鋼の錬金術師 外伝 盲目の錬金術師

Last-modified: 2008-10-06 (月) 22:54:03

鋼の錬金術師 外伝「盲目の錬金術師」/荒川弘

615 名前:盲目の錬金術師1[sage] 投稿日:2006/06/18(日) 23:41:06 ID:???

「鋼の錬金術師 盲目の錬金術師」
半年経ってるようなので、書いてみました。


【前提】
エドとアルの兄弟は死んだ母親を蘇らせる為、人体錬成を行い、失敗。
その代償として兄のエドは右腕と左足、弟のアルは身体を全て失った
(現在は からっぽの鎧に魂を定着)
二人は元の身体を取り戻す方法を探して、旅を続けている。


【ストーリー】
エドとアルは、人体錬成に成功したという噂のジュドウ氏に会いに行く。
彼が仕えているハンベルガング家には夫人と一人娘ロザリーがいた。
ロザリーは全身鎧のアルに興味を示し、一緒に遊ぶと言い出した為
アルはロザリーと、エドはジュドウ・夫人に分かれて話をすることになった。


エドは自分も人体錬成したことを話し、ジュドウに噂の真実を尋ねた。
答えはYes。
ジュドウは両方の目を失った代わりに、人体錬成したのが
先ほど目にしたロザリーだと告げた。
                                     続く

616 名前:盲目の錬金術師2[sage] 投稿日:2006/06/18(日) 23:42:52 ID:???

その頃、ロザリーと遊んでいたアルは勢い余って頭部が取れ、
鎧の中身がからっぽがあることがバレてしまう。
ロザリーを怖がらせまいと慌てるアルだが、逆にロザリーは
興味津々で鎧の中をのぞき込んでくる。
「驚かないの?」
「ちょっとびっくりしたけど、もっとすごいの見てるから」
と、彼を「秘密の場所」へ連れて行く。


三年前に錬成したロザリーは、明るく元気に過ごしているという。
弟を元に戻せる希望を見つけたエドは懸命に錬成方法を尋ねるが、
夫人から「外部に秘術は教えられない」と はねのけられた。
主の意向である以上、ジュドウもそれ以上は口にできない。
夫人はエドを連れてその場を離れた。
「人体錬成はおやめなさい」という夫人に、なお食い下がるエド。
「聞いても無駄なのです」と、エドを「ある場所」へ連れて行く。


「秘密の場所」についたアルとロザリー。
「『ロザリー』、お客様よ」
部屋の中には、たくさんのぬいぐるみや本。
その中心にかわいらしい洋服をきた『ロザリー』が椅子に座っていた。
「これが、ジュドウが錬成した『ロザリー』よ」
-ただし、その姿は半ばミイラのようであったが。
                                  続く

617 名前:盲目の錬金術師3[sage] 投稿日:2006/06/18(日) 23:50:21 ID:???

ロザリーは本名はエミといい、本物のロザリーに姿が似ている為、
孤児院から引き取られ、ロザリーの振りをしているのだという。
『ロザリー』は生きてはいるものの、以前の愛らしい姿はなく
震える程度にしか動くことができない。
それ以前にこの身体の中にいるのが、本当のロザリーなのかも分からない。
「本物だよ……きっと」
励まそうとするアルの言葉に、エミは寂しげに笑う。
「うん……だから私はこの家の本当の子にはなれない」
辛そうに見つめるアル。その背後には夫人とエドがいた。


ジュドウとハンベルガング一家は家族のような存在だった。
それ故に3年前ロザリーを亡くした時、夫妻の落胆する姿を見かねて
彼は人体錬成を行ってしまった。
両目を失い激痛に苦しみながらも、ロザリーが無事か尋ねるジュドウに
夫妻は真実を告げられず嘘をついた。
「娘は帰ってきた。元の姿のままに……」
その足下には『ロザリー』の姿があった。
                                  続く

618 名前:盲目の錬金術師4[sage] 投稿日:2006/06/18(日) 23:53:24 ID:???

エミと執事が兄弟を見送る。
使用人達もジュドウと一家の絆の深さを知っている。
だから彼らも皆 ジュドウをだましていた。そしてこれからも。
「それでみんながいつも通りならば、それでいいのです」


門の外に出て振り返ると、エミが笑って手を振っていた。
ゆっくりと門が閉まっていく中、エミと執事は手をつなぎ家へと戻っていく。
「みんないい人だね」と言うアルに、うなづくエド。
しかし、暗く閉ざされた門の向こうでエドがつぶやく


「だけど、みんな救われねぇ」


                               〈終〉