『・』

Last-modified: 2023-07-07 (金) 10:25:18

境界。それ則、二つの間に存在する壁である。それは決まった形をしておらず、一方から見ると遥か高い壁に見えるのに対し、もう一方から見ると、ただ低い壁に見える時がある。
だが、その壁があるからこそ、境界は無くならない。
境界。それ則、二つの間に存在する壁であり、それ則、人と人との法則である。

 午前1時、暗い路地を何か異形の物が素早く通り抜ける
その異形はまるで何かから逃走しているかのように、逃げ続けている
路地から路地へ
時には壁を使い建物をよじ登る
何かから必死に逃げるソレは目の前にある十字路に足と思われる部分を踏み入れた
(パキーンッ)
何かが砕けた音がした
それと同時に十字路の角から線が伸び、それを囲む
あっという間に見えざる壁がそれを囲んだ
ソレは絶望を感じながらも壁に向かって突進する
(ズシーンッ)
何度も何度も壁に体当たりする
(ズシーンッ、ズシーンッ、ズシーンッ)
低く鈍い音が何度も響く
だが見えない壁に阻まれて何もできない そうしてる内に徐々に体力が無くなっていく
(バタッ)
ついに力尽き倒れてしまう
(カツーンッ、カツーンッ)
靴音が近づいてくる
気づいた時には、そこには一人の男が立っていた
片手に拳銃を持って
もう片方の手でポケットを探ると、携帯電話を取り出した
今では少し珍しい、折れるタイプの携帯電話だ
男が番号を打ち、電話をかけ始める
程なくして相手と繋がったようで男は話始めた
「...捕らえた。今目の前にいる。...分かった。報酬はいつものように」
男はそれだけ言うと携帯をしまい、倒れたソレに銃口を向けた
「任務完了だ」
そう言って男は引き金を引いた