジー……) もしもし、私三ツ矢鎮守府の明石と申しま……ゆっきー?うん。……そうなの、ちょっと見てほしいのがあって。……うん。あ、テレビ通話越しだけど、その開発に関わった人もいいかな?名前はスザンナさん。……うん、わかった。じゃ、お願いね。(ガチャ) -- 明石(I)?
- (数日後・三ツ矢鎮守府会議室) 明石(I)「こっち座って~」 すまないな、来てもらって。紅茶入れてておくから、飲んでくれ。 明石(I)「コーヒーが良いなら言って。準備してあるから」 -- サイダー提督?
- さてと……明石、ネットワークつないでいいか? 明石(I)「やっちゃって」 (ププププ……ププププ……) もしもし。 スザンナ『שלום』 もしもしー? スザンナ『あ、三ツ矢鎮守府の提督さん。そして明石さんに……えっと、そちらは?』 ゆっきー。 スザンナ『ゆっきー?』 明石(I)「バカ。あだ名で紹介しないの。……コホン。えっと、隣の方は、渡鳥運輸支社の雪倉さん」 スザンナ『よろしく』 -- サイダー提督?
- 紹介の通り渡鳥運輸の支社を勤めさせてもらっている雪倉だ…ところで明石、彼女が“アレの主犯”か? -- 雪倉?
- あれ……?あれかな。 明石(I)「いや、多分違うと思う」 スザンナ『暴走させるなんて、アタシは最高傑作以外出さないから!アレをやらかしたのはアタシじゃない!揉んだことはあるけど』 -- サイダー提督?
- これは失礼した、しかし最後の部分はさておくが最高傑作か…そこまでいうならば問題はなさそうだ -- 雪倉?
- うん、聞かなかったことにしよう。 明石(I)「そうね……」 スザンナ『書類は明石さんから渡すから……まあ、エイミーのことは書類を見てもらえればわかるだろう』 (USBメモリを手渡す) -- サイダー提督?
- 支社に戻り次第確認させてもらう…それで、だ。私や彼女を呼んだ目的は交流会では無いだろう?まさかこのまま性癖談義とは言わんよな? -- 雪倉?
- さすがにそれはない。あ、これ紙ベース。 スザンナ『失礼ねー。まあ、それが目的じゃないわ。紙ベースに出してもらったのは、昔私が携わったエイミーの艤装を見て欲しいのと、Mark.2が暴走した原因ね』 明石(I)「私も読みこんだけれど、ちょっとわからないの」 -- サイダー提督?
- …他に似たような個体がないという前提になるが、これは私が昔使っていた艤装だと思う。暴走に関しては・・・まぁ少なくともこのエイミーが暴走しない個体とだけは言える -- 雪倉?
- スザンナ『なるほどね……』 となると、雪倉型の系統になるってことだな。 明石(I)「そうなるよねぇ」 アンドロイドも雪倉型の系統になるのか……、ゆっきー、アンドロイドへの対策って何かあるか? -- サイダー提督?
- 私は別に専門家というわけでは無いのだが………まぁ…威嚇行動は効果は無いだろうから、的確に中枢を破壊するべきだろう -- 雪倉?
- まあそれが一番、王道にして妥当、ってわけだな。 明石(I)「雪倉型系統なのがわかったこと、そしてある意味では旧型なのもわかったわ。大きな収穫ね」 スザンナ『……ということは、君はエイミーのプロトタイプなのか?』 -- サイダー提督?
- プロトタイプか、 断定はできないが例えるならばそれが適切だろうな。私も生存している個体を知るのははじめてだ -- 雪倉?
- まあ確かに言うなればそうだけ── スザンナ『そうなの!?すっごいじゃん!ちっちゃいけどそれは今は気にしないしむしろそれがいいのかもしれないわ……。ねえ?もっとお話しましょう?なんならイスラエル来る?抱っこさせて?ね?なでなでさせて!』 落ち着いて下さいスザンナさん! スザンナ『コホン……えっとまあ、あなたがプロトタイプのようなものね。驚きだわ……エイミーはある意味では、あなたの姉妹、なのね……』 -- サイダー提督?
- まぁ、そうなるな。だがそれを決めるのは私じゃなく彼女だ、彼女が妹であることを望むならばそうすればいい…誰のためでもなく己のために。 -- 雪倉?
- 『そうね……。そればかりは、アタシや提督さんが決めることじゃないわ。エイミー自身のことだもの。それはそうと、やはり数には、正攻法が一番、って事ね。アンドロイドのように、数で飽和させるようなものには……』 -- スザンナ?
- 残せば残すだけ後の禍根となる、現品と設備……可能ならば技術者も潰しておきたいものだ。ところでスザンナとかいったな 、エイミー建造に関わったにもかかわらずなぜその組織壊滅に協力している? どこの差し金だ? -- 雪倉?
- 『誰の差し金?……誰のでもないわ。アタシが、アタシの信念に従っただけよ。雪倉、アタシは、ただ単にエイミーを救ってほしいだけなの。アタシの居た頃と今では、トップが変わり、組織は変質してしまった。昔は理想があった、今は金の亡者しか居ない。そしてアタシは裏切られ、捨てられた。それで、アタシは腐りきった組織をつぶし、《娘》を救ってほしい、そうしてほしいだけだ』 -- スザンナ?
- ……そうでしたか。 スザンナ『すまないね、アタシの愚痴みたいなことを言っちゃって。そうそう、作戦については、雪倉の言った通り、徹底的に破壊し、技術者と当代を捕まえて沿岸警備隊に引き渡す。それがベストね。そのうえで、エイミーを救ってくれればと思う。……アタシの、個人的な願いさ。もちろん、彼らには情報を漏らすことはしない。秘密保持契約書にサインしたって構わない。だからどうか、一つ頼めないか』 -- サイダー提督?
- 娘…か、いいじゃないか。私は構わないが三津谷提督、そちらはどうだ? -- 雪倉?
- ああ、かまわん。 明石(I)「その条件で受けたのですから……」 スザンナ『NDAは送ったわ、確認して』 大丈夫です。ありがとうございます。 スザンナ『どういたしまして』 -- サイダー提督?
- スザンナ『じゃあ、またよろしくね』 はい。 (ピッ) ありがとうな、ゆっきー、わざわざ来てもらって。あ、交通費は出すから領収書、明石に渡してね。あとは……。 明石(I)「えっと、何かありましたっけ」 ミヨの事。ミヨなんだか、もしもの話だけど、あのエイミーって子みたいに肉体を錬成した場合、それに移し替えることは出来るのだろうか……? -- サイダー提督?
- ・・・・・・・そうだな、あいつは私たちでない以上できるとは言えない。だができないと断言できる材料もない -- 雪倉?
- わかった。ありがとう。 明石(I)「どうしたの、急に」 なんとなくさ。ミヨが、何か思い悩んでいるように見えたからね。 明石(I)「なるほど……」 -- サイダー提督?
- …わかっているとは思うが、あいつの悩みを解消しようとするのはまぁ自由だが…当人の了承なくやっているならば賛同できんぞ? -- 雪倉?
- まだ聞いてはいないけど……あくまで可能性の話。もし、ミヨが望むならそれに応じて準備する。それだけさ。 -- サイダー提督?
- (一時間後、執務室) (コンコン)青葉(I)「入りまーす」 どーぞ。 青葉(I)「司令官、雪倉さんは?」 ゆっきー?ああ、明石が空港に送ってくれたよ。見送ったら帰るって言ってたから、あと30分ぐらいかな。 青葉(I)「戻られたんですね。あ、そうだ、これを見せに来たんです。司令官、これを見てください」 ん?新聞記事か。 -- サイダー提督?
- 青葉(I)「これ、少し前のですけど、ほら」 ふむふむ……。 《事故か事件か T大女子学生、5人の行方わからず》 これによれば、都内の海岸でサークル活動をやっていた5名の女子大生が行方不明と書かれているな。 青葉(I)「ハイ。それだけならたまにある記事ですけれど……名前見てください」 どれどれ。 《……行方がわからなくなっているのは、T大4年生の三原まゆさん、3年生の石川マリさんと鷹取あやさん、2年生の三波やえさんと筑波ちせさんの、合わせて5人で、警視庁と第三管区海上保安本部では、事故と事件の両面で……》 八重!? 青葉(I)「そうなんです。やえさん、もしかしたら……」 可能性あるな。 -- サイダー提督?
- (1時間後・三波島警察署刑事部) すみません、お手数おかけして。 南「いえ。ただ、まさか未解決事件に繋がる可能性を持ってきて頂けるとは」 青葉のおかげです。 青葉(I)「(えへへー)」 南「さすが、青葉さんです。それで、先ほどお持ちして頂いた指紋データや住民票、顔写真から、やはりこの事件で行方不明になったT大生の三波やえと同一人物で間違いありません」 そう、ですか……。 南「この、インシルシティアという組織が、この5名を拉致した可能性が高いと思います。他の4名も」 青葉(I)「青葉たちの飛行機に残されたボイスレコーダーにも、イシカワと名乗る少女の声が録音されていました」 南「ますます高いでしょうね。警察としても、捜査に当たります」 ありがとうございます。 青葉(I)「青葉たちも、出来る事をやります」 南「また、よろしくお願いします」 こちらこそ。 -- サイダー提督?
- (同日・八重自室) (コンコン)はーい。 ミヨ(I)「姉さん、ボクです」 みよちゃん?開いてるよ~。 (ガチャ)ミヨ(I)「姉さん、急に呼び出してどうしたのさ……って、何、この散らかった部屋」 あのね。ちょっと模様替え。しようと思ったら本棚の中身がね。 ミヨ(I)「姉さん……(頭抱え)」 だからね、みよちゃんに手伝って。もらおうかな、って。力持ちだから。 ミヨ(I)「うーん……仕方ないなぁ……姉さんまたひっくり返しそうだし。じゃあ、どこ置けばいいか教えてよ?」 うん! -- 八重(I)?
- (数分後) ミヨ(I)「姉さん、この辞書は?」 それ?えっとね……うーん……下の段。お願い。 ミヨ(I)「わかった。(辞書を置く)(プルルルル!プルルルル!)あ、姉さんごめん、電話出る」 はーい。 ミヨ(I)「(耳にスマホをあてる)もしもし?明石さん?……うん、今姉さんと掃除。……明日?……うん、うん、了解。では(ピッ)」 みよちゃん、みよちゃんって。ロボット、だよね? ミヨ(I)「うん、そうだよ」 ケーブルとか刺して、電話。とかできないの? ミヨ(I)「出来るよ?けどね、人間っぽく無いって」 そうなんだ。みよちゃんって、ロボットぽくないね。 ミヨ(I)「そうかな?」 うん。 -- 八重(I)?
- ミヨ(I)「ありがとう、姉さん」 えっ、どうして? ミヨ(I)「ボク、姉さんのような『人間』になりたいな、って」 みよちゃん。私はね、みよちゃんが。うらやましいな。 ミヨ(I)「どうして?」 みよちゃんたちは、ケガも、病気もしない。から。……あのね、お姉ちゃん、こう思うの。人間ってね。みよちゃんが思っている以上に弱いの。転んじゃったら。怪我もするの。風邪を引いちゃうこともあるの。 ミヨ(I)「ウイルスだったら、ボクもかかっちゃうよ」 コンピュータウイルス。だよね。 ミヨ(I)「うん。ボク、それにかかっちゃうと大変だからね……」 お姉ちゃんたちも。ウイルスにかかっちゃうと、大変なの。それに、人間の生命には、リミットがある。みよちゃんは。ロボットだから、パーツがあれば。長生きできる。 ミヨ(I)「でも姉さん、パーツが古くなりすぎたら、ボクもそれこそアウトだよ」 そう。だね。けれど、お金があれば、作れる……。だから、ある意味では。永遠だと思うの。 -- 八重(I)?
- ミヨ(I)「そう……だね」 それにね。私たちは女の子でしょう?毎月、気分が落ち込むときもあるの。人間ってね。色々大変なの。 ミヨ(I)「うん……」 でもね。そういった……いろいろ大変な事を乗り越える事。それができるのが、人間の強さ……なの。……お姉ちゃん、色々大変な事あったの。 ミヨ(I)「そうだよね……姉さん、あいつらに……」 ……酷いことも。されたの。ハジメテだけは、守ったけど。見られたくないの見られた。見たくないの……見せられた……。それで逃げたけど。疲れちゃって、流されちゃって……。だけど。ローマさんに見つけてもらって。ここに来て。受け入れてもらって。昔された、イヤなこと思い出しちゃったり。そのたびに、ローマさんや鳥海さん、提督、他のみんなも。話、聞いて。くれて……。みよちゃんと出会って。いっぱいお話して。……だから。今の私が居るの。 ミヨ(I)「姉さん……」 -- 八重(I)?
- みよちゃん。この前、私に海で聞いた。よね。みよちゃんのこと。 ミヨ(I)「ボクが人材なのか、備品なのか、ってことだよね」 うん。今なら私、自信を持って言える。みよちゃんはモノなんかじゃない。そんなこと言う人は。お姉ちゃん、絶対に許さない。 ミヨ(I)「ふふふっ」 どうしたの?みよちゃん? ミヨ(I)「姉さんらしいな、って。でも、ありがとう」 だって私の妹だから。……前。提督も言ってた。でしょ? ミヨ(I)「前……ああ、あのとき」 みよちゃんは。ちょっと他の人とは、身体の作りが違うだけって。それ以外は、同じだから。ね。お姉ちゃん、みよちゃんの味方だから。 ミヨ(I)「姉さんって、すごいんだね」 ううん。みよちゃんの方がすごいよ? ミヨ(I)「そうじゃなくて。……姉さん。ボクは……そんな姉さんと同じになりたいです。わがまま……、かな?」 -- 八重(I)?
- 違うよ。人間、誰でも、夢や希望はあるから。みよちゃんの考えは不思議。だけど。 ミヨ(I)「不思議?……まあ、そうだよね」 でも、よく考えてね。私は詳しくないから、わからないけど。人間になったら、元に戻れるか。って聞かれたら、難しいかもしれないよ。けど、みよちゃんがそれでいいって思ってするなら。お姉ちゃんは応援するし。これからもみよちゃんのお姉ちゃんで居たいな。って。 ミヨ(I)「姉さん……ボク、やっぱり姉さんの妹でよかった」 えへへ。ありがとう、みよちゃん。(なでなで) ミヨ(I)「ちょ、ちょっと姉さん、ボクそこまで子供じゃないから!」 -- 八重(I)?
- じゃあ、まずはお片づけしちゃおうか。 ミヨ(I)「そうだね……姉さん、本の中で寝る訳にはいかないし」 本はお布団。じゃないからね。 ミヨ(I)「枕でもないと思うよ……(汗)」 本がだめになっちゃうしね。 ミヨ(I)「首も痛くなると思うけど……」 (二人は、八重の部屋に散らかった本を片付け始めた……) -- 八重(I)?