天使禁猟区

Last-modified: 2008-09-23 (火) 10:33:13

天使禁猟区/由貴 香織里

403 名前:天使禁猟区 1[sage] 投稿日:2005/05/17(火) 09:51:35 ID:???
【物質界(アッシャー)編  ACT.1 電気仕掛けの天使】
男子高校生の無道刹那は両親の別居によって離れて暮らしている実の妹・紗羅に恋心を抱いている。
彼は幼い頃から他の人全てが怪我を負ったような状況でも一人だけ無傷でいて、
その事で母から気味悪がられていた。
また、いつの頃からか、人の血を見るとひどい眠気に襲われるという謎の持病を持つようになった。
それらの事を知るのは、信頼する先輩である吉良朔耶だけだった。
そんな刹那を見ている二人の人物。銀色の髪と褐色の肌を持つ彼らは邪鬼(イヴィル)だ。
一人はゲヘナ王の第14子でドラゴンマスターの九雷。もう一人はそのいとこでオカマのアラクネ。
彼らが物質界にきた目的はただ一つ。かつて邪鬼に味方し
天に反旗を翻した咎で堕天使の烙印を押され
肉体と精神を引き裂かれ、罪が消えるまで物質界に転生され続けているという
美しき女天使・アレクシエルの生まれ変わりを探す事だ。それこそが刹那だった。


紗羅の通うカトリック女子校での友人・斉木翠雀は強い霊能力を持っていた。
ある日彼女は街を歩いていて謎の男――上級天使のカタンにフロッピーを渡される。
「これを貴方にたくすのは全てあの方のため…かつて天上で最も輝いていたロシエル様の御身のため…」
そこへ現れた刹那は「あんな危ない奴と関わるな」と翠雀をその場から連れ出す。
カタンは刹那の顔にロシエルの…そしてロシエルの双子の姉であるアレクシエルの面影を見る。
刹那にほのかな恋心を抱いた翠雀は、帰ってから『天使禁猟区』と題された先ほどのフロッピーを見る。
開いた途端翠雀が今までに受けた中傷などの酷い体験が頭の中に飛び込んできた。
泣き出す翠雀に、パソコンの中から囁きかける声が聞こえた。
パソコンの中の人は翠雀をラピスラズリと呼び、君は特別な存在なのだと言った。
そして、自らをANGEL(天使)と名乗った。


刹那・紗羅・翠雀がいる場所へ、九雷はカタンに当てるつもりで誤って攻撃を仕掛けてしまう。
刹那がとっさに紗羅をかばった瞬間、刹那の体から謎の波動が出て傷は一切できなかった。
しかし、攻撃によって割れたガラスをまともに全身に浴びた翠雀は、体中に傷を負い、
目の中にも大量のガラスが刺さったため失明した。
最後に見たのは刹那が紗羅だけをかばう姿だった――



416 名前:天使禁猟区 2[sage] 投稿日:2005/05/18(水) 20:22:52 ID:???
翠雀は失明した事と、刹那が紗羅の事しか考えず、紗羅だけをかばった事に一人で泣く。
パソコンの中の人が翠雀の頭に直接アクセスする。
「君ヲイジメル子ガイルナラ僕ガ消シテアゲルヨ」翠雀は紗羅の名を告げた。


刹那のクラスメートの松野が、謎の人物にもらった『天使禁猟区』というパソコンゲームを
やっている最中に頭を破裂させて死んだ。翠雀がもらっていたものだと同じだと気づき、
刹那は心配して翠雀宅へと走る。そこには見舞いに来ていた紗羅もいた。
何故か翠雀の両親は眠っており、翠雀は部屋から出てこない。二人は開けてくれとドアを叩く。
翠雀はパソコンの中の人と会話中だった。中の人は翠雀の目を治し、紗羅を消すと言う。
それを信じ、翠雀は中の人がいう通りの呪文を唱える。所変わってどこかのビルの屋上にいるカタン。
「主よお許しを。私はもうロシエル様についていくしかないのです。
 例えこの身が禁じられた暗黒魔術で堕ちようとも、私は彼の御方の封印を解く!」
彼は東京の人工電気の熱量を全てエナジーに変換し、それを全てロシエルに捧げた。
東京に大規模の停電が起こった。


気づくと翠雀の目は治っており、目の前に刹那に似た顔の美しい天使――ロシエルが現れた。
ロシエルは翠雀のおかげで目覚める事が出来たと感謝を述べると、
体中から電気コードを伸ばして翠雀に巻きついた。
「君のデータと残りの霊力を吸収させてよラピスラズリ。他の皆も逝ったから寂しくないよ」
翠雀以外の『天使禁猟区』を使っていた人々は既に松野と同じく死んでいた。
刹那がようやく翠雀の部屋に入ると、そこには自分と同じ顔をした天使がいた。
初対面であるにも関わらず彼がロシエルという名だと刹那は何故かわかってしまう。
「僕を忘れた何て言わせないよアレクシエル。ほら…僕のこの顔と君はそっくりだろ…姉さん…」
ロシエルは血まみれの顔で笑いかけ、電気コードを刹那にも巻きつかせた。
刹那は必死で抵抗し、気づくと翠雀の部屋の前にいた。
扉はあけるとロシエルはもうおらず、翠雀だけがいた。
翠雀は「天使さまのおかげで目が見えるようになった」と笑う。
実はそれは、翠雀の姿をコピーして成り代わったロシエルだが、刹那たちは気づかない。



417 名前:天使禁猟区 3[sage] 投稿日:2005/05/18(水) 20:26:56 ID:???
夜道の中紗羅を家まで送っていく刹那。
そこに現れた同じ男子校の不良が二人に絡む。
刹那は不良を殴りまくる。停電のため街は暗く、血が見えないため眠気も起こらない。
「もうやめて!死んじゃうよ!」紗羅の言葉に刹那は我に返った。
紗羅と母の家の前で、紗羅は刹那が喧嘩のなかでつけた傷をなめる。
それを見つけた母は刹那を無視して紗羅を家に引き込む。
母は刹那の紗羅への思いに勘付いていたのだ。


カタンは、一刻も早く神性界(アツイルト/天界第一階層)に帰ってくれとロシエルに頼む。
アレクシエルによってロシエルが封印されている間に、神性界は神の力が圧縮され悪魔の力が活発になる
惑星十字路列(グランドクロス)が近づき、神は力を溜めるために長い眠りについた。
神なき今神性界は上級天使の権力争いと独裁が続き、
地上を導くための天使が階級性や差別に振り回される最悪な状況になっている。
今の天上を救えるのは『有機天使アレクシエル』と対をなし、
かつて天上で最高の位置にいた『無機天使ロシエル』しかいない。
カタン他数名の天使たちは、地上に降りてはいけないという規則を破り、
人間の命を犠牲にしてまでもロシエルを復活させたのだ。
しかし、ロシエルはアレクシエルの生まれ変わりらしき刹那を観察するためしばらく地上に留まると言った。


刹那に絡んだ不良・洋司は紗羅と同じ制服の女――翠雀(中身ロシエル)に絡む。
ロシエルは簡単に洋司に体を許すと、口写しに洋司に自分の細胞を飲み込ませる。
そうする事で、相手を自分の意のままの傀儡人形にする事ができるのだ。
洋司は体中からコードを飛び出させた化け物となった。
「とってもいい感じだ…もうすぐやわらかい肉を食わせてあげるからね」


ロシエルは翠雀の体で紗羅を呼び出し、洋司を通して不良たちに拉致らせ、刹那を呼び出した。
影で覗き見ていた九雷は、ロシエルから、確かに聖なる光を発しているのに、なにか恐ろしいものを感じた。
紗羅を開放しろと訴え掛ける刹那に、コードだらけの化け物になった洋司が襲い掛かる。紗羅は気を失う。
洋司に捕まれ刹那の腕がちぎれる。コードが腹を貫く。九雷は助けにいこうとするが、
極限状態で刹那がアレクシエルとしての力に目覚めるかもしれないとアラクネに止められる。



418 名前:天使禁猟区 4[sage] 投稿日:2005/05/18(水) 20:29:24 ID:???
しかし刹那がどれだけボロボロになってもアレクシエルは目覚めない。
紗羅という存在が『無道刹那』の意識を維持させているのだ。
ロシエルはアレクシエルを目覚めさせるため、紗羅に危害を加えようとする。
すると、六枚羽を持つ男とも女とも似つかない目も眩むように美しい精神体が現れた。
それは、太古の昔失われた宇宙魔術を自在に操れるという聖隠者(アダムカダモン)のセラフィタだった。
その精神体の放つ光の前ではロシエルの力が消える。
ロシエルはカタンの手引きによってその場から逃げた。
逆に、その光の力で刹那の体の傷は癒え、ちぎれた腕も治った。
九雷は、これで刹那がアレクシエルの生まれ変わりだと確定されたと言う。
「アレクシエルなんて知らない。今の俺には関係ない。お前も国に帰れ」
「俺の国はもうない。お前ら天使と人間に滅ぼされたんや」九雷は涙を流した。


九雷はゲヘナ皇家一の剣の使い手で皇位継承権があったが、手のつけられぬ乱暴者だからと追放された。
その頃、物質界では環境汚染が進み、崩れたバランスは表裏一体であるゲヘナ皇国まで汚していた。
弱体化した隙をついて天使軍は平和条約を破りゲヘナを襲撃し、九雷が戻った時には辺りは死体の山だった。
九雷は天使に見つかり殺されそうになった。それを救ったのがアレクシエルだった。
父王は九雷を追放する際、ピアスを渡した。それは三姉妹の龍が封印された秘宝だった。
天界の不審な動きを察知していた父王は、追放と言う名目で九雷を逃がし未来を託していたのだった。
「神も悪魔もない理想郷をつくろうって言ってくれとったのに…
 こんな風に見捨てるぐらいならなんであの血の海の中で野垂れ死ににさせてくれへんかったんや!」
九雷は泣き叫び怒鳴り、刹那を追い出す。


ゲヘナ皇国に戻った九雷が、死にかけた少年を救おうとした瞬間、
現れた数人の天使によって少年は殺された。
「よく見りゃこいつ…一応女じゃないかよ。こいつはいいや」
泣き震える九雷を天使たちが蹂躙しようとした瞬間、何者かが彼らを斬り殺した。
「情けないこれが天使の姿かね。こいつらと悪魔とどう違う?
 綺麗事並べ立てないだけまだ魔物の方が純真だ。
 立てるか小鬼。私は有機天使アレクシエル。たった今より神に反旗を翻す!」
それがアレクシエルとの出会いだった。



419 名前:天使禁猟区 5[sage] 投稿日:2005/05/18(水) 20:32:12 ID:???
それから九雷はアレクシエルに近づくために、夢中で剣術や魔術に励んだ。
アレクシエルの手には戦う相手によって属性を自在に変える
伝説の神剣・七支刀御魂剣(ナナツサヤノミタマノツルギ)がいつも光っていた。
しかしロシエルを封印するため奴に突き立てられた神剣は砕け散り、
アレクシエルも相打ちとなり天使軍の手に落ちた――


刹那が紗羅を連れて去った後の現場に、吉良が現れる。
吉良は話を全て聞いていたらしい。
アラクネは吉良を殺し、九雷と共にその場を去る。
二人が去った後、吉良は生き返った。
「だいぶ再生に時間がかかるようになってきたな。この体もそろそろ限界かね。
 刹那を渡すわけにはいかねーよ。なにしろあいつは、生まれる前から俺の女だからな」


気を失ったままの紗羅を母の家に連れ帰り、刹那は紗羅にキスをする。そこに母親がやってくる。
母は刹那を殴り叱咤し、お前はあの子をそんなに不幸にしたいのかと泣き叫んだ。
「こんな事許されるはずないじゃない! もうすぐ夫との離婚が成立して
 紗羅の苗字が変わるけどあんたたちは他人になるわけじゃない!
 たとえその血を全て抜き取って入れ替えたってそれは変わらない!
 あんたたちは一生実の兄妹なのよ!」
目覚めた紗羅はそれらの話を全て聞いた上で、
「お母さんいいの…私もずっと前からお兄ちゃんが一番…好きだもん…!」と言う。
母の言う通り紗羅を不幸にするだけだとわかっている刹那は、わざと紗羅をなじった。
傷ついた紗羅が飛び出した後で刹那は母に言う。
「あいつにはもう会わねーよ。でもそれは紗羅のためだ!あんたなんかに言われたせいじゃねえ!」
刹那は涙を流しながら家から飛び出し、先輩の吉良のもとへ行く。
吉良は父親を罵倒しながら家から出るところだった。
紗羅の事を話す刹那に「お前は溺れるように人を愛するな」と吉良は言う。
刹那は「先輩は女をとっかえひっかえしたり親を罵倒したりしてわざと愛を遠ざけようとしている」と言った。
「俺はオヤジに愛される資格がないんだ。
 世の中にはどんなに思っていても打ち明ける事さえ出来ない事がある。
 口に出してしまったら全てが終わる。どんなにそばにいても、だましつづけるしかない事も…」



420 名前:天使禁猟区 6[sage] 投稿日:2005/05/18(水) 20:34:38 ID:???
落ち込む紗羅のもとへ、翠雀の姿をしたロシエルがやってくる。
この前の拉致騒ぎは刹那もグルになってやったおふざけで、
自分にべったりしてくる妹が邪魔だといわれて手伝っただけだとロシエルは言う。
そんなの嘘だと叫ぶ紗羅をロシエルは気絶させ、紗羅のデータを取る。
「一体どうなされたというのです最近のあなたのなさり様は…」
そう問うカタンにロシエルは、口移しに自分の細胞を飲み込ませようとした。
カタンは咄嗟に吐き出す。ロシエルは他の天使たちにも自分の細胞を飲み込ませ、
次々と操り人形を作っていったのだという。
そんな事をしなくても皆ロシエルに忠誠を誓っていたのにとカタンは言う。
「双子の姉にまで裏切られた僕になにを信じろって言うのさ…!
 僕はね自分への愛か恐怖しか信じないんだよ。だから君も僕に完全に服従するか、
 僕を受入れて同化するかどっちかにしてよ。そう…父親の言う事は聞くもんだよ」
復活したロシエルが以前とは違うおかしな態度をとる事にカタンは疑問を感じた。
しかし、今の天界を立て直せるのはロシエルだけだ。


神剣を持ったアレクシエルはロシエルを完全に殺す事も出来たはず。
しかし彼女は何故かロシエルを生かし、封印するだけにした。
アレクシエルは復活したら、今度こそ完全にロシエルを殺してしまうかもしれない…
まだ刹那がただの人間であるうちに、自分の手で刹那を殺そうとカタンは決意する。



432 名前:天使禁猟区 7[sage] 投稿日:2005/05/21(土) 14:20:17 ID:???
【物質界(アッシャー)編  ACT.2 クライング・ゲーム】
洋司の不良仲間の加藤は薬の売人からドラッグを買っていた。
新しい薬があると言われ飲んだ途端、加藤の意識が消える。
薬の売人の正体はロシエルだった。
飲み込んだものは、ロシエルの細胞――


刹那からの罵倒に悲しむ紗羅に、母は〝いい話〟をする。
紗羅はそれを聞き、すぐにでも会わなければと刹那のもとへと走った。


気まずい思いで刹那が紗羅に対峙すると、紗羅はキスをしてくれと言った。
泣きすがりつく紗羅にキスをしようとするが、違和感を感じ途中でやめる。
そこへ、もう一人紗羅が現れる。キスしかけた相手は姿を変えたロシエルだったのだ。
ロシエルは翠雀を殺したと言う。今までの翠雀の豹変はそのためかと紗羅は思う。
口移しに刹那に細胞を飲ませる事に失敗したロシエルは消え去る。
あれはなんだと問う紗羅を、巻き込みたくない一心で刹那は口を閉ざし冷たく接する。
その態度に涙を流しながら紗羅は、母と共にイギリスに留学する事を告げた。
もう二度と会えなくなるから良いに来た、しかし迷惑ならもういいと紗羅は駆けていった。


刹那と紗羅のそれぞれの学校で、刹那と紗羅(中身ロシエル)がキスをしかけるところの写真が貼られていた。
それを撮ったのは、ロシエルに操られた加藤だ。
紗羅はシスターに写真の事を問い詰められる。母は、刹那が悪戯につくった合成写真かなにかだと言った。
「汝 地獄に落ちたくなければ罪を犯した片手を切り捨てその体で天国へ行くがいい」
シスターは聖書にあるその言葉を出す。それに対し紗羅は、汚れた部分を捨てねばならないのなら、
刹那をなによりも愛しく思うこの心臓を抜き出さなければ天国へ行けないと言った。
寝顔に刹那がキスをしようとした時、紗羅は本当は起きていた。
しかし刹那にキスをされたいがために寝たふりをしていた。
「ずっと兄貴が好きで…この感情がなくなったらそれはもう私じゃないんです。
 この汚れた心臓と共に地獄に堕ちます!お兄ちゃんと堕ちる地獄なら…怖くない…!」


龍の三姉妹の長女で予知能力のある翡翠(ジェイド)は近くアレクシエルが完全覚醒し、
アレクシエルの覚醒による強い波動は周囲のものを都市ごと破壊し、刹那をも消滅させると九雷に言う。
刹那などアレクシエルの復活に比べたら些細な事だと言いつつも、九雷の心は揺れた。



433 名前:天使禁猟区 8[sage] 投稿日:2005/05/21(土) 14:23:57 ID:???
紗羅と刹那のキスシーンの写真は男子校中に貼られ、当然噂の的となった。
逃れるように刹那は耳をふさぐ。昔吉良に無理矢理つけられたピアスのある耳が痛んだ。
食堂で加藤(中身ロシエル)は刹那をからかう。殴りかかった刹那は返り討ちにされた。
外へ出る刹那。そこへ、屋上からキス写真が大量にばらまかれた。
「見るな!見るな~!」狂ったように叫び、写真を回収しようとする刹那に吉良は、
みっともない真似はやめろと冷たく言った。刹那をなじった者たちは誰も刹那の立場には立っていない。
ただお利口な道徳観念を振り回しただけだ。正しくなくても、お前はお前の愛を貫けと吉良は言った。


加藤は吉良の前で口から大量の電気コードを吐き出した。
一瞬加藤の意識が戻るがすぐにロシエルが現れ、吉良の服を破った。
吉良の胸には血の跡があった。それは遠い昔についたロシエルの血だ。
その血によって吉良は不死身の体を手に入れた。
だが血の力は弱まりつつリあり、やがては吉良は死に絶えるだろう。
血をやるかわりに味方について〝あれ〟を渡せとロシエルは言う。
「あれはもう俺の手にはない。とっくに真の主人である刹那のもとへいってる」
ロシエルは怒り、吉良を殺す。そこへ刹那がやってきた。
吉良の流す血を見て眠気を感じるが、刹那は意志でそれを振り払う。その途端ピアスが砕け散った。
首にかけている、かつて吉良にもらった石のペンダントが変形し、剣の形となった。
「あれは間違いなく…アレクシエル様の神剣 七支刀御魂剣や!」覗き見ていた九雷は驚く。
刹那の背には三枚の翼が生え、姿は刹那のままだが、アレクシエルの意識が目覚めた。


アレクシエルはロシエルを斬りつける。しかし、寸前でロシエルは加藤の体から出て、
加藤だけが重症を負った。これでまたその体は血に汚れたと嘲笑いながらロシエルは消え去る。
死にたくないと泣く加藤にアレクシエルは冥道を開き照らした。加藤は温かい光に涙しながら絶命。
ロシエルに毒された加藤の魂を浄化し、最初から救うためにアレクシエルは剣を奮ったのだった。
九雷は喜ぶが、アレクシエルはすぐに消え刹那がまた表に現れた。
ピアスには刹那が人殺しをしないために戦意喪失するよう封印がかけられていると九雷は言う。
七支刀もピアスも渡したのは吉良だ。振り向くと、先ほど死んだはずの吉良が無傷で居た。



434 名前:天使禁猟区 9[sage] 投稿日:2005/05/21(土) 14:26:05 ID:???
前の大戦の時にロシエルの返り血を浴びて不死身になったと吉良は説明する。
「この俺が人間ごときに情がわくなど有り得ない」
刹那に対する今までの態度は全て演技で、刹那に近づいたのもアレクシエルの生まれ変わりだから
というだけに過ぎなかった。
悲しみと怒りで涙を流す刹那から強い波動が溢れる。その波動に反応する三人の謎の人物。
泣きながら去って行く刹那。それを追う九雷。後に残されたアラクネは、吉良に再び危害を加えようとする。
すると吉良は自らの体を切り裂いた。吉良の血を媒介にして一本の刀が現れた。
その刀で吉良はアラクネを追い詰めるが、とどめをささない。それは感情を持っている印だとアラクネは言う。
認めない吉良を置いてアラクネもその場から立ち去る。吉良は加藤の死体を校舎裏に埋めた。


刹那を追いかけ車に轢かれそうになった九雷を刹那はかばう。刹那の波動により車が吹っ飛ぶ。
「女ってのは守ってもらってこそ綺麗にも優しくもなれるんだぞ。男のふりなんかしてんじゃねえ。
 そして自分を守ってくれる男を早く見つけるこった。俺は…紗羅を…もう二度と守れねえけどな…」
刹那はそういって涙を流し九雷を抱きしめると、すぐにまた走り去った。
かつてアレクシエルも同じような事を言って九雷は抱きしめた。
その時はただ温かくて気持ちが良かったのに、刹那からの抱擁はひどく切ないものに感じられた。


紗羅は遠くへ行く。吉良は自分じゃなくアレクシエルを見ている。学校にも行けない。
全てに絶望した刹那は廃工場で手首を切ろうとするが、通りすがりの盲目の神父に助けられる。
彼は、自分はかつてアダム・カダモンを見た事がありその輝きによって視力を失ったという。
そして首筋にある大きな傷を見せた。刹那は驚くが、神父は全部嘘だと笑った。
首の傷はただの事故の跡。しかし、夢かもしれないがアダム・カダモンには確かに会ったと言う。
それはただの夢だと刹那の言葉に「そうかもしれません。それでも私は信じてるんですよ」
と彼は言った。刹那が振り向くと神父は消えていた。
神父の正体は座天使長(グレート・トロウンズ)のザフィケルだった。
彼の弟子である金髪碧眼の少年ラジエルはザフィケルを見つけると、
無断で人間界に降りるのは重大な違反だからすぐ帰って下さいと言った。



435 名前:天使禁猟区 10[sage] 投稿日:2005/05/21(土) 14:29:28 ID:???
地上での騒ぎがばれないようにカタンが張った結界が破られた。何者かが地上に降りたのだ。
これではいずれロシエルが復活した事も、そのために人間の命が犠牲になった事も上にばれてしまう。
天界に戻り何事も無かったかのように元の勤務につけとロシエルは命令する。
代わりはロシエルに熱をあげている士官候補生のキリエがやるという。


翠雀は死んだのに親はなにも騒がない。ただ不登校になったというだけの扱いだ。
本当に翠雀が死んだのかを確かめるためにも紗羅は翠雀の家へ行く。
そこには、大量のコードに体を捕らわれ、頭の半分をパソコンの画面にめり込ませた翠雀父の姿があった。
おかしくなった翠雀母も自らパソコンに向かいコードに潰される。
それを眺めるキリエの姿。キリエが翠雀を操作しているのだ。
九雷はそれを止めようとするが、もし紗羅が死ねば刹那はどうなるだろうかと思い躊躇した。
その間にも蠢き続けるコードは紗羅を捕える。
「殺してもいいよ翠雀…!あたしにはもうこんな事くらいしかしてあげられないもん…」
紗羅はそう涙を流しコードに頬擦りする。
憎しみと殺意の残像でしかなかったはずの翠雀は正気を取り戻す。
キリエは直接紗羅を攻撃しようとする。我に返った九雷はキリエを攻撃する。
燃えるキリエは何者かの手によってその場から消えた。
翠雀は紗羅からコードを解くと、今までもこれからもずっと紗羅が好きだからと言い残し消えていった。
紗羅は、ロンドンで学校を出てから母の決めた婚約者と結婚すると九雷に告げた。
お前は刹那を残して一人で幸せになる気かと言う九雷の問いに紗羅は
兄と一緒に居られないのに幸せになんて一生なれるわけがないと言った。


キリエを助けたのはカタンだった。実戦経験の無い士官候補生のキリエに地上での行動は危険すぎる。
しかしキリエはカタンに耳を傾けない。
ロシエルは最初からキリエを捨て駒扱いしているのではとカタンは危惧した。


刹那は学校に行った。誰もが受け入れるわけではなかったが、刹那を支えてくれる友人たちがいた。
事態は何も好転していないが、身近すぎて気付けなかった優しさを実感しただけで、刹那は救われた。


校舎裏からは加藤の死体が発見された。加藤の不良仲間たちは事情聴取を受け、
食堂で加藤(中身ロシエル)にコテンパンにされた刹那が加藤を殺したのではないかと証言した。



441 名前:天使禁猟区 11[sage] 投稿日:2005/05/22(日) 10:50:02 ID:???
【物質界(アッシャー)編  ACT.3 推定有罪】
11年前吉良朔耶と母は事故にあった。母は死に、かばわれた朔耶も重傷を負った。
死にかけの朔耶に話し掛ける謎の発光体があった。発光体は朔耶を生き伸ばさせる代わりに、
自分がある目的を果たす間までその体を貸してくれと持ちかけた。
何年かしたら朔耶はまた死んでしまう。妻と子を失い、父は二度悲しんでしまう。
発光体に朔耶は、体を貸す条件を二つ言う。自分の代わりに沢山本を読み勉強して欲しいと、
そして、また自分が死んだ時に父が悲しまないよう、父に嫌われ憎まれるようになってくれと。
その発光体には――吉良には朔耶の父への遠回りな愛情が理解できなかった。
しかし、朔耶の体を借り同化しているうちに朔耶の感情をも吸収し、
吉良はいつしか人間を、刹那を、そして父を愛するようになった。
だからこそ父を無下に扱った。
しかし、父は叱りながらもけして〝吉良朔耶〟を憎んだりはしてくれなかった。


空港に行く前に紗羅は、昔刹那が夜店で買ってくれた指輪を九雷に渡した。
九雷がつけてみてもそれはサイズが大きすぎて落ちてしまう。これが似合うのは紗羅だ――
加藤の事で刹那は警察に捕まりそうになる。九雷は指輪を刹那に手渡し、
これを早く紗羅に返して呼び止めろと言った。刹那は警察を振り切り空港へ走った。
一緒に逃げようと言う刹那の胸元へ、母に謝罪してから紗羅は飛び込んだ。
刹那は紗羅の左手薬指に指輪をはめさせると、二人で電車に乗り旅立った。
警察や無道母が追いかけようとする。かく乱させるために吉良は爆竹を投げ込むと、
血を媒介にして出した日本刀を片手に「俺が加藤を殺した」と刹那をかばうため警察に自主をした。


セラフィムという最高の肩書きを与えられながらも見掛けも中身も幼児のメタトロンは、
ロシエルが血まみれの地球を掲げて「これがお前達の死に様だ」と高らかに笑う姿を夢に見た。
メタトロン付きで覆面をした宰相セヴォフタルタは、そんな夢など気にせずに、
もうすぐ時間だから早くいつもの薬を飲んでくださいと言った。
「サンダルフォンだ。ぼくのおとうとのしんじゃったサンダルフォンが
 うまれてこなくてくやしくて ぼくにへんなゆめをみせるんだ」とメタトロンは泣き出た。



442 名前:天使禁猟区 12[sage] 投稿日:2005/05/22(日) 10:52:09 ID:???
メタトロンは元智天使長(グレートケルビム)のジブリールに会わせてくれないと薬を飲まないと言った。
美しい女天使ジブリールは心を閉ざし、いまでは生き人形のようになっている。
母性を見出しているのかメタトロンはジブリールに執心だ。
現れたザフィケルはあんなに愛らしいメタトロンを厳しく躾すぎではないかと笑顔で言う。
「アレクシエルやロシエルとあれも同類だ。創生神が創りあげた忌まわしき化け物だ」
神なき今天界の頂点に立つのは七大天使の一人でセラフィムのメタトロン。
しかし実質的にはメタトロンの宰相で同じく七大天使のセヴォフタルタが実験を握っている。
セヴォフタルタは恐怖政治で天界を治めている。表面上は内乱も沈静化している様に見えるが、
内に溜まった不満はどれだけのものか計り知れない。それに、顔も見せない独裁者など疑惑の的だった。


アラクネは人間たちを失神させ、吉良の刀を取り返し、事情聴取を受けていた吉良のもとへ行く。
その日本刀――不知火は吉良の前世からの付き合いだ。
アレクシエルは刹那に生まれ変わる前にも幾度も転生を遂げた。
生まれ変わりは全て、精神的にも肉体的にも酷く傷つけられた末の非業の死を迎えた。
それこそが天界がプログラムした、堕天使の最高刑だった。
刹那の一つ前のアレクシエルの転生した姿は、遊郭の若い遊女だった。
遊女は落ちぶれた武士の出である少年と隠れ忍ぶ危険な仲だった。
二人は意を決し駆け落ちをするが、追っ手によって少年は斬り殺された。
悲しみに遊女はアストラル力を爆発させ、遊郭の若旦那を殺してしまった。
吉良は朔耶の時と同じように、願いを叶える替わりに少年の体を借り遊女の後を追った。
〝あの人を愛してるといってくれ。そして、俺の手であの人を安らかにしてやってくれ…〟
遊女は若旦那を殺した咎で今までと同じように無残な最期を遂げてしまうだろう。
少年の願いを叶えるためにも、悲劇を繰り返さないためにも…吉良は刀を手に持った。
「お前は優しい奴だ。殺っておくれ。今まで誰も私のために、神の運命に逆らってはくれなかった…!」
遊女の姿のままアレクシエルはそう言い、吉良は刀を振り下ろした。
少年の体から抜け出て元の霊体に戻った吉良に、少年の刀の不知火はついていくと言った。
不知火は高僧千人以上の血を吸い自ら意志を持つ霊剣となっていたのだ。
吉良はいつでも呼び出せるよう、不知火を自分の血に封印したのだった。



443 名前:天使禁猟区 13[sage] 投稿日:2005/05/22(日) 10:54:25 ID:???
刹那と紗羅ははじめての契りを交わした。
ロシエルはその様子を見て悶絶した。
「何故姉さんは僕を苦しめるんだ…!」


紗羅はもう後戻りできないのだと涙を流す。「なのに、何故こんなに幸せなの…?」
刹那は今までの事件の顛末と自分の前世の話をする。この状況では信じざるを得ない。
束の間の幸せの時を過ごす二人にキリエは攻撃を仕掛けようとするが、
他の人間も巻き添えになってしまうとカタンに止められる。
ロシエルの寵愛を受ける自分に嫉妬し、邪魔をしているだけじゃないかと憤るキリエに
「私はロシエル様の子供なのですよ」とカタンは言った。


恋愛が禁じられた天界で子を成すなど禁忌中の禁忌。有り得ないと言うキリエにカタンは説明する。
天界には階級性からすら忘れられた最下位天使・精霊天使(グリゴール)がいる。
古の時代、人間とほぼ変わらぬ肉体を持ち地上での労働を任されたグリゴールは誘惑に弱く、
人間と子を成しそれが多くの悪魔を産む結果になり、神の怒りを買い精神だけの存在にされた。
カタンはかつてグリゴールであったと言う。
グリゴールは姿こそ見えないが常に空気中に無限に散っていて、
一般天使たちが力を使うたびにその命を消費された。
たとえどんなに下らない事で使われようと、命儚き彼らはただ一度の仕事で死んでいった。
彼らはあらかじめ知能を抑えられたために自らの運命を嘆く事は無かったが、
無残につけられた傷は間違いなく痛むのだった。
感情や知能の低いグリゴールの中にも物を考える変わり者は時々いた。それがかつてのカタンだった。
なんのために生まれたのだと悲しむカタンの前に現れたロシエルはその問いに答え、カタンに体を与えた。
「名前がいるね。〝導きたる者〟…カタンにしよう。私に会いたければ神性界のエテメナンキにくるがいい」
カタンは自分に奇跡を与えてくれたロシエルに再開するため狂ったように勉強し功績をあげ、神性界へ行った。
人間で言えば25、26歳ほどの外見のまばゆいばかりの美しさを持つロシエルにカタンは忠誠を誓った。



444 名前:天使禁猟区 14[sage] 投稿日:2005/05/22(日) 10:57:17 ID:???
現在16、17歳ほどの外見のロシエルが数百年も前の頃に20代の外見をしていたのはおかしいとキリエは言い、
たとえどんなにロシエルとカタンの絆が強かろうと自分はただ愛する者に仕えるだけだと宣言した。
恋愛が禁忌とされる天上界において、女は堕落を誘う不浄な存在という扱いだった。
体を武器にした堕落した女天使もいたが、キリエはただひたすらに努力した。
優秀なキリエに嫉妬し下劣な言葉を浴びせる男天使もいたが、キリエは耐えつづけた。
その反動か、高貴な存在であるロシエルが自分を愛していると言った時の喜びは例え様がなかった。
ロシエルからの愛を失ったらキリエはもう生きてはいけない。


吉良に面会しに来た父は、息子の罪は自分の罪だ、罪を償い二人で生きていこうと言う。
吉良父はこれから北海道に行かなければならないが、すぐに帰ってくるという。
「前にも言ったろう?俺は本当の朔耶じゃない。証拠を見せてやるよ」
吉良は鏡を割って破片で自分を傷つける。傷はつけてもつけてもすぐに消えていく。
「気持ち悪いだろ?おぞましいだろ?あんたを11年間も騙してきた俺を憎めばいい!
北海道でもどこへでも行け!」
近い日に刹那の覚醒によって東京が崩壊する事を吉良は知っていた。
その崩壊に巻き込ませないために父を遠くへ行かそうとしていた。


加藤殺しの犯人として吉良が捕まった事を知り、刹那達は東京へ戻る事を決意する。
東京への帰路の途中、人間のふりをしたキリエが近づいた。
キリエは刹那を殺そうとし、かばった紗羅が重傷を負った。
刹那が昔買ってくれた、赤いガラスのついた指輪が衝撃で壊れる。
「あの指輪じゃないと…だめ…なのに…!」紗羅は涙を流しながら絶命した。
刹那の発する、悲しみによる恐ろしい量のアストラル力が周囲のものを破壊する。
キリエの体も壊れていく。カタンは助けようとするが、キリエは情けは受けないと拒む。
「まだわからないのですか!ロシエル様は最初から貴方を捨石にするつもりだったんです!」
キリエをそれを認めず「うそよ」と泣き叫びながら死んでいった。
最期までキリエを救おうとしたカタンもまた、刹那のアストラル力を受け体の半分が崩れた。
刹那が首につけていた石のペンダントに亀裂が入る。同時に、吉良の体から大量の血が溢れた。
東京は、崩壊していった―――



447 名前:天使禁猟区 15[sage] 投稿日:2005/05/23(月) 08:43:52 ID:???
【物質界(アッシャー)編  ACT.4 GOOD-BYE-MOTHER】
吉良父は北海道へ行かず東京に残り、東京崩壊と共に重傷を負った。
「このまま行ったらもうお前と…息子と会えない気がしてな。
 お前はどんなに私に反抗していてもいつも目の奥で辛そうだった。
 ずっとお父さんはわかっていたよ…私に助けを求めていたんだろう?」
吉良はいつしか日常の心地よさに慣れきり、周りを騙す苦痛に耐えれなくなってきていた。
人間になりたいと願って止まなかった。死に行く父に向かい吉良は涙を流す。
そこへ正気を取り戻した刹那が紗羅を抱えてやってくる。刹那は吉良の正体を思い出した。


七支刀は何万人もの命を奪ったために自ら血を求める意志を持つ魔剣になり、そのために封印された。
その剣の持ち主は全て発狂し、時にはその剣で自らの命を絶った。使いこなせたのはアレクシエルだけだった。
そして、その剣の魂はアレクシエルの転生した姿を探して人間界を彷徨うになった――それが吉良だ。


本体である石が破壊された事によって吉良も重傷を負った。
刹那が石を治そうとした瞬間、セラフィタが現れた。
人間のふりをした化け物である吉良は今に必ず災いを呼ぶ。このまま殺せとセラフィタは言う。
セラフィタは天地創造の館(エテメナンキ)に人知れず幽閉されている。今のセラフィタは幽体だ。
東京が崩壊する前、紗羅の死んだ直後に地球の時間を固定するから、
その間に自分を救出しに来てくれとセラフィタは言う。
創造神は地球をリセットしようとしており、セラフィタはそれに反したために幽閉されたのだという。
何故紗羅が死んだ直後なのか、紗羅が死ぬ前に戻してくれと刹那は言うが、
紗羅の死は必要なものだと言われる。
紗羅の死がなければ刹那が死んでいたし、また怒りと悲しみによる刹那の完全覚醒もなかったのだ。
早く七支刀を殺せといわれるが、刹那は逆に石を修復し吉良を回復させた。
「俺の助けたい世界は俺にとっての吉良先輩がいる世界だ」
そして、紗羅のいる世界もでもある。紗羅の魂は今星幽界(ヘイディーズ)にあるという。
刹那は星幽界に行き紗羅の魂を連れ戻すと宣言する。吉良や九雷も流石に驚く。



448 名前:天使禁猟区 16[sage] 投稿日:2005/05/23(月) 08:45:45 ID:???
「俺はアレクシエル様みてーにお利口じゃねーからさ、あきらめ悪いんだよ。
 危険だから不可能だからって仲間や恋人を切り捨てたるなんてマネはできねーんだよ」
アレクシエルにも成し得なかった事を、刹那にはできるかもしれないとセラフィタは期待をかける。
七支刀を心臓に刺せば、七日の間刹那は仮死状態になり、その魂は星幽界へと行ける。
しかし七日が経ったり、胸に刺した剣が外れれば刹那は本当に死んでしまう。
危険はあるが、紗羅を生き返らせるための道は他にない。刹那は七支刀を胸に刺した。


カタンは半身を失いながらもロシエルに救われ生きていた。しかし今にも死にそうな状態だ。
アレクシエル覚醒の場に行くなんて自殺行為だ何故行ったと責めながらロシエルはカタンに鞭を奮う。
「キリエがあまりにも一途で…あなたにも一秒でも長く笑いかけてもらおうと
 必死な姿を見ていて……昔の私を思い出したのでしょう」
飲めばすぐに体が戻ると、ロシエルは自分の細胞をカタンの口元に寄せる。カタンは弾けたように笑った。
「とうとう私を殺しておしまいになるのですねロシエル様…!
 これを飲めば体は再生しても徐々に意識が侵食され最後には貴方の命令しかきかないただのロボットになる…
 本来の私は消え、あなたはあなたに無償の忠誠を誓う男を永遠に失うのです…!
 高貴なるロシエル様…誰よりも美しく誰よりも輝いて…そして誰よりも可哀相な…ロシエル様…」
最後まで抵抗するカタンの口に、ロシエルは無理矢理細胞を突っ込む。
幾本ものコードが伸び、それが凝縮され、カタンの体を再生した。
「美しい…? 何も知らないくせに。僕はね、神の排泄物なんだよカタン……
 お前はそんな僕の手の中から生まれたたった一つの綺麗なもの。
 懸命に慕ってくれるお前が可愛くて、お前だけは僕のようになってほしくなかった。
 なのにお前のこの手…こんなにも人間どもの血で汚れて…お前が悪いんだよカタン。
 お前があの時天上に帰っていれば…お前にこんな事しなくてすんだのに…」
ロシエルは涙を流しカタンにすがりついた。



449 名前:天使禁猟区 登場人物紹介[sage] 投稿日:2005/05/23(月) 08:47:24 ID:???
・無道刹那
 有機天使アレクシエルの生まれ変わりの男子高校生。
 実妹・紗羅を愛し、紗羅を甦らせるため星幽界へ向う。

・無道紗羅
 実兄の刹那を愛する。刹那をかばって死亡。

・アレクシエル
 ロシエルと共にかつて天使の中で最高の位置に立っていたが、
 邪鬼に味方し天に反旗を翻した咎で堕天された。
 神剣七支刀御魂剣を扱う最強の女戦士。

・ロシエル
 アレクシエルの双子の弟で無機天使。
 アレクシエルに執心する。

・吉良朔夜
 意志を持った神剣七支刀御魂剣の魂そのもの。
 アレクシエルを探して人間界を彷徨い、11年前に死亡した少年吉良朔夜から体を借りる。

・九雷
 ゲヘナ皇家の第14子で三姉妹の龍を操るドラゴンマスター。
 剣術の腕はかなりのもの。アレクシエルに心酔する。
 ゲヘナを滅ぼした原因である人間と天使を憎むが、
 刹那に恋心のようなものを抱くようになる。

・アラクネ
 九雷のいとこでオカマ。九雷の良き理解者。

・カタン
 ロシエルを慕う。死亡する寸前にロシエルの細胞を飲み込むが……
顔見世程度のキャラなどは次回。