草木一家言/サクラ

Last-modified: 2022-04-21 (木) 18:52:26

我々日本人が春の花と言われて真っ先に思い浮かぶのは、なんと行ってもサクラである。古くは「花は桜木人は武士」とも呼ばれたほどである。
日本の山野にはヤマザクラなど約10種類を基本にして、変品種をあわせると100種類ほどのサクラが野生しており、また、これらから生まれた200~300の園芸品種が知られている。食用のサクランボはカラミザクラ(唐実桜)やセイヨウミザクラ(西洋実桜)などの系統のもので、こちらは夏の草木の項で述べる。
以下は、観賞用に名高い桜の品種を掲載する。
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ヤマザクラ
本州の宮城県から西の日本各地にもっとも普通に自生し、赤茶色に染まった新葉とともに淡白紅色一重咲きの花が散房状になって咲く。各部に毛がなく、葉の裏面は白色を帯びる。ヤマザクラ系には八重咲きのコノハナザクラ(木花桜)やゴシンザクラ(御信桜)などがあり、一重咲きのワカキノザクラ(稚木桜)は二~三年生の幼木で開花する。同じく一重のフダンザクラ(不断桜)や、ヤマザクラとマメザクラ(豆桜)の雑種といわれるフユザクラ(冬桜)のように、花が初冬と春の2回咲く品種もある。
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オオヤマザクラ(大山桜)
中部地方以北の本州、北海道の山地に多く生え、四国の石鎚山脈にも自生する。一重咲きである。ヤマザクラより紅色の強い花をつけるのでベニヤマザクラ(紅山桜)といわれ、また北海道に多いのでエゾヤマザクラ(蝦夷山桜)ともいう。新潟県阿賀町の極楽寺にはノナカザクラ(野中桜)とよぶ、花が大きく紅色の美しい老木がある。
オオシマザクラ.gif
オオシマザクラ(大島桜)
伊豆七島に自生し、伊豆半島、房総半島のものは植林したものが野生化したものといわれている。薪炭用に植栽するのでタキギザクラ(薪桜)ともよばれる。白色一重咲きのやや大きい花が開葉と同時に咲き、香りがあり、葉の縁の鋸歯は先が芒状に長くとがる。成長が速く、八重咲きもあり、花は変異性に富む。
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エドヒガン(江戸彼岸)
本州、四国、九州の山地に自生し、各地に大木が残っている。アズマヒガン(東彼岸)、ウバヒガン(姥彼岸)ともいう。全体に毛が多く、開葉前にやや小形の一重咲きの花が咲き、萼筒は壺形である。枝の垂れるシダレザクラ(枝垂桜)は寺院などでよく植えられ、エドヒガンの品種で八重咲きのヤエベニシダレ(八重紅枝垂)がある。コヒガン(小彼岸)はヒガンザクラ(彼岸桜)ともいい、エドヒガンとマメザクラの雑種で、エドヒガンより葉が小さい。
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ソメイヨシノ
明治初年ころ、東京・染井(現在の豊島区巣鴨付近)から売り出されたサクラで、いまでは全国各地に広く植栽されている。オオシマザクラとエドヒガンの雑種で、若枝や葉、花に毛があり、開葉前にエドヒガンより大きい一重咲きの花が木を埋め尽くして美しく咲く。
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マメザクラ
富士山、箱根山に多いのでフジザクラ(富士桜)またはハコネザクラ(箱根桜)ともいい、全体に小形で、開葉前に一重咲きの花が咲く。フジキクザクラ(富士菊桜)はマメザクラの菊咲き品種で、花弁が360枚にもなり、雌しべが多数になった花もある。本州の中部地方以西にはキンキマメザクラ(近畿豆桜)が分布する。
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チョウジザクラ(丁子桜)
本州と九州の一部に自生し、春早くに一重で小形の花が咲く。花を横から見ると丁字(クローブ)に似ているためこの名称がある。
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ミヤマザクラ(深山桜)
北海道から九州にかけての深山に生え、花の柄のもとに小さい葉がついている。また別種のミネザクラ(峰桜)は本州の中部地方以北の高山と北海道に生える。ミネザクラはタカネザクラ(高嶺桜)ともいう。

ヤマザクラ、オオヤマザクラなどの材は良質のやや硬い散孔材で、辺材が黄褐色、心材が赤褐色で光沢があり、加工しやすく、ゆがみが少ないので、器具材、家具材、床柱や敷居などの建築材、小細工物、板木、薪炭など用途が広い。

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