鋼の錬金術師 外伝 師匠物語

Last-modified: 2008-10-06 (月) 22:51:42

鋼の錬金術師 外伝「師匠物語」/荒川弘

666 名前:鋼の錬金術師外伝 「師匠物語」[sage] 投稿日:2006/01/12(木) 21:24:22 ID:???

イズミ・ハートネット18歳、彼女は北のブリッグス山を訪れていた。
凄腕錬金術師シルバ・スタイナーの元で修行するために。


山小屋の暖炉の側で本を読む老人。イズミが話しかけても耳が遠く会話にならない。
「弟子入り!」彼女が叫ぶと、老人は言った「一ヶ月」
老人はイズミに一本のナイフを投げてよこした。
「そのナイフ一本で一ヶ月、ブリッグス山で生き延びてみな」
「そうしたら本弟子にしてやるよ」
イズミはそれが錬金術とどう関係があるのだろうと疑問を抱きながらも
高名な錬金術師の言うこと、深い思慮あってのことだろうと山に入った。


寒さに凍える生活が始まった。時にはブリッグス要塞の山岳警備隊に出会い、
イズミはその装備を奪うことで食料を得た。しかし、やがてイズミにも限界が近づき、
大自然の中で自分の存在があまりに小さいことを痛感する…


…自分が死んでも何もなかったかのように、日はまた昇る。
世の中の流れは強く早く、残酷だ。この世は大きな力に従って流れる。
しかし、その流れの元は自分のような小さな存在。
小さな存在なくして、大きな流れは存在しない。
大きな力の流れを知りその力を利用する小さな存在、それが錬金術師。
基本はすなわち「一は全、全は一なり!!」
そう気がついた時、イズミは熊をも投げ飛ばしていた。


一ヶ月が過ぎ、イズミは熊を肩に担ぎ山小屋に帰った。
熊を老人の前に投げ落とすとイズミは再び弟子入りを求めた。
「あー?」老人は耳に手をあて声を出す。
「あー、れんきんじゅつ。だったら弟のことじゃな」
「わしの名はゴルド・スタイナー。シルバの兄で格闘家じゃよ。」
「弟はとっくの昔に死んだ。我が弟子となり、共に修羅の道を歩もう…」
ドガッ。 ゴンッ。
老人が言い終わるや、鈍い音が響き渡った。
山小屋には床に倒れる老人だけが残され、彼女の姿は既になかった。