MとNの肖像

Last-modified: 2008-09-22 (月) 23:45:31

MとNの肖像/樋口 橘

22 :MとNの肖像 1 :04/05/15 16:40 ID:???
 自宅の神戸からわざわざ電車で大阪の高校へ入学した安部みつる、
同じく京都からやって来た甘草夏彦。偶然にも二人はある共通の思いを抱えている。
今度こそまともで穏やかな学園生活をなんとしてでも死守したい―――
 お水系美少女顔に内気で控えめな性格のみつるはすぐに男子生徒のアイドルに。
一方、目がいいのに何故か眼鏡をかけている夏彦は、眼鏡を外すと美少年だと評判に。
五月蝿い同級生から逃れるため視聴覚室へ逃げた二人は鉢合わせる。
そこでみつるは夏彦の足に引っかかり転び、顔を腫らし鼻血を出す。
大丈夫かと訊く夏彦に、イっちゃった目をしたみつるは迫る。
「あなたって最高…っ…その鋭い肘で私をぶって…この足で私を蹴って…いじめて…
踏みつけて…いたぶって…お願い…私をあなたの好きにしてーーーっっ」
夏彦に迫ろうとして、みつるはまたもずっこけ気を失う。夏彦はみつるを保健室へ運んだ。
 眠るみつるは過去の記憶を夢に見る。名家である安部家のため、優秀な人間になれと
母に鞭で叩かれる日々。人より出来ない分人より十倍努力し、皆に尊敬された中学時代。
卒業式の総代に選ばれ、後輩からは安部先輩と親しまれ、母の望む人間となった頃、
みつるは的外れな蹴りにあい、マゾっぷりを公衆の面前で晒してしまう。
母に鞭で叩かれるうち、暴力がどこかで快感になっていたのだ。
鞭で叩かれる度、自分は叩かれるだけまだ見捨てられていないという安心感があった。
高等部進級の大事な時期にマゾっぷりを披露したみつるは総代から下ろされ、
こんなふしだらな娘とは思わなかったと、殴る価値すらないと母に言われた。
 目覚めたみつるは夏彦にそう説明した。遠い地での高校では騒ぎを起こさずに
母の信頼を取り戻そうとしたのに入学早々夏彦にばれてしまうとは…みつるは泣く。
夏彦は自分が内緒にして、ばれそうになったら協力してあげればいい話だろうと、
優しい態度を見せ、家まで送っていってくれた。
 誰にも深入りしないと決めたのになんであんな事をしてしまったのだろうと
夏彦は溜息をつき、ポケットから美しい少女の写った写真を取り出して見る。
あの時、人に気を許す少しの油断が取り返しのつかない後悔になったんだ。
同情なんてしてる場合じゃない。みつるには関わらないでおこうと夏彦は決心する。



44 :MとNの肖像 2 :04/05/16 09:35 ID:???
 翌日、夏彦と親しい態度をとるみつるに嫉妬し、
女子生徒達はみつるにバケツの水をかけようとする。
夏彦は見知らぬふりをしておけず、みつるをかばい水まみれに。
みつるは着替えを探しに行った。戻ってくると、夏彦は涙を流して鏡を見つめていた。
「…なぜ、僕はこんなにキレイなんだろう…この目、この髪、この鼻、
この口…まるで奇跡のようだ…僕は…美しすぎる。パー…フェクト…っ!
僕にとって友達は君だけだ。僕と同じ顔の鏡の中の君。愛して…いるよ…」
正気に戻った夏彦は人気のない公園へ行きみつるに説明をする。
 幼い頃、体の弱い夏彦は黴菌があるからと外へ出れず、友達とも遊べず、
いつも一人家の中にいた。そんな時鏡の中の自分を見て、そこから『美』を見いだし、
『自分』に興味を持つ事を覚えた。それから病気のように、鏡に映る自分の姿を
見るだけで恍惚状態になるようになった。いつ何時自分の美しい姿が目に入り
恍惚状態になるかわからないから、夏彦は目が悪くもないのに眼鏡をかけるようになった。
しかし、水でぬれたために眼鏡を外し、鏡を見てしまったために…
同病相哀れむように、みつるは同情して誰にもナルシストだとばらさないと誓う。
一先ず安心して夏彦は帰り、中学時代を思い出す。
美しい自分に何人もの女子生徒が告白してきたが、一番好きなのは自分だから
一度も承諾しなかった。ある日、自分に匹敵するほどの美貌を持つ女子・後藤が現れた。
夏彦は後藤と付き合うようになり、自分がナルシストである事も打ち明けるが、
後藤はそれを気持ち悪がり夏彦の性癖を学校中に言いふらした。
生まれて初めて興味を持った他人だから、ありのままの自分を知ってもらおうとしただけなのに…
それがもとで夏彦は遠くの高校へ入学したのだった。
 翌日、みつるは夏彦の、美少女の写った写真を見てしまう。
ナルシストとはいえ、好きな人がいるんだ、その人の写真なんだろうとみつるは落ち込む。
一人落ち込むみつるの顔面にサッカーボールが当たる。二年生の聖英一の物だ。
「その逞しいボールさばきで私を…あなたの愛の奴隷にしてください」
激しい快感のためまたも人格の変貌したみつるは、聖に迫る。
夏彦はみつるの気を失わせその場から連れ運んだ。



45 :MとNの肖像 3 :04/05/16 09:39 ID:???
 翌日、みつるを見つけた聖は、みつるに一目惚れをしたと公衆の面前で宣言。
夏彦はみつるを助けるため、彼女は俺と付き合っている、何かの間違いだと嘘をつく。
しかし、マゾである事をばらさないかわりに付き合えと聖は脅してくる。
 聖は大の犬嫌い。みつるに付き合おうと言ったのはみつるが好きだからじゃなくて、
帰り道にいる自分に懐いてくる犬を引き離してもらうためだという。
脅されて付き合い始めた事も、実は犬係になっただけだと言う事も
夏彦に言えず、誤解されているだろうとみつるは落ち込む。
しかし誤解が解け、夏彦は「友達になろう」とみつるに言ってきてくれた。
二人は手を繋ぎ喜びあった。みつるは写真の女の事を夏彦に訊ねる。
後藤と公平に張り合うために女装し、その勝利の記念写真だとはとても言えなかった。
 あっという間に七月。ナルシストの息子に友人ができた事を知った夏彦の母は、
連れて来い連れて来いと五月蝿い。みつるは聖と共に京都の甘草家へ。
聖は夏彦がナルシストである事に感づく。夏バテで倒れた夏彦をみつる達は
夏彦の部屋へと連れて行く。そこにはお堂のような物があり、中は一面鏡張りの
鏡の小部屋となっていた。夏彦の憩いの場所だ。みつるはすぐに扉を閉めるが、
聖が覗こうとしてくる。覗かれれば夏彦がナルシストである事が完全にばれてしまう!
みつるは慌てて扉を閉めようとして鏡をわってしまい、怪我をしてM人格が目覚める。
騒ぎに起き上がった夏彦も鏡の欠片に写る自分の顔を見てN人格に目覚め、
部屋は恐ろしい状況になる。夏彦の婆やのチョップで二人は目覚めた。
みつるは「甘草くんの事は内緒にしてください」と聖に泣いた。
 現場を見てしまった夏彦母は、気持ち悪がるどころか
「みつるちゃんって面白い方ねえ…お嫁さんにほしいわ」と声を踊らせた。
夏彦は壊れてしまった心のオアシス・鏡の小部屋を泣きながら掃除をした。
 夏休み、学年の合宿の肝試しの時、夏彦は気を失ったみつるとキスをしてしまう。
目覚めてから、気を失ってる時に何があったのかなど知らない
みつるは夏彦の態度の変化に不安を感じる。キスをした事で夏彦はみつるを
意識するようになり、やがて自分がみつるに恋をしている事に気づいた。



46 :MとNの肖像 4 :04/05/16 09:42 ID:???
 冬。一、二年合同でみつる達はスキー合宿へ行き、夏彦・みつる・聖と、
一年の辻理々花の四人は遭難する。理々花は女子の嫉妬の的に
なっているみつるに気さくに接し、みつるは初めて友達が出来たと喜ぶ。
夏彦は理々花の鏡ゴーグルに映る自分に向かい愛の告白をし、
理々花はそれを自分に向かった言葉だと勘違いしドギマギする。
 無事ホテルへ戻り、四人は風呂へ入る。みつるは理々花に誘われ
生徒が入る事は禁止されていた混浴の露天風呂に入る。
そこで夏彦が理々花を好きらしいと聞きみつるはショックを受ける。
理々花が荷物を取りに行った隙に男子大学生の集団が露天風呂に入っていた。
一人残されたみつるを助けるために夏彦と聖がやって来るが、
みつるは途中で倒れて真っ裸を男たちに晒してしまう。大騒ぎになり、
夏彦と聖は反省室で一夜を過ごす事に。理々花とみつるは
夏彦のおかげで普通の部屋に。みつるは眠ったので理々花は一人、
夏彦達の部屋に差し入れに行く。
「だからもっとやさしく…」 「ムリですよこれ以上…先輩…」
夏彦は同じ布団の中で聖にマッサージをさせられていた。
それを見た理々花は二人がホモだと疑う。
遭難事件・混浴事件を聞いた安部母はみつるを迎えにいくと言う。
母に怒られる事を想像し、自分が混浴で倒れたときM人格を
目覚めさせ裸に迫っていたんじゃないかと想像し、みつるは落ち込む。
扉の外から、安部は性格が悪いという噂なのになんでかまうんだ、と
女子が理々花に言ってるのを聞く。
「みつるちゃんはいい子だよ」
理々花が自分をかばっているのを聞きみつるは涙を流した。
 落ち込んでいるみつるのもとへ、夏彦が来る。
夏彦は「俺は安部さんが好きだよ」と告白する。
「私も…好きです」ホモ疑惑も解け、みつるは夏彦に告白した。



47 :MとNの肖像 5 :04/05/16 09:45 ID:???
 四人は進級する。ある日みつるの兄で、歯科医の一臣が歯科検診にやって来る。
兄・姉・妹の三兄妹の中でみつるは一番母に似ている。
マザコンで、みつるに歪んだ愛情を抱いている兄は、みつるの誕生日に
プレゼントを渡そうとデートを持ちかける夏彦を妨害する。
何をあげればいいのかわからないので直接みつるに選んでもらおうと
思ったのだが、一臣に先にプレゼントの服を渡されてしまい、
落ち込んで帰ろうとする夏彦を追いかけてみつるは事故にあい、
それをかばって夏彦は顔に傷を追う。ナルシストは顔が命。夏彦は半狂乱に。
みつるは一臣のプレゼントの服の裾を破ってまで夏彦を治療した。
傷はニ針ですんだが、後に残るものだという。だが夏彦は整形で治す事を拒んだ。
この傷はみつるをかばった勲章なのだから……
 進路指導の日、三社面談でもないのに安倍母はやって来た。
一臣からみつるに親しい少年がいると聞きつけたのだ。
「この子は卒業後しかるべき人に引き合わせ、花嫁修業を兼ねた
家に恥じない大学を出させた後、すぐにでも嫁がせるつもりです」
教師にそう言う母の言葉を聞き、みつるは固まった。
帰りには雨が降っていた。みつるが置き傘を取りに行っている間、
玄関で待っていた安倍母に夏彦は傘をかす。
安倍母は夏彦に好感を持つが、夏彦はナル人格を見せてしまう。
「汚らわしい…」安倍母は嫌悪を剥き出しにする。
安倍母はみつるを車に乗せ帰る途中、
「あのようなみっともない人間と貴方が付き合っていたなんておぞましい」と言う。
「甘草くんははみっともなくなんかありません!彼は私の好きな人です!」みつるは叫んだ。
 朝は一臣に連れられ、夕は母に迎えられ、日中は教師に見張られ…みつるは
周りから監視されるようになる。 みつるは監視の隙を見て理々花に夏彦と
付き合っている事を告白する。理々花かはショックを受けるが、どんな時も味方だと言ってくれた。



56 :MとNの肖像 6 :04/05/16 17:01 ID:???
 夏休み中祖母の家で勉強尽くめになる予定だったみつるを、夏彦達は変装し、
安倍母に嘘をつき聖の実家へと旅行に行く。聖の実家は寺で、そこには聖の弟で
霊感幼児の陽一がいた。みつるは聖と共に流れ着いた小島に遭難、
夏彦が見つけた時にはM状態になり聖に抱きつくみつるの姿が。
嫉妬で夏彦はみつるを責めた。夜、酒に酔った夏彦はみつるに抱きつきキスをする。
夏彦はみつるの上に乗っかったまま眠りこけた。
 旅行から帰り、その事を聞いた夏彦母は既成事実が出来たと喜び(抱き合ってキスをしただけ)、
素早く安部母に「宅の娘さんをお嫁に下さい」と言いに行く。
安部母は怒り、二学期、校内で問題が起こらないよう監視役の男を雇った。
文化祭が始まり、みつるはコスプレ喫茶でキャバクラ版鶴の恩返しの衣装を着せられる。
それを見にきていた一臣に見られそうになり、みつるは夏彦たちと共に逃げる。
客の男性も聖が引っ張ってきてしまった。みつる達は幹要という男から、その男性は
みつると結婚する予定の御曹司だと聞いた。翌日、文化祭二日目。
みつるは着物を着せられ、いきなり見合いに行かされる。
そこには昨日の男性・鞠小路成顕(32)がいた。成顕は高校生の頃から当時三歳の
みつるを見初めていたのだという。どこぞの誰かと違う誠実な人だと母は言い、
結婚を嫌がるみつるを殴る。みつるはM人格に目覚め母にもっと殴れと迫る。
「今のは何か打ち所が悪くて…そうよねみつるさん!私の娘がこんな醜態…おぞましい」
正気に戻ったみつるはショックを受ける。見合いの事を聞きつけやって来た夏彦は
「安部さんはおぞましくなんかありません」と言い、みつるを連れその場を去った。
 みつるは勘当され甘草家で暮す事に。親が保護者になり通っている学校には
もちろん勘当を解かれるまで通えない。寂しそうに独りで勉強するみつるを心配して
夏彦母は学校へ行き、みつるはいずれ甘草家へ嫁に来るために同棲中、
という事は自分が保護者だ。保護者として学校復帰について相談したいと言う。
学校中に同棲の話が広まり、その事で夏彦と母は言い争いをする。自分のせいだと
落ち込むみつるを聖は励まし、好きだと告白した。
動揺するみつるに聖は冗談だと言うが、とてもそうだとは思えなかった。



57 :MとNの肖像 7 :04/05/16 17:03 ID:???
 落ち込むみつるに夏彦は「辛い事があっても誰も責めずに独りで我慢して
そうやってマゾにまでなった、どうしようもなく不器用な安部さんが好きだよ」と言う。
夏彦母はそれをプロポーズだ!と興奮し、二人の結婚式招待状を方々に送りつけた。
二人はそんなの出来るかと反対していたが、結局式を行う事に(籍はまだ入れられない
 みつるの母・麗華は夢を見る。昔から影で人の十倍努力と策略をし、背伸びして
多彩で非凡な夫、夫似の才長けた美しい子供達に囲まれ人の羨む理想の家庭を手に入れた。
しかし末の娘のみつるだけはドジでのろま。麗華は気付いた。上の二人は外見は
自分に似、中身は夫に似たが、みつるは中身も外も自分にそっくりだという事に。
隠れ馬鹿の麗華の娘は馬鹿だったのだ。インターフォンの音で麗華は目覚める。
扉を開けると夏彦とみつるがおり、二人は結婚する、当日来てくれるのを待っていると言った。
 結婚式当日。聖はみつるの耳元で「幸せに」と呟き、頬にキスをした。
一臣が協会入場の付き添いになった。麗華も最終的には結婚を認めてくれた。
二人は甘草家で新婚生活を始めるが、それには条件がある。
一に、厳として清い関係を貫く事。
二に、成績が下がったら即離婚。
三に、月に一度は安部家へ顔を見せる事。
しかし、しばらく学校を休んでいた事でみつるには留年の可能性すらある。
麗華は新たな条件を出した。全教科を90点以上クリア出来なければ、フランスへ留学させると。
テストでは無事90点以上取れたが、みつるは揺れていた。
「お母様に私達の事を心から納得して欲しいんです。
もっとしっかりした人間になってお母様や甘草君にきちんと認めてもらえる
人間になりたいから。色んな事に逃げてばかりいたけど、
これを機にそういう自分を変えたくて。一歩踏み出せる人間になりたくて」
夏彦は行っておいでと優しく言った。二人は電気を消した部屋の中で一夜を過ごした。



58 :MとNの肖像 8 :04/05/16 17:07 ID:???
 卒業式の日、聖は桜の木の下でサボっていた。桜には、いい思い出が無い。
小学五年生の時、父が死んだ。母は二人で生きていこうといいながら、
次の桜の頃には葬式の時に来てくれた坊さんと再婚した。
母の再婚で田舎へやって来たのもまた桜の季節だった。
そこで聖は恐ろしい顔の犬に懐かれ、更に犬嫌いが悪化した。
 桜のように淡く散った恋もあった。女子にモテまくりで、小学生の時に
初体験を終えたと自称している(実は嘘)聖は男子の憧れの的。
キスなんか腐るほどしたと嘘をついてしまい、テクニックを見せろと
言われて片思いの相手・越智を呼び出し、キスを飛び越して胸を触ってしまう。
当然越智には嫌われるが男子達には「すごい」と益々憧れられる。
だが、実はキスさえした事が無い。失恋がきっかけで聖は大阪の高校へ行った。
 都会の高校では皆軽い恋愛を楽しんでいる様だ。聖は早く都会に
慣れなければと数をこなすが「誰が本命なの!」と軟派扱いされる。
仲の良い子は沢山いて、人気は有っても一線を超えた相手はいないのに…
 次の桜の季節、聖はみつると出会う。みつるは自分に迫ってきた。
変な告白だが自分の事をそれだけ好きなのだろうかと思い、
やっとマトモな恋愛が出来る!と聖はみつるに会いに行く。
しかしそれは誤解だとわかり、つい悪戯をしてしまった。
いつの間にか彼女を好きになったのは、不器用なみつるに
聖の不器用な部分が惹かれたのかもしれない。
結婚式の日の頬のキスは恋への別れを告げるキスでもあった。
あれでも、渾身の思いで身を引いたのだ。
 過去の回想に浸っている聖を理々花が迎えに来た。
一番に自分を見つけた褒美だと、聖は制服のボタンを渡した。理々花は赤面した。


 不器用なりに恋もしたし、みつるは別れを惜しんで泣いてくれたし、
今年の桜は悪くない思い出が出来た。次の桜の頃には実る恋に出会えるだろうか。



59 :MとNの肖像 9 :04/05/16 17:10 ID:???
 みつるは一週間後パリへ旅立つ。時を同じくして聖も東京へ。
三人は聖の荷造りを手伝わされた。アパートには霊感幼児の陽一が来ていた。
皆には秘密だが、陽一は水晶玉を通して過去や未来を見通す事が出来る。
陽一は水晶玉を通して未来を見た。そこには、化粧品会社の社長になった
相変わらずナルシストで鏡に向かってモナムールなどと呟く夏彦の姿が。
そして彼の妻で相変わらずマゾのみつると、ナルシストの血を引いた双子の息子の冬彦・春彦。
長女で、麗華とそっくりな性格と見かけで、生まれつき優秀な なつみ。
なつみの叔父である一臣は、麗華にそっくりな なつみを溺愛している。
理々花は東京に出て出版社に務めている。聖は平成の陰陽師という
異名を持つ霊能力者に。実は聖自身が霊能力を使っているわけじゃなく、
12歳になった陽一が陰で活動を支えているのだ。
 自分は将来こうなるのかと陽一はショックを受ける。だが、未来は
自分次第で変わる物だと思い直す。四人+陽一は最後の一日を過ごした。


これから先の自分達がどんなに変わろうと、ずっと一緒にいられるといいな。
楽しいといいね。笑って毎日過ごせる自分だといいね。
大切な人たちといつまでも繋がっていられる未来だといいね


 <完>