エファンタジー/第二話「幻のイリュージョン」

Last-modified: 2023-03-03 (金) 19:00:33

第二話「幻のイリュージョン」



先日FSメンバーに忍者自慢をされた。
なのでその事をネタに書いてくれようと思った。
思いの他、筆が進む。+〆('ω'*)+キラテカ


暗く哀しき過去を持つ男、アルカー。
それは凄惨たる過去への贖罪なのか、それとも過去の忘却を望んでの事か。
その日、登山靴と防寒具を揃えた彼は巷で噂の山を登っていた。


実は彼には登山の経験等は無いのだが、
「とりあえず壁に右手を付けて歩き回っていればなんとかなるだろう。」
そこは前向きなアルカーだ。そんな事を呟き、歩を進め始める。


まだまだ寒い時期だったが高い場所から見れる景色は壮観で、綺麗で、
ひやびやとした暗い過去を忘れさせてくれる。体の芯である心を暖めてくれる。
「ふっ、まだまだ歩けるな。」
アルカーはそう思った。


綺麗な景色も見続けるには退屈なものだが、
物事には変化がある。変化というものは安定の逆の位置にあるものだ。
大抵の人々はそれを嫌いはしなくても敬遠するものだ。
しかし、時として人を生き飽きさせない為に必要なものだ。


そして、彼の見飽きた景色にも変化が訪れる。
点々とした星の瞬きのようなものが彼の目に映る。
そう、夜になり、民家に明かりが灯り始めたのだ。
「これは人間の作り出した景色だな。愚かしくも切実な光のパレードだ。」
アルカーは呟く。
人は太陽の齎す光という恩恵を夜にまで持ち越そうとした。
自然の有り様と有難さを忘れる愚行だ。
それでも人は切実に光を求めて歩み続け、今や誰もが光を掌中に収めているのだ。
アルカーは光のパレードを眺めながら更に歩を進める。


また時間が過ぎ、光のパレードにも終わりが来る。
夜も更け、民家の明かりも消え切った。
夜の暗き闇は人の心を不安にするものだ。
ヒュルルルー。
冷たい夜風が背筋と不安を撫でて行き、ブルリと肩を竦ませるアルカー。
ふと立ち止まって、来た道を振り返る。


そして、彼は今更遭難した事に気付いた。


「やべぇ!」
現実に立ち返ったアルカーは日没までに帰るつもりだったので、
食べ物を一切持って来ていなかった事を思い出す。
「こんなんなら登山とかするんじゃなかった!」
「何が光のパレードだ!つまらんモンに見とれてたせいで大ピンチ!/(^0^ )\」
余裕の無くなって来たアルカーは慌てに慌て叫んだ。


「やかましいな。」
直後、何者かの呆れた声が草々の間から聞こえて来た。


「!?」
アルカーは驚いたが、それ以上に助かった!という気持ちが大きかった。
少なくともここには誰かいる。こんな山奥で余裕ぶった声を出している。
詰まる所、そいつはこんな場所でも余裕が出せるだけの物資を持っているという事だと察したのだ。


「すみません。遭難してしまったんです。助けて頂けませんか?」
アルカーは出来る限り相手に媚びる口調で言う。
「こんな時間にこんな山奥に来れば遭難するのは当然だろう。」
呆れ声が返って来る。
アルカーは少しムッとしたが、自分が助かる為、更に媚びた声を挙げる。
「本当、僕って馬鹿な子でした。愚かさに免じて哀れんでやって下さい。」
アルカーがそんな卑屈な言葉を口にした時、
ヒューーーーー!スタッ!
目の前に漫画の擬音のような音と共に時代錯誤な服を着た男が【降って】来た。
「すわっ!?」
アルカーは驚きのあまり、無様に尻餅をついてしまう。
そんな彼を一瞥し、
「忍者になれ。さすれば、助けてやろう。」
超々高度からの落下にも涼しい顔をして男はそんな事を言った。


登山で遭難したアルカーの前に現れたのは高い所から落ちてもへっちゃらな忍者!?一体何者なのか!?
アルカーは誘われるまま忍者になってしまうのか!?
次回、乞う御期待!〆(・ω・´)