国民クイズ

Last-modified: 2008-11-12 (水) 10:18:01

国民クイズ/原作:杉元 伶一 漫画:加藤 伸吉

786 :国民クイズ :04/02/15 03:46 ID:???
(少し複雑なので時系列で書きます)
ある日、一人の赤ん坊が産まれた。その名も獄間沢幸之助。
この赤ん坊、不思議な事に2歳ですでに大人も苦戦するような難問のクイズをいとも簡単に解いてしまう。
そして時は流れ、近未来。
完全失業率は8割を超え、深刻な食料不足が社会問題となる中、和菓子屋を継いだ獄間沢は商売する傍ら、
クイズ番組荒らしとして名を馳せていく。
そんなある日、獄間沢が店であんこをこねているとふしぎな事にあんこがみるみる大黒様の形の変貌していく。
次の瞬間、大黒様から獄間沢の頭に天からの啓示が降り注ぐ。「クイズによって人々を救え」
天からの啓示に衝撃を受けた獄間沢は政府のPRクイズ番組「当ててみろコノヤロー」に出場する。
この番組は優勝者の望む物を与えると言う少々特殊な番組だった。
そして獄間沢が望んだ物はなんと「自分にTVで3分間しゃべる時間が欲しい」という奇妙な物だった。
いとも簡単に全問正解し、優勝する獄間沢。
そして獄間沢がただ自分の思想を語る不思議なそのコーナーは「大黒通信」と名付けられた。
そして大黒様から教えられた思想を語る獄間沢。それはあまりに奇妙で斬新な思想だった。
(それは後に国民クイズ主義と呼ばれるようになる)
「大黒通信」は人々の心をつかみ、あらゆるメディア、あらゆる場所で獄間沢は人気者となり、
次第に信奉者も増えていった。
そして「大黒通信」が3周年を迎えたある日、いつものように当たり前に優勝し、高らかに宣言した。
「現内閣の総辞職、および国会の解散。ここに国民クイズ体制の樹立を宣言します」
政府が対応しようとした時には既に時遅く、獄間沢の宣言を合図に3万人の信奉者が国会になだれ込み、
もろくも民主主義は崩れ去った。
そして完全に旧体制がほろび、獄間沢を首相とする臨時内閣が発足。
獄間沢は何を焦っているのか、猛烈な勢いで国民クイズの草案を仕上げていく。
そして獄間沢の首相就任パレードの最中、一発の銃弾が彼の頭を貫いた。



791 :国民クイズ その2 :04/02/15 11:36 ID:???
獄間沢が凶弾に倒れてから時は流れ、日本はすっかり国民クイズの国になっていた。
国民クイズ制とは社会の基本は民主主義と変わらないが、大きく違うのは「国民クイズ」があるという事。
「国民クイズ」はもし目標点数に達する事ができればなんでも望みが叶うという夢のようなクイズ。
(当然、望みにより目標点数は高くなる)
文字どおり「なんでも」である。
例えば、一億円欲しい、というような望みから隣の奥さんを殺してほしいというような望みも
はたまたアメリカの自由の女神像が熱海に欲しい、アメリカ人むかつくからアメリカに総攻撃して、
というような望みも優勝者の望みなら国を挙げて総力で取りかかる。
優先順位は人権=法律<<<<国民クイズ。つまり国民クイズは国の最終決定機関でもある。
ただし、当然国民クイズで目標点数に達せなかった場合、それなりのリスクが存在する。
予選を勝ち上がり、決勝問題に勝ちあがった人間はもし目標点数に達していなかった場合、
目標点数と自分との得点差により、「反社会的な望みを抱いた」としてアラスカでの強制就労が待っている。
それでも「欲」を抱いた日本国民は「国民クイズ」により戦前の熱を取り戻し、ついに世界のTOPへと登り詰めた。
そんな中、元俳優で囚人であり、国民クイズのカリスマ的司会者でもある、K井K一を中心にあらゆる思惑が交差していく事になる。



808 :国民クイズ3 :04/02/15 21:49 ID:???
人物紹介

K井K一……売れない俳優だったが奥さんと一人娘を残し、国民クイズに参加。
惜しくも決勝クイズで敗退し、B級戦犯として国家の無償奉仕労働を命じられる。
(K井が国民クイズに出場した理由は不明。娘には「アカデミー賞が欲しかった」とわざわざ嘘をつくなど、
どうやら彼の家族に関係している様子。)
懲罰庁からの人選で奇しくも国民クイズの司会者に選ばれてしまうが、
今では異常なまでのハイテンションと巧みな演出で国民支持率98%を誇る人気司会者。
自身を「国民のおもちゃ」と自負し、放送時間が過ぎれば刑務所に戻され、
再び寝袋のような拘束具で全身を拘束される日々を送っている。
麻里子 ……K井の娘。家族を捨てた?父を恨みつつも、日々、ブラウン管越しに映る父への思いを募らせている。
憂木響子……佐渡島共和国の工作員。
弱小民主主義学生運動集団「本格派」らと共にK井を使った国民クイズ制の転覆作戦を企てる。
製作部長……国民クイズ省の影の支配者。
相当のキレもので、現在も自らの出世の為、人気司会者であるK井を最大限利用しようとしている。
徳田順一郎…日本に残る唯一の民主主義国家「佐渡島共和国」の首相。国民クイズ制に不満を持ち、国民クイズに参加。
目標得点に達し、民主主義国家「佐渡島共和国」を設立。諸外国からの援助でなんとか国としての形状を保っている。



809 :国民クイズ3 :04/02/15 22:38 ID:K+XdAVgb
いつものように一人で寂しそうに「国民クイズ」を見る麻里子を見かねた母が麻里子に
「娘のあなたはK井に面会する事ができる」と助言をするも里子は突然の提案に即答できず、
「いまさら会ってもしょうがない」と、この提案を一蹴する。
一方。その頃、K井のあまりにも過激な演出に腹を立てた弱小民主主義運動集団「本格派」(構成員は3名のみ)がK井K一爆殺計画を画策。
実行に移すがK井は運良くギリギリのところで逃げ切り、爆殺計画は失敗に終わった。
全国に指名手配され、追いつめられた本格派。
佐渡島共和国への亡命に最後の希望を託し、空港に向かう途中、3人の前に佐渡島共和国の工作員、憂木響子が現れる。
一方、爆殺計画から逃れたとは言え、軽傷を負い、自らのやっている事に疑問を持ちはじめたK井の元に娘の麻里子が面会に訪れる。
しかし、製作部長は現在のK井の精神状態を考慮し、K井にとってプラスにはならないと判断。
麻里子をそのままK井に会わす事なく家に帰してしまう。
このまま何事もなく終わるかに思われたが、偶然、通路でK井が自分の元に娘が会いにきた事を役人の立ち話で知ってしまう。
K井は思わず一目娘会いたさに、老人に変装し、クイズ省を脱走。
しかし、既に面会所には娘の姿はなく、途方に暮れ、町で酒に溺れる。
K井脱走の報に狼狽する製作部長。急きょ各地にK井包囲網が敷かれる事になった。



818 :国民クイズ4 :04/02/16 23:21 ID:???
K井が居酒屋で酒に溺れているとTVに製作部長の姿が。どうやらクイズ省の記者会見らしい。
内容は「K井K一が風邪で寝込んでしまったので大事を取らせて本日は休ませた。
明日には無事復帰する」という訳の分からない内容だった。
どうやら製作部長たちはK井K一を逃亡させた事が責任問題に発展する事を恐れ、今回の隠ぺい工作に走ったようである。
しかし、明日までにK井K一が見つからなければK井に逃げられた事が世間にばれてしまう。タイムリミットはあと24時間。
しかし、K井が見つかる事なく夜が明け、翌日。
学校で授業を受ける麻里子の元にクイズ省の人間を名乗る4人組が現れ、麻里子を連れ去ってしまう。
そして車内。麻里子は4人がクイズ省の人間でない事を看破する。
4人組は先日、K井を襲撃した「本格派」の3人と佐渡島工作員・憂木響子だった。
正体を見抜かれた事に動じる様子もなく、憂木響子は麻里子に自分達はK井の味方である事と、
もしこのままクイズ省の人間にK井が捕まればタダですまない事を教える。
父の身の安全のため、渋々、憂木響子に協力する麻里子。
K井の行きそうな所を尋ねられ、昔、K井が演技の練習をしていた公園を教える。



820 :国民クイズ4 :04/02/16 23:28 ID:???
深く霧のかかる公園。麻里子の言う通り、そこにK井がいた。久々の親子の再会に無言で抱き合うK井と麻里子。
感動の再会も程々に、憂木響子がK井に本題を持ちかける。「国民クイズ体制打倒計画」。
しかしそれにはK井の司会者復帰がなにより重要だった。
「支持率98%のあなたを処分するはずがない。
もしこれが上手く行けば自由も家族との生活も全て取り戻せる。」と持ちかける憂木響子に、
「こんな大それた計画が上手くいくはずがない」と一蹴するK井。だが、冷静にK井に銃口を突きつける憂木響子。
「もし断るならこの計画もあなたと一緒に闇に葬る。
また一から計画を練り直していつの日か必ず日本を国民クイズから解放してみせる。」
しばし考え込むK井。「返事は、番組内で合図を送る。」
そして今日のの国民クイズ本番20分前。タイムリミットに慌てふためくクイズ省にK井が出頭。
全員K井に怒りを爆発させるも仕方なくいつものように番組が始まる。
いつも以上のハイテンションで司会をこなしていくK井。
そんなK井を冷ややかに見つめる製作部長。後ろでは着々と拷問の用意が行われている。
そしてエンディング。大声で宣言するK井。
「あなたが欲しいのは金か権力か、はたまた新しい正義と秩序の確立か。
私、K井K一がそんなあなたの『大それた計画』に協力させていただきます!」



832 :国民クイズ5 :04/02/17 11:52 ID:???
番組が終了し、執拗なまでに拷問を受けるK井。
どうやら何者かが麻里子を学校から連れ去った、という情報が気にかかるらしく
今回のK井の脱走と深い関係があるのではないかと疑っているよう。しかし、知らぬ存ぜぬを通すK井。
何もしゃべらぬK井に今回は本選局の一部の人間しか知らない事、そして今後のK井の利用価値からして、
製作部長は仕方なくこの場は不問に処す事にした。
それどころか刑務所内での大幅な環境の改善が約束され、一般人以上の暮らしが約束された。
(拘束具なし、ベッド、TVあり、豪華な食事 etc)
ただし、製作部長に二度と我々を裏切るな、と釘を刺される。
結果としては全て憂気響子の読み通りになり、無事、K井は司会に復帰する事になった。
そして一方。民家を訪れた憂木響子。老人が「昨日これが届きました」と、一通のはがきを差し出す。
「国民クイズ」本戦出場のハガキ。
「おめでとうございます。あなたが特攻回答者第一号です。ではこれをお願いします。武運長久お祈りいたします。」
憂木響子は老人に奇妙な装飾のライターを渡す。
「国民クイズ体制打倒計画」これには逐一、K井と連絡を取る必要性があるのだが、毎日面会に訪れては怪しまれてしまう。
そこで、このライター(中には通信機)をどうにかしてK井の刑務所に持ち込むために、
今回国民クイズに息子を殺されたこの老人に白羽の矢が立った。
老人は本戦に出場し、K井と握手をする振りをして握っていたライターを渡す。これで全ての準備が整った。
刑務所に帰り、通信機を取り付けるK井。「で、次の計画はいつ実行するんだい?」

つづく



843 :国民クイズ6 :04/02/17 22:57 ID:???
その頃、北京・紫禁城。世界各国の首脳が集まり、秘密裏に対国民クイズサミットが行われていた。
佐渡島共和国首相・徳田順一郎が今回の「国民クイズ体制打倒計画」について各国に協力を求める為である。
世界の核の八割を所有する日本と敵対する事を恐れる各国首脳。
ほとんどの国は兵器を借金代わりに日本に取られていていまいち歯切れが悪い。
だが、徳田順一郎の「失敗した際の責任は全て佐渡島が取る」の一言で一同承諾する。
そして佐渡島共和国。ついに計画の一部が動き出す。「国民クイズ体制打倒計画」
「国民クイズ」の問題は南硫黄島の巨大有機コンピューター「シゲオ」によって作成されている
(世界各国から拉致、洗脳された天才達との四方山話を元に問題を作成する。)
ただし、南硫黄島は天然の要塞。船で近付こうにも岩礁が多く、乗り付ける事も不可能。
飛行機で行けば迎撃されてしまうだろう。
そこで南硫黄島から日本へのびる回線ケーブルから解答を盗む事になったが、そのケーブルは水深一万mの水圧で守られていた。
未だ人類未踏の地、水深一万m。
この事態に急きょフランスから一人の天才潜水艦技師と彼が設計した最新の潜水艦が招聘される。
「いまだ実験では6000mまでしか潜っていないが俺の設計した潜水艦なら一万m潜る事も可能だ。」と豪語する潜水艦技師。
「必ず成功するさ。俺はハッピーエンドの天才だぜ、大佐。」

つづく



851 :国民クイズ7 :04/02/18 21:32 ID:???
佐渡島国防軍隊員を乗せたフランス最新潜水艦が潜行を開始して3時間。
ついに無事一万mにたどり着いた工作員たちの目に信じられない光景が広がる。
そこは見渡す限りの泥。潜水艦技師の話によると不幸な事にケーブルはタービダイト
(海底火山の灰が蓄積したもの)に埋まってしまったらしい。
超音波ソナー、スクリューで泥を全て吹き飛ばす。色んな案が出たが一向に解決策が見当たらない。
しかし、そんな事をしている間にも水圧が潜水艦をきしませていく。
そんな中、先ほどから寒さで体調不良を訴え寝込んでいた隊員の一人がケーブルを見たと叫ぶ。
幻かに思われたがモニターを確認すると確かにそこにはケーブルが。
海洋プレートが引きずる込んだ海水が圧力で吹き出し、ちょうどケーブルの部分の泥を吹き飛ばしてくれたらしい。
突然の幸運に沸き上がる艦内。ケーブルに盗聴アンテナをしかけると次々に国民クイズの問題の解答が。
「言ったろ?俺と一緒にいれば必ずハッピーエンドになるって!」

そして数日後。疑われぬよう意欲的に国民クイズのために各地で運動を行うK井。
そんな中、憂木響子から通信が入り、計画の全貌を明らかにする。
「国民クイズ体制打倒計画」それは国民クイズの信頼を失墜させる為、盗み出した解答で
佐渡島工作員の特攻解答者にわざと「カンニング丸出しの大失態」を演じさせる。
つまり一分のスキもなく行われているはずの「国民クイズ」で不正が行われている、
という情報を国民に浸透させる計画だった。
(ここで「国民クイズの答えが分かるなら優勝して「国民クイズをやめろ」って言えばいいんじゃないの?」と
思われた方もいると思うが、 それでは例え一時、民主主義が復活してもすぐに革命が起き、
クイズ体制に戻ってしまう恐れがある。革命には国民の意志も必要なのだ。)
そして、その解答を特攻解答者に送信するまでに起きる5分間という長い時間を最も番組としても
盛り上がる決勝クイズの中、どうにか時間を稼ぐのがK井の役目だった。
番組内でカンニングをした特攻解答者は確実に生きては帰れない。人の命のかかった失敗の許されない計画。
たとえ無理だとしてももうやるしかないのだ。
そして、翌日、特攻解答者の出場する国民クイズが始まる。



857 :国民クイズ8 :04/02/18 23:12 ID:???
佐渡島共和国の思惑通り、順調に特攻解答者は決勝クイズに勝ち残る。そして、運命の決勝クイズ。
特攻解答者は手はず通り、問題を言い終わる前に「チャウチャウ」「豊胸手術」と一問ずらしに正解を言い、間違えていく。
ようやくクイズ省は特攻解答者がなぜか今回の解答を知っている事に気付き、急いでK井に「CMに入れ」と指示を出す。
一方、佐渡島共和国も第4問目の解答の解析に手間取り、「時間を稼いでくれ」と指示を出す。ところが。
「第三問!」 K井は両者の指示を無視し、次の問題に移ろうとする。かに思えたが、くるりと視線を観客席に移す。
「の前に、みなさん、そこで見ているだけで本当に満足ですか?
私は常々思っていたんです。本当はここで自ら革命に参加したんじゃないか、と。
 どーですかみなさん!努力して勝ち取るのが革命なら、「時」の魔力によって突然成し遂げられるのも革命なのです!
 「時」は巡ってきた!今日は特別処置のラッキーデイだ。第3問 江東区のOLの豚田牛江さんが………
 ここまでで正解できた方には願いを何なりと叶えて差し上げましょう!今、僕に魔が差しています!!」



858 :国民クイズ9 :04/02/18 23:13 ID:???
一瞬にして混乱するスタジオ。自らの欲の為、思い思いの答えを叫ぶ人々。このまま収束がつかないかに思えたが、
ようやく4問目の解答が特攻解答者の元に送られる。大声で「12羽」と次の問題の正解を叫ぶ特攻解答者。
当然、はずれのブザーが鳴り響く。その場にいる全員が特攻解答者に怒りをぶちまけるが、
その中の一人が特攻解答者が正解を言っている事に気付き、場内が騒然となる。
この突然の事態にやむを得ず、国民クイズ省は今日の放送を打ち切る。
それならば、とK井は「自分について来た者に第5問を出題します」と、そこにいる全員を国民クイズ省へ誘導する。
クイズ省の前にできた人の群れ。皆、口を揃え「12羽」と叫ぶ。そしてそれをさらにK井が煽り立てる。
その様子はいままで虐げられてきた民放の手により、全国に放送され、その映像は世界に飛び火した。
そしてK井は「残念ながら放送時間が終了いたしました!この場で正解なされた方には後で
無条件出場カードを配らせていただきます。」とクイズ省の中へ消え、
一旦その場の騒動には幕を閉じた。あまりの事態に呆然とするクイズ省の役人。
それを我関せずと言った様子でK井は言う。
「ふう、誰かタバコくれる?」

つづく



873 :国民クイズ10 :04/02/19 16:30 ID:???
不正疑惑騒動が起きた夜。急きょ、国民クイズ省の各局長クラスが集まり、緊急会議が行われた。
しかし、良い考えが浮かぶはずもなく、国民クイズ省としては今回の事件を「偶然、解答者の答えと解答と一致した」という苦しい公式発表となった。
その頃、都内某所のマンションで憂木響子が佐渡島共和国大佐であり、自分の姉でもある憂木大佐へ今回の計画の報告をしていた。
憂木響子の隣には特攻解答者の姿が。K井のアドリブのおかげでスタジオを抜け出す事ができ、
無事生きて帰って来れたのだと言う。
予想以上の成果に嬉々とする憂木響子。
しかし、「我々には予想以上の成果などいらない」と逆に憂木響子を叱責する大佐。
しかし、憂木響子はそんな姉を笑い飛ばす。「ステージに上がれば誰の首輪も受け付けない。それがK井K一よ。」
憂木響子の言葉に激昂し、K井の能力の高さを危険視する大佐。そんな姉を諭すように憂木響子は言う。
「もし彼を上手く利用できれば革命どころか、一夜にして佐渡島を世界の盟主にする事も可能よ。」



874 :国民クイズ11 :04/02/19 16:32 ID:???
そして狂乱の一夜が明け、世界中が国民クイズ不正疑惑に揺れた。国民クイズは臨時に一週間の休止となり、
永田町周辺は国民クイズの再開を渇望する市民や、国民クイズを糾弾するデモなどが集結し、
日増しに混乱の度合いを増していった。
そんな中、アメリカで佐渡島共和国抜きで再び、対国民クイズサミットが行われていた。
K井の暴走により予定より国民クイズの崩壊が早まっている事に焦る各国首脳。
実はあのサミットでは国民クイズ崩壊後、日本を山分けするという密約が交わされていた。
しかし、このままではアメリカ、フランス、中国などの出る幕がない。意を決したようにアメリカ大統領が口を開く。「一同。私に良い考えがあります。」
その頃、佐渡島共和国でも、首相・徳田は焦っていた。
徳田は日本を山分けするつもりなど毛頭なく、日本を佐渡島共和国のみで占拠するつもりだった。
今アメリカで行われている対国民クイズサミットの動きもつかんでおり、
もう連合国を押さえつけていられる残り時間が少ない事を悟った徳田は、
憂木大佐を呼びつけ、国民クイズが再開される3月1日にクーデターを決行する、と命令を下した。
そしてアメリカ、ホワイトハウスに暴動鎮圧にあたっていた日本の機動隊が市民に向け、発砲したとの報が入る。
無気味に微笑むアメリカ大統領。
「補佐官。ロシアと中国の首相に連絡を入れろ。国民クイズ再開の3月1日をXデイとし、
我々、アメリカ軍は正義の名の下に真っ先にトーキョーを空爆すると!!」



10 :国民クイズ12 :04/02/19 23:40 ID:???
国連が日本に叛旗を翻し、日本に迫って来ているという報告に焦る製作部長は早急に国民クイズ再開の準備を進める。
再び国民クイズの威信を取り戻すべく、再開一日目はスペシャルプログラムとして移動式のスタジオに乗り、
屋外の生中継でド派手に行われる事になった。
また、まさかK井が佐渡島共和国と繋がっているなど夢にも思わず、あの日の暴走は
「不正解答疑惑による暴動を最小限に抑えるためのアドリブ」と好意的解釈をされ、
スタジオから飛び出し、今回の騒動を煽動したK井の処分は不問となった。
製作部長は国民クイズの危機をK井によって救う事ができると確信しているようだ。
黙々と移動スタジオの説明をする製作部長。そんな中、K井に面会者が訪れる。
脱走した以来、会う事のなかった娘の麻里子と別れた妻・市子だった。
家族の来訪に複雑な感情を隠せないK井に麻里子は突然の別れを告げる。
先日の騒ぎで国連の決定で日本への輸出、輸入が全面禁止され、
市子の経営する貿易会社は仕方なく本社を海外に移す事となり、自分達も向こうに移住する、と言う。
もし国民クイズ打倒計画が失敗に終わればこれで今生の別れとなる。
その事に麻里子はようやく今まで父に聞きたかった事をぶちまける。
「パパ、どうしてこんな事になっちゃったんだろう?パパはなんで国民クイズになんか出たの?」
市子が麻里子を制止するものの、K井はしばし考え、ようやく重い口を開く。
「ママを見返したかったんだ。ママがどんどん社会で出世していく中、
自分はいつまでも売れない役者でどんどん取り残されているような気がした。
 そしてパパとママは次第にすれ違うようになり、離婚。
そしてパパは自暴自棄になりアカデミー賞欲しさに国民クイズに出場したんだ。」         
あまりに身勝手で下らない理由に麻里子は泣きながらK井を罵倒し走り去ってしまう。
麻里子の後ろ姿を見送り、一人うつむきながら「これでいいんだ」とつぶやくK井。
その外では佐渡島共和国の電波ジャックによる3月1日のゼネラルストライキの呼びかけが響いていた。
そして運命の国民クイズ再開日、3月1日。



13 :国民クイズ13 :04/02/20 00:18 ID:???
太平洋上空、日本へ進行しているアメリカの戦闘機に無線連絡が入る。
「日本時間ジャスト20時に国民クイズパレードに奇襲をかける。第一目標はK井K一。」
そして国民クイズ放送直前、製作部長に一つの連絡が入る。
先日から続いていた佐渡島共和国の電波ジャックの中継地点が分かったのだと言う。
SS隊(懲罰部隊)とともに中継地点に使われていたマンションを調べていると、一つ、刑務所の方向を向いているアンテナが。
刑務所に内通者がいる事に気付いた製作部長はSS隊隊長、村越の助言により、K井の独房の調査に乗り出した。
そんな事が起きているとはつゆ知らず、国民クイズが始まりド派手に白馬に乗って登場するK井。
しかし、どうもいつもと解答者たちの様子が違う。
いつも以上に殺気だち、早くクイズを始めろと急かす解答者たち。
一週間もの間待たされた解答者たちの欲がはち切れんばかりに溢れ、醜い人間の本性をさらけ出す。
その頃、K井の独房。ついに発信器が発見され、K井の裏切りが製作部長にばれてしまう。激怒する製作部長。
K井を処罰すべく、そのまま国民クイズの現場へと急行した。
一方、ついに国民クイズ省に「本格派」の3人が率いる3万人を超えるデモ隊がバリケードをぶち破り、なだれ込む。
そして順調に司会を続けるK井の元にもアメリカの戦闘機が現れ、無差別に空爆をはじめる。
K井はそのまま死ぬつもりだったが、解答者の中に紛れ込んでいた憂木響子の助言により「国民のおもちゃ」
として革命を最後まで見届けるべく、国民クイズ省へと馬を走らせた。
溢れる人の波を押しのけ走るK井。K井への罵倒や国民クイズをやめろ、いう叫び声が次々に聞こえてくる。
そして国民クイズ省間近に迫った時、現場に駆け付けた製作部長がK井の馬に飛び移る。
そしてそのまま二人は国民クイズ省へ。



14 :国民クイズ14 :04/02/20 00:55 ID:???
(以下 K井=K井K一 製作=製作部長)
製作「K井!国民クイズを打倒していったい誰にこの国の運営を任せるつもりだ!?
あほな政治家どもにか?それとも投票すらしない一般市民とやらにか!?」
K井「それを決めるのはお前じゃない!おごるのもたいがいにしろ!」
製作「K井!お前も番組の司会者なら分かるはずだ!日本人がどんな生き物かってことが!
奴らは腹を空かせた豚と一緒だ!!残飯を投げ込めば喜んで食らいつく!
課せられた義務はゴミ同然に無視し、与えられた権利だけを宝石扱いする!
そんな輩にこの国の運営を任せられると思うのか!?」
K井「その風潮をあおってきたのが俺たちじゃないか!国民クイズこそ日本人を豚にかえた元凶だ!!」
製作「何を言う!?国民クイズがなければふくれあがった日本人の利己主義と欲望は
とっくの昔に抑えられなくなっていたぞ!聞け!K井!!
サラリーマンが一生働いて都内に家一軒持てない社会は確かに狂ってる。
しかし、住宅が欲しいと言う当然の欲求をあきらめろとは誰も言えない!!
クイズに合格すれば夢が叶うと信じられるからこそ国民はなんとか折り合いをつけて日々を送れるんだ!!」
K井「そんなものは欺瞞だ! 責任転嫁をするな! 見せてやる! 大衆が何を望んでいるかを!」

国民クイズ省のテラスから、集まった何万人もの国民を見下ろす二人。
K井「どうだ!これだけの人が国民クイズのない世を望んでいる!!
俺はこの人たちの声にしたがって国民クイズを捨てる!!
それが万民のおもちゃを気取っていた俺のせめてもの償いだ!!」



15 :国民クイズ15 :04/02/20 01:13 ID:???
一方、国民クイズ省内部を完全に掌握した「本格派」の3人。しかし、どうも国民の様子がおかしい。
いくら勝利宣言をしたところで賞賛すら聞こえてこず、さらに国民たちは彼等を完全に無視し、K井に向かって何かを叫んでいる。
そして国民クイズ省テラス。K井の宣言になぜか余裕すら感じられる製作部長。
「そこにいる連中の声をよく聞いてみろ」と、不敵に微笑む。
K井が耳を澄ますと、国民の群れは「国民クイズをやらせろ!」「俺の願いを叶えろ!!」という声で埋め尽くされていた。
皮肉な事に日本が混沌とした状況に陥れば陥るほどに、国民の自らの思い通りに社会を変えたいという思いが強まり、逆に国民のクイズ熱を高める結果となってしまったのだ。
力なくその場にへたり込むK井。そんな中ついにアメリカの戦闘機が国民クイズ省めがけて飛んで来た。
自暴自棄になりそのまま死のうとするK井。
だが、製作部長がそれを止め、K井を殴り飛ばす。
「ふざけるな! そうたやすく死なれてたまるか。お前にはたっぷり償いにまみれた余生を送ってもらうぞ!!」



16 :国民クイズ16 :04/02/20 01:27 ID:W/QnNxNh
そしてその後、国民クイズを求める日本人の意志は強固であり、アメリカをはじめ連合国も日本の占拠を断念。
日本は第二次国民クイズ体制時代に入った。
その後、中国、ロシア、アメリカをはじめ世界各国で国民クイズ革命が相次いで勃発。
国民クイズ体制が最も進歩的な政治システムである事が改めて確認された。
そして、K井K一は本来なら極刑も免れないところだが、司会者としての功績などでシベリアでの終身労働という処分が下った。
それからしばらく月日が流れ、シベリア。
「本格派」の3人が日本で自由だった頃の思い出話に花を咲かせているがK井は死んだように全く反応しない。
髪やヒゲはボサボサに伸び、生気の無い顔でただ黙ってうずくまる変わり果てたK井の姿がそこにあった。
外で突如、銃声が響く。憂木響子が助けに来たのだ。しかし、「俺の死に場所はここだ」と一向に耳を貸さないK井。
そんなK井に憂木響子はマイクを投げ付ける。「私たちの闘いに賛同してくれる人はまだ世界中にいるはず。戦いには熱狂が必要よ。あなたならマイク一つで……」
マイクをつかむK井。目には生気が戻り、特徴的な前髪が再びカールする。「熱狂を生み出せる!!」