モト子せんせいの場合

Last-modified: 2008-09-23 (火) 10:38:20

モト子せんせいの場合/さべあのま

463 名前:モト子せんせいの場合 1[sage] 投稿日:2007/09/26(水) 01:41:28 ID:???

樹山モト子、23歳、少女漫画家。
ラブコメを描いてはいるが、本人は恋愛にとんと縁がない。
「自分にはマンガがあるから、男なんていらない」と強がっているので、
友達にはすっかり偏屈な男嫌いだと思われているが、
彼女には恋愛に対して積極的になれない理由があった。


短大時代、奥手なモト子を心配した友達に誘われて行った合コンで、
モト子は勧められるまま酒を飲んで酔っぱらい、
同じ方向の男子学生に送ってもらうことに…
翌朝、モト子は知らないアパートの一室で目が覚めた。
襟元のゆるめられたブラウス、隣には胸元のはだけたパジャマ姿の男。
男に声をかけられ、動転したモト子はその場で逃げ帰ってしまう。
「もしかしたら、私は酔った勢いで行きずりの男と初体験してしまったのでは…」
これまで男性とつき合ったことのない彼女にとって、それはあまりにショックな出来事だった。
誰にも相談出来ないまま、普段は思い出さないように、記憶の底に押し込めているのであった。


秋。
モト子の担当編集者が替わることになった。
新しい担当の高寺はまだ若く、ルックスも悪くない。
しかしどこかで見たような顔…そう、あの時の男にそっくりだった。
ある日、買い物帰りの電車の中で、モト子は高寺に偶然出会う。
同じ沿線に住んでいるという彼と話をするうちに、あの時の男が高寺ではないかという疑いが強くなっていくモト子。
高寺は学生時代、モト子の通う短大との合コンをやったことがあり、そのときに人に言えない思い出があるという。
その思い出話をする前に高寺の降りる駅が来てしまうが、モト子は確信していた。
「間違いない…あのヒトやっぱりあのときの男だわ!」




464 名前:モト子せんせいの場合 2[sage] 投稿日:2007/09/26(水) 01:47:34 ID:???

自分の処女を奪った(かもしれない)男と仕事をすることになったモト子はすっかり情緒不安定。
そんなある日、彼女は友人のみえ子と喧嘩をしてしまう。
「精神が解放されてないからギスギスするのよ! 
あんた自分の殻に閉じこもって、世界が小さくなるばかりじゃない!」
みえ子の言葉にショックを受けたモト子は、これまでの自分から一歩踏み出すために、
親に勧められていた見合い話を受ける決心をする。


冬。
出版社の忘年会に行ったモト子だったが、高寺が他の女性漫画家と親しげに話し込んでいるのをて
イライラした彼女はつい飲み過ぎてしまい、高寺にタクシーで送ってもらうことになる。
あのときと同じシチュエーション…
しかし高寺はモト子を家まで送り届けると、そのまま帰っていってしまった。
何故か自分が涙ぐんでいるのに気づき、とまどうモト子。


春。
見合いした相手はお堅い銀行員。悪い人ではないがどうもピンと来ない。
実家に断りの電話を入れたモト子だったが、既に向こうから断りの連絡が入っていた。
すっかり腹を立てているモト子のところに、みえ子が仲直りにやって来た。
モト子はみえ子に見合いを断られたことを告白し、
みえ子が持ってきたあんみつを2人で食べるのであった。


465 名前:モト子せんせいの場合 3[sage] 投稿日:2007/09/26(水) 01:50:49 ID:???

5月。
締め切り前の夜、高寺が原稿を取りにモト子のアパートに来ることになった。
しかし、アシスタントが急用で来られなくなってしまい、
急遽モト子は高寺に原稿を手伝ってもらうことになる。
夜中、つけていた深夜ラジオから、酔った勢いで見知らぬ相手と一夜を共にしてしまった
女性リスナーの体験談が読まれるのを聞いて、
高寺は「自分も昔似た経験がある」と語り始める。


大学時代、友達の入っていたサークルの合コンに呼ばれ、
酔った女の子をタクシーで送っていったこと。
ところが彼女は泥酔していて寝込んでしまい、
名前や住所もわからず、やむなく自分のアパートに泊めたこと。
その子があまりにも無邪気な顔で眠っているので、手を出そうにも出せず…
そうでなくてもそこまで度胸の無かった彼は、朝まで一睡もできずにいたこと。
翌朝、目覚めた彼女は慌てて飛び出して行ってしまい、誤解を解く間も無かったこと。


「…もし、その人に会えたらどうします?」
モト子の問いに、「会って誤解をときたい、変に悩んでいたらかわいそうだし」と答える高寺。
「きっと…誤解はとけてると思います…。その女の子、たぶん私だから…」
モト子は高寺に、そのときの相手は自分だと告白する。
お互いに長年の誤解が解けて、当時の思い出話をする二人。
あのとき、高寺の着ていたパジャマの胸がはだけていたのは、単にボタンが取れていただけだった。


「そういえばあのとき部屋に眼鏡を忘れて行ったはずだから、今度探してお返ししますよ」
翌朝、高寺はそう言い残して編集部に戻っていった。
眼鏡を返してもらったら、それで一件落着して、
もとの漫画家と編集者に戻ってしまうのだろうか。
ふと切なさを覚えたモト子は、いつの間にか自分が高寺を好きになっていることに気づく。


466 名前:モト子せんせいの場合 4[sage] 投稿日:2007/09/26(水) 01:55:49 ID:???

思い切って高寺に自分からアプローチしてみようか。
そう悩んでいた矢先、モト子は高寺から映画に誘われる。
彼とのデートは楽しかったが、彼は急な異動でモト子の担当を外れることが決まっていた。
「でも、これもいい機会だと思って…」
高寺の独り言に、寂しさで気が抜けてしまうモト子。
そのまま後任の編集者に仕事を引き継ぎ、彼は去っていった。
自分の気持ちに区切りをつけられないまま、モト子の24歳の夏が過ぎていく…。


秋。
仕事に追われながらも、モト子は高寺を忘れられないままでいた。
ある夜、急な停電にろうそくを探して慌てているモト子のところに、突然電話がかかってきた。
電話は高寺からで、ずっと返せないままだったモト子の眼鏡を返しに行きたいという。
待ち合わせの約束をして電話を切った後、
その日は友人みえ子の結婚式があったことに気づく。
意を決して返しに行きます、と言った高寺とは振り袖姿で会うことになるが…
まあそれでもいいか、と思い直し、モト子はこの機会に高寺に思いを打ち明ける決心をする。


みえ子の結婚式も無事に終わり、モト子は高寺との待ち合わせ場所へ急ぐ。
普段と違い、眼鏡をかけてない彼女の顔を見た高寺は、
「いやあ、まちがいなくあのときと同じですねー メガネかけてない…顔…」
「もう一回 寝顔見せてくれますか?」
高寺の言葉にはっとするモト子。
「…というよーな話をしたいと言ったら、聞いてもらえますか?」
前からメガネを返すときには言おうと思っていた、この2ヶ月間考え続けていたけど、やっぱり因縁かなあ、とモト子に告げる高寺。
もしかして、この人は私のことを… モト子も思い切って高寺に向かって言葉を紡ぎ出す。
「あの、でも! …私、ひとりじゃ着物着られないんですよね」
モト子の言葉に笑い出す高寺。
「わりといいますねー」
「そっ そっちこそ!」
2人は笑い合い、夕暮れの街を歩き出して行く…。




467 名前:モト子せんせいの場合[sage] 投稿日:2007/09/26(水) 02:04:09 ID:???

この話、連載されたのが80年だから
23歳でも結婚を焦ったり見合い話が来るようなエピソードが出て来るんですよね…。