妖狐×僕SS

Last-modified: 2012-03-03 (土) 23:24:45

妖狐×僕SS/藤原 ここあ

805 :妖狐×僕SS 1/5:2012/01/20(金) 13:22:56.12 ID:???
●基本設定
「メゾンド・章樫(あやかし)」という、高級マンションが舞台。
特別な家柄の者しか住むことを許されず、厳重なセキュリティが施され、
住人一人につき一人のシークレットサービス(以下、SS)がつくという。
実は住人は従業員も含めてほぼ全て、妖怪と人間が交わった末の子孫で、
そのうちでも珍しい、妖怪としての特性を色濃く持った「先祖帰り」たちだった。

先祖帰りたちは、始祖となった妖怪と同じ日・時間に生まれ、同じ容姿と性質を持ち、
稀にその記憶を受け継ぎ、不思議と同じ運命を辿るとされている。名前も初代のものをつけるのが慣例。
普通の子供のように両親の特性を継がないこと、人間離れした性質を持つことから、
先祖帰りは家庭内で異形視される事が多いため、マンションに身を寄せ合う事が確立された。
また、先祖帰りは純粋な妖怪に狙われることがあるため、互いに守り合う必要もあった。
SS制度はそのためのもので、主従としての拘束性はそれほど強くない。

●一章
白鬼院凜々蝶(しらきいいん・りりちよ /以下、りりちよ)は鬼の先祖帰りの少女。
妖怪の血を受け継ぐ家は何故か栄えるため実家はお金持ちで、
その事をやっかまれでいじめられたり、純粋な人間である妹と比べて親から愛情をそそがれなかったりと、
あまりいい環境で育たなかったせいで、なにかされる前に先手で冷たく暴言を吐いてしまう悪癖があった。
そんな性格を変えたいと思いながら、長年の習慣で変えられないことを、僕っ子であるりりちよは、
「時間は重みだ 僕はそう思う」
と内心でつぶやいた。

人と上手く接する事が出来ないりりちよは、高校進学を機に、一人で暮らすために家を出た。
メゾンド・章樫に入居する事になったが、一人で生きたいからとSS契約もしていなかった。
マンションにつくと、そこには何故かりりちよのSSを名乗る青年がいた。
御狐神双熾(みけつかみ・そうし)というその青年は、
何故か初対面のはずのりりちよを崇めており、「凜々蝶様」と呼んで慕い、
自主的にりりちよを守るためのSSに志願してきた。りりちよの転居の情報を得て前日に越してきたという。
身に覚えのない好意を向けられりりちよは困惑するが、ストーカーチックな双熾を仕方なくそばに置くことにした。


806 :妖狐×僕SS 2/5:2012/01/20(金) 13:24:20.84 ID:???
りりちよは危機を何度か双熾に救われ絆を深めていきつつ、
同じマンションに住み同じ高校に通う他の先祖帰りとも仲を深め、
少しずつ悪癖の払拭に励むようになった。

その他の主なメインキャラ

・反ノ塚連勝(そりのづか・れんしょう)
 一反木綿の先祖帰り。普段は普通の姿で高校3年生。りりちよとは幼馴染である。
 悪態をつくものの文面では本音を出せるりりちよからよく長文の手紙をもらっており、理解者。

・雪小路野ばら(ゆきのこうじ・のばら)
 雪女の先祖帰りで成人女性。反ノ塚のSSを務める。
 若干百合っけがある。

・青鬼院蜻蛉(しょうきいん・かげろう)
 りりちよと同じく鬼の先祖帰りの青年。常に仮面をつけた変態。口癖は肉便器。
 慣例としてりりちよの許嫁で、文通していた。

・髏々宮カルタ(ろろみや)
 がしゃどくろ(巨大なドクロ)の先祖帰り。普段はりりちよと同い年の少女。蜻蛉のSS。
 ぼんやりとした性格で食べ物ばかり食べている。

・渡狸卍里(わたぬき・ばんり)
 豆狸の先祖帰り。普段はりりちよと同い年の少年。カルタの幼馴染で思いを寄せる。

・夏目残夏(なつめ・ざんげ)
 百目の先祖帰りの成人男性。渡狸のSSを務める。
 過去未来、人の思考、物理的なものに関わらず様々な物を見通すことができる。



807 :妖狐×僕SS 3/5:2012/01/20(金) 13:25:54.53 ID:???
先祖帰りの扱いには家庭ごとに差異があった。
尊ぶ家もあれば差別するところもあり、かつての双熾は軟禁されていた。
両親が誰かも知らないような環境で双熾は、汚い手を使ってでも自由を得ようともがいた。
手始めに使用人女性に体で媚を売り、より上の立場の女性に近づいていき、
とうとう一族の中で一番立場の強い女性に行き付き、先祖帰り家系の集まりに顔を出せるまでになった。
そこで出会った御狐神家より立場の強い家の女性は、
先祖返りの子供を持つ母親で、見返りなしに双熾を引き取った。
その家の息子は蜻蛉で、まだ子供である彼の世話を見る代わりに、
双熾は給与をもらい、いつかその金で家を出て一人で生きようと考えていた。

双熾がりりちよを知ったのは、蜻蛉に彼女からの手紙の返事を書くよう求められてだった。
手紙で知るりりちよは、繊細で潔癖そうな少女だった。
物心ついた時から他人に媚を売るための作法ばかり学習してきた双熾は、
淡々と相手が好みそうな内容を返信し続け、あくまでも仕事として手紙を書いていた。
だがいつからか、感傷的なりりちよの文に牽引されるように、
無感動だった双熾の中に感情が生まれていった。

一度りりちよは蜻蛉の家にやってきた。
遠くから見た実際のりりちよは、傲岸不遜な物言いをする子だった。
あんな子があの手紙を書いていたとは思えず、向こうも代筆だったのではと双熾は一度落ち込んだものの、
表面上は強気なりりちよが、他人の家ですごす緊張から帰宅した後吐いたということ、
代筆を頼む器用さもなく手紙はやはり自筆だった事、家庭の事情などを蜻蛉から知らされ、
自分と同じように不遇な立場にいながら感情を殺せず耐え続けているりりちよを守りたいと思うようになった。

というのが双熾がりりちよを以前から知っていた理由だった。
りりちよは文通の相手が蜻蛉ではない事には気づいていたが、まさか双熾だとは知らず、
蜻蛉の暴露により真実を知った。好意を寄せてくれる双熾のためにもと
りりちよは性格矯正をがんばるようになった。



808 :妖狐×僕SS 4/5:2012/01/20(金) 13:27:11.74 ID:???
マンションの専属コックは河童の先祖帰りで、彼の息子は普通の人間だった。
先祖帰りは始祖と同じ特性を持ち、言い換えれば生まれ変わりのようなものだった。
「お父さんが死んだらまた生まれ変わるんですか?
 お父さんは来世でお母さんと違う人と結婚して僕じゃない子供のお父さんになるんですか?」
不安がるコックの子供のために、来世のコックに向けてタイムカプセルを残そうという企画が起こり、
りりちよたちも手紙を書くことになった。
来世の自分なんて実感がわかないからとりりちよは、差し当たっての目標として、
「悪癖を直して双熾のそばにいたい」的な事を書いたところ、うっかりそれを双熾に見られてしまった。
りりちよは激しく動揺したものの、口頭で改めて愛を告げ、双熾と交際するようになった。

りりちよと双熾はラブコメな日々をすごし、りりちよ入居後から半年ほどがたった。
そんな時、先祖帰りたちの眠れる妖怪としての本能を呼び起こし、
「百鬼夜行」を行い人間に害なそうとする謎の少年・犬神命(いぬがみ・みこと)が現れた。
それに逆らい立ち向かうりりちよたちだったが、犬神は強く、
りりちよをかばおうとした双熾は首を切り落とされ絶命した。

やがてまた春が訪れ、一人の少女がマンションに引っ越してきた。
つい人に悪態をついてしまうその少女はりりちよという。
彼女の前に現れた青年・双熾は、何故かりりちよを「白鬼院様」と慕い、SSになると申し出た。
りりちよは初対面の彼を前に、何故か涙をこぼした。
「時間は重みだ 僕はそう思う」

第一章終わり



809 :妖狐×僕SS 5/5:2012/01/20(金) 13:30:38.43 ID:???
●二章
りりちよお金持ちの子で、、家におもねり表面上だけ愛想よく接してくる同級生らに苛立ち、
人を遠ざけようとつい悪態をついてしまう悪癖を身につけていた。
マンションに移り住んでからは、SSの双熾や他の住民に囲まれ少しずつ丸くなっていった。
そんな彼女の前にある日、中年男性の姿となった反ノ塚が現れた。
その姿を見た瞬間、りりちよは意識を失った。

実は二章は一章から23年後の話で、りりちよを始めとするほとんどのキャラは、
一章のキャラの来世であった。反ノ塚だけは死なずにそのまま年を取っていた。
一章双熾の死後、一章りりちよはふさぎこみやがて死んだ。
百鬼夜行について調べようとした他の面々も次々に死んでいき、百鬼夜行の消息も途絶えた。

先祖帰りとは、ただ祖先の特性を継ぐのではなく、本来不死のものである妖怪が人とまざった事で、
人の腹を介して何度も再生している姿だともいえた。
生まれ変わった先祖帰りらは、りりちよと双熾は一章と同じ年齢差だが、
カルタはだいぶ年上の二十歳、野ばらと渡狸はりりちよより年下になった。
りりちよと双熾と渡狸以外の面々は、つい十数年前の事である前世の記憶を思い出していた。
彼らは時々集まっては、自分たちの死の原因をつくった百鬼夜行とはなんだったのかを調べ続けていた。
前世の事を忘れているりりちよらに、辛い記憶を無理に思い出させたりしないようにしていた。
人の心をある程度見ることのできる夏目は、双熾は本当は前世を思い出しているのではと疑っていた。

反ノ塚と再開し倒れた後、りりちよは悪夢を見た。
誰かの生首を抱いて泣くというものだった。
目覚めたりりちよは、夢の中の生首と同じ顔の双熾の姿に違和感を訴えた。
双熾はりりちよのことを、「白鬼院様」から「凜々蝶様」に言い換えるようになり、
暗示をかけるかのように、悪いことは全て忘れるよう諭し、
りりちよは胸に引っかかる断片的な記憶を忘れることにした。

以下連載中