星幽界編

Last-modified: 2008-09-23 (火) 10:39:06

天使禁猟区 星幽界(ヘイディーズ)編

482 名前:天使禁猟区 17[sage] 投稿日:2005/05/27(金) 09:49:49 ID:???
【星幽界編 ACT.1仮面の少女】
地球の動きが停止した事は天上界でも騒ぎになっていた。
事件の中心人物である無道刹那は覚醒と同時にそのショックで死んだのではないかと噂されていた。
そこへロシエルが現れ、刹那が天使も悪魔も入れぬ人間の魂の聖域・星幽界に行った事を告げる。
星幽界に入れる天使は元七大天使であった屍天使ウリエルだけだ。
人々はロシエルを敬い賞賛する。しかしロシエルの心は晴れない。カタンはいまだ目覚めないのだ。
カタンの体を入れた棺の中では、無数のコードが蠢いている。カタンをつくった頃の力と、
今のロシエルの力はあまりに質が違いすぎ、二つの力が反発しあっているのだ。
このまま適合できなければ、カタンは死に絶えるだろう。
カタンは智天使代行のドビエルの部下という立場にあった。
セヴォフタルタは、ロシエルの復活をさせたカタンの罪はお前にもあるとドビエルを責め、
ロシエル殺害を暗に強制した。ドビエルは首を縦に振った。


上級霊の結晶体で星幽界の指導者である閻羅王は、紗羅の魂はもう自分の監視下にはなく
星幽界の中心の泉に植える宇宙樹(ユグドラシル)の根元に住む地獄門の鍵守人・ウリエルが
紗羅の魂を連れ去ったという。
死者は星幽界で修行し霊格をあげ、その成果によって地獄行きか楽園行きかを定められる。
ウリエルはその地獄行きの門番であり、星幽界で最も恐れられる処刑人だ。
紗羅の魂は〝地獄に落ちるほど罪深い少女の魂〟として宇宙樹の生贄にするという。
その罪とは、実兄と結ばれた事である。紗羅を救うため刹那は宇宙樹へと向う。
閻羅王がつけた道案内人は、アレクシエルが殺した加藤だった。
刹那の前世のいざこざに巻込まれ死んだ加藤は刹那を恨んでも仕方がない。
しかし加藤はどうせ目的があって生きていたわけではないし、
過ぎた事はいいいじゃんなどとふざけた態度をとり、死んだ奴を生き返らせるなんて無理だ、
諦めて自分のようにいつでも適当に流していれば死んだって平気だと言った。
「俺はやってもいないうちから諦めるぐらいなら戦って傷ついたほうがマシだ。
 それに死ぬのが怖くないだって?あんたは息を引き取る前、死にたくないって言ったじゃないか!」



483 名前:天使禁猟区 18[sage] 投稿日:2005/05/27(金) 09:52:54 ID:???
反論しかけた加藤はその場から駆け去る。
浄化されたはずのロシエルのコードはいまだに加藤の体を蝕んでいる。
精神体だけの存在になっている加藤の弱い心が、ロシエルを恐れる心が幻覚を見せているのだ。
そして荒みきった魂はいくら修行しても霊格など上がる素振りもなく、このままでは加藤は地獄行きだ。
閻羅王は、刹那を殺せば楽園行きにしてくれると言った。
「俺はしれっとした顔で裏切るのも裏切られるのもなれっこなんだよ」加藤はそれを承諾した。
一人でいる加藤の元に、星幽界を彷徨う亡者が襲い掛かる。
閻羅王より与えられた霊波を隠すためのコートも、亡者を倒すための武器も刹那のもとに置いてきた。
絶体絶命の時、追いかけてきた刹那がそれを救った。
刹那は加藤の真似をし「過ぎた事はもういーじゃん。先に進もう」と言った。


メタトロンはセヴォフタルタに走りより「おうたをうたって。
うささんがいってたよ、むかしはよくうたってたって」とせがむ。
「……うさぎさんに伝えて下さい。私はもう歌えないんです。みんな…忘れてしまったんですよ…」
セヴォフタルタはそう言い、歌の代わりにメタトロンを抱きかかえ手を握った。
メタトロンの片手にはうさぎのぬいぐるみがにぎられていた。


メイド姿の少女は〝侵入者〟の気配に苛立つご主人様のために侵入者を退治しようと決意した。
彼女は亡者にペルソナを被せ、亡者を意のままに操り侵入者に向けた。
喧嘩しつつも仲良く(?)進む刹那と加藤。
襲ってきた亡者を刹那は逆に浄化させ成仏させた。後には謎の仮面だけが残った。
その仮面が加藤の顔に吸い付くように消えた気がしたが、深く気にせず二人は先に進んだ。

ドビエルの部下はロシエルの城に侵入した。ロシエルは謎の棺を城に運び込んだという情報がある。
なにか弱みにならないかと調べに棺の中を覗き込んだ侵入者たちは、
中から飛び出してきた蠢くコードに体を絡めとられた。
「食欲が出てきたのはいいけど、ちょっとお行儀が悪いなんじゃないかな?」
気付いたロシエルは棺にそう話し掛けるが返事はない。ただコードがロシエルの体にすりよるだけだった。
「今度はもっと若く柔らかい生餌をあげよう…」



506 名前:天使禁猟区 19[sage] 投稿日:2005/05/30(月) 09:12:59 ID:???
【星幽界編 ACT.2大地の天使Uriel】
現在、七大天使の中で更に上の位置にたつ四大天使はみな問題がある。
火の天使ミカエルは荒くれ者の問題児、水の天使ジブリールは心を閉ざし人形状態、
風の天使ラファエルは十戒を堂々と破り女にうつつを抜かし、土の天使ウリエルは星幽界へ失踪した。
ウリエルははアレクシエルを堕天させた張本人であり、人知れずアレクシエルを愛していた。
愛する者を追いやった苦しみでウリエルは失踪したのだった。


ペルソナに操られた加藤は刹那を殺そうとするが、意識を取り戻しペルソナを外そうとした。
しかし顔にはりついたペルソナは外れない。そこへ紗羅と同じ顔をしたメイド姿の少女が現れた。
ペルソナを操るメイドを倒せばいいかもしれないが、紗羅なのかもしれない少女に手をかけられない。


十字杖で亡者を倒す事によりその力を吸収し、亡者の邪念までも吸い取り闇に犯された加藤は、
人の邪念に吸い寄せられるペルソナには格好の餌だった。
刹那には邪念を浄化する力があるので無事だ。
また、閻羅王により渡されたコートは、霊波を遮断するどころか逆に亡者を引き寄せる仕組みになっていた。
閻羅王は最初から加藤も刹那も潰す気だったのだ。
自我を失いかける加藤。しかし、刹那の呼びかけによって意識を戻し、十字杖を自らの胸に刺し自害した。
地球で死ぬ寸前、本当は、加藤は何も生まず何も残さず、虫けらのように死んでいくのを恐れていた。
「いいかうぬぼれんなお前のためなんかじゃねえ。
こうすりゃお前一人ぐらいは〝俺〟がいた事を忘れられないだろ」
そう言い残し加藤は消滅した。お前なんかが紗羅のわけがないと、刹那はメイドを攻撃する。
しかし大地の守護でメイド少女は大した怪我を負わなかった。
だが、少女の顔が剥がれ、ロボットのような断面が現れた。
そこへ巨大なドラゴンが現れた。ドラゴンには長身の男が乗っている。ウリエルだ。
「眠れる死者を呼び覚まし、俺のドールに恥をかかせた。覚悟はいいか愚かなる侵入者よ」
ウリエルは大鎌を使い刹那に襲い掛かる。ウリエルは地面や木すらも操るが、
大地の守護のない空中で刹那は留めを刺そうとした瞬間、ウリエルの顔がわれた。
彼は、過酷な処刑人としての仕事を全うするために自らペルソナをつけ、逆にペルソナに操られていたのだった。



507 名前:天使禁猟区 20[sage] 投稿日:2005/05/30(月) 09:18:10 ID:???
大地の色をした黒みのある羽を持つウリエルは、声を持たず刹那の脳に直接話しかける。
彼は大地の力により自分と刹那の傷を治すと、勝手に動き回りすぎたために活動停止したドールを抱え、
消滅した加藤を甦らせるからついてこいと宇宙樹へ招いた。
ドールは硬質化した植物でつくられた生命体に近い機械人形。かつてはただ形だけの物だった。
地球の動きが停止した日に、人間のための冥界に何故か天使の魂が迷い込んできた。
地球のほうからやって来た彼女は酷く傷つき、恋に破れた痛みを抱え泣いていた――キリエだ。
あまりに哀れなその姿に同情したウリエルは、彼女の魂をドールに移植したのだった。
生まれたばかりの赤子のようなドールは、ウリエルに忠誠を誓い動き回るようになった。
問題のある行動もするが、今回の一件で少しは人の感情も理解できるようになっただろうとウリエルは言う。
ドールの顔が紗羅に似ているのは、顔をつくる時紗羅をモデルにしたからだ。
その紗羅は今、至高天にいる。元々ウリエルが生贄の名目で紗羅を連れ去ったのも頼まれたからだった。
紗羅を至高天へ連れて行ったのはザフィケルだ。天と地の大戦において猛将として恐れられた男だが、
天地大戦後の失明と同時に何故か悟り済ました聖人のようになった謎の人物だ。
話を聞き、ザフィケルがかつて地球で会った神父だと刹那は気づく。


ロシエルは自分の細胞を他者に与える事によって新しい〝負〟としての生命を与える事が出来る。
彼と対を成すアレクシエルの生まれ変わりである刹那もまた、その細胞を与える事によって
ロシエルとは逆の意味での生を与える事が出来るだろうとウリエルは言う。
刹那は加藤が自害した瞬間に無意識に時間魔法を使い、加藤の魂を消滅寸前で固定していた。
加藤は今固定された時間の中で、過去の最も辛い頃の記憶を眺めさせられている。
ウリエルは刹那を加藤の精神世界に送り込み、加藤を甦らせよといった。



508 名前:天使禁猟区 21[sage] 投稿日:2005/05/30(月) 09:22:23 ID:???
加藤の下の名前は故という。早く死ぬようにと父がつけた名前だ。
幼い頃の加藤はそれも知らず父に懐いていた。しかし父はいつも加藤と姉の冴とを差別した。
加藤は姉が父からもらったオルゴールを盗み、埋めた。
数年後加藤は知る。何故自分が父に憎まれているか。それは加藤が母の不義の子供だからだ。


ある日冴が結婚する事になったと聞いた。加藤はかつて埋めたオルゴールを掘り起こし冴に渡した。
長い月日の間にそのオルゴールの事を忘れていた冴は、盗んだものじゃないかと怪訝な顔をした。
いいから受け取れと加藤は言い、口論のうちに冴は加藤が不義の子供である事を言ってしまう。
「知ってて今までいい姉貴ヅラしてたのかよ。そうだよ俺は母さんの忌まわしい過去の産物だ!
 だからなにしたって不思議じゃねーよな!」加藤は冴の服を引き裂いた。
冴の悲鳴に父が駆けてきて加藤を殴った。乱闘の中で、オルゴールは壊れた。
加藤には本当に姉を犯す気などなかった。
とっくに壊れている家族に知らぬふりした冴を傷つけたいと思ったのだ。
「姉貴は自分のしている事が俺を傷つけているなんて知らなかった。ただ浅はかで優しい女だった。
 親父の付けた名前は見事に効いたよ。俺は17で死んだ。
 俺は現実に背を向けないと生きられない弱い人間だ!」
加藤の魂は大量の電気コードに縛められてその場から動けなくなっていた。
辛い過去を持ちながらも負けずに生きていたあんたは十分強いと刹那は否定する。
「覚えてないか?あんたが死んだ時だってあんたは自分の力で冥道を進んでいったじゃないか。
 俺はただ道を照らしただけ。本当に弱い奴はそれすら見つけられないんだ。その呪縛も解けるはず」
コードから開放された加藤の魂を刹那は地球へと連れて行く。
地球と共に動きを停止した冴は夫と上手くいっているのだろう、とても美しかった。
その傍らには、修理されたオルゴールと家族の集合写真があった。
壊れてしまっているとわかっていても、それでも繋ぎとめておきたいと冴は思ったのだ。
「世界中の奴が俺を忘れてしまっても、あんたが17で死んだ馬鹿な弟の事を、
 時々思い出して悲しんでくれれば…
 あんたの胸に刺さった小さな刺になれるなら、それだけで俺はやっと死んでいける」
加藤は姉の頬に手を添えて最後の別れを告げると、刹那の羽を口にし、復活した。



509 名前:天使禁猟区 22[sage] 投稿日:2005/05/30(月) 09:26:38 ID:???
貧民街に住む堕天使の少女・ティアイエル(ティアラ)は謎の爺に腹いっぱい食わせてやると言われついて行く。
しかしついた先では、逆に自分達がコードだらけの化け物の餌にされる事になった。
「あたしは綺麗に食べてね。食べ残しは嫌だからね。怖くないよ、あたしもお兄ちゃんと同じだから」
動じずにティアラは言う。彼女は人の心を読む能力を持っていた。
そのため皆から嫌われ地下共同墓地に閉じ込められた。
飢えで死にかけるティアラに死体が話し掛けた「自分を食べて生き延びろ」と。
ティアラは死体を食べた。しばらくして発見され救出された彼女は
天使喰いと罵られ堕天使の烙印を押され、貧民街に捨てられた。
そこですらティアイエルは迫害され毎日石を投げられていた。
カタンは棺の中からコードを伸ばし、ティアラをなでた。
優しさと良心がカタンの中に残っていて、しかし体は血肉を求め、
その事でカタンが悩んでいる事にティアラは気づいた。
昔に戻りたいとカタンは切に願っていた。
何故生餌を食べないと怒るロシエルに、ティアラは言う。
「彼がこんな姿になったのはあなたのせい。彼の中の良心と貴方への忠誠心が戦っているせい。
 道は二つ、良心を捨てあなたと共に修羅の道を歩むか、あなたを捨て今までの罪を償い正しき道を歩むかよ」
生意気だ、とロシエルはティアラに攻撃をするが、棺から出てきた大量のコードがそれをかばう。
お前なんてもういらないとロシエルはカタンを罵倒して出て行くが、その言葉は嘘だとティアラにはわかっていた。


ウリエルは地獄の入口まで刹那たちを連れてくる。ここでは幾人もの罪人たちがウリエルにより始末された。
「今日裁かれる罪人は私だ。アレク…今回は私がお前に裁かれる番だ」ウリエルは大鎌を刹那に渡した。
刹那の前世たちが非業の死を遂げていったのは、ウリエルが生まれつき持つ
言霊咒法と呼ばれる呪いをかけたためだった。
屍天使の役目としてやったとはいえ、ウリエルが最愛の人を刑に架けた事に変わりはない。
ウリエルは自分を責め、自ら声帯を引きちぎったのだった。
「あなたの想い人に私は適うべくもなかったのだから…私は狂いはじめていたんだ。
 さあ、殺しやすくなったろう! 私を君の手で裁き早く殺してくれ!」
アレクシエルの想い人とは誰だと刹那は訊ねる。
「君の想い人は…天使が決して愛してはならない方だ…!」



510 名前:天使禁猟区 23[sage] 投稿日:2005/05/30(月) 09:32:01 ID:???
【星幽界編 ACT.3残酷な絆】
アレクシエルが愛したのは創生神だ。それを知ってか知らずか神はアレクシエルをないがしろにし、
ロシエルばかりに愛を注いだ。全てはそこから狂い始めた。早く殺せとウリエルは言う。
「すぎたことはもーいいじゃんやっちまったもんはしょーがねーもん」
シリアスなウリエルに対し、刹那は加藤の真似をしてふざけて言った。
前世の記憶などないから恨もうにも恨み様がないし、
声帯をちぎるほどに苦しんだウリエルをこれ以上責める必要はない。
過去の女よりも、今傍にいるドールを大切にしろと刹那は言った。


紗羅の居場所が別だと知ったからには、タイムリミットが近づいているし早く体に戻らなくてはならない。
しかし星幽界は転生した魂以外の脱走を防止するため入口はあっても出口はない。
全ての制御管理を麻痺させるほどの何かが起これば出口を開かせる事は出来るかもしれないが…
閻羅王のもとへ向う刹那にウリエルはドラゴンを――廃竜(ニドヘッグ)を渡す。
「どうやらお前は廃竜が長い間待っていた待ち人らしいからな」刹那と加藤は廃竜に乗った。


ドビエルの部下たちがロシエルの城に襲撃を仕掛ける。カタンとティアラも標的になる。
ティアラは撃たれ、光の国にいくための不殺を破りカタンはドビエルの部下達を殺してしまう。
「あーあ、やっちゃったねカタン。でもあたし最初からわかってたよあんたがあの人を選ぶ事。
 でも、二人ならなんとかなるかもしれないって、もしかしたらって…そう思っちゃって…
 あたし今度こそ神様に会えるかな? そしたら…今度こそ答えてくれるかな…」
〝神様 私達を愛してる?〟息絶えたティアラにカタンは涙を流した。
一方、ロシエルにドビエルが襲い掛かるが、どんな武器を使ってもロシエルは死なない。
セラフィタしか使えないといわれる時間魔法を使い、ロシエルは細菌兵器さえ死滅させる。
「殺せると思った?僕にさえ殺し方のわからないこの体を…!」
ドビエルはまた兵器を飛ばす。それをカタンが跳ね飛ばした。
ティアラの死によってカタンは修羅の道を歩む事を決めたのだった。
瀕死のドビエルは死を恐れ生かせてくれと懇願し、ロシエルの細胞を口にした。
ティアイエルも甦らせようかとロシエルは持ちかける。
「いいえ…やめておきましょう。可哀相です…残酷です…あまりにも」



511 名前:天使禁猟区 24[sage] 投稿日:2005/05/30(月) 09:34:09 ID:???
片翼ずつを分け合って生まれた双子の邪鬼・ノイズ(女)とボイス(男)。
ボイスは忠誠以上の感情を九雷に持ち、刹那の事を良く思ってはいなかった。
刹那の胸に刺さる七支刀を抜けば、刹那はこのまま死ぬ。
ボイスは刹那の胸元へ手を伸ばした。それを朔夜が止める。
しかし弾みでボイスは七支刀は抜いてしまった――


刹那の死体にすがりつく九雷。ボイスは牢に謹慎させられている。
ノイズがやってくるが、何故か硫黄の香りを漂わせ話し方もいつもと違う。
「お前はノイズやないな!何者や!」九雷が叫ぶとノイズのふりをしていた者は、
顔を白塗りにしたピエロのような姿を現し、目にも止まらぬ動作で周りの者を次々と殺した。
魔界の大貴族、魔神級(グレートディーモンクラス)の力の持ち主だ。
「地獄の最下層子宮(シオウル)より…我が王ルシファー様の命を受け参上しました。
 わたしくしはただの道化者…いかれ帽子屋とでもお呼び下さい」
悪魔族の末裔でありながら邪鬼は神龍を崇め地獄との国交を絶った。
その奢りこそが天界の付け入る隙を招いた。今こそルシファーに忠誠を誓えと帽子屋は迫る。
偉大な父王の名にかけゲヘナは守る、けして地獄の手先にはならないと九雷は拒絶した。
「今度お会いする時は色良い御返事を。では第二幕でお会いしましょう」
帽子屋はそう言い残し影の中に消えていった。目覚めたノイズの左手には、謎の紋章が残されていた。


〝どこ?ここはどこ?〟
ラジエルは最近謎の白昼夢ばかり見る。
訊ねかけるのは少女の声で、何故か水のイメージがある。
神出鬼没ですぐふらふらするザフィケルを探していたラジエルは、
ザフィケルの部屋で隠し扉を見つける。
その中には、顔だけの美しい女性の彫像と、人間の――紗羅の魂があった。
人間の魂をコレクションする趣味でもあったんですかとラジエルはザフィケルに問い詰める。
「彼女は地上より至高天に迷い込んだ珍しい霊体です。
 身元が判明するまでここで保管していたんですよ。
 下手に最高会に報告すれば白衣軍団の研究材料にされるでしょう?
 彼らのマッドサイエンティストぶりは君が身を持って知っているはず」
不用意に上司を疑った自分をラジエルは恥じるが、ザフィケルは不問に付した。
眠りつづける紗羅の魂は、刹那の名を呼び続けていた。



512 名前:天使禁猟区 25[sage] 投稿日:2005/05/30(月) 09:34:57 ID:???
セヴォフタルタの前にドビエルが現れる。しかし彼は外見こそ以前と変わらないが、
中身は得体の知れない化け物へと変異していた。
「魔の恐怖に飲み込まれたくなければ、自らが魔になればいい」
ドビエルはそう言い残しセヴォフタルタの前から姿を消した。


星幽界を出るために霊が大量に封印されている〝坩堝〟を加藤は十字杖で壊す。
宇宙樹から離れたために皮膚がぼろぼろになった廃竜に乗り、刹那は坩堝の上にいる加藤を迎えに来た。
しかし、十字杖の最大の力を引き出したために加藤は死にかけ、自分を置いて逃げろと刹那に言う。
尚も加藤を救おうとする刹那を乗せ、廃竜は星幽界から離れていった。
「救世士?泣いているのですか?」廃竜はそう訊ねかけた。



513 名前:マロン名無しさん[] 投稿日:2005/05/30(月) 18:17:24 ID:H+BgP3kt
なんで刹那が救世主?



514 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2005/05/31(火) 09:48:17 ID:???
地球を救う予定だから

523 名前:天使禁猟区 26[sage] 投稿日:2005/06/07(火) 22:57:55 ID:???
【星幽界編 ACT.4降臨】
廃竜はかつて天使だった。彼には密かにある女天使を愛していた記憶だけが残っている。
女天使――ライラは青みのある黒髪に理知的な瞳、額に逆十字の傷跡を持っている。
ある日、優秀すぎたライラは妬みを買い集団暴行を受け、それに抵抗し逆に相手を傷つけてしまった。
潔癖なライラにそれは受入れ難い事実で、彼女は助けに入ったかつての廃竜をも告発し、
事件に関わる者全てを無にする事で自分を守った。
廃竜はその時処刑され魂だけの存在となり、ウリエルに体を与えられた。
刹那は、復讐しろとでもいいたいのかと訊ねるが、廃竜は否定する。
「もしも彼女に出会えたら、私は最後の瞬間でさえも君を恨んでなどいなかったと、
 あなたは少しも汚れてなんかいない、もう苦しむ必要はないのだと、伝えて下さい。
 彼女は私を確かに愛していたし…今もどこかで苦しんでいるのです…」
廃竜は自らの鱗を刹那に託す。やがて、冥道の終りが見えてきた。
アストラル力の弱い廃竜は、宇宙樹の保護によりその形を保っており、
そこから離れすぎたために消滅した。

刹那の体が死んでしまったためか、何故か刹那の意識は、九雷によって保存されている
アレクシエルの体の中に目覚めてしまった。刹那はそれに気付かずまたすぐに眠りに落ちた。

いかれ帽子屋は謎の影に向かい、九雷をあなたの花嫁にすると告げる。
「彼女さえ手中に収めれば自然霊である神龍の妖力と、救世使と呼ばれるあの少年も手に入れられる。
 黒の大魔道書(グラン・グリモアール)に名を連ねし悪魔としてこのいかれ帽子屋…
 いえ、地獄の七君主(サタン)ベリアルは我が王ルシファー様に永遠の忠誠を誓います」
謎の影は、地獄を統べる魔王・ルシファーだった。

653 名前:天使禁猟区 [sage] 投稿日:2005/06/20(月) 09:59:19 ID:???
・ウリエル
 四大天使の一人で土を守護する屍天使。
 言霊咒法という他者の輪廻を捻じ曲げる能力を生まれつき持っており、
 愛するアレクシエルに言霊咒法をかけた自分を責め、自ら声帯を引きちぎった。
 星幽界に失踪してからは地獄門の鍵守人となる。

・ドール
 紗羅をモデルにした顔を持ち、キリエの魂を有する。
 何故かメイド姿で、ウリエルを御主人様として敬愛している。

・ティアイエル
 他人の心を読む能力を持つ。
 堕天使の烙印を押され貧民街に捨てられたところをカタンの餌にされそうになる。
 カタンと共に罪を償い光の国を目指そうとするが、ドビエルの部下によって殺される。

・加藤故
 不義の子としての父からの扱いによって非行にはしった不良少年。
 地球で刹那の前世のいざこざに巻き込まれ死亡。
 星幽界でも刹那をかばって魂が消滅。
 ウリエルによって甦るが、刹那のたまにまた死ぬ。