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私は氷室 奏。別に普通の女の子だ。
「あ、もう7時だ。今日は友達と待ち合わせがあるんだよね。」私は、置いてあった鞄を手に取った。
お気に入りの道を通って、あの子に会いに行く。真面目なあの子は、やっぱり先に待っていたのだった。「お待たせっ!」
「奏おはよう。やっと来たね。」この子は、モモ。彼女は猫の妖精だ。人間の時の名前が桃葉 智咲。人間のフリをして暮らしている。そして、私の親友。モモは大人しい子で私とは違う性格だけど、私はそんなモモが大好きだ。
「あはは、待った?」「うーん、奏の割には早く来たんじゃない?」今思えば、こうして笑い合いながら歩くのも久しぶりのような気がする。今日は何故か控えめなモモからお誘いが来たのだ。「話したい事があるんだ」と。
「ね、カフェで話そっか。」
「私は妖精の中でも『キャッツ・テール』という種類の妖精で、今私は人間界で暮らしているというのはとっくに知ってるよね。。私が育った魔法界には、キャッツ・テールたちが暮らしている国、『フェデーシャ』があるんだけど、そこが今、ピンチらしいの。他の魔物の一族がそこを攻撃してきて、国の領土を奪おうとしているって。キャッツ・テールは、長い間戦ったことがなくて、このままだと領土が奪われちゃうかもしれない。。私の知り合いの妖精も、私に魔法界に戻ってきて欲しいと言ってるんだ。だから…その…魔法界に、かっ、奏にも魔法界についてきて欲しい!」「…えっ、えーーー!?」
「待って待って!え!」
そう言うとモモは本当に悲しそうな顔をした。
「やっぱり、無理だよね。」
「ああもう、そんなこと言わないでよ。私はただ、さ、準備しないと、いけないでs「いっ、いいのぉ!?」
今度はこれまでに見たことが無いほど目をキラキラ輝かせた。
「いいよ。モモ。モモが頼ってくれたこと、嬉しかったんだから。」
「ほほほ、本当!?」
どんどんモモの顔が嬉しそうになっていく。この子は真面目で大人しくて、控えめだけど、コロコロ表情が変わる。その変化が可愛いから…
あたしはこの子の幸せを守らなきゃいけない。
明日、モモが迎えに来るんだよね。魔物かぁ…ちょっとだけ怖いけどモモたちのためなら頑張れるよ。あの子の為なら…「よし!明日から頑張るぞーー!」私はそう叫んで,部屋に入った。
次の日…
「おはよう、奏」
約束通りモモはやってきた。その手には見慣れない箒が握られていた。
「おはよう、モモ。ね、その箒はなあに?もしかして…」
「そうだよ。これに乗っていくの。」
やっぱり!魔法の存在は知っていたけれど、本当に、本当に!
(箒で飛ぶんだぁっ~!!!)
これから始まる冒険が本格的なファンタジーであることが分かって、胸が高鳴るのを感じる!
「しっかり捕まっててね。この箒,飛んでいて、ある速度になったら異世界にワープする仕組みだからから。そう,人間界で言えば魔法界に,ね」ふぇ~,すごい。「え,そうなの!?やっぱり凄いね~」人間界とは大違いだよ,うん。(当たり前だけど。)「オーケー,ワープするよ」「うん!」そうして,私たちは光に包まれ、魔法界へとワープしたのだった。
無事にフェデーシャについた私達を出迎えてくれたのは、モモのこの世界での友達だった。
「モモ!無事だったんだね!安心したよ!本当に…本当にまた会えてよかった!」
「シャントリエリ!アンスリウム!スミレさん! ペドゥンクラリスちゃん!」
はしゃぐモモ達。弾けるような笑顔の中に私の居場所はないのかも。この子達はわたしの知らないこの世界のモモを知っているんだ…そう思っていた矢先、黒髪の子…もといシャントリエリちゃんは話しかけてきた。
「ねぇ、あなたがカナデちゃんでしょ!」
「何で知ってるの?」
「だって、モモがね…ふふ、モモがわたし達に連絡をくれるとき、いっつも自慢げに言うのよ。向こうの世界でできたカナデっていう友達が凄い~って。」
ちが、ちがうから、そのね…なんて顔を赤くするモモに、いっつも、いっつもよ!と繰り返すシャントリエリちゃん。こうして笑えるってことは魔物の脅威も大したことないのかも。
「な、シャントリエリ、他に言うことがあるんじゃないのか?」
「分かっています。スミレさん。」
シャントリエリちゃんは今までの様子をすっかり変えて、深刻そうに言う。
「ね、モモ。今すぐお母さんの所に行ってあげて。」
そうして私達は、モモのお母さんに会いに森を通る事になった。
私達は,モモのお母さんに会うために、少し薄暗い森の中を歩いていく。すると、知らない黄緑の髪の子が森の中で立ち止って泣いていた。「ねぇモモ,あの子知り合い?」「・・・ううん,知らない子だよ。それに,キャッツ・テールじゃないみたい。きっと私達とは違う種類の妖精かもね。」そう言い,私達は声をかける事にした。「あの、こんにちはー、どうしたんですか?」すると,その子は,ビックリしたように後ずさって、「あ・・・ごめんなさい・・・」と泣き顔で言った。「いや、違うの,怒ってるわけじゃないから。何で泣いてるの?大丈夫?」そう言うと、黄緑の髪の子はこう答えた。「・・・やっぱり,キャッツ・テールの方達は本当に優しいんですね。あの荒くれ者ギャスタリーの一族とは大違いです。」「え,ギャスタリー?」「あれ,ギャスタリーを知らないんですか?貴方たち,キャッツ・テールなのでしょう?」「ああ,私は人間なの…」「私は妖精だけど,あまり魔法界に帰ってなくて,分からないわ」「そうなんですね。ギャスタリーとは今,貴方達の国フェデーシャを攻撃している魔物たちですよ。」「「ええ!?そうなの!?」」「そうなんです。そして,その私も,ギャスタリーに生まれてしまった醜い魔物なんです。でも,私は貴方達の国を滅ぼそうとはしたくありません!私は一度、キャッツ・テールに助けられたことがありますから・・・!でも、その思考がバレてここに置き去りにされました。でも,よかったのかも知れません。私は、貴方達の力になりたいです!どうか,仲間にしてくれませんか!」私はモモと顔を見合わせた。「大歓迎よ!ありがとう!貴方はとても良い魔物だわ!魔物・・・魔物だけど一緒に闘うっていうことは全然アリだわ!ぜひ,一緒に頑張りましょう!」ふふっ,新しい仲間だ。やったー!「ところであなた,名前は?」「いや,実は名前、無いんです…」「え!?なら私達が決めてあげる!」ゴニョゴニョ。「あ,モモ,その名前いいね。それにしよ!」「そう?じゃあ・・・」「「あなたの名前は、《クレーデレ》!」」
もうそろそろで森を抜けるという所で…
「あ、ママ!」
「ああ!モモじゃない!?探していたのよ。無事で良かったわ。」
モモのお母さんは立っていた。
「ねぇママ、何かあったの?シャントリエリ達がやけに深刻そうな顔していたけれど。」
「それは争いの最中だからじゃないかしら。何にも、ない、のよ。」
「…嘘でしょ?」「ママ、シャントリエリがそれだけであんな顔するわけないもの。娘を侮らないでよね。ほら、ちゃんと話して。」
そう言ってモモは少し不機嫌そうに母親と実家に戻った…私達をおいて。お陰で、私はクレーデレと二人きりになった。
「綺麗な方でしたね。それにとっても素敵な服を着てました。」
うっとりするような声でクレーデレは言う。
「そうだね。もしかしてさ、クレーデレは服に興味があるの?」
「そうなんです。何で分かったんですか?」
「えーと、そのうっとりしたような声、かな。」
私がそう言うと、クレーデレは一呼吸置いて。
「私は将来、服を作る人になりたいのです。今は国から辛うじて供給された粗末な服を、何度も何度も繰り返し縫って着ていますが、もし自分で綺麗な、皆に夢と希望を与えられるような服を作れたのなら、とてもいいな、と思うのです。」
私が初めて煌びやかな攻撃用魔法の発動音を、そして、心臓が潰れる音を聞いたのは…つまり、仲間の、クレーデレの死を確認したのは、その時だった。
ドサッ、、、私の横でゆっくりとクレーデレが倒れた。「え?」私が前を見ると、そこには見知らぬ人が三人立っていた。「ボス、許すまじギャスタリーを撃ちました」「…ご苦労、帰って来い」…え…?許すまじギャスタリー?クレーデレのこと?この人達はキャッツ・テール?さっき仲間になるって言っていたのに殺すなんて酷い…私は呆然としながらその場を動くことができなかった。「ギャスタリーの近くに人間が居ますがこれも撃ちますか?」「いや、所詮人間。森に居るのだから後は迷って飢え死にするだけだろう。」「「「分かりました、すぐに帰ります!」」」そうして魔物たちは瞬く間に去っていくのであった。「クッ!クレーデレ‼︎ねぇ!生きてるよね⁉︎しっかりして‼︎」「ア…カ、ナデ…アリ、ガ…」クレーデレはそう言って、もう、何もかも動かなくなった。「ヴヴッ…クレーデレェ…」「奏⁉︎どうしたの⁉︎」その時、モモが慌ててやって来た。そして、モモはクレーデレを見て、倒れ込んだ。「嘘…。」「本当にごめんなさい、モモ…私のせいなの…」「ううん、奏のせいじゃない…2人だけにしてごめん……」
・・・私達は何も分かっていなかったんだ。この世のは残酷だということも,幸せは直ぐに砕け散ってしまう物だということも…
「悲しい事だけれど、仕方がないのよ。これは、争いなのだから。」
私達はモモの母親に連れられて、ゆっくりと歩いていく。
「…仕方がない事なの。」「私たちには、どうしようもできないわ。」
そんな言葉が繰り返される。
「でも、どうしてこんな事になってしまったの?」
やっと声になったのは、その一言だった。
少しの空白の時間の後、モモは言う。
「私たちには、なんの理由も伝えられてないの。国が勝手にやってる事だもん。一般国民に与えられるのは、軍事的使命だけなんだって。そう言ってたわよね、ママ。」
「ええ、そうよ。この争いの理由を知っているのは王室と、軍の上級兵士たちだけ。」
「軍の上級兵士?あの人達みたいな?」
「ええ、そうよ。それこそ、あの白髪のキャッツ・テールみたいに…自分の耳や尻尾の一つ二つより、国の勝利のため、忠実に戦う兵士達。」
どんよりと薄暗い森を抜けると、そこには街があった。「ここはフェデーシャの一番内側の街よ。ここは森に囲まれて襲撃されにくいの。戦闘に参加する妖精たちはここで武器を作って貰うのよ。」「へぇ、そうなんですか」武器なんて聞くと、戦いがもっと身近に思えるようになってきちゃったよ。「あ、一般妖精が戦うのはダメだと言われているからちゃんとあの黒い屋根の建物で妖精兵登録してね。奏ちゃんは人間だから、その前に戦いの許可を貰わないと。」「そうなんですね、分かりました。でも何で、一般の妖精が戦うのはダメなのですか?」「うーん、詳しくはわからないけれど、登録していない妖精が戦って死んでも、気づいて貰えないからかしら。兵士が死んだら、その情報は他の兵士に渡ってすぐにそこにたどり着くことが出来る、と聞いたことがあるわ。」「さぁ、2人とも、登録を済まして武器を注文しましょう。」
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Tag: リレー小説
アンデッドとして復活とかどうですの?-- 雑魚? 2021-05-28 (金) 01:17:53