のめり込むトレーニング

Last-modified: 2016-08-09 (火) 14:37:42

のめり込みの状態を利用する

我々人間は様々な事柄にハマることが出来る。しかしながら、このハマる状態には「いいハマり」と「こまったハマり」がある。「いいハマり」は心身や脳がハマっている「のめり込み」の状態。「こまったハマり」は個人の状態というよりは社会的な逸脱の程度「依存」している状態ともいえる。「いいハマり」と「こまったハマり」の境界には社会がある。「依存」ではなく「のめり込み」の状態を利用し、「集中力」「記憶」「やる気」をアップさせていく。

「快感」と「無意識行動」

発声、発音、滑舌…様々な注意やコツを最初は意識する。腹筋、姿勢、口腔内の舌の使い方…その試行錯誤である。しかし、ある段階をこえると意識を向けなくても自然と音が出るようになる。さらに進めば滑舌も気にならなくなり、演技に集中できるようになっていく。発声発音滑舌が自在になるにつれ、脳活動の主役が線条体に移動してより無意識化していくのである。そして無意識的になった分、演技や表現など余分な行動に意識が払えるようになるのである。大脳基底核のひとつの線条体は習慣的な行動や微細な運動調整に関わりがある。つまりは無意識的な行動に関わるわけだ。その一方で、線条体の腹側は側坐核と呼ばれ、快感に関わるドーパミン神経系と強くアクセスしている。「快感」やその予測との結びつきが強い部位が側坐核なのだ。つまり、線条体は無意識化した行動の蓄積や制御の場でありながら、快感の場でもある。線条体で「無意識行動」と「快感」は結びついている。そのような仕組みがあるため、無意識に行動できる事は気持ちがいいのだ。この気持ちいいが「のめり込み」になる。

2つの快感を知る

「わくわく」「ドキドキ」

まずイメージさせるのは2つの「快感」である。1つめは「わくわくする」や「ドキドキする」などの興奮的な状態。一般的に用いられる「快感」とはこの「わくわく」「ドキドキ」を示す。
「わくわく」「ドキドキ」しているとき、脳の奥の腹側被蓋というところから、額のあたりの脳、前頭葉に投射しているドーパミン神経系が強く活動する。快を感じたとき報酬を得たとき、また予測した時ですら側坐核を含むこのドーパミン神経系が活性化する。このドーパミン神経系こそ「のめり込み」の主役である。依存はその対象によって、薬物などの物質に依存する「物質依存」、ギャンブルなどの行為に依存する「行為依存」、人との関係性に依存する「関係依存」に区分する事ができる。「のめり込み」にはドーパミン神経系の活動が先立ち、そして側坐核を刺激するのだ。

脳にとっての報酬を決める

ドーパミン神経系は思いもよらぬ金銭的な報酬を得たり、欲しいものを手に入れるとその活動を高める。また、快感や報酬でなくとも「予測」であってもその活動を高める。達成感、人に勝った優越感でも活動するし、褒められることでも活動する。これらをひっくるめて「脳の報酬」という。「脳の報酬」はなんでもかまわない。なんでもいいから報酬を決めておくと、その報酬を得るために何かを始めやすくなる。やる気が生まれやすくなるからだ。自己達成感、注目を浴びる、危機回避など、精神的な報酬はみな立派な報酬である。ただし、危機回避を報酬にしてしまうとサボり癖がついてしまう、もしくは二日酔いや寝不足など万全の状態でパフォーマンスが出来ない状態での実演が達成感につながってしまう危険がある。

目標は評価可能な形に

「がんばる」は、素晴らしい目標だ。しかし、評価しにくい目標でもある。一方で、「2ページ勉強する」という目標なら楽に評価することができる。誰だってわかる、はっきりわかる、実行したかしていないかで報酬を与えることができる。具体的で評価可能な基準を設定すれば「そこまでやった」達成感が得られ、それが報酬となり、別の報酬をあたえることができるようになる。

依存せずのめり込むためには

得やすい報酬ほど、脅迫的で反復的な行動を引き起こしてしまう危険性を孕んでいる。ドーパミン神経系の活動は「報酬」を越え、「渇望感」をも生み出してしまうためだ。渇望感か日常を覆うと脅迫的で反復的な行動…すなわち本当の「依存」が生じ、日常生活が破綻する事となる。では、依存を避けつつ、脳をのめり込ませるにはどうしたらよいのだろうか。ポイントは日常生活の満足感である。日常生活の中に、きちんと快感や満足感を見出しておくことが大切となる。日常生活を生き生きと感じ生きる 楽しさを感じることが大切である。その感覚を忘れては、どんなに高いパフォーマンスを獲得したとしても、社会的な破綻を生みかねない。そのための大きな指標は、前述の通り社会的に適応できているかどうかであろう。

  • レッスン1
    目を閉じ、目の奥のから額あたりにかけて光が広がっていくイメージをしてみよう。
  • レッスン2
    自分の頭を後ろから覗き込むイメージを作ってみよう、俯瞰的な視点だ。目の前にいる自分の頭の中から光が広がっていくイメージを作ってみよう。
  • レッスン3
    脳をトレーニングにのめり込ませる「報酬」として、使えそうなものを探してみよう。物質、行為、関係でそれぞれ3つくらい具体的に挙げてみよう。
  • レッスン4
    あなたが、何があっても大事にしたい日常的な「何か」を3つ挙げてください。できれば「報酬」とは別に。物質、行為、関係で挙げられるとよいでしょう。