地獄編

Last-modified: 2008-09-23 (火) 10:47:35

天使禁猟区 地獄編

654 名前:天使禁猟区 27[sage] 投稿日:2005/06/20(月) 10:02:16 ID:???
【地獄(ジャハンナ)編 ACT.1烈火の天使】
刹那の夢の中に現れたセラフィタは天界や地獄の説明をする。
地球をはさんで上に天界、下に地獄がそれぞれ七層ずつある。
『神性界(アツイルト)』 天界最上層。そのどこかにセラフィタが幽閉されている。
『創造界(ベリアー)』  天界の上から二番目の層。
『形成界(イエツイラー)』天界の上から三番目~最下層までを指す。
            一般・上級天使の住居、天使の牢獄、スラムなどがその層ごとにある。
            紗羅の魂を持つザフィケルはそのどこかにいる。
セラフィタは説明を途中で切り上げる。何者かが――赤い目をした人物が覗いているのだ。
「あれは兎の目。今のあなたが捕まったら太刀打ちできない。夢の中は子供のテリトリーなのだから…」
目を覚ました刹那は自分がアレクシエルの体に宿っている事に気付き驚くが、
加藤に影響されたためか深く悩まず、元の体に戻る方法を模索しはじめた。
(ちなみに現在地は九雷たち邪鬼の住処のアナグラ)
刹那は目覚めた時何かの種子のようなものを握っていた。廃竜にもらった鱗だ。
廃竜の体はウリエルがつくった植物を硬化させた物なため、刹那が現世に戻った事で元の姿に戻ったのだろう。
刹那は、アレクシエルの身につけているロケット状のピアスの中に種子を入れた。


以前ベリアルが現れてから体調の悪くなったノイズ。
彼女の口を門にして現れたベリアルはそれを目撃した邪鬼の少女を殺害した。
ベリアルは、体を生き返らせたければ力天使長(グレートヴァーチューズ)のラファエルに頼めと言う。
刹那はラファエルを拉致して本体を生き返らせようと決意する。


〝特異能力〟を持つラジエルはかつて最高会下の研究所に強制的に送り込まれた。
そこでラジエルは連日薬を投与され、細胞を採取され、脳を覗かれ、屈辱的な検査を受けた。
特異能力者の末路は、精神崩壊した後にホルマリン漬けにされるという悲惨なものだった。
それを救ったのは、当時研究所の非道な行いを監視する役割についていたザフィケルだった。
能力のためなのか、ラジエルは紗羅の魂と感応し、紗羅の感情が自然とラジエルに流れ込んでくる。
眠りつづける紗羅を呼び覚ます事がラジエルにはできるかもしれない。
ラジエルは、あの少女にもう一度会わせてくれとザフィケルに頼んだ。



655 名前:天使禁猟区 28[sage] 投稿日:2005/06/20(月) 10:04:11 ID:???
わざわざ刹那を危険な天界に行かせなくても、
甦りの方法は他にもあるとベリアルは九雷に言い、
その方法を教えて欲しければ、花嫁として子宮まで来いと誘いかけた。
それはルシファーの花嫁として、という意味だったが
九雷はベリアルからプロポーズされたと一瞬思い違う。
「それは無理ですよ。わたくし男じゃありませんし」
外見からベリアルを男だと思っていた九雷は驚く。
しかし言われてみればベリアルの容姿は中性的でどちらともいえない。
性別や階級や種族や戒律や道徳など意味の無い事だからどちらでもかまわないとベリアルは言った。
ベリアルはかつて地上で、人間達をそそのかし彼らを戒律や道徳から解放した。
交じり合い殺し合い奪い合い、それでも都は栄えたのだった。
それを聞き、ベリアルが七大君主の一人だと九雷は気付きベリアルの名を呼ぼうとする。
「わたくしはただのいかれ帽子屋。その名で呼んでもいいのはあの方だけ。
 良いお返事を待っています。我らの姫君」ベリアルはそう言い残して消えた。


荒くれ者の天使ミカエルは常に争いを求めていた。
彼は、最強の戦士アレクシエルの生まれ変わりの刹那が動き回っている事を知り、
刹那と殺し合いたいと望んでいた。その時に向け力を貯めるために、
霊的磁場が強い東京へとミカエルは降り立った。



656 名前:天使禁猟区 29[sage] 投稿日:2005/06/20(月) 10:05:19 ID:???
邪鬼の少女が殺された事にアナグラの人々は憤る。
操られたノイズは刹那がやったと、以前は味方をしていたとはいえ
何百年もの間転生され続けているうちに刹那は天界に懐柔されたのだと言う。
人々は腹いせに刹那の本体を殺そうと群がり、本体の腐敗を止めていた魔方陣を壊した。
七支刀を持ちそれを止めに行く刹那。
一人でも傷つければそれこそが裏切りの証拠だと、
ノイズは自分を切ってみろと挑発する。
刹那は七支刀を納め、皆の説得にかかる。
しかし尚も興奮している人々。影で見ていたベリアルは魔術によりそのうちの一人を殺す。
人々は刹那が殺したと勘違いをし凶器を持って襲い掛かろうとした。
九雷は彼らから刹那を守り、本体を持って逃げろと叫ぶ。

「俺がお前の体から剣を抜いたのが元もとのはじまりや。それにノイズは俺の姉やし…」
そう言ってボイスは刹那を助け、九雷の所有する竜に刹那を乗せる。
ひとまずはアナグラから離れ、刹那の本体を保管しなければならない。
ボイスの力は弱いが、東京でならその土地の持つ強い霊的磁場が助けてくれるはずだ。
二人は地球へと向かった。



657 名前:天使禁猟区 30[sage] 投稿日:2005/06/20(月) 10:07:24 ID:???
【地獄編 ACT.2邂逅】
本体を保存し終わった刹那の前にミカエルが現れる。
刹那は彼を見て「思ったよりも小さい」と口に出してしまう。
彼に対して『身長』と『彼の兄』の話をしてはいけないという決まりを刹那は知るわけも無かったのだ。
襲い掛かるミカエル。
戦う理由はないはずだと説得する刹那の腹をミカエルは容赦なく炎の剣で貫く。
ミカエルはとどめを刺そうとする。かばったボイスは左腕を失った。
絶体絶命の状況で自我をなくし闘争本能のみになる刹那。
そこへミカエルの悪友のラファエルが現れる。
刹那とミカの強大な力により時が止まったはずの地球にも影響が出始めている。
これ以上の争いはよせとラファエルは言うが、刹那は既に話を聞ける状況ではなかった。


天界の現状を憂う男はセヴォフタルタを暗殺しよとし、彼の素顔を見てしまう。
セヴィーは男の背中に針を刺す。それにより男は声を出す事ができなくなり、
また無理に出そうとすると四肢が破裂するようになった。
「もっとも…この顔を見た後では口もきけないだろうが」
男は逃げ続け、ジブリールの保管されている園までたどり着く。
ジブリールは水の力により男をその場から逃げ出させた。
「この肉人形が!生ける屍となってまでも要らぬ思念を残しおって!」
セヴィーはジブリールを殴りつける。人形状態のジブリールは何の反応もしない。
彼女がそのようになってしまったのは、セヴィ-が彼女の首筋に刺した針のせいだった。


メタトロンはウサギのぬいぐるみに、ジブリールに会いに行こうと誘われる。
ウサギに言われて不思議な空間を抜けると、すぐそこにジブリールの園があった。
そこにはメタトロンと同じ髪の色をした男がいた。人格はウサギと同じようだ。
ウサギ男はジブリールの首に刺された針を抜いてくれと頼む。
「君はジブリールが好きなんだろう?
 僕はセヴォフタルタでもいいんだけど…」
ウサ男に言われるままメタトロンは針を抜いた。



658 名前:天使禁猟区 31[sage] 投稿日:2005/06/20(月) 10:09:33 ID:???
ザフィケルの元で保管されていた紗羅の霊体が姿を消した。
〝奴の書いたシナリオだ。影で糸を引いていたのはあの男だったのだ。
 少女の体がどこにあろうと関係ない。奴の手の中に器があったのだから〟
ザフィケルはセヴィーの企みに気付くが既に遅かった。


刹那たちの前に紗羅の霊体が現れた。刹那は正気に戻る。涙を流しながら紗羅は
〝やめて。みんな死んでしまう…あたしみたいに〟と言いすぐに消えた。
その直後の天界。長く眠りについていたジブリールが目覚めた。しかし様子がおかしい。
事態に気付いたセヴィーがジブリールに近づく。ジブリールはこう名乗った。
「あたし…紗羅…無道紗羅…」


ミカエルは半ば強制的にラファエルに撤退させられる。
「奴と戦って妙に嫌な気分になったりしなかった?」
ラファエルはそう問う。何を隠しているとミカエルは問い詰めるがラファエルは口を閉ざした。
残された刹那は、出血多量のボイスに輸血をさせるため、
本体を地球に保管させたままボイスを抱えアナグラへ戻る。
ボイスを助けてくれと頼む刹那。城門を開けさせるために
お前がボイスの腕を切ったのではと人々は怪しみ石を投げる。
刹那はその攻撃からボイスをかばいながら土下座して頼み込む。
そこへ一族の長しか見る事が出来ないと言われる神龍三姉妹のうちの末妹・瑪瑙(アガット)が現れる。
「仲間を殺す気ですか!己の心で真実と嘘を見極める事すら出来ないのですか。早く城門をお開けなさい!」
その言葉で二人は中に入れられる。ボイスの輸血手術がはじめられるが、血が足りない。
ノイズに輸血を求めようと腕を引っ張ると、刹那の聖なる波動に拒絶反応を出し魔物が現れた。
以前ベリアルがノイズにつけたアザは魔物招喚の紋章だったのだ。
刹那は魔物を殺し、それによってようやくノイズは正気に戻った。
それらの様子を覗き見るベリアルは、全く動じずに独り言を言う。
「悪魔の刻印の紋章とは本来、見えない場所につけるもの」



659 名前:天使禁猟区 32[sage] 投稿日:2005/06/20(月) 10:11:29 ID:???
九雷のもとに訪れるベリアル。男女どちらか相変わらずわからないと九雷は言い、
ベリアルは服を脱いで見せる。ベリアルの右足には蝶の刺青があった。
「古来より蝶はその美しい擬態により見る者を死の淵へと迷わせる。
 しかしお前のその淫らな蝶は誰にでも羽を広げるらしいな」
かつてベリアルがまだ力天使の地位にいたころ魔王はそう言った。
その時の魔王の軽蔑しきった目を見てマゾっ気のあるベリアルは
彼に一生ついて行こうと誓ったのだという。
ベリアルは箱を渡してくる。その中には生き返りの妙薬が入っており、
その箱を開けたと同時に子宮への洞穴が開くのだ。
つまり薬を使う時は九雷が地獄へ行く時でもあるのだ。


ボイスは手術が終わるとすぐに刹那の体をアナグラの元の場所に保管し直し、
ミカエルに左手の敵討ちをしに行こうと刹那に言う。ボイスの左手には今義手がつけられている。
そこへ以前殺したはずの魔物が現れる。その魔物は不死のためすぐに甦っていたのだ。
九雷は魔物の頭を鳥篭に入れ部屋に置いた。魔物は地獄に嫁に来いと説得してくる。
はじめは断固拒絶していた九雷だが、少しずつ気持ちは傾いてきていた。


紗羅(体ジブリール)は永の眠りの後遺症か視覚を失っていた。
それを治すためにラファエルは招かれるが、既に紗羅は脱走した後だった。
何故他人の体に宿っているのかわからず混乱する紗羅は目も見えないまま
闇雲に走り回り、ジブリールを探しにきていたラファエルとぶつかった。



660 名前:天使禁猟区 33[sage] 投稿日:2005/06/20(月) 10:13:41 ID:???
【地獄編 ACT.3窖の最下の花嫁たち】
貴方はいずれ美しくなりその姿は刹那をも虜にするだろうとベリアルはいい、
一時的に九雷を成長させる。成長した九雷の姿は見違えるような美女だ。
暗闇の中九雷は刹那に会いに行くが、こんな姿で刹那を誘惑しようとするなんて
まるで売女ではないかと恥じ泣いた。そして自分の刹那への思いをはっきりと自覚し、
刹那のためにも魔王の嫁になろうと決意した。出て行く寸前九雷は訊ねる。
「お前は自分が幸せになるのと、自分の大事な人が幸せになるのとどっちを選ぶ?」
「決まってんだろ?みんなで幸せになる!これだ!」刹那はそう答えた。
刹那の部屋から出た九雷は吉良が大量の血を流している事に気づく。
ロシエルの返り血の効力が薄れてきて、以前のように傷が再生しなくなったのだ。
「吉良朔夜の体はようやく自然の摂理によって土に返り安息を得る。
 そしてこの俺は再び精神体になり七支刀に戻る。ただそれだけだ」
しかしそうなったらもう吉良は語る事も自らの意思で動く事もできないのだ。


七大君主の一人であるアスモデウス公爵は、
九雷に渡した生き返りの薬は、死して腐敗してもひたすら甦りつづける
生ける屍をつくるだけのまがいものでないかと言う。
「別に構わないんですよ。餌が本物であろうがどうだろうが魚が釣れさえすれば」
ベリアルは大量の死体――前王妃――たちに向かい「新しい仲間が増えますよ」と挨拶をした。


天界へと向う刹那にこの箱を渡してくれと九雷はアラクネに頼む。
先の戦争で皇家の者は自分以外全て殺されたと思った時、
奇跡的に一人生き残ったアラクネに出会えた事が本当に嬉しかった、
お前が一緒にいてくれたから生きて行けたと九雷は泣きながら言う。
九雷の態度にどうしたんだと心配しながらアラクネは言う。
「あんた一人でも生き残っていたと知って嬉しかったのはあんただけじゃないのよ。それを忘れないで」



671 名前:天使禁猟区 34[sage] 投稿日:2005/06/21(火) 21:40:19 ID:???
ラファエルは紗羅が救世使の妹だと気づき、興味を持ち保護した。
上級天使のジブリールの体にただの人間の魂が入り込めるわけがなく、
紗羅は会話の端々に時折人間では知りえないはずの事を口に出す。
何かがおかしいとラファエルは思う。紗羅は今までの出来事を聞かされ、
刹那を生き返らせてくれないかと頼む。その代わりに服を脱げとラファエルは要求する。
女を個人として見ずどこかで憎んでいるからそんな事を言えるのだと紗羅は言う。
そこへミカエルが建物を壊しながら豪快に乱入してきた。


出発しようとする刹那とボイス。ノイズは母の形見の指輪をボイスに渡した。
アラクネも箱を刹那に渡す。中には魔王の紋章のついた壷が入っていた。
嫌な予感がし、これを渡した九雷の身を案じる刹那。手分けして九雷を探す。
九雷を探して走り回るボイス。その途中で魔王を信仰するための祭壇を見つける。
アナグラに誰か裏切り者がいたのだ。突如、ボイスに何者かが襲い掛かる。
謎の人物にボイスは応戦するが、切り刻まれ重傷を負った。


かつて戦争の後、ボイスは知った顔の死体のなかを姉と二人で彷徨い歩いた。
身分違いのボイスたちにも分け隔てなく接してくれた九雷の笑顔は何よりも彼らを救った。
この笑顔を守りつづけようとボイスは誓ったのだった。
ボイスは九雷の事を思いながら、とどめを刺され絶命した。


謎の人物はボイスの死体から形見の指輪を抜き取った。
「一人だけ生き残ったのは奇跡だって?奇跡なんて望んだって起きやしない。
 生き残った理由なんてそいつがスパイだからに決まってるでしょ?」
指輪を手に持ちアラクネは言った。そのはだけた胸元には魔王の紋章があった。


アラクネはボイスが何者かに殺されたと刹那に報告する。
九雷の部屋から見つかった魔物の首は、壷の中の薬と引き換えに九雷は嫁に行ったと告げる。
ともかく今は薬を飲むべきだと説得するアラクネ。ボイスの死に泣いていたノイズは、
ボイスを甦らせるために壷を奪いボイスの亡骸の口に薬を流し込もうとする。
不完全な薬とはいえ、ボイスの意識が戻ってしまえばアラクネの裏切りがばれてしまう。
アラクネは壷を割り阻止する。抗議したノイズはアラクネの胸元を一瞬見てしまった。



672 名前:天使禁猟区 35[sage] 投稿日:2005/06/21(火) 21:45:16 ID:???
もめる二人に刹那は、薬が使えなくなった事で契約は無効になった、
地獄に行き九雷を救出すると言い出した。ついていくと言うアラクネとボイス。
三人は頭だけの魔物を道案内人として連れ地獄に行った。


残された朔夜は刹那の本体からピアスが一つなくなっている事に気づいた。
皆の前では平気なふりをしていたが朔夜の体はもう限界だった。
死にかける朔夜。そこに現れたベリアルは何故か朔夜の体を回復させる。
何故だと朔夜は問うが、ベリアルは何も答えずに消えた。


地獄に連れていかれた九雷はベリアルにより美しく着飾られていた。
地獄には魔王の地位と命を狙う反魔王派が数多くいる。
それに地獄の中には酷く残虐な性質の者や、見ただけで命を奪う者まで危険な人物が数多くいる。
それらから守るため九雷は特殊な次元の中に置かれている。
無断で一歩外に出ると地獄のどこに放り出されるかはわからない。
閉じ込められている九雷は退屈していた。思い出すのは刹那の事ばかりだ。
刹那の本体からこっそり取ったピアスを眺める九雷。
このままずっと刹那に未練を持っていてはいけないと思いピアスを窓から投げたが、
やはり思い切れずにピアスを取ろうとし窓から落ちどこかに投げ出された。
そこには鎖に縛められた巨大な怪獣のような悪魔がいた。
その姿を見た途端に九雷の胸が痛んだ。見る者の命を奪う悪魔とはこれの事だったのだ。
しかし、刹那のピアスが不思議な光を発し、その守りにより一命を取り留めた。
怪獣――アバドンは生まれながらに背負った見る者の命を奪ってしまう力のために、
地下に監禁されているという。自分は呪われた化け物だとアバドンは嘆く。
〝あいつ〟はアバドンのもとへ生き物をつれてきては殺させ、アバドンに罪悪感を植え付け楽しんでいた。
「一緒にここから逃げようや!俺魔王の嫁さんになるために来たんや!女王様の権限でどうにかしたる!」
そう言った途端アバドンはその巨大な手で九雷を抱き上げると「ママ好キ」といって頬擦りしはじめた。
わけがわからないながらアバドンの世話をする九雷。
突然「アイツが来タ」と言ってアバドンは抜け穴に九雷を放り投げた。
そこから迷路のような道を歩く九雷は、黒蛇を首に巻いた美しい女公爵アスタロテに会った。



130 名前:天使禁猟区 36[sage] 投稿日:2005/07/07(木) 03:07:52 ID:???
【地獄編 ACT.4地獄帝国】
もしもアスタロテが反魔王派だったら無事では済まないと警戒する九雷に
アスタロテは優しく微笑み、腹の中にいるという赤ん坊の心音を聞かせる。
悪魔とは思えないその態度に九雷は安心する。
九雷は魔王の999人目の花嫁で、
アバドンは魔王の数多くいる子供のうちの一人であり九雷の継子なのだとアスタロテは言い、
魔王の嫁になどならず、ずっとここにいて生まれてくる子供の友達になってくれと頼んでくる。
九雷は断り出ていこうとするが、ここは無限に増殖する迷宮となっているから
1度入ったら2度と出る事はできないとアスタロテに言われる。
この迷宮をつくったのはアスタロテの兄のアスタロト。
彼は出来の悪い妹を恥じ憎んでおり、彼女を人前に晒さないために迷宮をつくったのだ。
〝じゃあお腹の子供の父親は…?〟九雷は疑問に思う。
突然、アステロテは兄がやってくると叫び、九雷を箱の中に隠すため押し込めた。
「なんだその腹は!浅ましい女だ恥を知れ」すぐにヒステリックな男の怒鳴り声が響き、
なにかが破裂するような音がした。「あっああ…私の赤ちゃん…また潰した!」
耐えきれず飛び出した九雷は、アスタロテそっくりの男の姿を見る。
兄妹は双子だったのだ。アスタロトは九雷を失神させると、高らかに笑った。
その笑い声を聞いたアバドンは九雷の危機を知った。


地獄についた刹那とノイズに、アラクネが突如襲い掛かる。
誰よりも九雷の傍にいたお前が何故裏切るのだと刹那は叫ぶ。
「誰よりも憎んでいたからこそ誰よりも慈しむ事が出来たのよ。
 〝選ばれし者〟にはわからないでしょうね」
そう言い残しアラクネは消えた。ノイズと刹那は九雷を探して歩き回り、
ベリアルとアラクネに捕まった。ノイズは人質として取られ、
一定の時間がきたら大量の針が飛び出す椅子に縛り付けられた。
その時間が経つ前に、どこかに消えてしまった九雷を探せとベリアルは言う。
ルーレットにより、刹那は淫欲の業を担うアスモデウス公爵のもとへ行く事になった。
「どうして悪魔の手先に…姫様の従兄弟なのに…!」アラクネに向かい叫ぶノイズ。
「正しくは、彼は姫君の兄にあたるのですよ」ベリアルは微笑みながら言った。 続く



520 名前:天使禁猟区 37[sage] 投稿日:2005/07/28(木) 02:55:23 ID:???
(所変わって紗羅・ラファエル・ミカエルのいる天界)
救世使の妹の魂が何故ジブリールの体に入っているのだと不思議がるミカエルにラファエルは仮説を言う。
紗羅は元々ジブリールだったのだと、つまり生まれ変わりなのだろうと。
かつて、セヴィーの冷徹な政策にジブリールは真っ向から歯向かっていた。
そして地上では吉良によりアレクシエルの転生プログラムが壊されていた。
セヴィーは邪魔者であるジブリールの魂を強制的にアレクシエルのそばに転生させ、
監視役にさせていたのだ。ジブリールの魂を持ち水の守護を持つ紗羅は、
本人にジブリールという意識はなくともただ刹那のそばにいるだけで監視の役割を果たせていたのだった。
自分は監視役なんかではないただ傍にいたかっただけだと紗羅は泣いた。
その弱弱しい姿を見て、確かに今の紗羅はジブリールとは別の人間だとラファエルは思う。
そこへ、刹那の顔をした謎の男が刹那の本体を盗み地球へやって来て、
地球を探索していたミカエルの部下を攻撃したという情報が入る。
怒りながら地球へ向かうミカエルについてきた紗羅とラファエル。
そこには、謎の男と共にウリエルがいた。
謎の男は自らの顔を剥ぐ。その下からは加藤の顔が現れた。
ウリエルによって加藤は硬質化した植物でつくられた体を得て蘇っていたのだ。
その体はいまだ不定形で、顔を変えることすら容易だ。
加藤がミカエルの部下にちょっかいを出したのは、ミカエルと共に
ラファエルも呼び出し刹那の本体の蘇生をさせるためだ。
ウリエルは結界をはり、ラファエルらを逃げられないようにした。
出たいのならば刹那を生き返らせろという事だ。


(所変わって地獄の九雷)
アスタロトは九雷が持っているピアスに闇に属す力がが込められていると言う。
刹那の持ち物であったピアスに何故闇の力が?九雷は疑問に思う。
アルタロトは蘇りの薬はまがいものだと教えると、九雷を殺そうとした。
その瞬間、アスタロトの体は女へ――アスタロテへと変化した。
わけのわからない九雷の手を引きながらアスタロテは説明をする。



521 名前:天使禁猟区 38[sage] 投稿日:2005/07/28(木) 02:56:42 ID:???
神は両性具有で正の力も負の力も使いこなすアダム・カダモンを創り出そうとしている。
しかし成功したのはセラフィタのみ。その後の試みは新たなるクリチャーを生み出すばかりだった。
元々はただの双子であった兄妹は実験体にされ、妹の精神は兄の体に移植された。
しかし二つの精神が統合される事はなく、病んでいく兄は虐殺に興じるようになった。
兄はなによりも神を憎みながら人々を殺め続け、やがて妹共々堕天したのだった。
その際、雄と雌の双頭の蛇を媒介にして術をほどこし、体が兄の時は白蛇に妹の魂を封印し、
妹の時は蛇は黒色へと変化し兄の魂が封印された。
説明を終えると、アスタロテは蛇のように体を変形させ「私の新しい赤ちゃんになって」と九雷を飲みこもうとしてきた。
前にアスタロテの腹の中にいた赤ん坊というのも、彼女に飲みこまれた人だったのかと九雷は悟る。
飲みこまれそうになった瞬間、アバドンが現れアスタロテを倒した。
アバドンの手からは大量の血があふれている。九雷を助けにくるために鎖に縛られた手を食いちぎったのだ。
「赤ちゃん…あなたも私を拒むの?人前に出る事をお兄様に禁じられいつも一人…
 ずっと…永遠に愛してあげるのに…何故…お兄様…」
涙を流すアスタロテを置いて九雷とアバドンはその場を去る。
アスタロテは最後の力で蛇にかけられた術を解き、自らの命を失いながらも兄を守った。
目覚めたアスタロト。「馬鹿な女だ。俺の方はあいつの死などなんとも思っちゃいないのに…」
そこに現れたベリアルは、それなら何故あなたほどの力の持ち主が魔力で強制的に妹を引き離さなかったのだと聞く。
アルタロトは高笑いをあげながらも、涙を流した。


(所変わってアスモデウス公爵のところにいった刹那)
色々もめたものの、反魔王派のアスモは魔王の結婚式の妨害を手伝ってくれるという。
それは「憎く愛しい蝶」への嫌がらせでもあるらしい。
刹那はアスモの謙譲品と称して式にもぐりこむ事になった。
実は九雷は、魔王の力に飲みこまれ滅びつつある地獄を治めるための生贄なのだとアスモは言った。


(所かわって吉良)
吉良は七支刀を通して伝わってくる地獄の大気に既視感を感じる。
それを確かめるために吉良も地獄へと向かう。



522 名前:天使禁猟区 39[sage] 投稿日:2005/07/28(木) 02:59:41 ID:???
アバドンと共にさまよう九雷。どこに行けば良いのかすらわからない。
そこへアラクネが現れる。彼の裏切りを知らない九雷は駆けより、鞭で打たれた。
助けようとしたアバドンも打たれる。
魔王に忠誠を誓っているアラクネには、力の属性が同じなためにアバドンの力は通じない。
薬をかがせられ意識が朦朧とした九雷にアラクネは物語を聞かせる。


かつてゲヘナ皇家では新たなドラゴンマスター――次の王の誕生が待ち望まれていた。
そこへ占者たちが口をそろえて予言したのだという。「次に生まれる皇子こそが次期王だ」と。
生まれた皇子は選ばれし者として世俗から引き離されて育った。
それは世継ぎの命を狙う天使軍の暗殺を避けるためだと言われていた。
しかしある日天使軍の暗殺者が皇子たちを襲う。皇子とその忠実な家来は瀕死の重傷を負った。
現場にやってきた皇家の者たちは、皇子を見下ろしながら言う。
「天使軍が狙っていると言うのは本当だったのか。王の計画は上手くいった。
 真実のお告げの次期王が九雷姫だと悟られぬよう当の皇子さえ騙して替え玉にして姫を守るとは」
秘密保持のために瀕死の者たちを残し屋敷には火が放たれた。
「運命の皇子だと信じて仕えてきたのに…俺が信じていたものがニセモノだったなんて…!」
炎の中、そう叫ぶ家来を皇子は殺した。血と憎悪の匂いに惹かれてやって来たベリアルは
忠誠を誓わせるかわりに皇子を救った。皇子は九雷の従兄のアラクネを殺し成り代わり、
女装癖のあるうつけ者のふりをして髪を伸ばし化粧をし素顔を隠した。
そして天使軍に情報を流し、憎い王たちを皆殺しにした。


「あんたに会えて嬉しかったのは本当よ。あんたを利用して手なずければ残った民の信頼を得られる。
やっと王になれる」
アラクネは涙を流す九雷をベリアルに引き渡した。
ベリアルは薬が効いたままの九雷を着飾らせると、九雷の前で服を脱いだ。
そこに現れたのは男でも女でもない体だ。
天使とは無性で生まれてきて、後に男や女へと体が変化していく。
神の運命に従う事を嫌ったベリアルは体が女へと変化していくのを薬によって止めたのだ。



523 名前:天使禁猟区 40[sage] 投稿日:2005/07/28(木) 03:01:58 ID:???
九雷の花嫁の儀式が始まろうとした時、アバドンが乱入し場は騒然となった。
それを裏から眺めるアラクネのもとへ、ボロボロの姿をしたノイズが襲いかかる。
アラクネは神龍を呼び出そうとする。
「無駄ちゃいますか。あんたはその欲望を遂げるために手を血まみれにした王位簒奪者!
 その汚れた魂を誇り高い守り神が認めるはずないやろ!
 あんたが本当は何者だろうとかまわない。
でも私たちは仲間やったはずやろ?その信頼を裏切ってはいけなかったんや!」
その姿がボイスと重なり、アラクネはまともに攻撃を受けた。
何故神龍を呼び出さなかったと問うノイズに、自分では神龍は従わなかったとアラクネは言う。
アラクネは形見の指輪と神龍が封印されたピアスを渡す。
「これからはあたしのかわりにあんたが九雷を守って」
椅子の装置を壊したのは自分を救うためだったのかとノイズは気付いた。


アバドンが暴れすぎたせいで式が行われようとしていた宮殿は崩れ始めていた。
奈落の底へと落ちていきそうになる九雷。刹那がとっさに助ける。
壁に突き刺した七支刀に掴まる二人は、向かい側の壁に巨大な顔のようなものがある事に気付く。
それは吉良と同じ顔をしていた。


続く

ただでさえ巻数があるのに短くまとめられない。
話の複雑さに加えて、話が色んなキャラの視点で同時進行していくものだからややこしいです。
わからないところがあったらすみません。



562 名前:天使禁猟区 41[sage] 投稿日:2005/07/29(金) 04:14:49 ID:???
【地獄編 ACT.5 Sacrifice】
ベリアルは足場をつくり刹那と九雷を降りさせる。
「それこそが地獄の王ルシファー猊下の現在の姿。
 ここは儀式の行われる祭場の終着点ゴルゴタの間。
 聖なる999人目の花嫁が身を投じれば儀式は完成します」
かつてルシファーたちが天界より逃げ延びた先はひどく劣悪な土地だった。
それを変えるためにルシファーは自らの体を大地に根付かせた。
しかし何千年か前に突然現れた黒衣の男が魔王の魂を奪っていった。
「しばしの安らぎを得るがよいルシフェル」男はそう言った。
ルシフェルとはルシファーが天界にいた頃の名だ。
魂をなくした魔王の体は暴走し、今まさに地獄は崩壊しようとしている。
他人と交わった事のない純真な体の者が生贄となる事でしか暴走は収まらない。
このまま放置しても刹那を含めた皆が死ぬだけだと、九雷は自ら生贄になろうとする。
しかし、そこへ現れたアラクネはベリアルを剣で貫き胸の刻印に封じられた魔物を返却すると、
自分が生贄になると言い出した。生贄は清らかな若い体であれば男でもかまわないのだ。
アラクネはノイズによる大怪我をかかえ身を投じようとする。やめろと叫ぶ九雷。
「言ったでしょう。あたしはあんたの従兄のアラクネなんかじゃない。
 あれはただの家族ごっこよ。仲間のふり愛してるふり…
 ずっとずっと長い事あんたを欺くための演技だったのよ…!
 ただ…それが…あまりにも楽しく幸せなごっこ遊びだっただけ…
 あっちが夢で…九雷の従兄だというのが現実ではないのかと…
 ……こんなにも願ってしまっていたなんて…!」
アラクネは奈落の底へと落ちていく。ゴルゴタの間が崩れ始める。
ベリアルは魔術により刹那と九雷を逃がす。
「さようなら姫君。貴方はわたくしの聖域でした」
ベリアルは清らかな体ではないため生贄になる資格がなかったが、
崩壊にまきこまれる事によって地獄=ルシファーと同化できるなら本望だとその場に留まった。
しかし寸前でアスモデウスに助けられてしまった。


途中で刹那とはぐれた九雷が目覚めると、傍にはノイズがいた。
逃げる最中で意識を失った九雷を守るようにしてアバドンは死んでいた。
自分の為に血を流した多くの人に涙しながら、自分も仲間も全て守れるほどに強くなろうと九雷は決意した。



563 名前:天使禁猟区 42[sage] 投稿日:2005/07/29(金) 04:17:27 ID:???
メタトロンの夢の中から、メタトロンと同じ髪をした謎の男が地球の様子を見ている。
現在地球ではラファエルが刹那を行きかえらせようとしている最中だ。
男は巨大な手を地球に突っ込み遊び半分に妨害をしようとするが、
元の体に目覚めた刹那に反撃され巨大な手を消した。
巨大な手が入り込んだ事で磁場が狂い始めた。紗羅・ラファエル・ミカエルは撤退した。


(刹那が完全に目覚めるちょっと前の地獄)
アレクシエルは地獄にやって来た吉良を殺そうとするが気付かれて失敗する。
剣に封印される前の記憶がない吉良に、お前はかつてルシファーだったのだとアレクシエルは告げる。
遠い昔、まだ正常だった頃のロシエルは「もしもの時は自分を殺してくれ」とアレクシエルに頼んだ。
弟の願いを叶え、そして自分と弟にかけられた〝呪い〟を解くためにもアレクシエルはそれを承諾した。
しかし、いざその時になってもアレクシエルには最愛の弟を殺す事が出来なかった。
自分には弟を憎む事も殺す事ができない。ならば刹那に託そうとアレクシエルは刹那の意識の底で眠っていた。
吉良を殺そうとしたのは、吉良がいずれ魔王として目覚め刹那の敵となる事を予感したからだった。
刹那の心音の音が聞こえ始めた。アレクシエルの体は再び屍と化した。


刹那は当初の目的である紗羅の魂奪還のために天界に行く事を再び決意した。