AAR/竜の時代/1

Last-modified: 2020-10-03 (土) 04:49:21

ブリテン島におけるアングロサクソン人の登場はおよそ5世紀頃のことだったと伝えられています。
伝承では、西サクソンのチェルディッチ、南サクソンのエール、そしてジュート人のヘンギストなどが登場し、ブリテン島を征服しようとブリトン人たちと覇権をあらそいます。

ss1.jpg
(西サクソンのチェルディッチ。)

ss2.jpg
(南サクソンのエール。)

ss3.jpg
(ジュート人のヘンギスト。)

しかし彼らアングロサクソン人はブリテン人とのあらそいで膠着状態におちいり、数世紀にわたってブリテン島全域を征服することはできませんでした。
スコットランドのピクト人、ウェールズやコーンウォールのブリトン人らは果敢に抵抗をつづけ、アングロサクソン人の進撃を停滞させます。
そうこうしているあいだにブリテン島にはカトリックのキリスト教が普及し、アングロサクソン人は7つの王国と無数の小国に乱立して群雄割拠の時代をむかえます。これがヘプターキー(ラテン語で7をあらわす「ヘプタ」と国をあらわす「アーキ―」を足した後世の歴史家の造語。)の時代です。

ヘプターキーを指す王国は、つぎの7つのPetty Kingdomです。
・ノーサンブリア王国
・マーシア王国
・イースト・アングリア王国
・エセックス王国
・ウェセックス王国
・ケント王国
・ウィッチェ王国*1

ss4.jpg

このうち初期の時代に優勢だったのがノーサンブリアとマーシアの小王国です。
ノーサンブリアとマーシアにはしばしば強権をもった小王が出現し、覇者として君臨しました。
のちイングランドを統一することになるウェセックスははじめ、イングランド南西部の小国でしたが、7世紀のキャドワラ王になってから台頭がはじまり、8世紀のキュネウルフの時代に基礎が築かれ、つぎのベオトリクの時代に飛躍を遂げました。

詳しく見ていきましょう。

ss5.jpg
(シャルルマーニュの戴冠。)

シャルルマーニュが戴冠した8世紀中葉から後半にかけて、ヘプターキーの時代を主導したのはマーシア王のオファ(在757年-794年)でした。
同じ時代のウェセックス王キュネウルフは、息子のベオトリクをオファの長女と結婚させ、(半ば臣従するようになかたちで)同盟を締結して安全保障を確保します。

このマーシア王オファ(オファ1世)は当時最強のアングロサクソン人の王でした。
彼はエセックス王国、ケント王国、ウィッチェ王国にマーシアの宗主権を認めさせ、イースト・アングリア王国では同国の小王の首を刎ねてこれを服属させました。また前述のようにウェセックス王国とは娘を嫁がせて軍事同盟を結び、北方のもう一方の雄、ノーサンブリア王国と対立しました。

ss6.jpg
(マーシア王オファ1世。)

しかし狡猾だったのはウェセックス王でした。
ウェセックス王キュネウルフは安全保障を確保すると、ウェセックスの首府であるハンプシャーの集落に城壁、狩猟場、集会所、そして貿易港をもうけ、軍備と蓄財に励みます。
キュネウルフが783年に没すると、あとを継いだ息子のベオトリク(前述のように、彼の妻はマーシア王オファの娘でした。)は父の遺産とマーシア王の権威をつかって軍事拡張にのりだします。

ベオトリクの遠征はつぎのとおりでした。
・787年、グロウセスター伯への遠征。これによってウィッチェ王国は滅びる。
・791年、デヴォン伯への遠征。ブリトン人のコーンウォール公とのたたかいで、彼らを退ける。
・797年、サリー伯への遠征。サリー伯領ははじめ独立伯だったが、エセックスやマーシアの草刈り場になっていました。ベオトリクの遠征時点でのサリー伯の所有者はマーシア王国で、この年、オファ王が没したことをうけてウェセックスとマーシアとの同盟が解消され、ウェセックスとマーシアがオファ王死去後はじめて対立した事件でした。

この797年という年代はウェセックスとマーシアにとって非常に重要な年代です。

主の794年、偉大なマーシア王であったオファが没しました。
後継者となったのがオファの息子であるエグフリスでしたが、このエグフリスは妹婿であるウェセックス王ベオトリクと折り合いが悪かったのです。
ベオトリクはエグフリスを、「ウェセックスが請求権をつけていたサリー伯領を勝手にとった」と非難すれば、
エグフリスはベオトリクを、「マーシアの庇護をいいことに周辺諸国に軍事侵略を続ける無法者」と罵る、といった具合です。

二人の対立はオファ王の死後数年もしないうちに、ベオトリクのサリー伯領遠征というかたちで噴出しました。

ss7.jpg
(ハンプシャーのたたかい。)

ウェセックス王ベオトリクは、マーシアの保護国だった諸国を糾合してマーシアに決戦を挑み、そして勝利します。
マーシア王エグフリスはこのたたかいで負傷し、惨めに戦傷死してしまいました。エグフリスの後継者となったのが、彼の妹でありベオトリクの妻であったエアドブルフです。

ss8.jpg
(ウェセックス王ベオトリク。)

ss9.jpg
(マーシア女王エアドブルフ。)

要するにここにひとつのパワーカップルが生まれました。
夫は、ウェセックス王ベオトリク。妻は、マーシア女王のエアドブルフ。
二人のあいだには子どもがいました。その子どもは当然、ウェセックスとマーシアのふたつの王国を継ぐのです。子どもの名前は偉大な祖父にあやかってオファと名付けられていました。


*1 ほんとうはサセックス王国であるが、CK3ではサセックスは伯領であってウィッチェが公領である。