スマブラ個人小説/シークの小説/神おも

Last-modified: 2011-03-13 (日) 09:19:50

33






封印。

その言葉が彼の脳裏から離れなかった。


何とかして封印を解かねばなるまい。
だが、どうやって?


・・・。


封印といえども、時間と共に朽ち果てよう。

決まった。

時の旅へ出よう。


遥か未来へと   

34






一人の少年が道路に倒れていた。

ひどい傷を負いながら。
といっても、車に轢かれたりしたのではない。

少年   ネスは戦ったのだ。



ある者と。

ネスは力なく立ち上がると、言った。


「知らせなくちゃ・・・。スマッシュブラザーズ、そしてマスターハンド、クレイジーハンドに・・・。」


ネスは自分のポケットから不思議な機械を取り出した。
ミズオとの戦いで、マスターハンドから貰ったものだ。

電話はすぐにマスターハンドと通じ、会話が始まる。







「そうか、それで?」

マスターハンドがネスと会話していた。


「僕が戦ったのは・・・。」

「うん?」


少し間が開いた後、ネスは口を開いた。



「タブーさ。」

35






「ははは、何言ってるんだ?タブーならもう倒したじゃないか。」

「うん・・・。だけど、タブーの力は無くなっていない。」


 どういうことか、マスターハンドは分からなかった。


「この間のタブー復活事件の時、ポーキーは言ってた。タブーの力を手に入れたってね。
 その時、僕はポーキーを倒したけれど、とどめは刺さなかったんだ。
 僕が戦ったのはタブーだけど、身体はポーキーだったよ。
 それで、戦った後、タブーは消えた。ポーキーの能力を使って未来に行ったらしいんだ。」


マスターハンドはそれを聞くと、電話を切り、クレイジーハンドに言った。


「クレイジー、スマッシュブラザーズを呼ぶぞ。タブーが復活した。」







「・・・。」


 プリンは、生命の珠を持ちながら、未だに救助を待っていた・・・。

36






「つまり、ポーキーが精神をタブーに乗っ取られたまま未来へと行ったらしいんだ。」


 またもや『終点』に集い、マスターハンドが説明した。


「それで、お前たちを未来へと連れてゆく。」

「へえ~~、僕たちの子孫に会えたりするのかな~~~!?」


 カービィが言った。
 それにピカチュウが返答した。


「そうだね、タブーを倒しに行ったら・・・って、あ   っ!!
 この前のタブー復活事件の時、そう言えばプリンがあのままどこかに吹っ飛ばされちゃってるんだ!!」

「そうか、それは大変だな。よし、ポケモン組、プリンを探しに行ってくれ。
 見つかったらクレイジーハンドに頼んで、未来へ連れてってもらえ。」

「ところで、時空をこえるなんて、そんな事ができるんですか・・・?」


リンクがマスターハンドに聞いた。


「ふふ、かつて、スマッシュブラザーズDXと呼ばれる団体は、私の力を使わずに時間移動したんだぞ。
 第一、私は神の化身だぞ?時間も、空間も、物質も、エネルギーも、お前たちも、
 お前たちの中にある善なる心も、全て創り出した存在の化身だ。・・・無論、悪は創ってないぞ。
 悪はお前たちが生きていく内に自然に発生したもんだ。さあ、行こうか。クレイジー、留守番は頼むぞ。」

「ああ、お前たちが留守の間はしっかり守ってやるさ、現在を。」

「ふむ、では行くぞ。未来を守りにな。」


マスターハンドの力で、時間に穴が開き、そこへマスターハンドは皆を乗せて旅立った・・・。







「おーい、見てくれー!時の道が開いたぞー!」

「そうか・・・!これを使えば、アイツに謝れるかもしれないな!」


そんな会話が過去で行われていた。



会話をしているその者達が所属する団体がある。
その団体の名前は・・・。



『スマッシュブラザーズDX』

37






「さあ、着いたぞ。」

 マスターハンドの言葉に、目を恐る恐る開くと、そこには近未来的な都市がひろがっている   


 ハズなのだが・・・。


「メチャクチャだな。」


 マスターハンドが呟いた。
 確かに、街はメチャクチャに壊され、近未来的な機械はことごとく破壊されていた。


「どこにタブーがいるんだ?」

「壊されている跡を辿れば良いだろ、ダークプリンの時みたいに。」


 ドンキーコングがそう答えを返したので、それに従い、進んでいく。

 どれほど歩いたろうか・・・。


「ポーキー・・・!」


 ネスが声を出した。
 そちらを向く。


「久しぶりだな。スマッシュブラザーズ。」


 ネスの言葉の通りポーキーだとするには、口調が違った。
 そう、タブーの口調。


「ここまで私を倒すために追いかけてきたのか。」

「そうだよ、だから君を倒して、ポーキーを助けるんだ!」


 ネスがそう言ってPKファイアーを発射した。

 だが、そこに居たはずのポーキーにPKファイアーが当たる事は無く、炎の球は少し飛んで消えた。


「ネスさんっ、後ろです!」


 リュカが叫んだ。
 後ろを見ると、ポーキーの脚が光へと変わり、そしてそれはネスへと向かう。

 ネスはすぐにシールドを張る。
 だが、光の鎖はPSIで強化したそれを貫通して、ネスに突き刺さった。

 地面に叩き付けられ、ネスは宙を舞った。







「こっちだ。」


 蒼いキツネのようなポケモン、ルカリオがそう言った。


「ルカリオっていると便利だね。僕もゲットしたいな~~。」


 ルカリオの指示の通り進んだ先には、神々しいまでの光が湧き出ていた。

 そして、その光の湧き出る根源は。


「プリン・・・!」

「久しぶりプリね~~。もうタブーは倒したプリか?」

「いや、もうそんな話じゃなくて。歩きながら説明するよ。」


 説明しながらクレイジーハンドの元へと歩く。


「おお、来たか!ん?持ってるのは・・・?ソイツは生命の珠じゃないか?」

「へえ~~。そういうプリか?」

「ああ、スマッシュボールを作るときに色々と本を読みあさったが、
 その中に、まだ完全には解読できてないが、それでタブーを封印したというような事が書いてあった。
 タブーはフィギュア化する力、ソイツはフィギュア化を解く力。お前、フィギュア化してる時にでもぶっ飛んだんだろ。」

「そうプリ。」

「生命エネルギーを求めて、生命の珠の近くに落ちたんだろうな。さて、じゃあ送るぜ!未来にな!」


 クレイジーハンドの力で、ポケモン組も未来へ・・・!

38






 ネスが叩き付けられたものの、それをマスターハンドがキャッチして、そのままタブーへ突進した。

 だが、タブーはそれをワープして回避。
 ワープした後には小さな爆発が残り、マスターハンドがそれをくらった。

 マスターハンドの握力が弱まり、ネスが地面へ落ちてゆく。


「危ない!」


 リンクが疾風のブーメランで着地の衝撃を和らげ、ネスは地面にスタッと降り立った。


「PKフリーズ!」


 ワープした先のタブーにリュカがPKフリーズを放った。

 だが、それもワープして避けられ、逆にタブーはリュカに突進した。


「ストーン!」


 カービィがストーンを使い、タブーをヒットストップで一瞬止める。
 その隙にリュカはタブーの軌道からそれた。


「こういう時に便利だね~~。」


 カービィが自画自賛する。
 だが、今度はタブーはカービィに向かって光の鎖を突き刺した。


「う・・・っ。」

「これでまず一人フィギュア化だな、スマッシュブラザーズ!」


 タブーがそう言って光の鎖を元に戻す   


 いや、光の鎖はカービィに刺さったまま抜けなかった。


「オイルパニック!」


 ゲーム&ウォッチが背後からオイルパニックを叩き込んだ。
 先ほど外れたリュカのPKフリーズを吸収したものだ。

 オイルはタブーに直撃した。

 それと同時に、カービィから光の鎖が抜ける。


「影虫デ作ッタ偽者デス。」

「こしゃくな事を・・・。」


 タブーは偽者カービィを掴み、自分ごと地面に叩きつけた。

 偽者カービィは大きくぶっ飛んでいった。







「これで封印できるって言ってたけど、どうやるのかなあ・・・。」

「投げれば良いんじゃないプリか?」

「タブー相手にそんな物持ったまま近づけないだろう。大砲みたいな物で撃ち込んだらどうだ?」

「でも、それらしい機械は壊れちゃってるよ。」


 途方に暮れながら歩くポケモン組。

 その時、ピカチュウが声を出した。


「・・・そうだ、僕、こんな騒動の中でも壊れそうに無い場所にある、大砲みたいな物知ってるよ。」

「それは何だい?」


 ポケモントレーナーの問いに、少し間を置いてからピカチュウは言った。



「亜空砲戦艦。」

39






「亜空砲戦艦は亜空間だよ、どうやって取りに行くのさ?」

「いや、マスターハンド達が"この世界"に持ってきたらしいんだ。」

「よし、波導で探してやろう。」


 ルカリオが波導を使ってある方向へ歩き出す。


 かなりの距離を歩いた時、目の前には黄色い塔があった。
 その塔は光で出来ている。


「ここの中だ。」

「じゃあ行ってみるプリ。」


 プリンがそう言って塔の中へと侵入を試みる。

 だが、黄色い光にはじかれて、プリンが中へ入ることは出来なかった。


「封印するって言ってたよ。最強の封印って。だからこの騒動の中でも壊れてないんだよ。」

「じゃあ中に入れないのかな・・・。」


 悩むポケモン組。
 そんな彼らに、誰か小さい子が話しかけてきた。


「その封印を破るの?」

「ああ、できればそうしたい所だ。」


 ルカリオが返事した。
 波導で見る限り、悪い者ではなさそうだ。


「じゃあ、もしかしたら僕の家にそれを破るぐらいの威力の兵器があるかもしれないよ。」


 今度も本当の事を言っている。

 ポケモン組は彼について行く事にした。


「しかし、本当にそれほどの威力を持つのか?」

「うーん、封印を打ち破れるかは分からないけど、かなりの威力だよ。何せ・・・。」


 一瞬 間が空いた。
 そして彼は誇らしげに言った。



「遥か昔、亜空軍と呼ばれる敵の最終兵器を打ち砕いたこともあるんだからね!」

40






「ほら、これだよ。」


 その子が見せてくれたもの。

 真紅の光を放つ、小さな機体   
 ドラグーンだった。


「はい、あげる~~~。頑張ってね!」


 その子はドラグーンをポケモン組にあげると、嬉しそうに微笑んだ。

 その笑顔を見て、ピカチュウはカービィの言っていた事を思い出した。


『へえ~~、僕たちの子孫に会えたりするのかな~~~!?』


 もしかしたら・・・ね。







 キュイィィィィィイン・・・。

 甲高い空気を切り裂く音が一瞬響いたかと思うと、次の瞬間薄い氷が割れるような音があたりにこだました。

 封印は破れたのだ。

 そして、亜空砲戦艦が目の前に現れた。
 それに乗り込み、生命の珠をセットする。


「エネルギー抽出率100%!」


 亜空砲戦艦のボタンをカチャカチャとたたきながら、ポケモントレーナーが叫んだ。


「ターゲット・ロックオン!」


 人差し指を勢いよくボタンにたたきつける。



「発射ァ!!」


 振動で辺りを震わせながら、虹色の光がタブーへと向かった。

41






 地面に叩き付けられた偽者カービィは影虫へと変化した。
 影虫が光の鎖を捕らえ、タブーの動きを封じる。

 そこを虹色の光が貫き、ポーキーの身体に宿るタブーにクリーンヒット!


「ぐッ・・・アァアアぁぁあっ!!ぐ・・・う・・・。」


 タブーはポーキーの身体をガクガクと震わせ、それが何分か過ぎた。

 すると、ポーキーの身体からタブーが出てきた。


「おーい、タブーはどうなった!?」


 光の飛んできた方向から、ポケモン組が走ってきた。


「見ての通りだ。タブーはポーキーから離れて、自らの姿を現した。」


 マスターハンドが問いに答えた。
 タブーをきちんと見据えながら。


「ポーキー、大丈夫!?」


 ネスがポーキーを助け起こした。


「くっ・・・。」


 頭が痛い。
 スマッシュブラザーズと闘うと、何かを思い出す。

    まるで、過去の自分を見ているようで。

 タブーには、亜空間に封印される前の記憶が無かった。
 あるのは、封印直前の記憶と、亜空間の記憶だけ。


「なぜだ・・・?なぜ、こんなッ・・・。」


 わたしは何者だ?







『現在』


「マスターハンド達はいつ帰ってくるんだろうな。」


 クレイジーハンドは終点でのんびりそう言った。
 そして、"この世界"の見回りに行く事にした。



 クレイジーハンドは見回ってみたが、特に何も無さそうだ。

 平和を楽しみながら、終点へと帰ろうとしたとき・・・。


 突如、空気が切れる音がした。

 クレイジーハンドがそちらを向くと、紅くてブラスターのような光線が大地に穴を開けていた。
 その光線の直後、巨大な地震がクレイジーハンドを襲った。


「くっ。」


 クレイジーハンドが光線の飛んできた方向を見た。

 だが、すでに怪しい人影は無かった。


 いや、人影は無かったが、何かが高速でクレイジーハンドの視界から消えるように思えた。

 あまりにも速くて正体は分からなかった。
 だが、クレイジーハンドの目は捉えていた。


 視界の端から消えた、緑のローブを。

42






「アレは何なんだ?スマッシュブラザーズも居ないしなぁ・・・。」


 クレイジーハンドは考えた。
 そして、クレイジーハンドの思考はある一つの団体に辿り着く。

 クレイジーハンドはある世界に向かった。


「また戦ってくれないか?」


 その団体を集め、そう言った。
 赤髪の剣士ロイ、電気ネズミピチュー、最強のポケモンミュウツーを前に。

 その団体は小さく頷き、緑のローブを探しにいった。







「今だっ!」


 タブーが頭を抑えている隙に、襲いかかる。


「ぐっ・・・。」


 飛び掛ってくるスマッシュブラザーズを見て、タブーの頭がまたもや痛んだ。
 そして、タブーは思い出した。

 そうだ。
 私は・・・。私の正体は・・・!


 次の瞬間、タブーは攻撃の衝撃に、地面に落ちてフィギュア化した。

 そう、闘いは終わったのだ。


「・・・さあ、帰ろうか。私たちの『現在』へ。」


 そう言ってマスターハンドは時の穴を作り出した。

 そこで、マスターハンドに話しかけるものがあった。


「あ、ちょっと先に行っててくれ。」


 スマッシュブラザーズにそう言って、マスターハンドは一人になった時に言った。


「何だ?」

「私を覚えていますか?」

「・・・もしかして、ミズオか?」

「ええ。生命の珠のエネルギーはタブー様以外の所にも及んでいましたからね。それで復活しました。」

「そうか。」


 さようなら、と言ってマスターハンドは帰ろうとした。

 だが、それをミズオが引き止めた。


「待ってください、私の用事は挨拶ではないのです。」

「じゃあ何だ?」

「・・・タブー様のフィギュアを、持ち帰って下さいませんか。」

「・・・? 分かった。」


 そう言えばタブーのフィギュアなんか無造作に置いておいたら危険だな。
 持ち帰って封印か何かしておかないと・・・。


「いえ、違います。持ち帰り、復活させて下さい。」

「危険じゃないか。」

「たぶん、平気だと思います。・・・今のタブー様なら、きっと。フィギュアを見てたら、そう思ったんです。」

「復活は無理だと思うが・・・。まあ、とりあえず持ち帰るか。」


 マスターハンドはミズオに別れを告げ、時の穴へと飛び込んだ。

43






 紅い閃光を見事に避け、緑のローブに切りかかる。

 だが、突如として現れた雷雲が、彼に雷を落とす。

 ロイのフィギュア化をすぐに解き、今度はピチューが行く。


「かみなり~~~っ!」


 だが、かみなりが落ちることは無かった。


「あ、あれ?おかしいな・・・。」

「今度は私だ!」


 ミュウツーがシャドーボールを緑のローブに向かって放とうとした。

 今度は突然 霧が発生し、緑のローブが見えなくなってしまった。


「どこだ・・・。」


 目くらましの後は攻撃してくるだろう、そうミュウツーは思い、どこからの攻撃にも警戒した。
 だが、それが全方位からくるとは、夢にも思っていなかった。

 突如として巨大な地震が起き、三人はフィギュア化して大きく吹っ飛んでいった。







「おお、帰ってきたか!今、ちょっと大変な事が起こっていてな。」

「どんな事だ?」

「これを見てくれ。」


 そう言ってクレイジーハンドが見せた映像。
 それを見て、ロボットは驚愕した。


「私が・・・。映っている?」


 その映像に映っていたのは、エインシャント卿だった。

44






『過去』


「よし、挑戦してみようぜ。時空を超えられるかどうか。」


 ある一人の男が叫んだ。


「・・・成功!この道具に、時空を超える力を宿らせられたよ!早速 行こう!」


 オカリナを掲げて、彼は自信満々に言った。
 緑の服を着ていてリンクに似ているが、まだ子供だ。

 時を超えるオカリナ   時のオカリナの音が聞こえた時、彼らの姿はそこには無かった。







「こいつは・・・ッ!」


 映像を見て驚いたのはロボットだけではない。


「知ってるのか、マスター?」

「知っているなどと言うものではない・・・。
 コイツ、エインシャント卿は、スマッシュブラザーズDXが戦った相手なのだ。
 そして、スマッシュブラザーズDXを指導したのは私なのだから。」


 マスターハンドが静かに言った。
 その声がかすかに震えている。


「そう言えば、亜空軍の資料の中にありました。『エインシャントの由来』という資料が。」


 ロボットが言った。

『エイ?シャント島のエインシャントとは、『古代』という意味である。
なぜそ?呼ばれるのか。それは、?インシ?ント島に、遥か古代より住み?いている存在がいるからである。
その存在?、いつも"この世界"の味方?する。なぜなら?の存在は、???????の??だからだ。
故に彼は"こ?世界"に破壊エ??ギーが??たとき、???せた存在を??す。』


「よくは分からないが、私が見る限り、?の部分はこうだろう。」


 マスターハンドがそう言って読んだ。

『エインシャント島のエインシャントとは、『古代』という意味である。
なぜそう呼ばれるのか。それは、エインシャント島に、遥か古代より住みついている存在がいるからである。
その存在は、いつも"この世界"の味方をする。なぜならその存在は、"この世界"の化身だからだ。
故に彼は"この世界"に破壊エネルギーが満ちたとき、満ちさせた存在を滅ぼす。』


「よし、必要あるかは分からないが、見せよう。スマッシュブラザーズの歴史を。」


 マスターハンドがそう言って掌から映像を出した。

45






「これは、『過去』の映像だ。まず、スマッシュブラザーズ64の物語。」


 マスターハンドがそう告げた。







 ワイヤーを通した紫色の、謎の人型をした生物がたくさんいる。
 そして、それと誰かが戦っている。約12人というところか。


「これがスマッシュブラザーズ64だ。後にこの変な生物、『謎のザコ敵軍団』の中から
 良心を持つ何人かがスマッシュブラザーズに入ってくれて、64人になる。」


 マスターハンドの言葉どおり、映像では謎のザコ敵軍団から何人かが移籍してきた。


「謎のザコ敵軍団は世界征服を狙っていて、ダークキャノンのような武器を使い、次々と世界をとっていった。
 それを防ぐために私が設立したのが、後に世界中で悪とされる組織、『スマッシュブラザーズ64』だ。」

「悪とされるって、どういうことだ?」


 マリオがそう聞いたのに対し、マスターハンドは映像を指さした。


「戦いはスマッシュブラザーズ64の負けで終わる。」

「じゃあ、スマッシュブラザーズ64は?」

「処刑された。12人だけがな。先ほどのザコ敵軍団から移ってきた者達は処刑されていない。」


 マスターハンドの言葉の後、映像では、大きな爆発が起きた。


「味方のザコ敵軍団は、何年も戦いが続き、資源の不足で不利となった戦況を覆すために、敵の基地へ攻撃した。
 敵の基地の場所などを最もよく知っているからな。武器庫に入り込み爆薬を爆発させて、相手に被害を与え、
 その隙に有利に講和に持ち込む。だが、講和に持ち込む前に、相手に攻められ、スマッシュブラザーズは捕まった。」


 映像では、12人が捕まり、牢屋に入れられていた。


「ザコ敵軍団から来たものは敵への攻撃でほとんど死んでしまった。スマッシュブラザーズも処刑された。
 また、この時のザコ敵軍団から来た者たちの特攻で、時空の歪みが出来た。『亜空間』だ。
 スマッシュブラザーズは、それから作り出した『亜空間兵器』で処刑されたらしい。」


 映像はそこで切れた。


「次、スマッシュブラザーズDXの物語。」


 マスターハンドがそう言うと、またもや別の映像が現れた。
 だが、さっきの戦いのように派手なシーンではなく、ビラ配りをしているような感じだった。


「戦いには敗れたものの、スマブラ64の意義は大きかった。甚大な被害を与えたが為に、
 ザコ敵軍団は奪った世界を維持する事が出来ず、放棄した。そしてザコ敵軍団は平和な集団となった。
 だが、その中にはまだ過激派が居た。彼らはまたもや世界征服を狙った。」


 マスターハンドは淡々と解説した。
 自分自身も映像をじっと見ている。


「そして、それを警告するために、私はスマブラDXを設立した。」


 映像には、スマブラ64の戦いの時に、仲間であったようなザコ敵がメンバーを集めていた。


「コイツは、スマブラ64の戦いの時、味方のザコ敵軍団のリーダーを務めていたんだ。
 特攻にも何とか生き延びた。コイツや、スマブラ64のメンバーの子孫、スマブラ64の解放した世界の者たちが
 スマブラDXのメンバーになってくれた。そしてスマブラDXはザコ敵軍団が世界征服しようとしている事を
 皆に伝えようとした。だが、スマブラは『悪』だ。説得は出来ず、ザコ敵軍団は亜空間兵器を使い、
 世界を征服しようとした・・・。」


 映像には、巨大なミサイルが映っていた。
 そして、その先端には、巨大な亜空間爆弾。

 そして、それをザコ敵が撃ち落している。


「そのミサイルを味方のザコ敵が撃ち落した。ミサイルによる被害は防げたが、まあ時間の問題だ。
 ミサイルなんか使わなくたって、スマブラ64の戦いで被害を受け、『戦争なんか嫌だ』という世界は、
 軍隊なんか無い。らくらく征服可能だ。そして、当然ながら世界は征服され、対抗できる者は無しに思えた。」


 マスターハンドが映像の解説から話を変えた。
 力強い声でマスターハンドは言った。


「私達が今から戦う相手は、エインシャント卿。かつて、世界全てを敵に回し、勝利した者。」

「でも、話を聞いている限り、悪い人じゃなさそうですけど?」

「彼は"この世界"の味方。破壊エネルギーが満ちた時、ヤツは現れて文明を滅ぼす。
 それは善人であろうが悪人であろうが関係は無い。まだ人間は終わってはいない。
 破壊エネルギーが"この世界"を滅ぼす可能性もあるが、私は人間の可能性に賭けてみたいと思う。
 滅ぼすのはもうちょっと待って欲しいな。まだ、希望があるんだから。さあ、戦いだ・・・。」


 今、遥かなる時を超えて、神話が繰り返されようとしていた。

 それは世界が文明を滅ぼす、忘れられた物語。

46






 緑のローブの下に吊り下げられている黒い亜空間爆弾。
 それは、ピッ・・・ピッ・・・と刻んでいた。

 世界終末への時を。


 『02:58:01』


「・・・あと約3分というところですか。」


 エインシャント卿が一人静かに言った。

 刹那   


「天空!」


 その叫びにエインシャント卿が後ろを振り向いた時、すでに亜空間爆弾は地面に向かっていた。


「うーむ、亜空の使者の時にエインシャント卿の隙をついたと言うアイクにやらせてみたが、
 亜空間爆弾を破壊する事は出来なかったか。」

「マスターハンド・・・。」


 エインシャント卿の黄色い目に、白い右手袋が映った。

 亜空間爆弾が地面に落ち、地面にめり込んだ。
 凄まじい大きさのそれは大地に地響きを立てたが、壊れる事は無く、ピッ・・・ピッ・・・という音を立てている。


「あの天空を避けるとは、さすがエインシャント卿だな。久しぶりだ。」

「あなたは、ワタクシを倒しに来たんでしょう。あの時のように。」

「そういうことになるな。」


 エインシャント卿と会話を交わしてから数秒後。
 クレイジーハンドが爆弾をチラリと横目で見て、マスターハンドに伝えた。


「おいっ、早く戦ったほうが良いんじゃないのか。」

「よし、スマッシュブラザーズ。頑張ってくれよ。」


 マスターハンドがクルリと方向転換し、気楽そうに言った。
    その隙に、私達 両手神で亜空間爆弾を破壊する。

 数秒間 睨み合った末、先に動いたのはクレイジーハンドだった。
 手の平に爆弾を創り出し、亜空間爆弾に向けて投げつけた。

 エインシャント卿はそれに動じる事も無く、ただ紅い光線をたった一発放っただけ。
 紅い光線は爆弾の速度を少しだけ落としただけだった。

 だが、次の瞬間。

 空が瞬間的に曇り始め、巨大な竜巻が発生した。
 竜巻は爆弾を巻き上げ、爆弾はクレイジーハンドの足元に落ちた。

 クレイジーハンドは指からレーザーを出し、爆弾を消す。

 マスターハンドは言い忘れていたような反応をして言った。


「エインシャント卿は、自然の力を使う。」

「ええ、それは当然です。私は"この世界"の化身であり、言うなれば世界の使者。
 そう言えば、タブーは亜空の使者と呼ばれていたようですね。」

「・・・何でお前がタブーの事を知っているんだ?」

「タブーを復活させたのは私ですから。彼が世界征服してくれるなら、楽ですからね。」