原初の巫女アヴェニアス

Last-modified: 2024-06-14 (金) 14:24:29

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Illustrator:ミモザ


名前アヴェニアス
年齢14歳
職業ネフェシェ護衛官筆頭

精霊に命を捧げ、精霊を体に宿した巫女<シビュラ>と呼ばれる存在の一人。
シビュラ精霊記のSTORYは、全体的にグロ・鬱要素が多数存在します。閲覧には注意と覚悟が必要です。
舞園 星斗「そこが一番ゾクゾクするし、ピュアなお話なんだよ?」

巫女<シビュラ>

後の初代火の巫女にしてネフェシェを護る護衛官の一人。
性別を持たない人ならざる種族の彼は、人間を嫌い、『創造神』の神託を聞くネフェシェだけを全て捧げてきたのだが……。

スキル

RANK獲得スキルシード個数
1道化師の狂気【NEW】×5
5×1
10×5
15×1


道化師の狂気【NEW】 [ABSOLUTE+]

  • 一定コンボごとにボーナスがある、強制終了のリスクを負うスキル。コンボバースト【NEW】と比べて、コンボノルマが2/3倍になる代わりにJUSTICE以下許容量が-100回となっている。
  • NEW初回プレイ時に入手できるスキルシードは、PARADISE LOSTまでに入手したDANGER系スキルの合計所持数と合計GRADEに応じて変化する(推定最大49個(GRADE50))。
  • GRADE100を超えるとボーナス増加量が鈍化(+10→+5)する。
  • NEWで追加されたスキルで唯一、最後までボーナス増加の打ち止めがなかった。
    道化師の狂気【SUN】がGRADE 400でボーナス増加打ち止めが確認されたことから、こちらも400で打ち止めになる形だった(がキャラ数不足で到達することがなかった)可能性がある。
  • CHUNITHM SUNにて、スキル名称が「道化師の狂気」から変更された。
    効果
    100コンボごとにボーナス (???.??%)
    JUSTICE以下50回で強制終了
    GRADEボーナス
    1+6000
    2+6010
    11+6100
    21+6200
    31+6300
    41+6400
    50+6490
    ▲PARADISE LOST引継ぎ上限
    61+6600
    81+6800
    102+7000
    142+7200
    182+7400
    222+7600
    262+7800
    302+8000
    342+8200
    362+8300
    推定データ
    n
    (1~100)
    +5990
    +(n x 10)
    シード+1+10
    シード+5+50
    n
    (101~)
    +6490
    +(n x 5)
    シード+1+5
    シード+5+25
プレイ環境と最大GRADEの関係

プレイ環境と最大GRADEの関係

開始時期最大GRADEボーナス
2022/8/18時点
NEW+269+7835
NEW313+8055
~PARADISE×362+8300


GRADE・ゲージ本数ごとの必要発動回数

GRADE・ゲージ本数ごとの必要発動回数
※NEW稼働時点でゲージ5本以降の到達に必要な総ゲージ量が変更。必要なゲージ量を検証する必要があります。
ノルマが変わるGRADEのみ抜粋して表記。
※水色の部分はWORLD'S ENDの特定譜面でのみ到達可能。

GRADE5本6本7本8本9本10本11本12本
136912162025
4136912151924
5636911151923
7636811151823
8736811141822
11436811141722
13136811141721
14235810141721
17935810131721
20235810131620
24535710131620
28135710131619
302
(362)
3579121519


所有キャラ

所有キャラ

ランクテーブル

12345
スキルスキル
678910
スキル
1112131415
スキル
1617181920
 
2122232425
スキル
・・・50・・・・・・100
スキルスキル

STORY

ストーリーを展開

EPISODE1 神に焦がれて「人間達にこの世界は相応しくない。この僕が、ネフェシェ様と共に理想の世界を築き上げるんだ」


 箱庭の世界で繰り返される巫女たちの宿業。
 その物語の始まりは、今より遥か昔、人々の幸福を願う少女のもとに四つの希望の力が舞い降りた事から始まる。
 少女の名はネフェシェ。
 神の力を行使する少女は、自らが思い描く理想郷――“平等な幸福を享受できる世界”を作るため、箱庭の世界を少しずつ満たしていった。
 その恩恵は世界の各地にまで及び、荒れ果てていた地には恵みの雨と、豊かな緑があふれ始める。
 やがて箱庭の世界に住まうものたちは、豊穣をもたらす神として少女を奉った。
 神がもたらす恩恵は、いつまでも続いていく――人々が祈りを捧げる限り。

 しかし、ネフェシェが想い描いた理想郷は、彼女の生誕祭での悲劇を発端に一変してしまう。
 ネフェシェの従者である少女の裏切りによって、ネフェシェの権能の一部が剥がれ落ちてしまったのだ。

 それに気付いた人間達が我先にと襲い掛かる中をどうにか切り抜け、ネフェシェ達は国を後にする。
 だが、逃げた先でもネフェシェは、人間達の醜悪な姿を目の当たりにしてしまうのだった。

 幾度も困難に見舞われてきたネフェシェの護衛官達は、苦難にあえぐネフェシェを支えつつ、安住の地を求めて北を目指す。
 その道の先にこそ、救いがあると信じて。
 だがその中でだた一人、違う思惑を抱く者がいた。

 (奴らは獣に過ぎない。どれだけネフェシェ様が手を差し伸べようとも、ただ肥え太るだけ。好き勝手に暴れていとも簡単に壊してしまう! そのような奴らにネフェシェ様の寵愛を授かる資格など!)

 黒髪の護衛官――アヴェニアスは、ネフェシェへと向けられた人間達の欲望に塗れた眼を思い起こし、血が滲む程に唇を噛む。

 (ネフェシェ様は誰にも渡さない。彼女を護るのも寵愛を受けるのも、全てを捧げてきたこの僕だけだ!)

 煮えたぎるような激情を胸に、アヴェニアスは往く。
 やがてその熱が、自身を焼く事になるとも知らず。


EPISODE2 埒外の脅威「創造神……だと? ハッ、笑わせる。神はこの世に一人、ネフェシェ様をおいて他にない!」


 ネフェシェを神と崇める箱庭の世界には、人類より前に誕生した原初の種族がいる。
 原初の種族は生殖機能を持たず、自然発生的に姿を見せる魔物に近しい性質を有していた。
 故にその絶対数は少なく、後から誕生した人類によって徐々にその生活圏を脅かされていく。
 そこに待ったをかけたのが、ネフェシェだった。
 平等で幸福な世界を理想郷とする彼女にとって、全ての生き物は等しき存在。

 ネフェシェは人間からぞんざいな扱いを受けてきた原初の種族達を自身の護衛官として登用し、以降、その慣習を今も守り続けている。
 護衛官筆頭のアヴェニアスもまた、その一人だ。
 アヴェニアスはネフェシェの理想の世界を築くため、彼女に害なす者を排除し続けてきた。
 彼女の利益になるのなら、それが人間達の依頼であっても構わない。
 そうさせるだけの価値が、彼女にはあったのだ。

 「……アヴェニアス殿、何故あの地を離れてしまわれたのですか? サラキア殿の力を借りれば、ネフェシェ様の御力を狙う者達にも対抗できたのでは」
 「彼の地はこれより激動していく。その渦中にネフェシェ様を晒す訳にはいかない。それに……」
 「何か?」
 「あの女が我々を庇うとも限らないのだから。いいか、人間は我々とは違うのだ」
 「しかし……我々だけで、どこへ向かえと……」
 「北だ。ネフェシェ様の神託を信じればよい」

 アヴェニアスはさも当然かの如く淡々と答えた。

 『北へ――向かってください』

 ――ネフェシェへと降りる神託。
 それは、いつの頃からか彼女の口から語られるようになった。
 その兆候自体は以前からあったのだが、より明確になったのは、ネフェシェの生誕祭で起きた事件が発端になっている……とアヴェニアスは推察する。

 「…………」
 「ネフェシェ様……」

 あれ以来、ネフェシェはただ静かに時を過ごすだけの時間が増していた。
 最近では深い眠りに落ちてしまう事もある。
 夢の中に現れる『創造神』なる者の声――彼女はそれが神託なのだという。

 今もネフェシェは心ここにあらずといった様子で、遥か北の山々を見据えていた。
 未だかつて開拓された事のない大地――アギディス。
 『創造神』は、そのアギディスより更に北にある地でネフェシェを待っているという。
 俄かには信じがたい、荒唐無稽な話に聞こえてしまうが、ネフェシェの言葉には変わりない。
 それは、護衛官達を奮い立たせるには十分だった。

 「おお……これぞ神の試練に違いない! ネフェシェ様と『創造神』が邂逅すれば、この世界は正しき方向へと歩んでいけるのだ!」
 「そうだ! ネフェシェ様の世界に幸あれ!」

 立て続けに舞い込んでくる苦難に憔悴しきっていた護衛官達は、矢庭に活気づいていく。
 ……ただ一人、アヴェニアスを除いては。

 (何を浮かれているんだ、こいつらは。この世界で神と呼べるのは、ネフェシェ様だけだろうに……!)

 噛み千切った唇から血が滴り落ちていく。それすらも構わず、アヴェニアスは敵意に満ちた瞳をアギディスの彼方にいるという神へと向けた。
 ネフェシェを己が従者のように使う『創造神』に、アヴェニアスは嫉妬と怒りを覚える。

 (傲慢なる偽りの神――そんなもの、存在していい筈がない。ネフェシェ様のみが神なのだ!)


EPISODE3 古き者達「未開の地に住まう者共……。本当にこいつらを信用していいのだろうか」


 ネフェシェの神託を頼りに、一行は遥か北にある地を目指す事になった。
 徐々に険しい山々が近付いてきた事で、ここもまたネフェシェの恩恵を受けているのだと、より肌で感じ取る事ができる。
 未開拓の地なだけあり、都市では見かけないような稀少な植物が生息し、至るところから生命の息遣いが聞こえてくるようだった。
 頂上へ向かえば向かう程、獣道は険しくなる。
 それにつれて、護衛官達はこの地が人間が暮らしていくには過酷な環境で、どこか拒んですらいるように感じるのだった。
 黙々と獣道を進む一行は、やがて急勾配へと差し掛かり、自然と進行速度も緩やかなものになっていく。
 これ程過酷な環境は想定していなかったのか、先頭を歩くアヴェニアスも、歳相応の少女と同等の身体能力しか持たないネフェシェを気にかけざるを得ない。
 どこか少しでも英気を養える場所はないかと、辺りに気を配ろうとしたその時、道の先に広がる茂みから何かが蠢く気配がした。

 「――ッ!」

 護衛官達に緊張が走る。
 蠢く何かがこの急な足場でも自由に動き回れるとしたら、アヴェニアス達にとっては非常に不利だ。
 直ぐに後続へ合図を送ると、アヴェニアスは茂みに向かって剣を構えた。
 それを皮切りに、他の護衛官達も次々と剣を構え、音のした方へと向き直る。
 「ガサガサ」と聞こえていた音は徐々に広がっていき――気が付けば、一行は取り囲まれていた。

 「魔物か? いや、これは……総員、命に代えてでもネフェシェ様を護り抜くのだ!」
 「ハッ!」

 不利な地形での戦闘は、一瞬の油断が命獲りになりかねない。

 「どうか、皆さんが無事でありますよう……」

 ネフェシェは前後を護衛官に護られながら、皆の身を案じつつ祈りを捧げる。
 その姿に奮い立った護衛官達は、敵の襲来を今か今かと待ち構えるが……茂みから姿を現したのは、一行が予想外だにしないものだった。
 それを捉えたアヴェニアスは、ただ一言つぶやく。

 「……人間、だと?」

 一行の前に続々と姿を現したのは、白いローブに身を包んだ者達だった。その長と思われる人物は、髪に隠れていた尖った耳を見せて語りかける。

 「我らは人間などではありませぬ。見たところ、あなた方も我々と“同じ”かとお見受けします」

 穏やかな口調でそう告げた老齢の者はオーシュと名乗り、一行を自分達の集落に迎え入れたいと申し出た。
 その温厚そうな態度と思わぬ同胞との遭遇に、緊張の糸が切れた護衛官達は自然と安堵の表情を浮かべ、オーシュの申し出を受け入れようと話し出す。

 「ふむ…………」

 アヴェニアスとしてはそんな提案を受け入れる気にはなれなかった。
 しかし、今は少しでもネフェシェを休ませたい。
 安全よりも休息を選んだアヴェニアスは、オーシュ達に鋭い視線を向けながら剣を収めた。
 警戒を緩めた訳ではない。

 (少しでも不穏な動きを見せたら、即座に断罪する)

 心の内で、アヴェニアスはそう言い聞かせていた。


EPISODE4 信奉者「イデア……それが神を騙る者の名か。ならば、この手で直接葬ってくれよう」


 未開拓地であるアギディスを訪れた一行の前に姿を見せたのは、アヴェニアスら護衛官達と同じ原初の種族。
 その者達は、この地に集落を築いているという。
 よもや同胞と出会うとは思っておらず、一行はオーシュに導かれるままに集落に足を運んだ。
 集落は山の各地に点在しており、オーシュ達が主に拠点として使っているのは、木々が鬱蒼と生い茂る森の中の洞窟だった。
 続々と中へ入っていく護衛官達の後ろ姿を見やり、アヴェニアスは独り言ちる。

 「……いくらなんでも、不用心が過ぎる」
 「どうしたのですか、アヴェニアス」
 「ネフェシェ様……やはり初対面の者を住処に招き入れるなど……これは罠かもしれません」
 「そうでしょうか、私は信じていますよ。すべては信じるところから始まるのです」

 アヴェニアスの警戒をよそに、ネフェシェはそう断言した。
 ネフェシェにそう言われては否定するわけにもいかない。アヴェニアスは黙ってネフェシェと共に洞窟の中へと踏み入るのだった。

 洞窟内は等間隔に設置された松明の灯りに照らされていて、そのまま進んで行くと所々に慎ましやかな生活の跡が見て取れる。
 更に進むと、そこはひときわ大きな空間だった。
 洞窟上部の岩の裂け目から僅かに漏れ射す明かりとは別に、目印のように松明が立てかけられている。
 その松明のすぐ横には小さな洞穴があり、先に案内されていた護衛官達は、ちょうどその中で腰を下ろして休もうとしているところだった。

 「あいつら……剣も放り出して、気が緩みすぎだ」
 「慣れない獣道を通ってきたのです。アヴェニアスも疲れているのではありませんか?」
 「そういうネフェシェ様こそ――」

 ネフェシェを気遣おうとしたアヴェニアスの言葉は、彼女の思いがけぬ行動によって阻まれてしまう。
 ネフェシェがアヴェニアスの両頬に手を添えていたのだ。

 「なっ、ネフェシェ様!?」
 「疲れが顔に出ていますよ? 私達もオーシュ様のご厚意に甘えましょう」
 「しかし、ネフェシェ様をお護りするのが……」
 「しっかりと疲れを取るのも、私を護る者の勤めではないでしょうか」

 咎めるような視線に射抜かれ、アヴェニアスは何も答えられない。仕える主を気遣えなかった事もあるが、それ以上にアヴェニアスは、息を呑む程のネフェシェの美しさに見惚れてしまっていたのだ。
 それに拍車をかけたのも、彼女の色褪せない瑞々しい雰囲気ではなく、普段は見られない疲労の色を隠しきれていなかったからなのかもしれない。

 「アヴェニアス……?」

 ただ、いたずらに時間だけが過ぎていく。
 アヴェニアスはためらいつつも、頬に添えられた手に触れようと手を伸ばす。
 そこへ、背後からオーシュの声が掛かった。

 「ここの護りなら心配は要りません。外に見張りを立たせていますので」
 「ッ……ああ、分かった」

 水を差された事に若干の苛立ちを募らせつつ、アヴェニアスは不機嫌そうに返す。
 そのまま、ネフェシェが休む洞穴の前に陣取るようにして、身体の疲れを取る事にした。

 ――その日の晩。
 洞窟の中では、焚火を中心にして談笑する護衛官とオーシュ達の姿があった。
 それとは対照的に、アヴェニアスは洞穴からただその光景を眺めている。
 ふと、賑やかな空気に混じって微かな声が耳に届く。

 「……ん…………」

 それは、アヴェニアスのすぐ近くで穏やかに眠るネフェシェの声。
 その声に導かれるように振り返ると、ネフェシェはまた『創造神』の夢でも見ているのか、幾度か声を漏らしていた。
 深い眠りについていても、その見目は溜息が出る程美しい。むしろ、神々しさすら感じる。
 アヴェニアスは呼吸をするのも忘れてしまうくらい魅入っていた。

 「あぁ……いで……あ、様……」

 思いがけず聞こえたその名に、興を削がれたアヴェニアスは誰にともなくつぶやく。

 「イデ、ア……? まさかそれがあなた様を唆す……」

 カラン、と突然背後から聞こえる乾いた音。
 アヴェニアスは剣を取り、背後にいる何者かへと剣を突きつける。その視線の先にいたのは、オーシュだった。
 その足元には、二人のために持ってきたと思しき果物と、木製の椀が乱雑に転がっていた。

 「オーシュ殿、脅かさないでもら――」
 「今……なんと?」
 「オーシュ殿?」
 「イデア様、イデア様と仰いましたね!? ええ、ええ、そうに違いありません!」

 オーシュの変わりように、アヴェニアスは不用意にその名を口にした事を悔やんだ。
 可能性を考慮しなかった訳ではなかった。
 もし仮にイデアなる者が創造神だとするならば、ネフェシェを信奉する者がいるように、同じような存在がいてもおかしくはない、と。
 だが、時は既に遅く、イデアの名を聞きつけた他の者達も続々とアヴェニアスの前に集まってくる。

 皆、熱に浮かされたように「イデア」の名を称え、交差させた両手を胸に当て、祈りを捧げ始めた。

 (どうする……力では我々に分があるとはいえ、数で押されてしまえばネフェシェ様を……)

 この状況を収拾できるか思案していた矢先、まるで仲の良い隣人へ話しかけるような調子で、他の護衛官がつい口を滑らせてしまう。

 「いるかも分からない神を信仰してるのか? 目の前に本当の神がいらっしゃるというのに」
 「――――ッ!!」

 その言葉に一斉に振り返った集落の者達を見て、護衛官もようやく失言したと理解する。
 皆、貼りつけたような笑みでこちらを見ていたのだ。


EPISODE5 神の権能「この狂信者共め……お前たちのやり方は、虫唾が走るんだよ」


 突然豹変した集落の者達を見て、護衛官達に緊張が走る。
 不気味なまでに統一された笑みに耐えかねた護衛官はネフェシェが見た夢の話を喋ってしまった。

 「おお……イデア様! イデア様!!」

 狂喜する姿に我に返ったアヴェニアスは、咄嗟にネフェシェを護ろうと振り返る。
 しかし、それを待っていたとでも言うように、頭に硬い何かが叩きつけられた。視界はぐらりと揺らぎ、アヴェニアスはあえなく地に倒れ伏してしまう。
 そこへ、集落の者達がのしかかってきた。
 他の護衛官達も同様に、群がられて身動きを取れずにいる。

 「オーシュ! 貴様ッ!?」
 「これより儀式を始めさせていただきます。どうかそこで見物していてください」

 そう言うと、オーシュはゆっくりとした足取りで、今も眠りにつくネフェシェの下へと向かう。
 乱暴に洞穴から引きずり出しても、ネフェシェは一向に起きる気配を見せない。
 眠りは、更なる深淵へと彼女を誘っていたのだ。
 オーシュはおもむろに懐からナイフを取り出す。

 「貴様……ッ! ネフェシェ様に傷ひとつでもつけてみろ、その命、必ず奪うからな!」
 「この世界におわす神は、イデア様のみ。我々にもこのお方が神なのかどうか、確かめさせてください」

 直後――ネフェシェの首から、鮮血が舞った。

 「――――っ!? んっ、か、ごぷ……っ」
 「貴様あああアァァァァァァァッ!!」

 オーシュはアヴェニアスの叫びなど意にも介さず、獣を解体するような手際の良さで、首を胴体から斬り離していく。
 やがて、引き千切るような音がしたかと思うと、“ソレ”は少女だった身体の上に無造作に置かれた。

 無惨な姿になった少女を無言で見下ろし、オーシュは変化が訪れるのを待った。
 するとどうだろう、気が付けばネフェシェの身体から止めどなく溢れ出ていた血は止まり、既に流れてしまった血はネフェシェの身体に吸い寄せられるように主の下へと戻っていく。

 「おぉぉぉ、これは……!」

 そして、身体の上で横倒しになっていた頭部までもが引きずられるようにしてあるべき場所に帰る。
 骨が、肉が、皮が。
 何事も無かったかのように繋がり、きめ細やかな肌までもが再生したのだ。
 そして、浅い呼吸と共に、閉じられた瞼がゆっくりと開かれ――

 「――満足、していただけましたか?」

 ネフェシェは弱々しく立ち上がると、オーシュ達に悲し気な表情を浮かべる。
 土と水の力を失い、以前程の権能を発揮できない彼女にはもう防衛反応すら見られない。
 身体を回復させるだけの力しか残されていなかった。
 「なんと、素晴らしい……」

 人知を超えた驚愕の光景に、オーシュ達は賞賛の声を浴びせる。その表情はどこか晴れやかだった。

 「どけッ! ネフェシェ様!!」

 拘束が緩んだ隙にネフェシェのもとへ駆け寄ったアヴェニアスは、ネフェシェの身体に異常がないかを確認していく。

 「私はなんともありませんよ、アヴェニアス」
 「ああ……よかった……」
 「これぞ正しく神の御業! よもや――」

 それ以上、オーシュが喋る事はなかった。
 アヴェニアスが剣を納めるのと同時に、べちゃりとオーシュの首が転げ落ちたからだ。

 「言っただろう。ネフェシェ様を傷つけたら、命はないと」

 そう吐き捨てると、辺りは妙にざわついていた。
 見れば、そこには平伏したままネフェシェの名をつぶやく者達で溢れかえっている。

 「これぞ神の奇跡……!」
 「おお、ネフェシェ様……ネフェシェ様……」
 「狂信者どもが……」

 アヴェニアスは吐き捨てるように口ずさむ。
 絶対に殺してやるとでも言うように。


EPISODE6 殉ずる者「神の供物となれるんだ。信奉する者にとって、これ以上の幸せはないだろう?」


 古くからイデア神を信奉しているという狂信者達は、ネフェシェが見せた権能を前に平伏した。
 そして、ほとぼりが冷めやらぬ内に思いもよらぬ事を提案する。

 「――共に、北へ向かうだと?」
 「はい、我々の種族の伝承には、イデア様が降り立ったとされる場所が語り継がれてきました」

 ネフェシェには心当たりがあるのか、何かを思い出すような素振りを見せた。

 「それは……水平線の果てのような場所ではありませんか?」
 「おお……正しくその通りです。ここより遥か北、過酷な死の大地を抜けた先にある『原初のうつろ』。イデア様は遥か昔、そこに降り立ったという伝承が残されています」
 「あぁ……私は、イデア様に呼ばれているのですね」
 「ええ、その通りです。彼の地へ導けるのは選ばれし者のみとされています。あなた様こそが、そのお方に違いないのです!」
 「ネフェシェ様……?」

 どこか浮足だった様子のネフェシェに、訝し気な表情を送るアヴェニアス。
 今の彼女は、心なしかいつもより幼い印象を受ける。だが、それを確かめる術はない。

 「どうか、どうか我らにも、ネフェシェ様の道行きを手伝わせてはもらえないでしょうか」

 狂信者達の言葉に、アヴェニアスは即答した。

 「同行を認めよう」

 アヴェニアスは狂信者達を見ていて気付いた事がある。彼らは神の権能を見せたネフェシェに興味を示すばかりで、他の事はまるで些事だと言わんばかりに興味を示さない。
 つまり、この者達にとってはイデアにまつわる事だけが全てであり、他の何よりも優先される。
 その狂信ぶりは、使い様によっては頼もしい戦力になる――そう判断したアヴェニアスは、内心でほくそ笑んだ。

 (こいつらにはせいぜい働いてもらう。イデアを我が手で葬るその時までな)

 そんなアヴェニアスの思惑など露知らず、歓喜に沸く狂信者達。
 一行は『原初のうつろ』への道行きに備え、眠りにつくのだった。

 翌朝、静まり返った集落に叫び声が響く。
 出立の準備をしていた一行の下に、外を哨戒していた護衛官が駆け寄ってきたのだ。

 「アヴェニアス殿! ル、ルスラ軍がすぐ近くまで迫っている!」
 「何ッ!?」

 ネフェシェの足取りを追っていたルスラ軍が追いつき始めている。
 まだ位置を特定できてはいないようだが、獣道の足跡が見つかってしまえばそれも時間の問題。
 今から出て行っても狂信者達と行動を共にすれば見つかってしまいかねない。かといって、この者達を置いていけば何をしでかすか分かったものではない。
 となれば、すべき事はひとつ。

 「奴らを迎え撃つ! 神の行く手を阻む邪悪なる背信者に、裁きを下すのだ!」

 アヴェニアスの掛け声とともに、一斉に決起の声を上げる狂信者達。
 いとも簡単に焚きつけられ、各々の武器を携えて洞窟を飛び出していった。数人の護衛官達も後を追うように駆けていく。
 そんな光景を眺めアヴェニアスは一人、口の端を釣り上げ歪んだ笑みを浮かべてみせる。

 「皆さん……どうかご無事で……」

 不穏な空気に心がざわめき、ネフェシェは物悲し気に祈りを捧げる。
 せめてもの祈りが、皆を護ってくれるように。


EPISODE7 歪な想い「僕はただ……あなたの理想郷を叶えようと……。何故だ、どうしてそんな顔をする!?」


 戦いは地の利を得たアヴェニアス側が優勢であった。
 しかし、それは時間と共に逼迫していく。
 訓練と研鑽を積み、効率よく相手の息の根を止める事に時間を費やし続けてきた人間達。
 片や、戦いもせず山奥でひっそりと暮らしていた、ただの狂信者。
 結果がどうなるかなど、火を見るよりも明らかであった。悲鳴と怒号が上がる中、次々と死体の山が築かれていく。
 それを安全な場所から眺めるアヴェニアスは、嘲るように笑った。

 「ハハ、これで奴らも満足に逝けただろう。さあ、ネフェシェ様、行きましょう」
 「えっ?」

 アヴェニアスはそう言ってネフェシェに促すと、戦地とは別の方角へ向かって歩き出す。

 「ア、アヴェニアス殿! 皆、ネフェシェ様のためにその身を捧げたのですよ!?」
 「信仰に殉じたまま逝けたんだ。これ以上の幸福があるか?」

 冷徹に言い放つアヴェニアスに不穏な気配を感じた護衛官達は、アヴェニアスを取り囲むように距離を詰めていくと、緊張した面持ちで問いかける。

 「あ、貴方は、そうやって同胞の命すら見捨てようというのですか?」
 「我らの命はネフェシェ様のためにある。当然だろう!?」
 「なっ……」
 「お時間を取らせてすみません、ネフェシェ様。今すぐここを――」

 アヴェニアスが振り返った先では、ネフェシェを護るように剣を構えた護衛官達が並んでいた。

 「お前達……何をしているのか分かってるのか?」
 「無闇やたらと命を犠牲にする……そんな考えには賛同できません!」
 「護らねばならぬ命はネフェシェ様のみ! 貴様らにネフェシェ様は任せておけん! さあこちらへ!」

 アヴェニアスが手を差し伸べようとしたその時、ふとその手が止まる。
 ネフェシェは首を左右に振り、アヴェニアスの方を見ようとしなかったのだ。

 「ネフェシェ様……何故……?」
 「アヴェニアス、どうか考えを改めてください。命はこの世界にとって必要なもの。無闇に失わせていいものではありません」
 「我々も事を荒立てたくありません。ネフェシェ様をこれ以上悲しませる事だけは……」

 ネフェシェ達の願いが届いたのか、驚愕の色を浮かべていたアヴェニアスは、ふと自嘲気味に笑う。

 「そうか……ああ、ああ。分かった――腑抜け共に、ネフェシェ様を護る資格などないという事がなぁ!!」
 「くっ、アヴェニアス殿!」
 「ネフェシェ様以外の事などどうでもいい!――ネフェシェ様!」

 アヴェニアスは剣を振り上げ、高らかに叫んだ。

 「僕だけが! 全てを捧げられる!」
 「何を、バカな……!」
 「止むを得ん、ここでアヴェニアス殿には退いていただく!」

 激昂したアヴェニアスに、四方から護衛官達の剣が迫る。互いの剣が獲物を捉えたそのひと刹那――

 「ッ!?」

 躊躇なく、ネフェシェは両者の間に飛びこんだ。
 だがアヴェニアスの剣は止まらない。
 咄嗟の出来事に勢いのついた剣は戻せず、その凶刃は真っ直ぐにネフェシェを貫いた。糸が切れた人形のように、ネフェシェはその場に膝をつく。

 「ネフェシェ様ッ!?」

 アヴェニアスはすぐさま剣を手放し、誰よりも早くネフェシェを抱きしめた。

 「ぁ――ああっ、ぁぁぁ……」

 弱まる鼓動と、熱を失う身体。
 密着した身体から徐々に命が消えていくのを感じ、アヴェニアスは自身が犯した罪の大きさに嘆き悲しむ。

 「ぁ――あああぁぁあぁぁああぁぁあ!?!?!?」

 端正な顔立ちはとうに消え失せ、流れた涙はネフェシェの血と混ざりあい、朱に染まる。

 「ア、アヴェニアス……怪我は、ありませんか……」
 「こ、こんな、こんなつもりじゃなかったんだ……! ぼ、僕はッ、た、ただ、あああなた、を……」

 アヴェニアスからネフェシェを引き剥がす護衛官達。
 離れていくネフェシェへ伸ばした手は届く事なく、振り下ろされた剣によって両断された。
 続け様に振るわれた剣に容赦なく貫かれ、アヴェニアスはなす術もなく地に倒れ伏す。

 「……アヴェニアス……!」

 ネフェシェが護衛官の手を払いのけ、重傷を負ったアヴェニアスのもとに、よろよろと駆け寄った。
 覆いかぶさるようにすがりついたアヴェニアスの身体は、どくどくと強く脈打ち、急速に命の輝きを失おうとしている。

 「ネフェ……ェ……」

 だが。
 それでもなお。
 アヴェニアスが想うのは――ただひとつ。
 誰よりも彼女を支え、全てを捧げ続けてきた神なる少女を護り続ける事。
 それこそが、ネフェシェへの信仰であり、愛なのだ。

 「ぼ、くが……ま、も……」
 「あぁ……アヴェニアス…………」

 ネフェシェが幾度も感じてきた小さな感情が、堰を切ったように溢れ出していく。
 それは、自分を心から信ずる者に何もしてあげられなかった事への、深い悲しみ。
 神でありながら、不条理に抗えない無力な自分への――絶望を。

 「……救けられ、なくて……ごめんなさい……アヴェニアス……お願い……“死なないで”――」

 ――その時だった。
 ネフェシェの身体から、赤い光が剥がれ落ちたのは。
 それはアヴェニアスの願いに呼応するように揺らめくと、ゆっくりとアヴェニアスの身体を包み込んでいく。
 やがて光は全身を満たし、溶け合い、ひとつになった。

 「ぁ……アヴェ――」

 ネフェシェが触れようとした瞬間、アヴェニアスの身体がドクンと脈打つ。

 「これ、は……」
 「あッ、ぐッ……ぎ……ァ、アァァァッッ!?!?」

 アヴェニアスは、燃えていた。
 その光景に思わずネフェシェは後ずさる。
 アヴェニアスを包む炎が地を走り、大地を焼く。
 それはもうネフェシェの足元にまで差し掛かっていた。
 それでもネフェシェはそこから離れようとはしない。
 誰一人言葉を発せない中、身体を灼かれ、痛みに喘ぐアヴェニアスの声だけが響き渡る。
 ネフェシェは、これが自身の火の力によって引き起こされた事に気付いた。
 だが、これまでの状況とは何かが違っている。
 希望に結びつくはずの力は、アヴェニアスの身体をいつまでも灼き続けていたのだ。

 「嘘……どう、して……?」
 「ここは危険です、ネフェシェ様!」

 悲痛な表情で佇むネフェシェを抱え、護衛官達は急ぎその場を離れていく。

 「いやっ、アヴェニアス、アヴェニアス――!」

 その声が届いたのか、アヴェニアスが僅かな反応を見せた。

 「ネ――」

 何もない虚空へと手を伸ばす。
 彼女の顔も、声も、匂いも、もはや分からない。
 だが、身体を蝕まれながらもアヴェニアスの心は歓喜に打ち震えていた。
 自分は――認められたのだ。
 彼女の力を授かるに足る、存在なのだと。

 「ネ――、――ェ、――」

 だからこそ、アヴェニアスは嗤った。
 与えられた愛を、貪り尽くすように。
 いつまでも、いつまでも。

 やがてそこに――天高く炎の柱が立ち登った。


EPISODE8 神の寵愛「この痛みも、この炎も、全て僕だけのもの! 僕は愛されている、愛されているんだァァァッ!!」


 ネフェシェにもたらされた希望の力。
 それは、人間の胎に宿る性質があり、性別を持たないアヴェニアスにとっては、制御できない代物だった。
 注がれてしまった力の暴走を止める術などない。
 ただ、それが朽ち果てるのを待つのみ。

 しかし、燃えて灰になるはずの身体は、力の暴走によって復元され、再び灰にしようと燃えたぎる。
 無限に繰り返される痛みと再生、肉を焼いたような醜悪な匂いに晒され、辛苦の螺旋が終わる事はない。

 「ネ……ふぇ、シ……ぇ……ァ、ァァ……あィ、シ」

 それでも、アヴェニアスは満たされていた。
 より強く、より激しく。
 ネフェシェの事だけを想い続ける。
 こうなってしまった事で、ネフェシェへの想いはより強固なものへと昇華されていった。

 そう――身体を灼くこの痛みが、苦しみが、唯一無二のネフェシェからの寵愛。
 これが続く限り、永劫に愛され続ける事ができるのだから。

 『ボク、ハ、アイサレ――フ、フフ、アハハッ――』

 ――
 ――――

 辺り一面が炎の海と化したアギディスの地に、ソレは揺らめいていた。

 「なッ!? 剣が、熔けて……、へ? 手、燃え――ぎああああああッ!!」

 運悪くソレに遭遇してしまったルスラ軍は、必死の抵抗を試みるものの、ソレが纏う炎の壁の前に全てが意味をなさない。
 触れたものはたちどころに炎上し、燃えカスになるまで容赦なく燃えたぎる。
 人間などはひと溜まりもなかった。
 さりとて、炎に囲まれたこの地から逃げる方法もない。
 人間達は選ぶしかなかった。
 ソレと戦い、勇敢な死を遂げるか、神に命乞いしながら、塵芥になるのを見届けるかを――。

 塵と灰だけになったアギディスの地に、風に乗って何者かの声が虚しく響いた。

 「ネ――、――ェ、――」

 ソレが滅びぬ限り、この地に生命が芽吹く事はない。

 炎の魔人は愛を確かめるように。
 アギディスを彷徨い続ける。

 ――いつまでも、いつまでも。




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WORLD'S END
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無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE
NEW / SUN / LUMINOUS
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